貯蓄・投資と資金の過不足

金融市場論
Financial Markets
2013年度前期・商学科発展科目
③貯蓄・投資と資金の過不足
大学院商学研究科 齋藤一朗
貯蓄・投資と資金の過不足
• 経済を構成する各主体が、金融取引において資
金余剰主体となるか、資金不足主体となるかは、
それぞれの貯蓄・投資行動に依存して決まる。
• すなわち、各経済主体は今期の所得Yから必要な
支出Eを賄い、その残りを貯蓄S(=Y-E)する。
一方で、各経済主体は将来に向けての投資Iを行
うが、そうした投資が貯蓄を上回る場合には、
その差額を借り入れなければならず(金融負債
の増加:ΔL)、逆に、貯蓄が投資を上回る場合
には、その差額を貸し出すことができる(金融
資産の増加:ΔA)。
• こうした関係を整理すると、投資が貯蓄を上回
る場合には、
Δ L=I-(Y-E)=I-S(>0)
となり、貯蓄が投資を上回る場合には、
Δ A=(Y-E)-I=S-I(>0)
となる。
I-S>0の場合
資金の運用
I-S<0の場合
資金の調達
資金の運用
貯蓄S
投資I
投資I
資金の調達
貯蓄S
負債の増加
ΔL
資産の増加
ΔA
• ここで、投資が貯蓄を上回る主体のことを資金
不足主体(または、赤字主体)と呼び、貯蓄が
投資を上回る主体のことを資金余剰主体(また
は、黒字主体)と呼ぶ。
• 通常、各経済主体は資金の純粋な借り手あるい
は貸し手であるよりはむしろ、一方で資金を借
り入れると同時に、他方では資金を貸し出すと
いう資産・負債の両建て化行動をとることが多
い。
• この点を考慮に入れると、先のふたつの式は次
のように表すことができる。
• Δ Net L=Δ Gross L-Δ Gross A=I-S
• Δ Net A=Δ Gross A-Δ Gross L=S-I
• 但し、Δ Net L(またはA)は、ネット・ベース
の金融負債(資産)の増加を、Δ Gross L(また
はA)はグロス・ベースの金融負債(資産)の増
加を示している。
I-S>0の場合
資金の運用
I-S<0の場合
資金の調達
資金の運用
貯蓄S
投資I
投資I
貯蓄S
負債の増加
ΔL
資産の増加
ΔA
資金の調達
資産の増加
ΔA
負債の増加
ΔL
家計部門
消費
資金の過不足と金融取引
投資
可処分所得
資金余剰
資産の増分
負債の増分
企業部門
資産の増分
負債の増分
資金不足
投資
企業収益
金融取引による
過不足の調整