社会福祉調査論 第1回 授業の概要

社会福祉調査論
第4講
2.社会調査の概要
11月2日
2_1 社会調査の意義と目的
• 手続きの合理的な可視化
コーディングだけでは隠蔽されるもの
• 情報の非対称性の低減
事例的調査 発見する 先行研究なし
統計的調査 確かめる 仮説あり
・因果関係の追究 説明する
相関だけでは因果は言えない
• 「事例研究」
理論を実証するために事例を取り上げて行う
研究をいう
「事例的研究」
(一般的用法となってはいない)
研究者自らが接触できる対象を取り上げて
行う研究をいう
◎手続きの合理的な可視化
• 日常の「見る」「聞く」のレベルにとどまらず独
自の意義をもち得るには、調査主体が合理
的に可視化された調査手続きをとる必要があ
る。
•
なぜに応えていく
ここでは、「適切な区分を設定すること」に
言及
一般的には(?)
手続きの可視化
• 「情報の入手方法→入手した情報の内容
→入手した情報の分析総合の手法」の
一部始終を明確にすること。
合理的な可視化
• 対象を把握するための適切な分析視点を選択
する。
(教科書での意味)
例1; コーディングの詳細
• 意味合いを踏まえること
運転関係の仕事?
e.g. アルバイト
学資、遊興費、社会経験、時間活用・・・
例2; クロス表分析
• 隠れた原因を探る
男女別事故率 運転距離
e.g.学部別アンケート回答率
4年生の有無
◎情報の非対称性の低減
• 知見を増やしていくこと
・知識なし
・知識あり
確かめる
説明する
情報の非対称性
一般的には(?)
• 個人が企業に対峙する際の状況など
立場によって有利不利の著しい差があること
○知識なし
• 知見を増やしていく
仮説構築
グラウンデッドセオリー
(「グランドセオリー」でない)
○知識あり
• 確かめる
入手した情報の記述
主婦・職業の両立を希望
e.g.大学の満足度は現社が低い
• 説明する
因果関係を分析していく
出身階層と進学率
e.g.満足度と相関のある指標
授業・友人・施設に相関
①分析とは
• 収集データから直接整理できる事実の要約内容
変数の代表値・分布、変数間の相関
• 収集データから推論できる母集団の変数の内容
→記述
• 収集データから推論できる因果関係
→説明
②記述
説明に先行して不可欠
(1)データ整理
観察単位 事例に分割
観察変数 属性、変数、パターン等に分割
→観察値
• 作成方法、入手方法の明示が重要
• (2)分析
体系的な差異と非体系的な差異の分離
実現変数と確率変数
確率論的世界観
決定論的世界観
(3)判定基準
バイアスのないデータ 平均値
妥当性、信頼性
有効性 一定範囲の分散
(4)事実の要約
• 単独の変数の記述
代表値の考察
平均値
分布(分散、歪度、尖度、最大・最小値、・・・)
• 複数の変数の相関の記述
相関関係の考察
多様な相関係数が工夫されている。
事例を構成する事象の共通点・相違点の列挙
• 母集団の変数の推論
比率・平均等の区間推計
相関係数の推計とその確からしさ
相関の強さと相関の有無の確かさは、
異なる問題である。
• (5)一般的事実を求める
個別的事実から一般的事実の抽出
比較事例研究
科学的推論の方法により類似した出来事の
中にある体系的なパターンを得る
③説明
因果関係の推論
相関の存在がそのまま因果関係とはならない。
因果関係の証明で蓋然性を超えることは難しい。
調査で事例における事態の推移を直接観察。
また、事例を構成する事象の共通点・相違点的
から推論
(1)因果効果
=実現数値-反事実的数値
両方同時には観察できない
因果的推論の根本問題
ヒュームの懐疑
時間的・空間的接近、先行関係、論理的妥当
性から推測
(2)事例の蓄積
確率的因果効果=原因条件がある場合の
平均値-原因条件がない場合の平均値
実現した場合のみ認知できる
→いかに推測していくか
(3)因果メカニズム
作用機序の説明
A→B→C
一連のメカニズムとして把握する場合も個々
に分析が必要
(4)多様な因果関係
多数の原因
多数の結果
相互循環
時間により異なる結果
(5)因果関係の条件
必要条件
被説明変数(結果)の同じものを集め共通の
変数を探索する
十分条件
共通の変数を持つものを集め共通の結果を
確認する
(6)システム・モデルへ
④統制
•
臨床的関心あるいは運動的関心がある調
査(それぞれ実践科学、政策科学と分類され
る)では、具体的な行動について言及すること
がある。
• 科学では一般に価値中立性が要請される。
しかし、ここでは、望ましいとされる状態を想
定し、そのための社会制御(統制)の方法を構
想するとともに、その可能性を検討することと
なる。
2_2 社会調査の対象と方法
調査の分析過程
―統計的調査と事例的調査の対比―
•
事例的調査においても、統計的調査の分析
過程に概ね対応する過程がある。
○スチーブンスの4種の尺度
• 名義、序数、距離、比例 ⇒ 度数、数量
2軸 量的・質的×多数・少数
• データの性格(A,B) 量・質
• 標本数の多寡 (1,2) 多・少
• 多量(A1)
統計データの数値分析
• 少量(A2)
少数統計標本からの蓋然性のある推論
特定条件下で一定の状況
• 多質(B1)
文章テータのテキストマイニング
• 少質(B2)
特定事例の深い考察から仮説構築
少数・多数
• 少数 発見から仮説構築へ
• 多数 確かめ、さらに説明へ 仮説検証
サンプリング(次講で詳述)
テキストマイニング
• 質的で多量のデータ
KHコーダー
尺度設定により定量的調査に変換することもある。
大量のデータの蓄積を背景に
新しい調査の展開
• データマイニング 既存統計分析
• インターネット調査 調査票調査
• テキストマイニング
インタビュー調査、参与観察調査、ドキュメント調査
2_3 社会調査を取り巻く状況
社会調査で学ぶべきこと
• 新カリキュラムでの列挙事項
• パソコンソフトでのメニュー
社会調査を行うために学ぶべきこと
情報関連技術
Excelの活用
各種分析ソフトの活用
“R” Rコマンダ
統計分析の種類
“KHコーダー” コンコーダンス分析
キーワードの分析
データ・アーカイブ
SSJDA(Social Science Japan Data Archive)
インターネットからの統計入手
◎政府統計の総合窓口(e-stat)
◎各種公的機関のHP
◎各国、国際機関のHP(DBサイト)
2_4 統計法の概要
• 指定統計→基幹統計
• 政府統計の総合窓口
• 個票の利用許容
公式統計の種類
• 調査統計(一次統計)
統計作成を目的として行われる調査による統
計
• 業務統計(一次統計)
業務上の記録から作成される統計
貿易統計、各種社会福祉統計
• 加工統計(二次統計)
一次統計を加工した統計
国民経済計算、鉱工業生産指数
従来の制度
•
指定統計 統計法により申告義務
国勢調査、家計調査など
• 承認統計
消費動向調査など
• 届出統計
住民基本台帳人口移動報告など
新統計法
• 2007年5月23日公布 2年以内全面施行
行政のための統計
→社会の情報基盤としての統計
①公的統計の
体系的・計画的整備の推進
•
「公的統計」
国、地方自治体
全ての調査統計、業務統計、加工統計
•
「基幹統計」 法での例示
「国勢調査」、「国民所得統計」
•
「一般統計調査」
報告義務規定
②統計データの有効利用の促進
• オーダーメード利用のために
匿名データ統計の提供
③統計調査の対象者の
秘密保護の強化
• 守秘義務規定違反者への罰則規定
• 受託事業者への罰則規定の適用
• かたり調査の禁止
④統計整備の「司令塔」機能の強化
•
内閣府に統計委員会
• 分散型統計収集体制 日本・アメリカなど
ニーズに迅速に的確に対応
相互比較・体系性の軽視
• 集中型統計収集体制 カナダ・ドイツなど
ニーズへの対応が不十分
統計の専門性の発揮・体系的整理
基幹統計一覧
平成23年3月現在
• 内閣府 ≪1≫
国民経済計算
• 国民経済計算、産業連関表、生命表及び鉱
工業指数は、他の統計を加工することによっ
て作成される「加工統計」であり、その他の統
計は統計調査によって作成される。
• 総務省 ≪14≫
国勢統計 住宅・土地統計 労働力調査
小売物価統計 家計調査 個人企業経済調査
科学技術研究調査 地方公務員給与実態調査
就業構造基本調査 全国消費実態統計
全国物価統計 社会生活基本統計
経済構造統計 産業連関表
財務省 ≪1≫
法人企業統計
国税庁 ≪1≫
民間給与実態統計
文部科学省 ≪4≫
学校基本調査
学校保健統計
学校教員統計
社会教育調査
厚生労働省 ≪8≫
人口動態調査
毎月勤労統計調査
薬事工業生産動態統計調査
医療施設統計
患者調査
賃金構造基本統計
国民生活基礎統計
生命表
農林水産省 ≪7≫
農林業構造統計
牛乳乳製品統計
作物統計
海面漁業生産統計
漁業センサス
木材統計
農業経営統計
経済産業省 ≪11≫
工業統計調査
経済産業省生産動態統計
商業統計
埋蔵鉱量統計
ガス事業生産動態統計
石油製品需給動態統計
商業動態統計調査
特定サービス産業実態統計
経済産業省特定業種石油等消費統計
経済産業省企業活動基本統計
鉱工業指数
国土交通省 ≪9≫
港湾統計
造船造機統計
建築着工統計
鉄道車両等生産動態統計調査
建設工事統計
船員労働統計
自動車輸送統計
内航船舶輸送統計
法人土地基本統計
≪合計 56≫
• 厚生労働統計一覧
3.レポート提出の課題提示
いずれかのレポートを提出して下さい。
①社会調査の実践
②文献講読による調査事例の紹介
時間末レポート
• 下図を参考にして社会調査の過程を説明しなさい。