日語誤用分析 (大学院) 6月20日(月・一)~ 担当 神作晋一 第11章 まとめ:教室で私たちに できること 1.第二言語習得論から見た第二言語教育 2.習得は時間のかかるプロセス 3.「習得が難しい」と決める前に 4.教えたものはすぐ使えなければいけないのか 5.学習者と同じ方向を見て進行ことの重要性 6.おわりに 第11章 まとめ:教室で私たちに できること 現場で直面する様々なことの助けになること 教育現場での応用 教師はいかに学習者の第二言語習得に関わ るのが良いか 1.第二言語習得論から見た第 二言語教育 1.第二言語習得論から見た第 二言語教育 第二言語を習得すること 自分の中に新しい言語体系(中間言語)を作って いく。 ⇒「正しい○○語を覚えていく」ことではない。 インプットや読んだり聞いたりした情報、母語の言 語知識などから独自の言語体系を構築 修正や再構築の繰り返し、停滞や後退さえするよ うに見えるようなこともある。 時間のかかるプロセス。 1.第二言語習得論から見た第 二言語教育 中間言語体系の発達に必要なもの インプットが不可欠。アウトプットは議論が分かれ る。 インプットの理解で習得が起こり、明示的知識は 気づきやインプットの理解を助ける。 多量の理解可能なインプットを与え、インターアク ションが起こる活動、文脈から切り離さず、自動 化を促進するアウトプット練習をする。 1.第二言語習得論から見た第 二言語教育 中間言語体系の発達に必要なもの 「意味のある文脈の中で学習者の注意を言語形 式に向けさせる」ことが必要。 ⇒フォーカス・オン・フォーム 明示的知識は、言語項目、学習者の母語、適性、 学習スタイルなどを考慮し、言語形式への注意の 当て方、明示的知識の利用の仕方を考える。 ⇒自然な習得を助けるものでなければならない 2.習得は時間のかかるプロセス 2.習得は時間のかかるプロセス 習得のプロセス とにかく時間がかかる 教えたらすぐに使えるわけではなく、積み上げて いくようなものでもない 特定の言語形式の導入→習得プロセスのスタート に過ぎない。育て方を考える その後のインプットや使用機会がなければ教えた 効果も消える→その後の学習者のインプットに注 意 3.「習得が難しい」と決める前に 3.「習得が難しい」と決める前に 習得に時間がかかるものがある イ形容詞の否定形(~くありません/~くないです)、 過去否定形(~くなかったです) 習得が遅いかどうかは調べる必要がある(様々な理 由がある) 例:受身形 A「姉のボーイフレンドが姉にプロポーズした」 B「姉がボーイフレンドにプロポーズされた」 ※上級者でもBは「迷惑」の意味をもつと感じている 3.「習得が難しい」と決める前に 直接受身⇒主体となる人や物に行為が向けられ ているもの 「(私は)プロポーズされた」「(私は)叱られた」 ⇒「迷惑」の気持ちを表すとは限らない 間接受身⇒行為自体は主体となる人に向けられ ていない 「(私は)財布を取られた」「(私は)手紙を読まれた」 ※迷惑の受身 3.「習得が難しい」と決める前に 形が作れても自然なコミュニケーションで使える とは限らない いつ使ったらいいかよくわかっていない場合 いろいろな要因がある ⇒タスクに偏りがある(迷惑をこうむった場合、悪い一 日であるなど) 「受身=迷惑な気持ち」⇒いったん強い結びつきにな ると、そこから抜け出せない。 ⇒「褒められた」「頼まれた」嫌な気持ち? 3.「習得が難しい」と決める前に 文脈から切り離された練習は習得になかなか つながらない いつ「花子は太郎に誘われました」を使ったらいい か、文脈から切り離したらわからない。 受身がコミュニケーションの中で本当に使えるよう になる練習なのか(教師側は)考える必要がある。 「なかなか使えるようにならない」=「習得が遅 い」ではない。 なぜ使えるようにならないかを考える。 4.教えたものはすぐ使えなけれ ばいけないのか 4.教えたものはすぐ使えなけれ ばいけないのか 教室で教える⇒習得のプロセスがスタート 習得が遅いからといって遅く教えたほうがいいとい うことではない。 例:三単現の-s:使わせないわけにはいかない 例:“He like baseball.” 早い時期に教えても使えるまでに時間がかかる ⇒習得していくにはインプット中の出会ったときに気 付かないといけない インプットでの気づき ⇒助けになるのが教室で得た知識。 4.教えたものはすぐ使えなけれ ばいけないのか 習得に時間のかかる項目でも…教室で教える 例:「~んです」 自然なコミュニケーションでは頻繁に使われる形式 すぐには使えなくても、インプットに触れたときに「 ~んです」が使われていることに気付くことを(教室 で教えることが)助ける。 4.教えたものはすぐ使えなけれ ばいけないのか その後の習得を促進させることも重要 最初の段階は「使えるのはその言語形式の限られ た一部でしかないけど理解はできる」 意味が理解できているだけでもその後の「気づき」 が変わる。⇒「理解」だけという観点も重要 「習得プロセスをどう理解させるか」という観点から 、何を、いつ、どう教えるか 「項目同士の比較」だけではなく、どう習得されるか を考える。 教室でも、インプットの機会を与え、長い時間をか けて形式と意味・機能の結びつきを育てていく。 5.学習者と同じ方向を見て進行 ことの重要性 5.学習者と同じ方向を見て進行 ことの重要性 学習者が言語体系、教師が支援をする 学習者の学習スタイルと教師の方法とのすり合 わせを考える。 (でないと動機づけが下がったり不満が出たりする) 学習者の「確信(ビリーフbelief)」の問題 「外国語学習には文法学習が大事だ」 「たくさんはなすことが大事だ」 Cf.教師のビリーフ 5.学習者と同じ方向を見て進行 ことの重要性 例:中級、日本語がもっと上手になるには? 「たくさん話すこと」という答えが多いが… インプットの必要性を考えているのは少ない ⇒聞く力、読む力で重要とは思うようだが… 中級くらいの学習者:「ネイティブのように話せる」の は、難しい「文法」が正しく使え、たくさんの語彙をつ かえること?と思っている。 ⇒大量のインプットに触れる必要がある 5.学習者と同じ方向を見て進行 ことの重要性 例:文法的には正しいのだが…ということになる 「あとは語彙力をつけて使えば上達…」 ⇒「言いたいことは分かるけど、そうは言わない」とい う文を産出し続け、固定化してしまう。 例:I want marriage with you.(あなたとの結婚が欲 しい)「文法的には正しいけど使わない」 ⇒中級くらいの日本語学習者にもこういう文が多い ⇒自然な日本語を話すためにはどうしたらいいか 5.学習者と同じ方向を見て進行 ことの重要性 第二言語学習は、学習者自身が新しい言語体 系を構築していく当時者である。 「教師が教えたことを学習者が学んでいく」教師中心 のプロセスではない。 学習者自身がそれぞれに効果的な学習方法を 見つけることである。(ドルネイ:動機づけ) 教師は同じ方向を向く、よきアドバイザーに どうするのが大切なのか、効果的か 6.おわりに 6.おわりに 学習者をよく観察し、自分の方法を振り返 り、学習者にとって良いのかを考える 第二言語習得の分野の研究で明らかにな った知見 手がかりになる 教育現場で生かされていく 教師と学習者双方が、効果的な学習方法につ いて話し考えれられるようになったらよい。
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