独立成分分析 1.問題は何か:例:解法:全体の見通し 2007/10/17 名雪 勲 独立成分分析とは? 例 会議室の3箇所にマイクを仕掛けたとする。そこへ 3人の人が来て会話をし始めた。 後で録音したものを聞くと3人の声が同時に混ざっ ていて聞き取りにくい。これをそれぞれ3人の話 を別々に分離して聞きたい。 独立成分分析の数理的表現(1/5) 独立な信号を発生する情報源がn個あったとし て、これをs ,・・・,s 、まとめてn次元の縦ベクトル 1 n s (s1,, sn ) T T とする。 信号は離散時間t=1,2,3、・・・に出るものとし、 時間tのn個の信号をまとめてs(t)と書く。 独立成分分析の数理的表現(2/5) これらの信号が線形に混ざってしまったものがn 箇所から観測されたとして、観測値をx ,・・・,x とする。 ベクトルにまとめてx=(x ,・・・,x ) T である。 混ざり方の係数をAijとすれば 1 1 xi j 1 Aij s j n となる。 n n 独立成分分析の数理的表現(3/5) A=(A )というn×n行列を考えれば、これを x=As と書くと簡単である。行列Aは一応時間tにはよらな いとすれば、 x(t)=As(t) がt=1,2,・・・で観測される。 ここでx(1),x(2),・・・を観測してs(1),s(2),・・・を復元 しようというのが問題である。 ij 独立成分分析の数理的表現(4/5) Aもわからず、s(t)もわからない。ただx(t)だけが 利用できる問題をblind source separationという。 この問題を解く手掛かりは信号s1、・・・s2は確率 的に発生するものとして、s1、・・・snは全て互い に独立とする。 つまりsの確率密度関数をr(s)とすると、各成分が 独立ならこれは r(s)=r1(s1)r2(s2)・・・rn(sn) という積の形をしている。 独立成分分析の数理的表現(5/5) 観測値x(t)は混合物だから、x1(t),・・・,xn(t)の 分布は独立になっていない。その中に含まれる 独立な成分を探すので独立成分分析という。 独立成分分析の具体的解法(1/3) フランスのHeraultとJuttenによる解法を紹介す る。 y(t)=Wx(t) 1 とおく。W= A ならうまくいくが、Aがわからないの で適当にWを選んでその結果、y(t)の各成分 y1(t),・・・,yn(t)が独立になっているかを見ていく。 W(t)の変化分を ΔW(t)=W(t+1)-W(t) とする。 独立成分分析の具体的解法(2/3) y(t)を見るごとに 3 ΔWij(t)=-η{yi(t)} yj(t) のように変える。ηは小さい正の定数とする。 ここで各siの平均値を0とすると期待値は E[si]=0 定数ηが小さければ Wij(t)= ⊿Wij (t ) t はどこかへ収束してその周りで微小振動する。 独立成分分析の具体的解法(3/3) 収束先では⊿Wijは収束点の周りでふらつくので E[Wij ] E[ y y ] 0 3 i i となりWの収束先ではyiとyjがすべて独立となる。 独立と相関 これまでの話ではyiとyjの相関がないことからyiとyj は独立としている。 独立しているならば相関はないが、相関がないか らといって独立と言ってもいいのだろうか? そこで相関と独立の関係について例を挙げて検証 してみる。 相関と独立の例(1/5) 例 s1とs2が独立で区間[-1,1]上の一様分布とする。 確率密度関数r(s)は図のようにs1-s2平面の正方形上に一 様に分布する。 s1 s2 相関と独立の例(2/5) s1とs2を混ぜ合わせて 1 x1 ( s1 s2 ) 2 1 x2 ( s1 s2 ) 2 とするとx1とx2の相関は 1 E[ x1 x2 ] E[ s12 s22 ] 0 2 相関と独立の例(3/5) しかしxの分布は図のように正方形を45°回転したものです。 x2 A x1 相関と独立の例(4/5) この場合は観測したxのうちx1の値が大きく、 2 に近いとするとxは 角Aの近くにあるので、X2の方は0に近いことがわかる。 よってX1を知ることでX2の情報が得られるので独立ではない。 ここでまとめると、 y=Wx で観測信号xから元の独立信号の候補yを求めるとすると、Wが A 1 になるように調整していくものだった。 様々な不定性を取り除くと正しいWは求められることになっている。 ここでJuttenとHeraultは勘で ⊿Wij yi3 y j とおいた。 相関と独立の例(5/5) データx(1)とx(2)を見ながらこれをy(t)=W(t)x(t)に変換し、このyを 使ってW(t)を⊿Wだけ変えていくことにした。 これを後に多くの人が ⊿wij ( yi ) のように一般化したり、式の理論的根拠を求めてよりよいアルゴリズ ムを作ろうと努力してきた。 独立成分分析は主成分分析に代わる新しい信号分析の手法として 脚光を浴びている。この分野を学ぶには確率・統計、情報理論が かかわってくる。
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