SPI Movement その背景

なぜいまプロセスか?
SPI Movement の背景
岸田 孝一
(SRA)
June. 29, 2000 @ 大阪
なぜプロセスか?
• ソフトウェアの実体はプロセスである
• さまざまなプロセス
プログラム実行
ソフトウェア開発・管理
システム進化
ユーザ・プロセス
ことのはじまり
• Software Evolution Dynamics
Belady/Lehman (70年代半ば)
• ISPW(since 1984)
Process Programming (L.Osterweil)
CMM (W.Humphrey)
いずれも @ ISPW-3 (1986)
• CMU/SEI の設立と発展
もうひとつの動き
• ヨーロッパ統合と ISO9000
• はじめは,もの(ハードウェア)製造の2者
間取引が対象
• それをソフトウェアに拡張
• 認証ビジネス!
• SPICEからSPAへ(ISO15504)
SPI の基本仮説
• よいプロダクトはよいプロセスからしか生ま
れない (!?)
- これは,製造プロセスについては,お
そらく正しい.
- しかし,設計プロセスにはあてはまら
ない
(Debate @ ICSE-7 in Monterey)
SPI 概念モデルの
長所と弱点
• なぜか儒教哲学のモデルと符合する
• 論語における「正名論」
• 大学における「8段階のパラダイム」
論語
子路篇・第十三
名不正則言不順.
言不順則事不成.
事不成則礼楽不興.
礼楽不興則刑罰不中.
刑罰不中則民無所措手足.
故君子名之必可言也.
言之必可行也.
奇妙な対応関係
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名:プロセス モデル
言:開発方法論
事:プロジェクト
礼楽:技法・ツール
刑罰:管理
民:プログラマ
手足:開発活動
君子:マネージャ
大学
Great Learning
古之欲明明徳於天下者,先治其国.
欲治其国者,先斎其家.
欲斎其家者,先修其身.
欲修其身者,先正其心.
欲正其心者,先誠其意.
欲誠其意者,先致其知.
致知在格物.
またも奇妙な対応
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平天下:国際標準のフレームワーク
治国:組織/プロジェクトでの実践
斎家:Team Software Process
修身:Personal Software Process
正心:正しい方向づけで
誠意:まじめに
致知:技法/知識を学ぶ
格物:オブジェクト指向!?
そこで疑問
• ハンフリー さんは「大学」を読んだ
ことがあるのだろうか?
• それともこういった思考のパターンは
洋の東西を問わず,マネージャに
共通したものなのだろうか?
名を正すということ
• これは儒教哲学の基礎である.
• 特にその中心概念である「道とは何
か?」の議論が重要だと考えられ
ている.
• ソフトウェアの世界でいえば,それ
は「プロセスとは?」の議論に
相当する.
荻生徂徠の「弁名」
生民より以来,物あれば名あり.名はもと常
人のこれに名づくるものあり.これ物の形
あるものに名づくるのみ.
物の形なきものに至りては,即ち常人のみ
ること能はざる所のものにして,聖人これ
を立ててこれに名づく.然る後,常人とい
へども見て識るべきなり.
これを名教といふ.
荻生徂徠の「弁道」
道は知り難く,また言ひ難し.その大な
るがための故なり.後世の儒者は,各
々見る所を道とす.皆一端なり.
それ道は「先王の道」なり.
けだし先王は言語の以て人を教ふるに足ら
ざるを知るや,故に礼楽を作りて以てこれ
に教ふ.
プロセス改善への
さまざまなアプローチ
(1) 所与の「礼楽」として KPA を実践し
レベルの向上を目指す
(2) しかるべきコンサルタントの指導を
受ける(道の一端?)
(3) TR24&25を熟読理解し,自社の状況
に合わせてカストマイズする.
Etc, etc, ….
いくつかの疑問
• 儒教的マネジメントの成功例は?
伝説の聖王のみ(堯・舜・禹)
• 一時的成功例:
荀子>韓非子>商君>秦・始皇帝
• 美しい管理体系はいつも内部から腐敗
する!
• ハンフリー氏 は孔子の再来か?
プロセスとプロダクト
• よいプロダクトはよいプロセスから生
まれる ….!?
• しかし, ….
ソフトウェアの歴史を振り返ってみ
ると,「よくない」プロセスからい
くつもの「よい」プロダクトが生まれ
ている.
インターネット世界
からの挑戦
• 「伽藍とバザール」 by Eric Raymond
新しい時代の開発・管理パラダイム
これをどう受け止めるか?
• 道可道非常道 名可名非常名
無名天地之始 有名万物之母
(老子)