不確実で非定常な水産資源の フィードバック管理 • 不確実性 – 最適値(MSY)が不明 • 非定常性 – 毎年同じ漁獲量では破綻する →資源評価に基づく漁獲量変更 00-9-8 1 現状維持の漁獲量 • 自然増加率=漁獲量/資源量 • 資源量がわからないと、現状を 維持する漁獲量もわからない • 入口管理=漁獲圧調整 • 出口管理=国連海洋法(TAC) 00-9-8 2 密度効果 • 漁獲量一定(出口管理) dN N r 1 N C dt K • 漁獲努力一定(入口管理) dN N r 1 f N dt K 00-9-8 3 漁獲量一定は危ない dN N r 1 N C dt K 00-9-8 4 誤りに気付くのが遅すぎる 00-9-8 5 漁獲率一定の方がより安全 生 産 量 dN N r 1 f N dt K 資源量 00-9-8 6 資源管理基準と漁獲制御ルール (平成12年度版) 資源解析セミナー 2000/09/12(Tue) 河合裕朗(資源解析M2) 松田加筆 00-9-8 7 「海洋生物資源の保存および管理に関する法 律」 1.漁業法 2.水産資源保護法 ・・・に加え (法的根拠は国連海洋法条約?) 漁獲量の総量に着目した漁業管理を行う TAC制 00-9-8 8 ABC(生物学的許容漁獲量) の算定目標 資源の状態に基づき,MSYを 達成できる水準以上に資源を 維持・回復させること 持続可能性が不明確 00-9-8 9 ABCの決め方 F/Fmsy 漁 獲 圧 Overfishing No Overfishing Flimit(Fmsy ) (1-a) M Ftarget(Flimit×a) a:安全率,a≦1 0 00-9-8 (1-M) 資源量 1.0 B/Bmsy 10 逆補償では歯止めが心配 生 産 量 ・ 漁 獲 量 dN N 2 r 1 N fN dt K 資源量 00-9-8 11 ☆資源管理基準☆ ・出来るだけ再生産情報(S-R関係),齢構成 を考慮した国際的にも広く合意されているモ デルを適用 ・従来通り,漁獲率一定方策を基本 (漁獲対象が成魚かつSSB,新規加入など正確にわかる 資源については産卵資源量一定方策でも構わない) 歯止めが効かない Fから漁獲量の決め方が曖昧 00-9-8 12 ☆不確実性への配慮☆ 1.ABClimitは乱獲の閾値であり, 2.乱獲行為を避けるため,幾分低めの値を設定すべき 資源回復の閾値が無くなった? 安全率を見込んだABCtargetを併せて提示する 00-9-8 13 安全率の決め方 資源評価や管理の実行上の不確かさ,資源の 回復能力に応じて決定 SPR解析が可能な資源について 安全率の大きさの根拠不明 ・Fmsyとそれより5%高いSPR水準に対応するFの比を用いる (およそ0.7~0.8の範囲にあるらしい) それ以外 ・専門家の判断,経験に基づいて決める.標準値は,0.8 00-9-8 14 ☆資源回復への配慮☆ MSY水準以下にある資源については,その程度に 応じて,ABCおよびFの値を直線的に引き下げる 【手順】 1.現在の資源量BとMSY水準であるBmsyとの比を見る. 2.BがBmsyの(1-M)倍を下回っていたら,Fを引き下げる 年度を区切った回復目標が必要 00-9-8 15 ☆大規模な資源変動を示す資源への対応☆ 現在のフェーズ(水準,状態)の資源状態,生 物学的特性に基づいて,ABCを算定する ☆栽培対象種への対応☆ 放流魚と天然魚を含めた資源評価によるABC の算出 00-9-8 16 管理基準値と漁獲制御ルール 利用可能な情報によって以下のルールに分類,適用する. 1) B,Bmsy,Fmsy,F30%,F35%が得られる 2) 年々のB,SSB,Rが得られる 3A) B,Bmsy,Fmsyが得られる 3B) B,Bmsy,Fmsy,SYBが得られる 4) 成長・成熟・加入のスケジュールがわかる 5) 年々のB,F,Mが利用できる 6) 近年の漁獲量のみ 00-9-8 17 1) B,Bmsy,Fmsy,F30%,F35%が得られ る ●資源量が(MSY水準×(1-M))以上の場合 Flimit=Fmsy Ftarget=Fmsy×(F35%/F30%) ●資源量が(MSY水準×(1-M))未満の場合 Flimit=Fmsy×B/(Bmsy×(1-M)) Ftarget=Fmsy×(F35%/F30%)×B/(Bmsy×(1-M)) ※30%,35%などは資源状態に応じて適宜変更可 00-9-8 18 1)適用上の留意点 1.可能ならば別の方法によるFmsy,Bmsyのチェック 2.プロダクションモデルでは,fmsy,CPUEmsy,を目 安とするFmsy,Bmsyのチェックも行うのが望ましい. なぜM大なら資源回復力大か? なぜ高回復力なら減ってもよいか? なぜ(1-M)なのか? 00-9-8 19 2) 年々のB,SSB,Rが得られる ●資源量が(MSY水準×(1-M))以上の場合 Flimit=Faveg Ftarget=Faveg×(F35%/F30%) ●資源量が(MSY水準×(1-M))未満の場合 Flimit=Faveg×B/(Baveg×(1-M)) Ftarget=Faveg×(F35%/F30%)×B/(Baveg×(1-M)) ※30%,35%などは資源状態に応じて適宜変更可 00-9-8 20 2)を適用上の留意点その1 観測されている資源の範囲が十分に広い場合 ・RavegとBavegをそれぞれ求める 又は, ・Raveg近傍でRに対するBの適当な関係を当て はめて,Bavegを求め,Baveg/Ravegに対応する Fx%をFavegとしてよい. 00-9-8 21 2)を適用上の留意点その2 資源の範囲が高水準あるいは低水準に偏っている おそれがある場合 Favegとして,F30~60%を用い,Ravegに対応する SPR水準をかけてBavegを推定する. ※変動の激しい資源では大きめのSPR水準に設定 00-9-8 22 2)を適用上の留意点その3 観測されている資源量がMSY水準の近傍で変動し ていると推察される場合 ・Fmedに対応するSPR水準を採用してもよい ・この場合,Fmed=Faveg 00-9-8 23 3A) B,Bmsy,Fmsyが得られる ●資源量が(MSY水準×0.5)以上の場合 Flimit=Fmsy Ftarget=Fmsy×0.8 ●資源量が(MSY水準×0.5)未満の場合 Flimit=Fmsy×B/(Bmsy×0.5) Ftarget=Fmsy×0.8×B/(Bmsy×0.5) 00-9-8 24 3B) B,Bmsy,Fmsy,SYBが得られる ●資源量がMSY水準以上の時 ABClimit=MSY SYB ABCtarget=0.8×MSY ●資源量がMSY水準未満の時 B ABClimit=SYB ABCtarget=0.8×SYB 00-9-8 25 4)成長・成熟・加入のスケジュールがわかる (=SPR解析,YPR解析が可能な場合) Flimit=F30%,Fmax Ftarget=F35%,F0.1 ※30%,35%などは資源状態に応じて適宜変更可 4)を適用上の留意点 FmaxがF0.1やF30%~35%に比べて過大な場合は, F0.1を採用する SPR解析を優先させねば加入乱獲 00-9-8 26 5) 年々のB,F,Mが利用できる Flimit=M Ftarget=a×M (a:0.5~0.8,1/2,2/3) ※ aは資源状態によって適宜選択 5)を適用上の留意点 aの値は,変動の大きい資源,資源水準が低位な ものは相対的に小さい値を使用する. 00-9-8 27 6) 近年の漁獲量のみ利用できる ●資源状態:中位で横ばい,増加か高位にあるとき ABClimit=ABCtarget=過去3年間の平均漁獲量 ●資源状態:中位・減少か低位にあるとき ABClimit=ABCtarget=過去3年間の平均漁獲量×0.8 1割ずつしか漁獲量が減らない 00-9-8 28 予防措置ではない • 漁獲量(+資源の増減)が既知 – 増加・維持:近年の平均漁獲量 – 減少・低迷時:過去3年間の平 均漁獲量の8割(毎年1割減) • IWC改訂管理方式 – 新たな資源評価ができないと、 毎年漁獲量を2割減 00-9-8 29 日本のABC新規則の問題点 • 半世紀前のMSY理論 – 数値目標なき資源回復計画 • フィードバック思想がない – 減っても歯止めが効かない • 予防措置でない – ちゃんと調べなければ現状追認 00-9-8 30 疎まれる資源研究 • よく調べるほど、厳しいABC • 資源研究者が調べなければ現状維持 • 外圧も、環境団体もいない • 春はまだ来なかった • TAC制度導入時の無念を忘れたか! • 冬の時代には、頑張るしかない! 00-9-8 31 ◎ABCを公表する • TACをABCにあわせるべき • 事前に意見を求めるべき • 複雑な解析より、明快な歯 止めを! 00-9-8 32 個体群管理に必要なもの • 生命表解析 – 成熟齢、産卵数、親魚死亡率 • 相対個体数の増減 • 絶対資源量 – 漁業以外の情報からの資源量推 定が必要 00-9-8 33 環境影響評価法基本的事項 http://www.eic.or.jp/eanet/assess/kihon/kokuji.html • 予測の不確実性の検討 –科学的知見の限界に伴う予測 の不確実性について、その程 度及びそれに伴う環境への影 響の重大性に応じて整理され るものとすること。 00-9-8 34 事後調査(monitoring)の重要性 環境影響評価法基本的事項 http://www.eic.or.jp/eanet/assess/kihon/kokuji.html • 予測の不確実性が大きい場合、効果に係る知 見が不十分な環境保全措置を講ずる場合、 • 環境への影響の重大性に応じ、工事中及び供 用後の環境の状態等を把握するための調査 (事後調査)の必要性を検討し、 • 事後調査の項目及び手法の内容、影響が著し かった場合の対応の方針、結果の公表を行う 00-9-8 35 広く市民に意見を求める • 環境影響評価法 – 方法書と準備書で市民の意見 • 鳥獣保護事業 – 特定計画策定前に市民の意見 • Public Commentなければ、世界 に通用しない 00-9-8 36 100年後までのリスク評価 • 不確実性と非定常性を考慮し、 • 管理に失敗するリスクを評価 – 資源が崩壊するリスク – 数値目標を達成できないリスク – リスクはゼロではない! 00-9-8 37 順応的管理(adaptive management) http://www.for.gov.bc.ca/hfp/amhome/AMDEFS.HTM • 説明責任(accountability) – 新事実/過去の過ちがわかれば改める • 順応力(adaptability) – 事態が変わったら方策を変える – その変え方を決めておく • 環境監視(monitoring)の継続 • 研究者の持続的関与 00-9-8 38
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