JTM日本語

平成26年2月6日・7日
青森県
株式会社JTB総合研究所
•1
青森県にとって観光危機管理がなぜ必要か
観光は、青森県の重要な産業である。
• 観光は、青森県の経済に大きく貢献
県内の観光消費額は1,673億円、県内総生産の3.8%
農業生産額(1,452億円)より多い。
• 観光産業は、2万6千人の県民に直接・間接的に雇用を提供。
危機や災害に遭遇したら、
1. 観光客を安全に避難誘導し、被災した観光客を救護する。
2. 観光客の早期の帰宅を支援する。
3. 現地の状況を的確に把握し、情報提供する。
4. 危機終息後の観光復興を予め計画し、できるだけ早く復興
に取り組む。社会・経済的損失を最小限にとどめる。
•2
⇒「安全・安心な青森」のブランド形成
⇒危機や災害の影響で観光が停滞することに
よる、社会・経済的損失を最小限にとどめる。
•3
観光危機管理の特徴
• 観光客・旅行者が対象
– 土地に馴染みがない、土地勘がない
– コミュニケーションが難しい(外国人も含まれる)
– できるだけ早く自宅・自国に帰りたい
• 民間事業者と地域・行政との連携がより重要
– 誰がいるのか、事業者(宿泊施設、旅行会社等)しかわからない
– 地域との接点は、事業者経由
• 危機管理の成否が回復の決め手となる
– 観光客への対応が、観光地としての評価を決める
– 危機後すぐに回復への「打ち手」を準備
– 危機を機会に変える
•4
東日本大震災から学んだこと
•5
予想もしていなかった
想定を超えていた
いまだかつてなかった
•6
津波の際の避難場所は決まっていなかった
•7
釜石の奇跡
~生存率99.8%の奇跡~
• 高さ6メートル、総幅1690メートルある防潮堤が建造されるなど、
釜石市周辺エリアは「日本一津波に強い場所」とされていた。
• しかし、津波は防潮堤をあっさり乗り越え、予測津波到達地点
をはるかに超えるところにまで到達した。
•8
釜石の奇跡
~生存率99.8%の奇跡~
小学生1927人、中学生999人の命が助かった。
– 学校に残っていた小中学生
は地震の直後から教師の
指示を待たずに避難を開始。
– 「津波が来るぞ、逃げるぞ」
– 保育園児のベビーカーを押
し、お年寄りの手を引いて
高台に向かって走り続けた。
•9
奇跡を可能にしたもの
– 過去からの学び
先人が残した言葉「津波てんでんこ」を実践
– 自ら考えさせる防災教育
「津波が来たら逃げろ!」とただ教えるのではなく、
「津波が来たらどうすればよいのか」を考えさせる教育
– 「避難三原則」の徹底
• 想定にとらわれるな
• その状況下において最善を尽くせ
• 率先避難者たれ
•10
「避難三原則」
一.想定にとらわれるな
相手は自然。どんな想定外のことも起こり得る。
先生が、テレビが、誰かが「大丈夫」と言ったから安全だ、
といった受け身の姿勢でいては絶対にダメ。
二.その状況下において最善を尽くせ
状況から冷静な判断を下し、一番安全な選択肢を。
「先生、この避難所じゃ駄目だ、もっと高い所へ逃げよう」。
三.率先避難者たれ
周囲の行動に自分が合わせるのではなく、
率先して逃げる判断を下し、実践する。
•11
観光危機管理の全体像
災害発生
現地から
帰宅
避難誘導
情報発信
支援
救護
持続性の
ある復興
計画
復興支援
人材
育成
復興後の
観光プロ
モーショ
ン
•12
事業報告
【観光危機管理ワークショップの内容】
平成24年度 十和田市【十和田湖・奥入瀬渓流エリア】
想定する危機:大雪による道路遮断
平成25年度 深浦町【深浦町役場エリア】
想定する危機:大地震・大津波
•13
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
十和田湖・奥入瀬渓流でのワークショップ
◆実施日時(全4回)
・平成24年9月27日、11月13日、11月29日、12月17日
◆場所
・十和田湖国立公園協会案内所 会議室
・奥入瀬渓流館 レクチャールーム
◆参加者 (行政機関)
総務課防災係、十和田市観光推進課、十和田市セーフコミュニティ推進室、
十和田消防本部、十和田湖消防署休屋出張所、十和田警察署、
上北地域県民局地域連携部、上北地域県民局地域整備部
◆参加者 (民間組織)
㈳十和田湖国立公園協会、十和田湖観光汽船株式会社、ホテル十和田荘、
奥入瀬渓流ホテル、奥入瀬温泉活性化協議会、十和田湖商工会、
森のホテル、野の花焼山荘、㈶自然公園財団十和田支部、十和田湖山荘、
とわだこ賑山亭、孔雀荘
•14
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
•15
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
深浦町・役場周辺でのワークショップ
◆実施日時(全4回、内一回はセミナー)
・平成25年9月27日、11月13日、11月29日、12月17日
◆場所
・深浦町役場
◆参加者 (行政機関)
鰺ヶ沢警察署深浦交番、鰺ヶ沢地区消防事務組合深浦消防署、
西北地域県民局地域連携室、西北地域県民局地域整備部、
青森県県土整備部整備企画課、深浦町総務課・観光課
◆参加者 (民間組織)
深浦町観光協会、(株)ふかうら開発、深浦観光ホテル、JR深浦駅
•16
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
•17
観光危機管理計画策定の流れ
ステップ1:起こりうる危機と観光客に対するリスクの想定
ステップ2:危機管理対策における現状の把握
ステップ3:具体的な危機への対応方法の検討
•18
ステップ1
「起こりうる危機と観光客に対するリスクの想定」
「想定外」を作らない
(1)最大観光客数の想定
(2) 発生可能性のある危機の想定
•19
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
(1) 最大観光客数の想定
●地域全体での想定
地域
○○
エリア
最大お 最大数が予想される月、
客様数
曜日、時間帯
10月下旬、紅葉ピー
○○人
ク時の10:00~14:00
●各施設内・外での想定
部門
最大お
客様数
最大数が予想される月、
曜日、時間帯
○○ホテ
ル宿泊者
300人
10月下旬、紅葉ピーク時
17:00~8:30
○○旅館
宴会・会
議場
200人
大宴会場を利用した宴
会・会議開催時
道の駅
○○
300人 修学旅行バス到着時時
十和田湖・奥入瀬渓流地区の場合
地域
休屋周辺
最大のお客様数
最大数が予想される月、曜日、時間帯
2,000人(自家用車500台) 2月、冬物語開催の週末。
•20
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(1) 最大観光客数の想定(深浦)
•21
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(1) 最大観光客数の想定
資料2
約500m
•22
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(1) 最大観光客数(住民を含む)の想定
深浦・役場周辺の場合
地点名
マックスバリュ
周辺
深浦駅周辺
役場周辺
夕陽公園
岡崎海岸周辺
最大数
集まる時期・時間帯
毎日。昼~夕方にかけて
マックスバリュー・nicotの買い物客を含む
夏季の週末。上り、下りの「リゾートしらかみ号」
200名 の同時到着時
2826D 弘前発上り普通列車到着時(12:05)
500名 平日、役場で会議等の開催時、役場職員含む
200名
2,000名 「津軽深浦チャンチャンまつり」開催時
500名 夏季の昼ごろ。岡崎海岸の海水浴客
•23
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
(2) 発生可能性のある危機の想定(十和田)
•24
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
(2) 発生可能性のある危機の想定(十和田)
•25
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
(2) 発生可能性のある危機の想定(十和田)
自然災害
人的災害
・大雪による道路遮断
・土砂崩れ、倒木
・大雨による水害
(十和田湖・奥入瀬渓流氾濫)
・山火事
・地震
・外輪山の崩落
・竜巻
・火山の噴火
・熊による傷害
・バス等大型車両の事故
・伝染病(インフルエンザ、ノロ
ウィルス等)
・食中毒
・カメムシ・スズメバチ大発生
・交通渋滞
・交通事故
・飲料水の汚染など
・ホテル火災
・飛行機の墜落
•26
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
(2) 発生可能性のある危機の想定(優先順位付け)
•27
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
(2) 発生可能性のある危機の想定(優先順位付け)
発生
可能性
高
中
低
観光客の安全への影響度
(高)
・大雪による道路遮断
・土砂崩れ・倒木
・バス等大型車両の事故
・大雨による水害
・伝染病
・食中毒
・カメムシ・スズメバチ大発生
観光客の安全への影響度
(低)
・交通渋滞
・交通事故
・熊による傷害
・山火事
・飲料水の汚染など
・ホテル火災
・地震
・竜巻
・火山の噴火
・外輪山の崩落
・飛行機の墜落
•28
ステップ2
「危機管理対策における現状の把握」
(1)施設・標識などの対策
(2)地域防災計画・防災訓練等の現状
(3)危機情報の伝達
•29
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(1)施設・標識などの対策
岡崎海岸「渚の地下道(ちかみち)」
•30
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(1) 施設・標識などの対策
大きな地震の発生や津波
警報・注意報発令時には
速やかに避難してください
深浦町
•31
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(1) 施設・標識などの対策
•32
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(1)施設・標識などの対策
•33
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(2)地域防災計画・防災訓練等の現状
•34
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(2)地域防災計画・防災訓練等の現状
•35
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(3)危機情報の伝達
•36
ステップ3
「具体的な危機への対応方法の検討」
誰を(対象者)
誰が(避難誘導者)
どこへ(避難場所)
どのように(避難方法)
•37
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(1) 誰が:責任者・意思決定者の検討
危機管理の責任者・意思決定者は誰?
・最終的な避難の意思決定をする
・避難誘導の全体指揮を担う
・災害が発生する現場周辺に必ずいる必要がある
・もし責任者が現場にいない場合の代理・副責任者も必要
 「空振り」避難の場合でも、危機管理責任者・意思決定者の
責任は一切問わないことを、関係者全員で確認!
•38
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(1) 誰が:責任者・意思決定者の検討(深浦)
地点名
意思決定者
避難誘導担当者
マックスバリュ
マックスバリュの管理責任者
周辺
マックスバリュの従業員
深浦駅周辺
深浦駅長
深浦駅の駅員
役場周辺
町役場の総務課長
町役場の職員
夕陽公園
イベントの事務局長
イベントの運営スタッフ
岡崎海岸周辺 岡崎海岸の運営管理者
海岸の監視員
•39
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
(2) どこへ:避難場所・経路の検討(十和田)
•40
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
(2) どこへ:避難場所・経路の検討(十和田)
施設の種類
宿泊施設
公共施設
名称
利用スペース
収容可能人数
(宿泊者含む)
ホテル十和田荘
空客室・ロビー・宴会場等
1,500人
とわだこ賑山亭
空客室・ロビー・宴会場等
300人
とわだこ遊月
空客室・ロビー・宴会場等
300人
十和田湖小学校 体育館
600人
•41
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(2) どこへ:避難場所・経路の検討(深浦)
名称
面積
収容可能人数
役場4階会議室・屋上
150㎡
150人
岡町防災広場
633㎡
約600人
1,232㎡
約1,200人
21,835㎡
約20,000人
深浦小学校体育館
1,332㎡
約1,300人
深浦小学校グラウンド
2,890㎡
約2,800人
深浦中学校体育館
深浦中学校グラウンド
•42
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(2) どこへ:避難場所・経路の検討
•43
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(2) どこへ:避難場所・経路の検討
•44
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(2) どこへ:避難場所・経路の検討
•45
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(3) どのように:避難誘導方法の検討
●誰が:避難誘導の担当・役割分担
(指示・命令、先導、誘導、確認 など)
●どこへ:どこにいる人をどこの避難場所へ
(○○周辺にいる避難者は△△へ
など)
●どうやって:具体的な避難誘導の順序
(意思決定→避難指示→避難開始→避難完了 まで)
•46
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
(3) どのように:避難誘導方法の検討
十和田湖・奥入瀬渓流地区の場合
内容
防災行政無線による情報伝達
※伝達すべき内容
①発生した危機の詳細
②指示があるまで行動せず、その場で待機
口頭での現状の情報伝達
担当者
市役所
避難開始せず、その場所で待機してもらう
車を運転中の人は最寄りの駐車場に誘導する
現場スタッフ
避難場所の収容可能人数の確認・受け入れ依頼
対策本部
避難場所の受け入れ準備
避難場所の担当者
(事業者)
避難場所を指定し、順次誘導
現場スタッフ
現場スタッフ
•47
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(3) どのように:避難ルート検討のポイント
•
•
•
•
最短ルートか
津波到達予想時間内に、徒歩でたどり着くことができる距離か
住民の避難ルートや、他の避難ルートとの交差や重複がないか
多くの人数が一斉に避難できるだけの幅員があるか
• ルート上に、交通量の多い道路の横断や、災害発生後に人や車両が集
中・渋滞が想定される箇所がないか
• イベント会場やスポーツ施設等の出口が狭く、多人数が同時に避難する
際にボトルネック状況の混乱が想定される箇所があるか。
• ルート上に、危険箇所や障害物(土砂災害危険箇所、ブロック塀、ガス・
オイルタンク、橋等)はないか
• 避難ルートが通行できない場合のう回路があるか
• ルート上に、津波到来時に深い浸水が想定されている箇所がないか
• ルート上に、地震による液状化で通行困難が予想される場所がないか
• 避難場所に至る前に津波が到来する恐れがある場合、ルート上に避難
できる津波避難ビルや高台等があるか
•48
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(3) どのように:避難誘導方法の検討
•49
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(3) どのように:避難誘導方法の検討
•50
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(4) 帰宅支援:危機が去った後の対応
●誰が:帰宅支援の担当・役割分担
●いつ:安全が確認された後、どのタイミングで開始するか
●どこへ:どの避難場所にいる人をどのルートで
●どうやって:具体的な帰宅支援の順序
(意思決定→情報発信→帰宅開始→帰宅完了 まで)
•51
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(5) 減災・防災:危機が発生する前の対応
●どの情報に基づいて、誰が、どのように意思決定する?
●観光客にはどうやって伝える?
・既に青森県で観光を楽しんでいるお客様
・今、青森県へと向かっているお客様
・明日にでも青森県へ出発するお客様
•52
平成24年度 十和田市
十和田湖・奥入瀬渓流エリア
平成25年度 深浦町
深浦町役場エリア
(6) 必要な備品についての検討
災害発生⇒帰宅支援までに、
どのような備品が必要になるか?
•53
観光危機管理に関する
よくある質問
•54
観光危機管理に関するよくある質問
Q:県や市町村には、地域防災計画があるので、観光危機管理
計画がなくても、災害時に観光客の避難誘導はできるのでは?
A:地域防災計画があっても、観光危機管理計画は必要です。
危機・災害発生時の避難誘導や救護は、住民も観光客も区別なく行われま
すが、土地勘のない観光客は、自分で判断して避難することができませんし、
住民とちがって防災訓練を通じて避難方法を身に着けることもできません。
観光に大きな影響を及ぼす危機であっても、その自治体にとっては防災の
対象にならない場合があります。たとえば、仙台以南で発生した災害で、新幹
線が長期にわたり不通になれば、青森の観光にとっては重大な危機ですが、
県の災害対策本部は設置されないでしょう。その時、県内の観光客が帰宅す
るのを支援したり、来県予定の観光客に新幹線以外の交通手段の情報を提
供したりすることは、観光危機管理の守備範囲です。
さらに、危機終息後の観光復興は、観光危機管理の最も重要な要素のひと
つですが、地域防災計画には含まれていませんから、観光事業継続計画とい
•55
う意味でも観光危機管理計画は必要です。
観光危機管理に関するよくある質問
Q:県や市町村に観光危機管理計画があれば、個々の観光事業
者は危機管理計画を作らなくてもいいですか?
A:県や市町村は、地域としての観光危機管理計画は作りますが、個々の事
業者は、それぞれ計画を作り、それをもとに訓練をしておく必要があります。
事業者用のモデル危機管理マニュアルはありますが、それぞれの事業者は
立地や事業内容、施設の構造、従業員の勤務体制などが異なりますので、そ
れに合わせて個別の計画やマニュアルを作らないと、いざという時に使えま
せん。
•56
観光危機管理に関するよくある質問
Q:避難誘導の判断を事業者がするのは難しいので、避難勧告
や避難指示が出てから避難誘導すればいいでしょうか?
A: 避難勧告や避難指示は、その自治体の首長(市町村長)が出すことになっ
ています。しかし、地震後の津波や、突然の豪雨等の場合は、避難勧告や避
難指示を出すのが間に合わない場合もあります。
ですから、発生する可能性の高い災害や危機について、どのような場合に
は避難勧告や指示、あるいは津波警報等がまだ出ていなくても、避難誘導を
開始するという判断基準を予め作っておくことが必要です。
避難誘導をしたけれども、実際には避難するほどの災害は発生しなかった
という「空振り」も起こりえますが、その場合は、基準に従って避難誘導を判断
した人の責任を問わない、ということを明文化しておくとよいでしょう。
•57
観光危機管理に関するよくある質問
Q:外国人観光客が増えてきていますが、危機・災害の発生時に
外国人を避難誘導する際に配慮すべきことはありますか?
A: ことばの通じない日本で危機や災害に遭った外国人は、日本人以上に不
安です。地震を体験するのが初めて、という人もいるでしょう。まず、何が起こ
っているか、どうしたら安全を確保できるかを、はっきりと伝えることです。
非常時ですから、きれいな英語を、正しい文章で話す必要はありません。単
語の羅列でもかまいませんから、毅然とした態度で指示にしたがって避難す
るよう伝えます。
津波の危険性も知らないかもしれません。荷物を取りに行くとか、家族をさ
がして一緒に避難するという人には、すぐに高台に逃げないと危険だ、という
ことを伝えて、手を引いてでも避難させます。
国によっては、非常時に日本と全く異なる行動をすることがあります。中国
人は、地震が来たらできるだけ早く建物の外に出るように教えられています。
日本のホテルなどは、耐震構造になっていますから、建物内の方が安全なと
ころが多くあるので、慌てて外に飛び出さないよう止めることが必要です。 •58
観光危機管理に関するよくある質問
Q:津波の避難ルートを検討する際に、留意すべきことは何です
か?
A: 消防庁より、津波避難計画のための指針が発表されています。その中で、
避難可能な距離を計算するためのガイドラインが示されています。
(1)人が歩く速度の目安
・ 一般的な速度=1.0m/秒
・ 歩行困難者・乳幼児など=0.5m/秒
(2)避難開始に必要な時間
・ 地震発生後2~5分後
(3)避難可能な距離の計算方法
・(歩行速度)×(津波到達時間-避難開始時間)=避難可能距離
出典:消防庁「市町村における津波避難計画策定指針」
•59
安全・安心な観光県青森をめざして
•60