日本のジオパーク の現状と課題 山陰海岸ジオパ-ク 玄武洞 総合科学専攻 2年 小山研究室 30916013 瀬戸 賀代 ジオパークとは① ジオパークは世界遺産と同じユネスコの支援の下2004年に設立され た世界ジオパークネットワーク(GGN)が進めるプログラムで現在25ヶ 国77箇所のジオパークが認定されている。 「ジオ」=「大地」や「地球」 地域振興 地球活動の遺産を主な見 所とする自然の中の公園 世界遺産とは異なり保全だけではな く活用が重視される。 ジオパーク 保全 活用 アポイ岳ジオパーク ジオパークとは② 現時点での日本ジオパーク認定地域 洞爺湖有珠山 世界ジオパーク 白滝 日本ジオパーク 糸魚川 アポイ岳 恐竜渓谷 ふくい勝山 山陰海岸 南アルプス (中央構造 線エリア) 隠岐 島原半島 伊豆大島 室戸 天草御 所浦 阿蘇 霧島 世界ジオパーク 申請中 この他、日本 の15地域が 日本ジオパー ク申請準備中 ジオパークとは③ 日本ジオパークの歩み 2004年 ユネスコの支援の下、世界ジオパークネットワーク(GGN)が設立。 2004年~ 2005年 GUPI(特定非営利活動法人)会長を中心とし、ジオパーク設立活動が始 まる。日本地質学会内に情報収集や普及、広報活動などを行うジオパー ク設立推進委員会が設置される。 2006年~ 2007年 様々なフォーラムやシンポジウムが開かれ、ジオパークの普及が始まる。 13地域の自治体関係者が集まり日本ジオパーク連絡協議会が設立。 2008年 日本ジオパーク加盟を目指す地域の評価と加盟決定、日本ジオパークの 5月 中から世界ジオパーク加盟候補を選定することを目的とする日本ジオパ ーク委員会が発足。 2008年 12月 日本ジオパークに、アポイ岳・洞爺湖有珠山・糸魚川・南アルプス(中央 構造線)・山陰海岸・室戸・島原半島が認定。 2009年 日本ジオパーク連絡協議会が日本ジオパークネットワーク(JGN)へと発 展的に解消。 8月 10月 2010年 9月 10月 世界ジオパークに、洞爺湖有珠山・糸魚川・島原半島が認定。 日本ジオパークに、天草御所浦・阿蘇・隠岐・恐竜渓谷ふくい勝山が認定。 日本ジオパークに、白滝・伊豆大島・霧島が認定。 世界ジオパークに、山陰海岸が認定。 研究目的 ユネスコが支援するジオパークは日本において現時点で世界ジ オパーク4地域、日本ジオパーク10地域の計14地域が公式認定 を受けているがこれらのジオパークの実態や課題について系統的 な研究はなされていない。 南アルプスジオパーク 板山露頭 糸魚川ジオパーク 弁天岩 本研究では、日本各地のジオパークのテーマと運営形態、見学地 点の整備状況、ガイド養成、ツアー実施状況などを調査し、各パー クの現状と課題を明らかにすることを目的とする。 研究方法 1)日本ジオパークネット ワーク(JGN)のWebページ や各地域のジオパークの Webページでジオパーク のテーマから運営実態に いたる細部を調査。 日本ジオパークネットワークのWebより 2)ジオパークに関する各 種文献から各地域の取り 組みを調査。 3) 調査結果についての比較・検討を行う。 世界ジオパーク①(洞爺湖有珠山ジオパーク) テーマ 現状 「変動する大地との共生」 JGN認定:2008年12月8日 GGN認定:2009年8月22日 *洞爺湖有珠山では火山や湖、森の魅力を身 近に感じながら散策できる6つのフットパスが整 備されており詳しい説明がされている。 *案内看板や遊歩道がきちんと整備されている。 運営形態 洞爺湖有珠山 ジオパーク推進 協議会 問題点 サイト数 35 面積 1297.75平方 キロメートル(1 市3町2村) *公式Webページで工事中のページが多い。 2回(2008) ガイド養成講座 10回(2009) 実施回数 8回(2010) GGN認定一周年ツアー 1回(2008) ツアー実施回数 7回(2009) 7回(2010) 世界ジオパーク②(糸魚川ジオパーク) テーマ 「島弧と人々~古くて新しい変動帯を生きる人々の暮らし~」 現状 *「ジオパーク推進市民の会」とい う、各種事業を計画、実施する会に よって、解説板などが整備されてお り、説明が詳しい。 問題点 *公式Webページの更新が滞って いるため地域住民がジオパークのイ ベントについて情報収集ができない。 糸魚川ジオ パークの学 習拠点でも あるフォッサ マグナミュー ジアムがあ る。 JGN認定:2008年12月8日 GGN認定:2009年8月22日 運営形態 糸魚川市企画 財政課のジオ パーク推進室 サイト数 24 面積 746.24平方 キロメートル (糸魚川市全 域) 4回(2008) ガイド養成講座 9回(2009) 実施回数 18回(2010) ツアー実施回数 ヒスイ原石 2回(2009) 21回(2010) 世界ジオパーク③(島原半島ジオパーク) テーマ 現状 「火山と人々が共存するジオパーク」 JGN認定:2008年12月8日 GGN認定:2009年8月22日 *ツアーに関して、主に子どもを対象として興味がわ くようなイベント名になっていたり大人と子供が一緒に 学べる教室が開催されている。 *見学地点の整備状況はよく、また見学者が注意す ることや見学コースの説明などかなり明確になってい る。 運営形態 島原半島ジオ パーク推進連 絡協議会 サイト数 23 面積 459.59平方 キロメートル (島原市・雲仙 市・南島原市) 問題点 *公式Webページに関して、文字が多すぎて見にくい。 4回(2008) ガイド養成講座 14回(2009) 実施回数 4回(2010) 平成新山溶岩ドーム ツアー実施回 9回(2009) 数 20回(2010) 世界ジオパーク④(山陰海岸ジオパーク) テーマ 現状 「日本海形成に伴う多様な地形・地質・風土と人々の暮らし」 JGN認定:2008年12月8日 *「山陰海岸ジオパーク」の公式Webページでは ジオサイト1つ1つについて詳しい説明と写真が のっている。 *「自然講座」という講座が開かれている。 GGN認定:2010年10月4日 山陰海岸ジオ 運営形態 パーク推進協議 会 サイト数 30 問題点 2697.62平方 キロメートル(京 *各地域での取り組みに温度差が見られる。(京 丹後市・豊岡市・ 都は活動が他の地域に比べ、盛んではない。) 面積 香美町・新温泉 町・岩美町・鳥取 市) 12回(2008) ガイド養成講 4回(2009) 座実施回数 12回(2010) ツアー実施回 2回(2009) 数 30回(2010) 新砂丘と古砂丘間の大山倉吉軽石層の露出地 日本ジオパーク①(アポイ岳ジオパーク) テーマ 「かんらん岩から大地の変動を学ぶ」・「アポイ岳の高山植物 から自然環境を学ぶ」・「歴史から自然と人間社会の共生を学ぶ」 現状 *ガイド養成に向けるための「アポイ岳ジオパーク・ ふるさとジオ塾」講座が開かれており、ツアーも講 座も行われている。 *町民向け学習会「バスで巡ろうジオサイト」も行 われている。 *「ふるさと子どもジオ塾」も開かれており、子ども たちが楽しみながら理解を深めるようになっている。 問題点 *アポイジオパークのWebページが様似町のWeb ページの管轄になっているので、アポイジオパーク の情報が分かりやすい公式Webページを開設する 必要がある。 *Webページの更新がなされていない。 JGN認定:2008年12月8日 様似町アポ イ岳ジオ 運営形態 パーク推進 協議会 サイト数 33 364.33平 方キロメート 面積 ル(様似町の 全域) ガイド養成講座 4回(2009) 実施回数 6回(2010) 3回(2008) ツアー実施回 1回(2009) 数 5回(2010) 日本ジオパーク②(室戸ジオパーク) テーマ 現状 「海と陸が出会う場所」 JGN認定:2008年12月8日 *室戸市の連携によってジオガイドの育成も図ら れ、既に6人のガイドが養成され、そのうちの3人 が英語対応である。 *室戸高校では2011年から日本初の科目「ジ オパーク学」を開講する予定である。 *各所におけるポスター・パンフレット・のぼり等 による「室戸ジオパーク」の広報活動は盛んに行 われている。 問題点 *地学的意義を持つジオサイトの数は充分あ りえるが、名称のみの看板が若干あるものの、 一般向けの説明があるサイトは少ない。 *同時期に選ばれた他のジオパークと比較す ると、ツアー実施が少ない。 GGN申請中 運営形態 室戸ジオパー ク推進協議会 事務局(法人 会社) サイト数 22 面積 248.30平方 キロメートル (室戸市全域) ガイド養成講座 10回(2009) 実施回数 8回(2010) 1回(2008) ツアー実施回数 3回(2009) 4回(2010) 日本ジオパーク③(恐竜渓谷ふくい勝山ジオパーク) テーマ 「恐竜・恐竜化石」 中核施設である福井県立恐竜博物館がある。 JGN認定:2009年10月28日 現状 *フットパスコースとして遊歩道「夫婦滝のみち」がある。 *夏休み期間中に計10回の「恐竜渓谷ふくい勝山ジオパー クツアー」を行っている。9月には「ジオパーク連携講座」として セミナーやツアーが開かれており10月には学校授業の中で 「学習する場」としてジオパークを活用してもらうために2010 年から「ジオパーク学習支援機構」をスタートさせている。 *またジオパークサイクリングや「ジオ」を感じることのできる マラソンイベントも開催されている。 *恐竜博物館の裏には、日本第一級の恐竜化石発掘現場が あり、詳細な発掘と世界的な研究が推進されている。 問題点 *見学地点に詳しい解説板などは多少見られるが、充実して いない。 *公式Webページにイベント情報や最新情報の掲載が見ら れない。 運営形態 勝山市ジオ パーク推進協 議会 サイト数 11 面積 253.68平方 キロメートル (勝山市全域) ガイド養成講 12回(2010) 座実施回数 ツアー実施回 10回(2010) 数 日本ジオパーク④(阿蘇ジオパーク) テーマ 「阿蘇火山の大地の成り立ち、並びにこの大地 と人間生活との関わりに対する理解を深めること」 NPO法人阿蘇ミュージアムを中心として活動。 JGN認定:2009年10月28日 現状 *阿蘇ジオパークには細かく分けて、56ものジオサイトがあ り、解説板は、そのうち42のジオサイトに設置されている。 *国立公園としての環境保全地域外においても、案内板の デザインが統一され自然と調和している。 *NPO法人阿蘇ミュージアムでは、「阿蘇火山を深く知り広く 学ぶ」として広範な講師を招き、一般社会人向けの阿蘇イン タープリター養成講座を4年間毎年開設しており、教室と フィールド実習をうまく組み合わせたカリキュラムが充実して いる。 *地質・地形・植物・動物・歴史・文化など幅広いガイド供給 体制が既にあり、養成講座による約90人のガイドが誕生し ている。 問題点 *海外からの観光客も多いことから、英語、中国語、韓国語 の観光パンフレットが既に出版されているが、ジオパークとし てのものはこれからである。 運営形態 阿蘇ジオパー ク推進協議会 サイト数 56 面積 1079.26平 方キロメートル (1市4町3村) ガイド養成講座 20回(2009) 実施回数 29回(2010) ツアー実施回数 1回(2009) 3回(2010) 日本ジオパーク⑤(隠岐ジオパーク) テーマ 「大陸から島々へ」 現状 *隠岐の自然環境や歴史などを学ぶ隠岐学講座「風 待ち海道エコツーリズム大学」が開催されている。 *エコツーリズムを推進する人たちにより、ガイド養成、 ガイドブック・ガイドマップの作成が活発に行われてい る。 *研究者・地質調査業関係者のバックアップを得て、 ガイド養成講座、ガイドブック・ガイドマップでジオに関 することを取り扱っている。 問題点 *ジオに関する解説板は一部にはあるが、内容はま だ不十分であり、今後の整備が待たれる。 *ガイドブック、ガイドマップは日本語での整備が行わ れており、多言語化は今後の課題である。 *隠岐ジオパークの公式Webページがないため、地 域住民や県外の人は情報収集が困難。 JGN認定:2009年10月28日 運営形態 隠岐ジオパーク 推進協議会 サイト数 30 343.98平方キ ロメートル(島前 面積 3島と島後の隠 岐の島町) 3回(2008) ガイド養成講座 8回(2009) 実施回数 4回(2010) ツアー実施回数 3回(2008) 2回(2009) 4回(2010) 日本ジオパーク⑥(天草御所浦ジオパーク) テーマ 「不明瞭」 JGN認定:2009年10月28日 現状 *アイランドツーリズムが観光ガイドを養成し白 亜紀資料館と連携し年間1200~1300人を受 け入れたツアーを実施している。 *年1回開いている自然観察のワークショップ の活動は、地域の人を巻き込んで行われている。 天草市立御所浦白亜紀資料館を 中心として活動。 運営形態 サイト数 問題点 *化石産地である各ジオサイトには解説板が設 置されているが解説が研究者向けで難しいため 子どもも理解できるよう修正が必要である。 *解説板は約10年前から整備しており現在ほ とんどのジオサイトに設置済みであるが解説板 自体の腐植の修復も必要である。 面積 天草ジオパー ク構想推進協 議会 12 20.19平方キ ロメートル(御 所浦島・牧島・ 横浦島を中心 とする18の 島々からなる) ガイド養成講座 18回(2010) 実施回数 ツアー実施回数 3回(2010) 日本ジオパーク⑦(南アルプス(中央構造線エリア)ジオパーク) テーマ 「不明瞭」 南アルプスジオパークの中心であるとも言 える大鹿村中央構造線博物館がある。 JGN認定:2008年12月8日 現状 運営形態 *毎年「中央構造線サイクリング」が行われている。 *ジオツアーや学習会を積極的に行う事務局とし て「伊那谷自然の友の会ジオツアー」や「戸台の化 石」学習会がある。 *「ガイド養成講座」として行われているかは不明 だが「南アルプスジオパーク講座」が開かれている。 *解説板の整備が良く、どの場所でも理解がしや すい。 サイト数 問題点 *破砕地域であるため雨でも地震でも崩れやす いので来客に対して危険性の指摘するような説 明板が必要。 面積 南アルプス世界 自然遺産登録 推進協議会 27 1719.58平方 キロメートル(長 野県飯田市・伊 那市・富士見 町・大鹿村) ガイド養成講座 実施回数 1回(2008) ツアー実施回 14回(2009) 数 22回(2010) 日本ジオパーク⑧(霧島ジオパーク) テーマ 「自然の多様性とそれをはぐくむ火山活動」 現状 *2010年4月の時点では、ジオパークガ イド56人(宮崎39人、鹿児島17人)を養 成している。また、韓国岳やえびの高原で モニターツアーを実施し、滝や火口湖、温 泉など47カ所のジオサイト、登山や滝巡り などの7コースのジオツアーも設定している。 問題点 *霧島ジオパーク推進連絡協会の拠 点となる霧島市と他の地域での温度 差がある。 韓国岳 JGN認定:2010年9月14日 運営形態 霧島ジオパーク 推進連絡協議 会 サイト数 60 面積 820平方キロ メートル(宮崎・ 鹿児島両県の5 市2町) ガイド養成講座 実施回数 2回(2008) 6回(2009) 5回(2010) ツアー実施回数 3回(2010) 日本ジオパーク⑨(白滝ジオパーク) テーマ 「旧石器時代の人々の活動」 現状 JGN認定:2010年9月14日 *遺跡群と黒曜石の露頭をつなぐジオツアー が過去数年間にわたり継続して行われている。 *地域の人がジオパークをよく知る機会となる 地元向けのツアーも行われている。 問題点 *2010年から本格的にガイド養成を行う方 針であるため、ガイド養成はこれからである。 *日本ジオパークに認定後のWebページの 改善が行われていない。 黒曜石の大露頭 運営形態 遠軽町ジオパー ク推進課 サイト数 22 面積 1330平方キロ メートル(遠軽町) ガイド養成講座 実施回数 1回(2010) ツアー実施回 数 2回(2008) 2回(2009) 13回(2010) 日本ジオパーク⑩(伊豆大島ジオパーク) テーマ 「不明瞭」 世界にも数少ない火山専門の伊豆大島火山博物館がある JGN認定:2010年9月14日 現状 *大島町主催の養成講座などを修了した人たちが案内する 大島ネイチャーガイドクラブなどがあり、組織化されている。 運営形態 伊豆大島ジ オパーク構 想推進委員 会 サイト数 68 面積 91.06平方 キロメートル (大島町) 問題点 *火山博物館に学芸員がいない。 *ビジターセンターが無くスタッフもいない。 *ジオパークの活動がまだ島内で知られていない。 ガイド養成講 座実施回数 地層大切断面 ツアー実施回 数 比較 ガイド養成実施回数(2010) 天草御所浦 ツアー実施回数(2010) 天草御所浦 18 島原半島 島原半島 4 霧島 5 阿蘇 29 室戸 8 隠岐 3 4 20 霧島 3 阿蘇 3 室戸 4 隠岐 4 山陰海岸 12 山陰海岸 恐竜渓谷ふくい勝山 12 恐竜渓谷ふくい勝山 30 10 伊豆大島 伊豆大島 南アルプス 18 南アルプス 糸魚川 18 糸魚川 洞爺湖有珠山 5 白滝 1 0 7 アポイ岳 6 白滝 21 洞爺湖有珠山 8 アポイ岳 22 20 40 13 0 20 40 まとめ 現状と課題 ●特徴を生かしたツアーが各ジオパークで行われている ●ジオパークに関する住民向け講座が各地域で行われている ●認定地域でのジオパーク普及活動は盛んに行われている ✖日本ジオパークの中には、テーマがはっきりしないものがある ✖ガイド養成やツアーについて、各地の地域ごとの温度差が感じられる ✖全てのジオパークでWebページのリアルタイムな情報更新がされていない ✖各ジオパークの全てのWebページが未完成である 地域の人々に情報が伝わりにくい ✖日本ジオパーク全体として解説板の設置や普及活動において改善が必要 ✖日本国内ではジオパークに関する普及活動が低調で、どの地域でもジオ パークの実態を知ってもらうことが重要 ✖活動を盛んにするために地域住民との連携が重要
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