授与機関名 順天堂大学 学位記番号 乙第 2266 号 高尿酸血症を含めた慢性腎臓病 羽二生 知美(はにう Chronic Kidney Disease (CKD)の危険因子の横断的検討 ともみ) 博士(医学) 論文審査結果の要旨 本論文は、慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease; CKD)と近年、注目を集めている高尿酸 血症との関連について人間ドック受診者の大規模な集団を対象とした横断研究である。 生活習慣病の増加、高齢化などにより、CKD は急増しており、我が国で eGFR (estimated glomerular filtration rate:推算糸球体濾過量)60 mL/min/1.73 ㎡未満の割合は成人の約 13%にあたる 1330 万人と推定されている。また、 2010 年の維持透析患者数は約 30 万人で、 15 年前の約 2 倍である。 CKD の危険因子について尿酸との関連を検討した研究はいまだ限 られているが、本研究は CKD のスクリーニングとしても優れる人間ドックに注目して、従 来の CKD の危険因子に血清尿酸値などを含めた CKD の関連要因を検討した精度の高い研究 である。 2007 年 1~12 月に都内 Y 総合健診センターにて人間ドックを受診した 30~59 歳の 9,499 名のうち、腎疾患の既往現病歴をもつ 122 名を除外した 9,377 名{男性 6,144 名(65.5%)、 女性 3,233 名(34.5%)}を分析対象とし、順天堂大学倫理委員会の承認を得て実施した。 平均年齢は男性 46.0±7.7 歳, 女性 45.3±7.8 歳であった。多変量解析で男性では肥満(Odd Ratio (OR)=1.22)、高血圧症(OR=2.01) 、高尿酸血症(OR=1.72)、糖尿病( OR=1.69)、脂 質異常症( OR=1.24)、間食あり( OR=1.33)、女性では高血圧症(OR= 1.74)、高尿酸血症 (OR=2.94)、欠食(OR=1.44)が CKD の危険因子であった。男女ともに血清尿酸値と CKD の有病率に正の関連を認めた。 近年、CKD の危険因子に関する多くの研究が報告されている。高尿酸血症と CKD との関連 については、高尿酸血症が男性で CKD のリスク要因となるとの報告があるが、対象者数が 少なく男性に限られるなど、限界のある先行研究が多い。女性では高尿酸血症と CKD の関 連を示す先行研究に乏しく、本研究は人間ドック受診者を対象とした大規模な横断研究であ り、女性においても高尿酸血症が CKD の独立した危険因子であることをはじめて明らかに した臨床的に意義のある論文である。 よって、本論文は博士(医学)の学位を授与するに値するものと判定した。
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