日本の農家所得向上の 経験から何を学ぶか?

2010年度東大農経院
手法別分析事例集1
ランダム化対照実験
傾向スコアマッチング
2010年6月17日
有本寛
(一橋大学)
相関関係の発見
因果関係の識別
データの関係性を掴む:回帰分析の性質
因果関係の識別
選別バイアスとconditional independence assumption
マッチング
回帰分析
ランダム化対照実験
重回帰分析
傾向スコアマッチング
パネルデータ分析
操作変数法
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目次
• ランダム化対照実験
– Duflo, Kremer, Robinson (2008):肥料の収益性
– Duflo, Kremer, Robinson (2009)
• 傾向スコアマッチング
– 斎藤(2008):高速道路の効果
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Duflo, Kremer, Robinson (2008)
“How High Are Rates of Return to Fertilizer?
Evidence from Field Experiments in Kenya”
American Economic Review 98(2):482-488.
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背景
• アフリカの農業技術採択(新品種,肥料)
• ケニアの事例:
– ハイブリッド種+肥料  40~100%反収UP
– にもかかわらず,採択率60%
– スイッチング(使ったり使わなかったり)
• なぜか?
– 新技術は実はあまり利益にならない?
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実験
• 各農家の圃場で,隣接する3区画を設定
– 第1区画:追肥
– 第2区画:ハイブリッド種+元肥
– 第3区画:コントロール(通常通り)
• 6耕作期に渡って実験
• 肥料投入量にバリエーションをつける
– 1, ½, ¼
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結果
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肥料投入量別の収益性
Duflo et al (2008), Table 1
100
Rate of return over season
80
% increase in yield
60
40
20
0
-20
1/4 TS
1/2 TS
1 TS
Full package
-40
-60
10
肥料のコストを差し引くと
常にprofitableとは限らない
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肥料投入と投入収益率
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結論
• 肥料投入の収益率は,投入量にsensitive
• 投入量が適正でも収益が負になるリスクが
ある
• 肥料投入の収益性を決める要因はほとんど
特定できなかった
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Duflo, Kremer, Robinson (2009)
“Nudging Farmers to Use Fertilizer:
Theory and Experimental Evidence from
Kenya”
NBER Working Paper No. 15131.
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背景
• 技術採用しないもう一つの理由:先延ばし
• 肥料を使った農家は4割(直近2期では29%)
• 理由:肥料を買うお金がない(79%)
– しかし,実際は肥料は少量でも買える
• 肥料を買おうと思って貯金しようとするが,
失敗?
– 実験参加農家の97.7%は次期に使うと表明
– 実際に計画通り使ったのは36.8%
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介入
• Basic SAFI
– 収穫後すぐに肥料を正価で販売
• SAFI with ex-ante choice of timing
– 収穫前.販売に再訪する時期を選ぶ
• ½ price visit at top dressing
– 追肥の時期に半値で販売
• full price visit at top dressing
– 追肥の時期に正価で販売
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介入
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ランダム化のチェック
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ランダム化のチェック
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ランダム化のチェック
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効果の検証
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効果の検証
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斎藤淳(2008)
「地域経済開発におけるインフラの役割
-日本の戦後経済成長の経験-」
『開発金融研究所報』第37号, pp.64~114.
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概要
• 課題
– 高速道路の地域経済への波及効果と行政変動
への影響を分析する
• データ
– 自治体レベル,1960~2000年
• 識別上の問題
– インフラ→経済活動(所得)?
– 低所得→インフラ(公共事業)?
– 測定誤差
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分析の流れ
• どんな自治体に高速道路が通るか?
– 高速道路供用の比例ハザード回帰分析
• 高速開通の結果どんな効果があったか?
– 傾向スコアマッチング
•
•
•
•
傾向スコアの算出(ハザード回帰分析)
マッチング
バランシング
効果測定
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日本の高速道路供用路線延長
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高速道路供用の
比例ハザード回帰分析
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農業就業者比率の推移
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効果変数
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バイアス補正
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高速道路の処置効果
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今週の課題
• 先週提出した課題と仮説について
– どのようなデータがあれば原因と結果の相関関
係を捉えられるか(今回は,そのようなデータの
有無は調べなくてよい)
– その相関関係から因果関係を主張するにあたっ
て,選別バイアス,欠落変数の観点から,どのよ
うな内生性の問題が考えられるか
をA4二枚以内で書いてくること
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