3.格付会社の情報生産 ○格付けの手法 • デフォルトリスク:事業リスク面+財務リスク面 • 財務リスク: • 財務リスクの規定要因 – 資本負債構成、実態に近いバランスシートの作成 して検討 – 借入金・社債の返済時期・契約内容 – 巨額の投資やM&A – 金融機関との関係 1 格付投資情報センター『格付けQ&A』日本経済新聞社 2001 2 ・自動車会社の格付け 格付投資情報センターR&I 2008年4月30日現在 General Motors: B /Negative Ford : B /Negative Chrysler : B /Negative(1年前はBBB) S&P (スタンダード・アンド・プアーズ) 3 • シティの格付け引き下げ:Moody’s Aa1→Aa2 (07年11月5日) →Aa3 (07年12月13日) → Aa3:outlook,negative (08年4月18日) ○格付引下げと企業の経営危機 • 日産自動車の格付け推移(ムーディーズ) – Baa1(98年前半)→ Baa3(98.11.) →Ba1(99.3.ダイムラークライスラーとの提携交渉失敗) – 99.3. ルノーと資本提携(6430億円の出資) – ゴーンによる大胆なリストラ →Baa3(01.12.)→・・・→A3:outlook,positive (08.5.現在) 4 ○ストラクチャード・ファイナンスSF格付 • 従来の格付対象:事業会社、金融機関、公的機関 • 1980年代の証券化の発展に伴い証券化を対象と する格付(SF格付)が始まる – 現在、世界の主要格付会社の収益の5割以上がSF格付 によるもの • SF格付の特徴 – 証券化の対象資産のキャッシュフローの分析 • 公社債格付に比べて数理モデル・計量分析に大きく依存 – 特別目的会社SPC・サービサー等の証券化の仕組の安 定性の分析 –・ 5 ○証券化の仕組 サービサー 債権譲渡 住宅 ローン 借入証書 住 宅 ロ ー ン 負 債 資 本 ・ 債( 不 務足 者主 体 ) 銀行・ノン バンク ローン元利金 の回収・管理 住 宅 ロ ー ン ( 資 産 担 保 証 券 SPC(特別 ) 目的会社) ・Special Purpose Company ・Asset Backed Security A B S 証 券 市 場 投( 余 資剰 家主 体 ) 6 ○格付会社の収入 ○格付会社:純粋民間会社 • 19世紀中頃米国で格付け始まる~1960年代: – 投資家からの情報提供料の受け取り(投資家側の ニーズから格付会社が登場) • 米国:1960年代末~: – 投資家への情報提供料プラス – 背景:格付けの普及 →格付けを取得しないと投資家が債券を買ってくれ ない。高い格付けを取得すれば低金利で債券の発 行が可能。 →発行体にとって格付け取得が必要 7 ○格付けの信頼性 – 格付け対象の企業との癒着?、中立性? – 信頼確保のメカニズム( ) • 甘い格付け →格付けが高い企業でもデフォルトが多発 →投資家がその格付会社の格付けを信用しない(評 判が悪くなる) →その格付会社から高い格付けを取得しても低い 金利で債券が発行できない →債券を発行する企業にとってその格付会社に格 付けを依頼しても意味がない →格付会社としてやっていけなくなる – 投資家は格付会社のこれまでの実績から、そ の格付けの信頼性を判断する 8 「信用格付を活用した信用リスク管理体制の整備」 『日本銀行調査月報』2001年10月号 9 ○サブプライム問題と格付の信頼性 • 07年6月以降:サブプライム証券化商品で大量の格 付引き下げ、格下げ幅も大幅 – 6月15日:ムーディーズ、サブプライム住宅ローン担保証 券RMBS131件を格下げ – 7月10日:ムーディーズ、399件格下げ、S&P、612件格 下げ – その後も大量の格下げが続き、07年1年間で総額3273 億ドルの証券化商品格下げ • 06年以前の格下げは年間600億ドル以下 – A→CCCへの(11ノッチもの)格下げも大量に発生 10 ・サブプライム関連証券化商品の大量格下げ 2007年 みずほ証券調べ 11 黒沢義孝 『格付けの経済学』 PHP新書 12 – 06年サブプライムローンの推定損失率の度重なる 改定(S&P)→大量の大幅格下げ • 当初:6~7% → 12 ~14%(07年7月) • → 19% (08年1月) • サブプライムRMBSの格付の問題点 • 当初の推定損失率が低過ぎた←データに基づく • データの信頼性 – サブプライム住宅ローンは新しい商品であるため、データ期間 が短い – データの期間は住宅価格上昇の時期であり、損失率が小さい – 近年は虚偽の情報に基づく貸出が横行 13 • 格付会社と証券化商品格付け – 世界の大手格付会社の収入の5割以上は証券 化商品の格付けから – 証券化商品格付け(SF格付け)では、格付依頼が 少数の大手の金融機関からに限定 • 企業格付けでは外部から債務償還能力を評価 – 証券化商品が投資家に売却できる形で、何とか 案件を成立させようという誘引が格付会社に働く ( ) 14 15 • 第2章参考文献 • 「信用格付を活用した信用リスク管理体制の整備」 『日本銀行調査月報』2001年10月号 • 格付投資情報センター『格付けQ&A』日経新聞社. 第2章 2001年 • 黒沢義孝『格付けの経済学』PHP新書 1999年 • 江川由紀雄『サブプライム問題の教訓:証券化と格付 けの精神』商事法務 2007年 • 江川由紀雄「証券化商品の大量格下げが示した統計 モデルの限界」『金融財政事情』08年2月25日号 • 福田徹「証券化商品に対する格付けを考える」『証券 レビュー』48巻1号08年1月 16
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