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俳句
俳句とは?
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俳句(はいく)とは五・七・五の音節から成る
日本語の定型詩であり、世界最短の詩であ
る。
特徴
俳句には次の特徴がある。
 五・七・五の「韻律」で詠まれる定型詩である。
 たいてい「季語」が入る。
 一か所、必ず「切れ」がある。
 余韻を残す。
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切れ
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たとえば有名な芭蕉の句
古池や 蛙飛び込む水の音 芭蕉
では、「古池や」の後で一呼吸、句の流れが切れ
ている。読者はその一瞬の休符の合間に、作者を
取り巻く環境や作者の思想・感情・情念・背景などを
勝手に想像してしまう仕掛けになっている。このテク
ニックが「切れ」と呼ばれ、十七文字という限定され
た語数で、言葉に形と質感を与える効果を持つ。さ
らに、季語とあいまって句に余韻をかもしだす。
現代の俳句でも「切れ」は重要なテクニックの一つ
であり、「切れ」のない句は俳句としては評価されな
い。
切れ字
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強制的に句を切るために使われるのが切れ字で
ある。現代の俳句でも使われている切れ字には「か
な」「や」「けり」がある。俳句以前の連歌・俳諧の時
代には「もがな」「し」「ぞ」「か」「よ」「せ」「れ」「つ」
「ぬ」「へ」「ず」「いかに」「じ」「け」「らん」など、先の3
個と合わせ、計18種類の助詞、助動詞が使われて
いた。
切れ字がないのに切れている例としては、たとえば
旅に病んで 夢は枯れ野をかけめぐる 芭蕉
がある。「旅に病んで」の後で切れている。
客観写生
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この言葉自体は高浜虚子のものであるが、その起
源は芭蕉の句までたどることのできる俳句の特徴の
1つである。芭蕉の門人・土芳は『三冊子』の中でこ
れを「見るにつけ、聞くにつけ、作者の感じるままを
句に作るところは、すなわち俳諧の誠である」と表現
している。江戸時代には客観や写生という言葉こそ
なかったが俳諧の誠というのは私意や虚偽を排し、
対象をよく観察し、傾聴して、そのありさまを十七文
字で表現することに全力を傾けるという意味である。
客観写生
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例としては
吹き飛ばす石は 浅間の野分かな 芭蕉
が挙げられる。ここには浅間山に登る芭蕉
の感想などは、一切述べられていない。しか
し、浅間山に吹く野分の凄さを「石まで吹き飛
ばす」と表現することで読者は、荒涼とした風
景とともに、こういう表現を選ぶ芭蕉という人
物の面白さをもかえって十分に感じることが
できるのである。
省略
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俳句では17文字という限られた音で表現をし
なければならないため、不用な言葉の省略が
重要視される。体言止めにより動詞や助詞を
省略したり、助詞で止めて後に来る動詞を省
略したりすることが多い。また、測可能な言葉
を省くことにより、余韻を残したり時間的な
「間」を表現することにもなる。
俳句を詠むときで避けるべき八ヶ条
無季の句を詠まない
 重季の句を詠まない
 空想の句を詠まない
 や・かなを併用した句を詠まない
 字あまりの句を詠まない
 感動を露出した句を詠まない
 感動を誇張した句を詠まない
 模倣の句を詠まない
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漢俳
中国語による俳句は漢俳と呼ばれる。漢俳
は五字・七字・五字の三行十七字で構成する
のが一般的である。漢俳には格律体と自由
体とがあり、格律体は文言(文語文)を用い平
仄、押韻のきまりがある。自由体には平仄・
押韻はなく白話文を用いてもよい。
例:古池や蛙飛こむ水のおと
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– 閑寂古池旁, 青蛙跳入水中央, 撲通一聲響。
松尾芭蕉
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松尾 芭蕉(まつお ばしょう)
寛永21年(1644年) 元禄7年(1694年)
芭蕉の名句1
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古池や蛙飛びこむ水の音(ふるいけや かはずとび
こむ みずのおと)
名月や池をめぐりて夜もすがら(めいげつや いけを
めぐりて よもすがら)
夏草や兵どもが夢の跡(なつくさや つわものどもが
ゆめのあと):岩手県平泉町
閑さや岩にしみ入る蝉の声(しずかさや いわにしみ
いる せみのこえ):山形県・立石寺
五月雨をあつめて早し最上川(さみだれを あつめて
はやし もがみがわ):山形県大石田町
芭蕉の名句2
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雲の峰いくつ崩れて月の山(くものみね いくつくずれ
て つきのやま):山形県・月山
荒海や佐渡によこたふ天河(あらうみや さどによこ
たう あまのがわ):新潟県出雲崎町
花の雲鐘は上野か浅草か(はなのくも かねはうえ
のかあさくさか):東京都
初しぐれ猿も小蓑をほしげ也(はつしぐれさるもこみ
のをはしげなり):三重県伊賀市
旅に病んで夢は枯野をかけ廻る(たびにやんで ゆ
めはかれのをかけめぐる):辞世
与謝 蕪村
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(よさ ぶそん、よさの ぶそん)
享保元年(1716年) - 天明3年(1784年)
江戸時代中期の日本の俳人、画家。
蕪村の名句
春の海 終日のたりのたり哉
 柳散り清水涸れ石処々
 さみだれや大河を前に家二軒
 菜の花や月は東に日は西に
 涼しさや鐘をはなるゝかねの声
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小林一茶
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小林 一茶(こばやし いっさ)
宝暦13年(1763年)- 文政10年(1828年)
江戸時代を代表する俳諧師の一人。
一茶の名句
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あの月をとってくれよと泣く子かな
春風や牛に引かれて善光寺
しづかさや湖水の底の雲のみね
我星はどこに旅寝や天の川
思ふ人の側に割込む巨燵哉
正岡子規
正岡 子規(まさおか しき、慶応3年(1867年)
- 明治35年(1902年)
 俳人・歌人・国語学研究家
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子規の名句
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柿食へば 鐘が鳴るなり 法隆寺
松山や 秋より高き 天主閣
春や昔 十五万石の 城下哉
牡丹画いて 絵の具は皿に 残りけり
山吹も 菜の花も咲く 小庭哉
をとゝひの へちまの水も 取らざりき
風呂敷を ほどけば柿の ころげけり
柿くふも 今年ばかりと 思ひけり
紫の 蒲團に坐る 春日かな
河東碧梧桐
河東碧梧桐(かわひがし へきごとう)、明治6年
(1873年) - 昭和12年
日本の俳人・随筆家。
 蕎麦白き道すがらなり観音寺
 赤い椿白い椿と落ちにけり
 相撲乗せし便船のなど時化(しけ)となり
 雪チラチラ岩手颪(おろし)にならで止む
 ミモーザを活けて一日留守にしたベットの白く
 曳かれる牛が辻でずっと見回した秋空だ
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高浜 虚子
高浜 虚子(たかはま きょし)、明治7年(1874
年)- 昭和34年(1959年)
明治~昭和期の俳人、小説家。
 春風や闘志抱きて丘に立つ
 去年今年貫く棒の如きもの
 遠山に日の当たりたる枯野かな
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俳句会
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俳人は、定期的に(月一回位)に仲間同士で
集まって互いの作品を無記名で回覧し、どの
句がよいか選び合い(「選句」という)、批評し
合います。句会には、第一に場所、第二に人、
第三に句会進行のリーダー、この三つが必要
です。
春の句その1
その下は梅の花です ヘリコプター
 かるくなる空につまづく梅の花
 リハビリの夫婦の散歩梅香る
 約束は出来ない朧の夜だから
 隣りにはいつも空席朧月
 いつまでも桜はさくらでいて欲しい
 さくら桜サクラ櫻どうでもいい
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春の句その2
春愁や洗濯物が暮れてゆく
 春愁をづかづか歩く渚かな
 受験生猫を抱へて歩きけり
 誰かまた鳥の名を言い受験生
 手元から日の暮れゆくや凧
 凧ひとつ浮かぶ小さな村の上
 たんぽぽや田舎の空は楕円形
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短歌
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短歌とは
漢詩に対し、1300年も前から日本人の間
に歌われてきたものを、大和の歌という意味
から和歌という。
和歌には短歌のほかに長歌・旋頭歌など
があったが、短歌はその中でも特に多く歌わ
れるようになったもの。
形式
①基本形=5・7・5・7・7の5句、31音からなって
いる。ここから和歌を三十一文字(みそひとも
じ)ということもある。
②上の句・下の句=5句のうち、はじめの5・7・5
の3句を上の句、後の7・7の2句を下の句とい
う。
③字余り・字足らず=表現の都合で、31音より
音数が多い場合を字余り、少ない場合を字足
らずという。
④句切れ=意味や調子の上から切れるところ
を句切れという。初句で切れていれば初句切
れ、第2句ならば二句切れ、以下、三句切れ、
四句切れという。
三大和歌集
・万葉集
4世紀~8世紀中ごろまでの、あらゆる階層
の人々の歌を約4500首収める日本最古の歌
集。奈良時代後期に大伴家持らによって編集
された。
・古今和歌集
平安時代の中ごろにつくられ、約1100首を
収める、紀貫之らによる最初の勅撰和歌集。
・新古今和歌集
鎌倉時代のはじめにつくられ、約2000首を
収める、藤原定家らによる勅撰和歌集。
主な歌人
藤原定家
1162~1241
鎌倉時代初期の公家。代表的な新古今調の
歌人。『小倉百人一首』を撰集。
駒(こま)とめて そでうちはらうかげもなし 佐
野のわたりの 雪の夕ぐれ
石川啄木
1886~1912
岩手県出身。三行書きの表現法と、「生活」を
歌う題材の新鮮さとによって天才詩人の名声
を得る。歌集『一握の砂』『悲しき玩具』。
ふるさとの なまりなつかし 停車場の 人ごみ
の中に そを聴きに行く
斉藤茂吉
1882~1953
山形県出身。伊藤左千夫に師事。『アララギ』
創刊。歌集『赤光』『あらたま』。
死に近き 母にそい寝のしんしんと 遠田(とお
だ)のかわず 天に聞こゆる
与謝野晶子
1878~1942
大阪の商家に生まれる。明治30年代の浪漫
的詩歌の中心「明星派」をリード。歌集『みだ
れ髪』『舞姫』など。
金色(こんじき)の 小さき鳥のかたちして
いちょう散るなり 夕日の丘に
俵万智
1962~
大阪府出身。『サラダ記念日』『チョコレート革
命』など。
「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人
のいるあたたかさ
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日
はサラダ記念日
いつもより一分早く駅に着く
一分君のこと考える
自転車のカゴからわんとはみ出してなにか嬉し
いセロリの葉っぱ
資本主義のとある街角必要に応じて受けとる
ティッシュペーパー
やわらかな秋の陽ざしに奏でられ川は流れて
ゆくオルゴール
年下の男に「おまえ」と呼ばれていてぬるきミル
クのような幸せ
二週間先の約束嬉しくてそれまで会えないこと
を忘れる
その他の名作
ガラス戸の 外のつきよをながむれど ランプの
かげの うつりて見えず(正岡子規)
石がけに 子ども七人こしかけて ふぐをつりお
り 夕焼け小焼け(北原白秋)
かすみ立つ 長き春日(はるび)をこどもらと
手まりつきつつ きょうもくらしつ(良寛)
おりたちて けさの寒さをおどろきぬ つゆしとし
とと かきの落ち葉深く(伊藤左千夫)