個室・ユニットを進めるための 2つの提案とプラスワン(私見) 横浜市 介護保険課長 松本 均 あなたは相部屋で 人生を終えたいですか? そう聞かれて、「はい」と答える人は めったにいないだろう。 「福祉が変わる 医療が変わる」 ぶどう社 大熊由紀子 習慣も、人生観も、寝起きの時間も、テレビ番組 の好みも違う他人同士が、決して広いとはいえ ない部屋で、四六時中顔をつき合わせて暮らす のはつらいことだろう。 にもかかわらず、日本の福祉施設は、この奇妙 な雑居の伝統を戦前から引きずってきた。 「福祉が変わる 医療が変わる」 ぶどう社 大熊由紀子 施設に暮らす人々の最も切実な願いは、 「個室に入りたい」ことだ。 「福祉が変わる 医療が変わる」 ぶどう社 大熊由紀子 1988年版『住宅白書』 「話し相手がほしくないのではない。ロビーや サロンで話し合うのはよい。自室に招いて話す のも好きだ。しかし一人きりになれる部屋が まったくないのはつらいものだ。 一時的に入院する病室や旅行中の相部屋では ない。長く住む住宅なのだから」 「福祉が変わる 医療が変わる」 ぶどう社 大熊由紀子 「プライバシーを侵害され、私物の持ち込みも 極端に制限され、特養ホームでは排せつ介助 も同室者の面前で行わなければならないなど、 とうてい人間の尊厳を保持した『生活の場』相 当のものとはいえない」 (関東弁護士連合会) 「福祉が変わる 医療が変わる」 ぶどう社 大熊由紀子 多床室の問題点 多床室は病室をモデルとして作られていることから、長期 の生活の場としては適切ではない。 ・個人のプライバシーが保てない。 ・インフルエンザやノロウイルス等の感染症対応が不十分。 (新型インフルエンザが施設内で発生した場合に、ベット の間隔を2m以上あけなければならない。) ・他人のおむつ交換時の臭気がある。 ・起床・就寝時間の自由度がない。 ・好きな時間に好きなテレビを見ることができない。 ・家族が気兼ねし自由に訪問できない。 横浜市特別養護老人ホーム入所申込者調査 (平成19年11月) 調査の概要 第4期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画策定に向けた基礎資料を 得ることを目的として、高齢者実態調査を平成19年11月に実施した。 調査目的 調査対象 特別養護老人ホームに 入所申込みをしている方 について、心身の状況や 特別養護老人ホーム 介護力、入所希望理由等 入所申込者 を把握し、今後の特別養 (1,500人) 護老人ホーム整備の必 要量を見込む上での参考 とする。 回収状況 調査内容 ・基本属性(性別、年齢、世帯構成、等) ・住まいの状況 937人 ・身体状況、介護サービス利用状況 (回収率; ・入所待ちの状況 62.5%) (入所希望施設の条件等) ・保険料(負担感等) 等 横浜市特別養護老人ホーム入所申込者調査 (平成19年11月) 【問39】 現在、市内の特別養護老人ホームは4人部屋が多いですが、平成17年4 月以降から全室個室の特別養護老人ホームが開所しています。4人部屋中心 の特別養護老人ホームより部屋代(居住費)がかかりますが、このような全室個 室の特別養護老人ホームを利用したいと思いますか。(○はひとつ) 1 従来型(4人部屋)の特別養護老人ホーム に入所したい 全室個室の新しい特別養護老人ホームに 2 入所したい 3 どちらでも早く入所できる方に 入所したい 4 わからない わからない 47.5 22.7 どちらでも早く 入所できる方 に入所したい 5.3 21.1 47.5 21.1 5.3 全室個室の新 しい特別養護 老人ホームに 入所したい 22.7 従来型(4人 部屋)の特別 養護老人ホー ムに入所した い 横浜市特別養護老人ホーム入所申込者調査 (平成19年11月) 【問39で「1」と答えた方におうかがいします。】 【問39‐1】 従来型(4人部屋中心の特別養護老人ホーム)に入所したい理 由は何ですか。(○はひとつ) 1 2 3 4 5 6 (個室型だと)費用の支払いが難しい 部屋にほかの人がいたほうがよい 個室を希望しない 現在利用しているサービス(デイサービ ス・ショートステイ)を利用しているところを 希望する 50.8 33.7 現在利用して いるところを希 望する, 6.7 個室を希望し ない 家の近くに全 室個室の特養 がない, 0.3 その他 1.4 6.7 6.7 6.7 50.8 33.7 家の近くに全室個室の特別養護老人 ホームがない 0.3 その他 1.4 部屋にほかの 人がいたほう がよい (個室型だと) 費用の支払い が難しい 横浜市内の特養・老健施設の居室環境割合 特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 個室ユ ニット 13% 個室ユ ニット 38% 従来型 個室 6% 多床室 56% 多床室・従 来型個室 87% 利用者が求めているものは? 具合が悪い人がいて、病院に行くように言っても、 「医者が嫌いだ」と言って、病院に行かない。 しかし、よくよく話を聞いてみると、 医者が嫌いな訳ではなく、 お金がないと言えないから 「医者が嫌いだ」と言っている場合もある。 多床室問題も同じではないか。 費用がかかると言えないから、 他人と一緒の大部屋でよい(仕方がない)と 言っている。 そのような利用者や家族の気持ちを考えず、 単に多床室の希望が多いという表面的な理由から、 多床室をつくるということでよいのか??? 個室ユニットの問題点 特に夫婦で一方が在宅に残り、一方が施設に 入る場合、居住コストが2重にかかってしまう。 ・ 多床室と比較し居住費が高く、夫婦の一方が個室ユニットに入所すると 在宅となる他方が生活に困窮する。 このため、利用料金が低い多床室への入居希望が高くなる。 ・ 夫婦等の一方が施設入所すると、居住費が施設分と在宅分に必要となり 負担が大きい。 横浜市の新たな取組 利用者負担段階が第3段階の方に対して、 本市独自に居住費の一部を助成します。 ◆ユニット型個室の施設居住費 *収入・資産要件を満たす者 *本事業での助成部分 (月額1万円) 基準費用額;6万円 該当要件:次のいずれも満たす者 1万円 補足給付 3.5万円 3.5万円 1万円 5万円 4万円 自己負担額 2.5万円 2.5万円 第1段階 第2段階 生活保護 非課税世帯 ・ 年収8 0 万円 以下 第3段階 非課税世帯 ・ 第2 段階以外 第4段階 課税世帯 ①利用者負担第3段階者 ②税法上の、被扶養者になって いない者 ③収入基準 150万円以下 ④資産基準 350万円以下 ⑤その他 居住用の土地(200㎡ 以下)及び家屋以外の不動産を 所有しないこと 補足給付の課題 ○夫婦の一方が施設に入所することにより、 施設の居住費と在宅の家賃支払いで 負担が二重になる。 ●夫婦の一方が施設に入所し、入所者が収入 がない場合、もう一方が収入があっても補足 給付は支給される。 補足給付の世帯・資産要件の導入(私見) ○出身世帯に多くの収入・資産があれば、 補足給付をしない(減額する)。 その分、収入・資産が少ない方の補足給付を 厚くしてはどうか。 個室・ユニットの面積基準の緩和 都市部では個室ユニットの面積を13.2㎡から 10.65㎡に引き下げる。 その分、居住費を6万円→5万円に 引き下げる。 これにより、居住費の安い施設を整備する ことが可能。 横浜市からの2つの提案とプラスワン(私見) 1.個室ユニットの居住費の補足給付の拡大 (+世帯・資産要件の導入) 2.都市部では個室ユニットの面積を緩和し、 低価格の居住費を実現 面積 13.2㎡ → 10.65㎡ 居住費 6万円 → 5万円 まとめ ○質の高いサービスを求める団塊の世代は 何を望んでいるのか。 ○建物は、30年以上使用することを 考えれば、進むべき道は明らか。 ○所得にかかわらず、個室ユニットに入所 できるような施策を考えるべき。
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