重要他者との相互作用にみられる言語的対人反応性 -重要他者とのイベント経験,抑うつ,不安との関連- 勝谷紀子 (Katsuya Noriko)(日本学術振興会・日本大学) key words:言語的対人反応性,抑うつ,不安 問題 言語的対人反応性とは 「相手に対してどれだけ早く,ひんぱんに, 感情をあらわにして反応するかどうか (Swann & Rentfrow, 2001)」をさす行動傾向 特徴 反応の具体的な内容よりも,その量 や早さに着目 勝谷(2002) 言語的対人反応性を測定する尺度である BLIRT (Brief Loquaciousness and Interpersonal Responsiveness Test)の日本語 版を作成 ①BLIRTは1因子から構成される ②抑うつ,再確認傾向,拒否回避欲求と負の 相関,賞賛獲得要求と正の相関 第1回調査(2002年10月と2003年10月実施) ①日本語版BLIRT尺度 BLIRT(Time1) [他者一般BLIRT] ②状態不安尺度(清水・今栄, 1981) STAI_S(Time1) ③自己評定式抑うつ尺度(福田・小林, 1973) SDS(Time1) ④賞賛獲得・拒否回避欲求尺度 (小島・太田・菅原, 2003) ⑤日本語版自己好意・自己有能感尺度 (藤島・沼崎・工藤, 2003) (SLCS) 第2回調査(2003年1月と2003年12月実施) ①第1回調査から第2回調査の間に重要 他者との間で経験したライフイベント (うれしい,がっかり,腹が立つ,不安,悲 しい,不満)(7件法) ②第1回調査から第2回調査の間に重要 他者となされた言語的対人反応 (BLIRTの項目を使用)[重要他者BLIRT] ③STAI_S(Time2) ④他者一般BLIRT(Time2) ⑤SDS(Time2) ③最近1週間にうれしい経験をした人はしてい ない人よりBLIRT得点が高い 結果 不安 重要他者BLIRTの効果 (t =-1.85, p=.067, Beta=-.211)(傾向) →重要他者BLIRTが低いほど不安が増 加する傾向 ※他者一般BLIRT(Time2)のかわりに他者 一般BLIRT(Time1)を説明変数に投入 →いずれの目的変数も有意な結果なし 再検査信頼性の検討 他者一般BLIRT(Time1)と(Time2)では 高い正の相関(r(166)=.725, p<.0001) 個人差変数との関連 他者一般BLIRT(Time1)と個人差変数 (Time1)との相関係数 拒否回避欲求 STAI_S SDS SLCS 自己好意 自己能力 r(165)=-.485, p<.0001 r(112)=-.277, p<.01 r(165)=-.243, p<.01 r(111)=.336, p<.001 r(111)=.307, p<.01 考察 目的 他者一般/重要他者BLIRTとイベント経験との関連 1. 重要他者との相互作用でみられる言語的対 人反応性を検討する 2. 重要他者との間で経験したイベントに限定し て言語的対人反応性との関連を検討する 3. 重要他者との間でみられる言語的対人反応 性が抑うつ,不安の変化と関連するかを調 べる 4. 日本語版BLIRT尺度の再検査信頼性,個人 差変数との関連を検討する 方法 約2ヶ月をあけた2回の質問紙調査による パネル調査を実施 調査協力者 T 大学の学生167名 (男性109名,女性58名,平均年齢 20.07 歳) 重要他者BLIRTと他者一般BLIRTの相関 Time1 r(166)=.310, p<.0001 Time2 r(167)=.554, p<.0001 重要他者BLIRTとイベント経験の相関 不安 r(166)=-.444, p<.0001 悲しい r(166)=-.407, p<.0001 不満 r(166)=-.171, p<.05 他者一般BLIRTは,重要他者とのイベント 経験と有意な相関なし[調査時期によらず] 重要他者への言語的対人反応性は,他者 一般への言語的対人反応性と関連があり, 重要他者とネガティブなイベント経験をする ほど低い傾向 重要他者への言語的対人反応性は不安の 変化に,他者一般への言語的対人反応性は 抑うつの変化に関連している可能性 →前者については,重要他者BLIRTの時系 列データを用いて再検討する必要 日本語版BLIRT尺度は,関連が予測される 構成概念と相関がある.また,再検査信頼 性も高い 抑うつおよび不安の変化との関連 第1回-第2回調査の抑うつ,不安の変化 を他者一般/重要他者BLIRTが説明するか 重回帰分析 目的変数 抑うつ or 不安得点の差得点 説明変数 他者一般BLIRT(Time2) 重要他者BLIRT 抑うつ 他者一般BLIRT(Time2)の効果 (t=-1.69, p=.092, Beta=-.159)(傾向) →他者一般BLIRTが低いほど抑うつが 増加の方向 今後の課題 怒り、関係満足感など他の感情との関連 対人行動への影響に関する実験的検討
© Copyright 2024 ExpyDoc