地域通貨的価値を利用した 価値の交換システム 神奈川大学大学院 工学研究科電気電子情報工学専攻 木下研究室 田島 佳明 1 法定通貨 :人物 :情報やサービスの流れ(法定通貨利用) 特定のコミュニ ティの価値が反 映されずうまく流 通しない・・・・ 2 :人物 地域通貨 :情報やサービスの流れ(法定通貨利用) :情報やサービスの流れ(地域通貨利用) :コミュニティ 価値観が異なる と流通しない 可能性がある 3 :人物 多様な価値交換 :情報やサービスの流れ(法定通貨利用) :情報やサービスの流れ(地域通貨利用) :情報やサービスの流れ(多様な価値利用) :コミュニティ 流通し 活性化する。 4 研究背景 現在、ほとんどのものが法定通貨で交換されて いる。 地域復興や発展を目的に法定通貨と同等、あ るいは全く異なる価値があるものとして、特定の コミュニティ内で地域通貨が利用されている。 お金で解決するほどではないようなことは地 域通貨のように価値を交換することで補うこと ができる。 5 研究背景 人やコミュニティごとに異なる価値観を持つ コミュニティ内や、コミュニティ間で多様な価値 観を保ちつつ、価値と情報リソースを交換する ことが望ましい。 多様な価値観の交換を考慮することで、より情報 リソースやサービスが流通できるのではないか。 6 研究目的 情報リソースやサービスを円滑に循環させること. 地域通貨的に流通させ,さらに価値も含めて多元的に流 通させること. コミュニティ内やコミュニティ間で価値の交換を増やすこと により,サービスのやり取りを増やして活性化させること. 7 研究内容 異なる価値観を持つ二者間での価値交換 時間の都合上割愛 コミュニティ間で価値の交換を行う方法 コミュティ内で各ユーザにおける効用が満足するような モデルを提案 8 どのような価値交換モデルを目指すか コミュニティ内で価値の交換をした際,誰一人不満がないような利益 (利得)の分配(配分)を目指す. ゲーム理論の市場ゲームのコアの理論が使えるのではないか? 市場ゲームを多様な価値観を反映させたうえで拡張する. 9 本研究で扱うゲーム ゲーム理論は非協力ゲームと協力ゲームに大別できる 協力ゲーム 提携型ゲーム 市場ゲーム 本研究では,市場 ゲームを用いる 凸ゲーム ビッグボスゲーム 10 ゲーム理論 戦略:各プレイヤーの持つ行動計画 提携:協力行動をとるために形成する集団のこと。 利得:各プレイヤーのとる戦略による利益のこと。 提携値:提携した利得の合計のこと。 配分:全員提携で獲得した提携値を全員が合意する利得分配 コアの理論 コアの定義 ゲーム(N,v)において,誰一人不満を持たない配分の 集合である. コアの定義(提携合理性による定義) ゲーム(N,v)が優加法的であるならば,コアは提携合理 的配分の集合である.すなわち,コアをC(v)とすると n C (v) x xi v( S ) S N iS 12 本研究で扱うゲーム 協力ゲーム 提携型ゲーム 市場ゲーム 本研究では,市場 ゲームを用いる 凸ゲーム ビッグボスゲーム 13 何故市場ゲーム? 市場ゲームとは,プレイヤー同士が提携を形成し,メン バー間で自分の初期保有財を交換し,効用の和を最大 化するゲーム. 市場ゲームにはコアが存在することが証明されている. 誰一人不満のない財の交換が存在する. メンバー間での交換経済が成り立つ. 市場ゲームを拡張してもメンバー間での交換経済が成り立つので はないか? 14 従来の市場ゲームの価値交換モデル 貨幣と財のみで,価値の交換を行う. :貨幣 :財 :価値交換の流れ :ユーザが持つ価値観に依存する :ユーザが持つ価値観に依存しない 15 市場ゲームを拡張した価値交換モデル 貨幣と財に加えて,地域通貨と多様な価値観を反映させる. :貨幣 :財 :地域通貨 :多様な価値観 :ユーザが持つ価値観に依存する :ユーザが持つ価値観に依存しない :価値交換の流れ 16 市場ゲームの定式化 一般的な市場ゲームは以下のように定義されている. 提携Sのメンバーの総 効用の最大値 分割可能な財の総効用 v( S ) max ui ( x ・・・ , ( xi )S 1 i iS m i ,x ) s.t. xi wi , j 1・・・ , j iS j , m 1 iS 17 提案手法 市場ゲームと同等に定式化する. コアが存在することが証明され,誰一人不満のない財の交換が存在する. 市場ゲームを拡張してもメンバー間での交換経済が成り立つ. 18 市場ゲームを拡張した価値交換モデル 市場ゲームを拡張することによって,価値交換システム をモデル化する. 使用するパラメータは以下のとおりである. N (1・・・ , , n) : プレイヤーの集合 i N : プレイヤー wi ( wi1 ・・・ , x ( x1 ・・・ , x' ( x m3 ・・・ , wim n ) : プレイヤー iの財の初期保有ベクト ル x m n ) : 譲渡可能な財ベクトル x m n ) : 多様な価値ベクトル m 1 : 貨幣, m 2 : 地域通貨, m 3・・・ , , m n:多様な価値観 19 市場ゲームを拡張した価値交換モデル 財ベクトルxに対するプレイヤーiの効用関数Uiを以下のように定義する. メンバーごとに効用が 異なる財の効用関数 プレイヤーiの効用関数 U i ( x ・・・ , 1 x m n ) ui ( x ・・・ , 1 m x ) x m1 貨幣の効用関数 地域通貨の効用関数 pi ( x m 2 ) qi ( x 多様な価値の効用関数 m 3 ・・・ , ,x p( x qi ( x m 2 m 3 m n ) ) x ・・・ , m 2 ,x m n ) ux' T 20 市場ゲームを拡張した価値交換モデル 提携Sが形成され,提携Sのメンバー間で財を交換する. 分割可能な物 やサービスの総 効用 提携Sのメンバー の総効用 1 U ( x , i ・・・ iS x m n ) ui ( x1 ・・・ , xm ) iS x m 1 地域通貨の総効用 iS pi ( x m 2 ) iS 貨幣の総効用 qi ( x m 3 ・・・ , , x m n ) iS 21 多様な価値観の総効用 市場ゲームを拡張した価値交換モデル 財の交換によって,実現可能な提携Sのプレイヤーの総効用の 最大値(提携Sの特性関数値) m m 1 ui ( x1 ・・・ , ,x )x iS iS v( S ) max m 2 m3 ( xi ) iS p ( x ) q ( x ・・・ , i iS iS s.t. xij wij , j 1・・・ , ,m n iS m n , x ) iS 22 市場ゲームを拡張した価値交換モデル 貨幣は各プレイヤーごとに同じ価値観を持っている.貨幣の項を省略した 特性関数を用いても市場ゲームの結果は変わらない(戦略的同等性) 1 m , ,x ) ui ( x ・・・ iS 省略可能 v ( S ) m ax ( xi ) iS m2 p ( x ) iS m3 mn ・・・ , ,x ) qi ( x iS s.t. xi j wi j , j 1・・・ , ,m n iS iS 23 市場ゲームを拡張した価値交換モデル 同様に,地域通貨もコミュニティ内では各プレイヤーごとに同じ価値観を 持っている.戦略的同等性により,以下の式が成り立つ ui ( x1 ・・・ , , xm ) iS 省略可能 v ( S ) m ax ( xi ) iS 省略可能 m3 mn qi ( x ・・・ , ,x ) iS s.t . xi j wi j , j 1・・・ , ,m n iS iS 24 市場ゲームを拡張した価値交換モデル まとめると,以下の式となる. v( S ) max ui ( x1 ・・・ , , x m ) qi ( x m 3 ・・・ , ( xi ) iS iS iS s.t. xij wij , j 1・・・ , ,m n iS , x m n ) iS 地域通貨およびプレイヤーごとの価値観を考慮した交 換経済を市場ゲームとして定式化できた. 25 市場ゲームを拡張した価値交換モデル 定義した特性関数は提携Sのメンバーの提携Sに対 する多様な価値の総効用が異なる. コアが存在するかは不明. コアが存在する条件を別途考察する必要があり. 26 市場ゲームを拡張した価値交換モデル プレイヤーごとの価値の財も,プレイヤーiの財の効用関数 u i に含まれると仮定する max ui ( x1・・・ , , x m ) qi ( x m3 ・・・ , , x m n ) ( xi ) iS iS iS v ( S ) max ui ( x1 ・・・ , x m ・・ , , x m 3 ・・・ , ( xi ) iS iS s.t. xij wij , j 1・・・ , ,m n iS , x m n ) iS 以下に示す一般的な市場ゲームの式と同等に定式化できたので,コアが存在する. v ( S ) m ax ui ( xi1 ・・・ , ( xi )S s.t. xi j iS iS , xim ) j w , i , j 1・・・ iS , m 1 27 結び ゲーム理論を用いて特定の条件下で,n人の各ユーザ における効用が満足するようなモデルを提案した. 貨幣や財だけでなく,地域通貨,多様な価値観を反映 させた場合でも従来の市場ゲームと同等に財の交換を 行える. 28 今後の課題 提案したモデルをコミュニティ間でも適応可能か検証す る. その際,コミュニティ内での地域通貨の効用を等しいと 仮定しているが,コミュニティ間では異なる可能性がある ので考慮しなければならない. 29 学会発表リスト 田島佳明, 宮田純子, 森住哲也, 木下宏揚,``地域通貨的価 値を利用した価値の交換システム,'' 信学技報, vol. 112, no. 343, SITE2012-43, pp. 1--6, 2012年12月. 田島佳明, 宮田純子, 森住哲也, 木下宏揚,``価値交換 システムにおけるゲーム理論的解析,‘’ 信学技報, SITE2013, 2013年3月(予定). ご清聴ありがとうございました。 31 32 不満 ゲーム(N,v)を譲渡可能な効用をもつ提携型ゲームとし, , , xn ) に対して提携Sの特性関数値とSの 配分 x ( x1・・・ メンバーの利得の総和の差 e(S , x) v(S ) xi iS は,利得ベクトルxに対して提携Sが持つ不満を表す. コアの配分では,すべての提携の不満は0または負である. 33 これまでの研究では 異なる価値観を持つ二 者間での価値交換シス テムについて検討され てきた。*問題あり コミュニティ間での価値の 交換にそのまま適用するのは 困難である。 コミュニティ間の やりとりも重要では ないか? 2つのコミュニティ間で価値の 交換を行う方法を提案した。 34 ゲーム理論とは? 複数の当事者(プレイヤー)が存在し,それぞれの行動 が影響し合う状況(ゲーム)において,各人の利益(効用) に基づいて相手の行動を予測し意思決定を行う考え方 のこと 戦略=各プレイヤーの持つ行動計画 1.非協力ゲーム理論 プレイヤーの間には,各プレイヤーがとるべき戦略に ついて,強制力のある取り決めは存在しない. 2.協力ゲーム理論 すべてのプレイヤーの間に,そのとるべき戦略につ いての合意が成り立ち,それに基づいて戦略を選択 し行動する.プレイヤー間の協力達成と利益の配分 について考察する. 35 法定通貨,地域通貨の限界 取引のクラス 決済手段と流動性の関係 需要と供給,希少性に基 づいて決定される一元的 な価値(世界共通) ↓ 特定のコミュニティの価 値が反映されずうまく流 通しない・・・・ 法定通貨 法定通貨では大型商 店街にお金が集中し てしまう・・・ 地域通貨 柔軟な価値交換 36 法定通貨,地域通貨の限界 コミュニティで共通の価値観 を反映 ↓ コミュニティ間やコミュニティ 法定通貨 内での価値観が異なると 流通しない・・・・・ 地域通貨では高齢者 の話相手に参加しな い人がいる。 地域通貨 柔軟な価値交換 37 法定通貨,地域通貨の限界 柔軟な価値交換シス テムにおいて情報を 流通させた時の変化 について考察します。 法定通貨 コミュニティ間やコミュニティ 内での異なる価値を考慮 ↓ よりスムーズに流通!!! 地域通貨 柔軟な価値交換 38 取引のクラス 決済の種類 取引のクラス 法定通貨 地域通貨 クラス1 (貨幣経済に基づく取 引) ◎ クラス2 (コミュニティの一元的 な価値の取引) △ ◎ クラス3 (コミュニティ間やコミュ ニティ内での価値観の 違いを表現可能な取 引) × 法定通貨の価値感 にぴったり一致し ている人しかだめ △ コミュニティ間や各 個人の価値観を考 慮できない 柔軟な価値交換 ◎ 39 コミュニティ内で問題あり 各ユーザが満足す るような効用が得ら れるかがわからない. ゲーム理論を用いて,特定の 条件下でn人の各ユーザにお ける効用が満足するようなモデ ルを提案 提携や配分の例 企業をプログラマー1,2と営業3で起こす N {1,2,3} v(φ) v(1) v(2) v(3) 0 平均プログラマ1 凄腕プログラマ2 営業3 v(12) 60, v(13) 80, v(23) 100 v(123) 120 いま,3人で提携することを考えたときに,利益の配分はどのようになるかを考える 一般に3人ゲーム(N={1, 2, 3},v)の配分は次のように表される x1 v(1), x2 v(2), x3 v(3) x1 x2 x3 v( N ) 41
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