透析患者のカルシウム・リン代謝異常について

透析患者さんの
骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)
P・Ca
きたおか薬局
北岡 仁
腎臓とは?
【腎臓】
• 左右に1つずつ
• 握りこぶし大
• 重量100~150g程度
【ネフロン】
• 糸球体と尿細管で形成
• 片方に約100万個存在
• 尿を生成する組織
ネフロンとは?
腎臓を通過する
1500L(腎血流量)の血液
から
150Lの原尿を生成
(ドラム缶約1杯)
100倍に濃縮されて
1~1.5Lが尿として
排泄される。
食塩は0.5~50gま
で1日に排泄
腎臓の働き
②水・電解質の
調整機能
①排泄機能
腎臓
③内分泌機能
④代謝機能
1.排泄機能
☆老廃物の排泄
尿素、クレアチニン、尿酸、その他尿毒素物質、薬
剤、有害物質などを排泄する。
2.水・電解質の調節機能
☆ 体内水分量の調節
☆ 電解質の濃度調節(Na,K,Ca,Mg,Pなど)
☆酸塩基平衡の調節
腎臓は体の中の酸性物質を重炭酸で中和して排泄し、血液を弱
アルカリ性に保っている。腎機能が低下すると酸性物質が蓄積し、
血液が酸性に傾く(代謝性アシドーシス)。
3.内分泌機能
☆ エリスロポエチンの産生・分泌
エリスロポエチンは、骨髄の造血幹細胞に働き、赤血球の産生を促す。エリスロポエチン
の産生が低下すると腎性貧血になる。
☆ ビタミンDの活性化
ビタミンDは肝臓と腎臓で活性化され、活性型ビタミンD₃(1,25- ジヒドロキシビタミンD₃,
カルシトリオール)となる。活性型ビタミンDにより、カルシウムの腸からの吸収や腎での再
吸収が促進され、骨を丈夫に保つことができる。
☆ レニン,プロスタグランジン,キニンの産生・分泌
レニン,プロスタグランジン,キニンは直接的あるいは間接的に腎血管の収縮や血圧を
調整するホルモンである。
☆ ホルモンの受容体(アルドステロン,抗利尿ホルモン,ナトリ
ウム利尿ペプチド,副甲状腺ホルモンなど)
アルドステロンは副腎皮質で産生され、集合管でナトリウムの再吸収を促進する。抗利尿
ホルモン(バソプレシン)は下垂体後葉から分泌されて、集合管で水再吸収を促進する。心
房性ナトリウム利尿ペプチドは心臓細胞から分泌され、集合管でナトリウムの排泄を促進
する。副甲状腺ホルモンは副甲状腺から分泌され、腎でのリン排泄、カルシウム再吸収、ビ
タミンD産生を促進する。
4.代謝機能
☆ インスリン分解・タンパク代謝
不要になったペプチドホルモン(インスリン、カルシトニン、ガ
ストリンなど)は腎臓において代謝、排泄される。糖尿病患者で
は腎機能が低下する場合があり、その場合にはインスリンが
蓄積して、低血糖を起こしやすくなる。
CKDが進行すると・・・ そして…透析へ
排泄機能
水・電解質の調
整機能
尿毒症・浮腫
アシドーシス・電解質異常
腎臓
内分泌機能
貧血・骨の脆弱
化・高血圧
代謝機能
低血糖等
透析療法の役割
透析療法とは腎臓の働きを代行する治療のひとつです
1 尿毒素を取り除く
本来なら腎臓から体外に排出される老廃物(尿毒素)を取り除きます
2 余分な水分を取り除く(限外ろ過圧)
腎臓から体外に尿として排泄されるべき水分を取り除きます
3 電解質を整える
Na,K,Ca,Pなどの血液の中のイオン(電解質)を正常域に整えます
4 血液pH(酸性とアルカリ性)の調節をする(酸塩基平衡)
血液は正常であれば弱アルカリ性ですが、血中の酸を取り除き、アルカリを透析
液から補います
透析療法では・・・
排泄機能
水・電解質の調
整機能
尿毒症・浮腫
アシドーシス・電解質異常
ダイアライザーで代行するが、本来の腎
臓と同じというわけにはいきません。
腎臓
内分泌機能
貧血・骨の脆弱
化・高血圧
代謝機能
低血糖等
長期透析の合併症
二次性副甲状腺機能亢進症
血中リン濃度の上昇、活性型ビタミンDの低下、そして血中カルシウム濃度の低下によ
りPTHの分泌を亢進します。
骨の障害
腎不全のためにビタミンDの活性化が障害され、カルシウムが吸収されにくくなる。また
血液中にリンがたまり、透析では除去しにくい。このため、骨がもろくなる。
透析アミロイドーシス
透析で十分に取り除けない物質(タンパク質の一種)がアミロイドという物質に変化し、骨
や関節に沈着する。痛み、しびれ、関節が曲がりにくいなどの症状を起こす。
動脈硬化
透析患者は動脈硬化が進みやすい。
心不全
体の水分量が透析毎に大きく変動するため、心臓に大きな負担をかけ、働きが悪くなる。
感染症・悪性腫瘍
免疫力が低下し、感染症にかかりやすい。悪性腫瘍の発生率が一般より高い。
日本透析医学会(2012)
「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」
腎臓は、ミネラルの代謝の調節に重要な役割を果たしている臓器で
すが、腎機能が低下すると、ほとんどの患者さんでミネラル代謝の異
常を生じます。
今までは腎性骨異栄養症と呼ばれ、
骨の病気として認識されてきた
ミネラル代謝異常が血管石灰化などを介し
て、心血管のイベント発生率や死亡率の大
きな要因
全身疾患としての「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常」
CKD‐MBDという新しい概念が提唱される
CKD‐MBD:Mineral and Bone Disorder
(ミネラル骨代謝異常)
☆ カルシウム(Ca)、リン(P)、副甲状腺ホルモ
ン(PTH)代謝異常、ビタミンD代謝異常
☆ 骨代謝異常
☆ 血管、軟部組織の石灰化
上記の各種異常が組み合わ
さった全身疾患で、生命予後に
も影響する
リンは体内でどんな働きをしているでしょう
リンは、骨や歯、細胞、遺伝子などの成分です。
また体を動かすときや細胞を働かせるときのエネルギーを作り出しています。
体内のリンの量は、腎臓での排泄と腸管からの吸収によって調節されています。口から
入ったリンは、腸管から約80%吸収され、便中に約350mg、尿中に約650mg排泄されること
で、ちょうどよい量が保たれています。
体内のリンの出納
骨
口から入る
1,000mg
PTH
腸管から吸収
骨から溶け出る
細胞外液
250mg
骨に取り込まれる
800mg
500mg
腸管に排泄
腸管
150mg
250mg
再吸収
5,350mg
ろ過
6,000mg
筋肉などの細胞内
腎臓
80mg
尿として排出
650mg
便として排出
350mg
透析では1回1000mg程度除去される
つまり1日400mgしか除去されない
石村栄治,CLINICAL CALCIUM 12(10),9-17,2002(改変)
カルシウムは体内でどんな働きをしているでしょう
カルシウムは、99%が骨や歯の成分として存在しています。
残りの1%は血液や細胞内に存在し、心臓の機能を調節したり、
筋肉の収縮や弛緩にかかわっています。
体内のカルシウムの量は、骨、腸管、腎臓における出納によって調節されます。通常、1日
600mgのカルシウムが摂取され、便中に約500mg、尿中に約100mg排泄されることで、ちょ
うどよい量が保たれています。
体内のカルシウムの出納
骨
口から入る
600mg
活性型ビタミンD3
PTH
骨から溶け出る
腸管から吸収
400~500mg
細胞外液
骨に取り込まれる
1,000mg
腸管
300mg
腸管に排泄
400~500mg
200mg
再吸収
7,900mg
ろ過
8,000mg
腎臓
便として排出
500mg
尿として排出
100mg
(参考)深川雅史(編集),新しい透析骨症,27-31,161-166,2003
副甲状腺ホルモン(PTH)とは?
Ca
血中へのCa遊離
促進
頸部甲状腺の両葉各々の上下に2対、合計4個
米粒大の大きさ
血流の多い暗褐色の組織
生き物が陸上で生活するようになって、発達した臓器
だと考えられている
Ca再吸収亢進
P排泄亢進
P
PTHの分泌
副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌は、リン濃度・カルシ
ウム濃度・ビタミンD(VD)濃度によって調整されている
P
Ca
副甲状腺
VD
PTH
リン濃度が上昇すると・・・
副甲状腺は、リン濃度が高いことを感知して、PTHを
たくさん分泌するようになる
P
P
P
P
P
P
副甲状腺
PTH
PTH
PTH
PTH
リン濃度とPTH分泌
リン濃度と副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌には、次
の関係がある
☆ P濃度が上昇 ⇒ PTHの分泌が促進され
る
☆ P濃度が低下 ⇒ PTHの分泌が抑制され
る
カルシウム濃度が上昇すると・・・
副甲状腺は、カルシウム濃度が高いことを感知して、PTHの
分泌を低下させるようになる
Ca
Ca感知性受容体
CaSR
Ca
Ca
副甲状腺
Ca
PTH
PTH
Ca濃度とPTH分泌
カルシウム濃度と副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌
には、次の関係がある
☆ Ca濃度が上昇 ⇒ PTHの分泌が抑制される
☆ Ca濃度が低下 ⇒ PTHの分泌が促進する
ビタミンD濃度が上昇すると・・・
副甲状腺は、ビタミンD(VD)濃度が高いことを感知して、
PTHの分泌を低下させる
VD VD VD
ビタミンD受容体
VDR
VD
PTH
副甲状腺
PTH
ビタミンD(VD)濃度とPTH分泌
ビタミンD(VD)濃度と副甲状腺ホルモン(PTH)の分
泌には、次の関係がある
☆ VD濃度が上昇 ⇒ PTHの分泌が抑制される
☆ VD濃度が低下 ⇒ PTHの分泌が促進する
PTH分泌への影響のまとめ
☆ リン濃度
P濃度が上昇 ⇒ PTH分泌は上昇
P濃度が低下 ⇒ PTH分泌は低下
☆ カルシウム濃度
Ca濃度が上昇 ⇒ PTH分泌は低下
Ca濃度が低下 ⇒ PTH分泌は上昇
☆ ビタミンD濃度
VD濃度が上昇 ⇒ PTH分泌は低下
VD濃度が低下 ⇒ PTH分泌は上昇
CKD‐MBDの発症機序
血中リン
FGF23
副甲状腺
CaR
P
T
H
分
泌
亢
進
(
慢
性
腎
不
全
腎
機
能
低
下
活性型
ビタミンD
)
腸管
Ca吸収
副甲状腺
VDR
血中Ca
副
甲
状
腺
過
形
成
二
次
性
副
甲
状
腺
機
能
亢
進
症
線維性骨炎
骨・関節痛
骨折
異所性石灰化
皮膚掻痒症
貧血
神経症状
QOL低下
生命予後
CKD‐MBDの主な症状
骨・関節痛
骨折
イライラ感
異所性石灰沈着
かゆみ
正常な血管
石灰化して詰まり
そうな血管
CKD‐MBDの画像所見
Salt and pepper像
Rugger jersey像
中節骨
基節骨
骨膜下吸収像
指の異所性石灰化
血管の石灰化
著しく石灰化している
細くなっている
冠状動脈の血管造影
石灰化(動脈硬化)
した血管
冠状動脈の単純CT
71歳の透析患者さん
正常な血管
75歳の腎機能が正常な人
わが国における慢性透析患者の現況
透析患者の死亡原因(平成23年)
第1位 心不全(26.7%)
第2位 感染症(20.3%)
第3位 悪性腫瘍(9.1%)
第4位 脳血管障害(7.6%)
第5位 心筋梗塞(4.6%)
CVD
CKD‐MBDの治療
透析患者の血清P、Ca値の基準
管理目標値 (CKD-MBD診療ガイドライン)
血清P値:3.5-6.0 mg/dL
血清Ca値:8.4-10.0 mg/dL
Intact PTH値:60-240 pg/mL
生命予後が最良となる範囲で、
かつ治療の実現性なども考慮
して設定された値
管理目標の優先順位
P > Ca > PTH
血清P濃度が高いほど、また
血清Ca濃度が高いほど、総
死亡リスクが高くなります。
CKD‐MBDの対策
1 食事療法 P制限食
.
2 薬物療法
活性型ビタミンD製剤(経口、静注)
.
リン吸着薬
・Ca含有リン吸着薬(炭酸Ca)
・Ca、Al、Mg非含有リン吸着薬
-セベラマー塩酸塩
-炭酸ランタン
・シナカルセト
3 副甲状腺インターベンション(PEIT、PTⅹ)
.
4 透析療法の工夫
.
薬物療法(治療薬)
活性型ビタミンD製剤
アルファロール、ロカルトロール、オキサロール、ホーネル等
Ca含有リン吸着薬
炭酸Ca(カルタン)、酢酸Ca
Ca非含有リン吸着薬
セベラマー塩酸塩(レナジェル、フォスブロック)
炭酸ランタン(ホスレノール)
Al製剤
Ca受容体作動薬
シナカルセト塩酸塩(レナジェ
ル)
活性型ビタミンD製剤
間接的作用
V
D
腸管から
腎尿細管から
骨から
Ca吸収
Ca再吸収
Ca放出
PTH分泌
の抑制
直接作用
V
D
副甲状腺へ直接作用
PTH合成
の抑制
ビタミンD製剤の投与意義
主な作用
☆ PTH分泌抑制
☆ 副甲状腺細胞の増殖抑制
☆ ミネラルの是正(Ca、P↑)
その他(多面的作用)
☆ レニン・アンジオテンシン系抑制、
心機能改善作用、抗動脈硬化作用、
抗炎症作用、免疫調整作用、抗腫
瘍作用、インスリン感受性改善作用
など
ビタミンD製剤の問題点
☆ 高Ca血症
☆ 高P血症
☆ PTHの過剰抑制
☆ 異所性石灰化
☆ 高Ca・高P血症ではPTH抑制作用
が、減弱する
リン低下薬
① P吸着薬(炭酸カルシウム、塩酸セベラマー、
炭酸ランタン)
もっとも一般的
② P吸収阻害薬
腸管のナトリウム/P共輸送体を阻害する
現在治験中
③ シナカルセト塩酸塩
PTHの抑制が主な作用
P吸着薬
Pと結合し、Pの吸収を阻害して、血中P濃度を低下する
陽イオンであるP吸着薬と陰イオンであるPとの化学的な結
合により不溶性の複合体を形成することと、吸着薬表面に
物理的にPが吸着することによりPの吸収が阻害される
化学反応(Pとの結合しやすさ)
アルミニウム(Al)イオン>水素イオン>Caイオン>Mgイオン
最も最初に普及したP吸着薬は、水酸化アルミニウムゲル
P吸着力強力
PHに依存しない
科学的にPと結合し、不溶性のリン酸アルミニウムとなる
Al蓄積によるAl骨症、Al脳症、貧血が問題となり、透析患者では禁忌に
(1992)
炭酸カルシウム
投与法 食直後に服用
投与量上限 3g/日(推奨) Caの過剰負荷を避ける
特徴 安価であり、基本となるP吸着薬
炭酸Caは投与量に応じて高Ca血症が増加する
炭酸Caは胃液のPHの影響を受けるため、胃酸分泌抑制薬や胃切後に
は効果が減弱する。
多剤に比べて、消化器系副作用が少ない
最大の副作用は高Ca血症。特にビタミンDと併用するときは高Ca血症が
起こりやすい。血管石灰化のリスクとなる。
塩酸セベラマー
投与法 食直前に服用
投与量上限 9g/日
特徴 CaもAlも含まない陽イオンポリマーで腸管から吸収されない
PHに依存しないP吸着作用
血管石灰化の進展を抑制する効果が期待される
LDLコレステロール低下作用がある
最大の副作用は便秘。下剤との併用や漸増方法が有効。腸閉塞、腸管
穿孔注意。
代謝性アシドーシスを起こしやすい。Pと吸着すると塩素を放出。
炭酸ランタン
投与法 食直後に、噛み砕いて服用
投与量上限 2.250mg/日
特徴 CaもAlも含まず、ランタンとPの不溶性複合体を形成
PHに依存しないP吸着作用
炭酸Caや塩酸セベラマーよりも強いP吸着作用
血管石灰化の進展を抑制する効果が期待される
吐き気、嘔吐などの消化器症状がある
わずかに吸収され、骨やその他の組織への蓄積の可能性があり、長期
連用による蓄積に関するエビデンスが十分とはいえない
高価である
シナカルセト塩酸塩
☆ Ca受容体に作用して、高Ca状態と擬似的に
認識させる薬剤
☆ 主として副甲状腺に発現したCa受容体に作
用してPTH産生、分泌を抑制する
☆ Ca²⁺の存在下でCa²⁺と異なる部位に結合し
てallostericに反応を増強させる
血液中にカルシウムが
たくさんあると
血液中のカルシウムが
少ないと
レグパラ®は
Ca受容体
副甲状腺
PTHの分泌が
弱くなる
:レグパラ®
PTHがたくさん
分泌され骨を溶かし、
血液中にカルシウムを
補おうとする
血液中にカルシウムが
たくさんあるときと
同じようにPTHの
分泌が弱くなる
シナカルセト塩酸塩のミネラル代謝改善効果
PTHのみならず、Ca、Pも低下させる
血清iPTH値に関する成績
(pg/mL)
1,200
プラセボ群(n=71)
544.0
11
800
600
400
200
241.0
552.0
0
0
2
4
6
8
観察期間
累
積
達
成
率
血清カルシウム値、血清リン値に関する成績
(mg/dL)
606.5
1,000
血
清
i
P
T
H
値
レグパラ® 群(n=72)
血清iPTH値が14週
間で606.5pg/mL
から241pg/mLに
下がりました。
10
12
14 投与 (週)
終了時
補
正
血
血清
清カ
リル
ンシ
値ウ
ム
値
と
8
25
0
0
4
8
12 16 20 24 28 32 36 40 44 48 52 (週)
観察期間
(n=199)
上図 : Fukagawa M et al, Nephrol Dial Transplant 23, 328-335, 2008
下図 : Shigematsu T et al, Am J Nephrol 29(3), 230-236, 2009
***
6.35
5.73
6
***
5
3
血清iPTH値が250pg/mL以下
になった患者さんの割合は、
52週間の累積で90.3%でした。
9.53
7
100
50
10.01
9
4
90.3%
血清リン値
10
(%)
75
補正血清カルシウム値
Mean±S.D.
0
10
20
30
観察期間
40
***
50
投与 (週)
終了時
:p<0.001(vs 投与開始時)
(n=199)
Shigematsu T et al, Am J Nephrol 29(3), 230-236, 2009
血清カルシウム値、血清リン値が
投与開始から1週間で低下し、そ
の後安定した値を維持しました。
シナカルセト塩酸塩への期待
☆ 使用が困難だったビタミンD製剤
の使用が可能に
☆ 血管石灰化の抑制
☆ インターベンションの代わりになる
(内科的副甲状腺切除術)
シナカルセト塩酸塩の問題点
☆ 血液検査の結果が服用時間により影響する
PTH濃度 4〜8時間で最低となる
Ca濃度
8〜12時間で最低となる
☆ 消化器症状(吐き気、嘔吐)を高頻度に合併
イレウス、電解質異常、低Ca血症、不整脈
☆ 低カルシウム血症
治療薬の特徴
活性型ビタミンD製剤
Ca含有リン吸着薬
作用機序
Ca
P
問題点
ビタミンDの補給
↑
↑
異所性石灰化
↑
↓
異所性石灰化
Caの補給
食物中のPの吸
着
Ca非含有リン吸着
薬
食物中のPの吸
着
→
↓
消化器症状
高価
Al製剤
食物中のPの吸
着
→
↓↓
Al骨症・脳症
Ca受容体作動薬
Ca受容体に結合
PTHを抑制
↓
↓
消化器症状
高価
P、Caの治療管理法
7
炭酸Ca
高Ca血症の要因検索
透析液Ca濃度の変更を検討
Ca非含有P吸着剤
活性型ビタミンD
10.0
8
Ca非含有P吸着剤
血清補正Ca値
(mg/dL)
炭酸Ca
活性型ビタミンD
8.4
透析液Ca濃度
の変更を検討
Ca非含有P吸着剤
炭酸Caの食間投与
活性型ビタミンD
シナカルセト
3.5
9
4
炭酸Ca
Ca非含有P吸着剤
へ切り替え
活性型ビタミンD
シナカルセト
5
P.Ca
管理目標値
Ca非含有P吸着剤
2
炭酸Ca
活性型ビタミンD
シナカルセト
3
6
炭酸Ca
1
炭酸Ca
Ca非含有P吸着剤
活性型ビタミンD
シナカルセト
炭酸Ca
Ca非含有P吸着剤
シナカルセト
炭酸Caの食間投与
活性型ビタミンD
シナカルセト
6.0
血清P値(mg/dL)
食事摂取量および
栄養状態の評価
十分な透析量の確保
食事指導(P制限)
1.高P・高Ca血症の場合
炭酸Caの減量/中止、活性型ビタミンD製剤の減量/中止、Ca非含有P
吸着薬の開始/増量、高PTH血症を伴う場合にはシナカルセトの開始/増
量が選択肢にあがる。
2.高P・正Ca血症の場合
Ca非含有P吸着、炭酸Caの開始/増量や、活性型ビタミンD製剤の減量/
中止を検討する。血清PTH濃度が高値の場合には、シナカルセト塩酸塩の
開始増量を考慮する。
3.高P・低Ca血症の場合
炭酸Ca、Ca 非含有P吸着薬の開始/増量を検討する。血清PTH濃度が低値
の場合には、シナカルセト塩酸塩の減量/中止を考慮する。そのほか、P吸
着薬を確実に服用しているかを確認する。
4.正P・高Ca血症の場合
炭酸Ca、活性型ビタミンD製剤の減量/中止や、炭酸CaからCa非含有P吸着
薬へに切り替えを検討する。血清PTH濃度が高値の場合には、シナカルセト
塩酸塩の開始を検討する。
5.正P・正Ca血症の場合
いわいる「ストライクゾーン」にあり、現行の治療を継続するとともに、
PTH値の適正化を図る。
6.正P・低Ca血症の場合
炭酸Ca、活性型ビタミンD製剤の開始/増量や炭酸Caの食間投与を検討
する。炭酸Caを食間に投与すると、食直後の投与に比べて血清Ca上昇
作用が大きくなる。血清PTH濃度が低値の場合には、シナカルセト塩酸塩
の減量中止を考慮する。
7.低P・高Ca血症の場合
炭酸Ca、Ca非含有P吸着薬、活性型ビタミンD製剤の減量/中止を検
討する
8.低P・正Ca血症の場合
Ca非含有P吸着薬、炭酸Caの減量/中止や活性型ビタミンD製剤の開
始/増量を検討する。
9.低P・低Ca血症の場合
Ca非含有P吸着薬の減量中止や炭酸Caの食間投与、または活性型
ビタミンD製剤の開始増量を検討する。血清PTH濃度が低値の場合に
は、シナカルセト塩酸塩の減量/中止を考慮する。
P、Ca値が目標値を逸脱した場合
10.0
目標
ゾーン
血清補正Ca値
(mg/dL)
8.4
3.5
6.0
血清P値(mg/dL)
P値だけが高い場合の治療
7
炭酸Ca
高Ca血症の要因検索
透析液Ca濃度の変更を検討
Ca非含有P吸着剤
活性型ビタミンD
10.0
8
Ca非含有P吸着剤
血清補正Ca値
(mg/dL)
炭酸Ca
活性型ビタミンD
8.4
透析液Ca濃度
の変更を検討
Ca非含有P吸着剤
炭酸Caの食間投与
活性型ビタミンD
シナカルセト
3.5
9
4
炭酸Ca
Ca非含有P吸着剤
へ切り替え
活性型ビタミンD
シナカルセト
5
P.Ca
管理目標値
Ca非含有P吸着剤
炭酸Ca
活性型ビタミンD
シナカルセト
3
6
炭酸Ca
炭酸Ca
Ca非含有P吸着剤
シナカルセト
炭酸Caの食間投与
活性型ビタミンD
シナカルセト
6.0
血清P値(mg/dL)
食事摂取量および
栄養状態の評価
1
炭酸Ca
Ca非含有P吸着剤
活性型ビタミンD
シナカルセト
十分な透析量の確保
食事指導(P制限)
2
Ca値だけが低い場合
7
炭酸Ca
高Ca血症の要因検索
透析液Ca濃度の変更を検討
Ca非含有P吸着剤
活性型ビタミンD
10.0
8
Ca非含有P吸着剤
血清補正Ca値
(mg/dL)
炭酸Ca
活性型ビタミンD
8.4
透析液Ca濃度
の変更を検討
Ca非含有P吸着剤
炭酸Caの食間投与
活性型ビタミンD
シナカルセト
3.5
9
4
炭酸Ca
Ca非含有P吸着剤
へ切り替え
活性型ビタミンD
シナカルセト
5
P.Ca
管理目標値
Ca非含有P吸着剤
炭酸Ca
活性型ビタミンD
シナカルセト
3
6
炭酸Ca
炭酸Ca
Ca非含有P吸着剤
シナカルセト
炭酸Caの食間投与
活性型ビタミンD
シナカルセト
6.0
血清P値(mg/dL)
食事摂取量および
栄養状態の評価
1
炭酸Ca
Ca非含有P吸着剤
活性型ビタミンD
シナカルセト
十分な透析量の確保
食事指導(P制限)
2
内科的治療に抵抗する
二次性副甲状腺機能亢進症
☆ 内科治療(活性型ビタミンD製剤、各種リン吸着薬、
透析療法、食事療法)にも関わらずPTHが高値を持続
☆ 内科的治療により高P、高Ca血症が生
じて治療の継続が困難
*あくまでも内科治療の目的は軽度の副甲状腺機能亢進症を重
篤化させないことであり、重症化してしまった副甲状腺機能亢進症
への対応は基本的に副甲状腺インターベンション
副甲状腺インターベンションの適応
適応 内科的治療に抵抗する
☆ 高P血症
☆ 高Ca血症
☆ 高PTH血症(intact PTH 500pg/ml 以上)
ほか、副甲状腺のサイズ(500㎣以上または直径1㎝以
上)
副甲状腺インターベンションの目的
目的
☆ PTH分泌の低下
☆ 血清P、Ca値の管理を改善
☆ 自覚症状の改善
☆ 高回転型骨病変の改善
☆ 血管石灰化の進行抑制
ほか、貧血、高血圧、心機能改善
多
面
的
作
用
副甲状腺インターベンション
副甲状腺摘出術(PTx)
亜全摘出術
全摘出後前腕筋肉内自家移植術
全摘出術
経皮的エタノール注入療法(PEIT)
腫大副甲状腺が穿刺可能な部位に存
在する場合に期待
PEITの適応は、原則として
腫大腺が1腺のみの場合
副甲状腺摘出術(PTx)
3 個以上摘出した場合には手術のあ
と逆に副甲状腺のホルモンが足りなく
なってしまうことが考えられますので
摘出した副甲状腺を細かく切って適当
な量を腕の筋肉のなかに埋めておく
手術を追加することがあります(副甲
状腺の自家移植手術)
経皮的エタノール注入療法(PEIT)
腫大した副甲状腺に、超音波下で
エタノールを注入し壊死させます
PTxに比べて侵襲が少ない
腫大した腺のみを選択的に破壊できる
副甲状腺インターベンションの問題点
副甲状腺PEIT
☆ 再発により繰り返し施行する必要がある
☆ 2腺以上の腫大例では効果不十分となる可能性があ
る
☆ エタノールの周囲組織への浸潤による合併症
(疼痛、反回神経麻痺(声帯麻痺)、嗄声など)
外科的手術PTx
☆ 自家移植副甲状腺の増殖による再発
☆ 心機能に問題がある例や全身麻酔が不可能例で
は実施できない
まとめ
CKD-MBD診療ガイドラインは、生命予後を重視したガ
イドライン
CKD-MBDはカルシウム・リン代謝と骨病変及び血管石
灰化を含め、全身疾患としてとらえることが重要
CKD‐MBDのおいてはまず、血清リン、カルシウム、PTHを
管理することが一番大切
年齢、性別、患者の生活状況、価値観、性格、合
併症、透析歴、あとどれくらい透析生活が続く見込
みか?など変数はいくらでもある。