日本における集団応用でのフッ化物洗口に 関する実態調査 (2006) ○ 木本一成1, 2)、晴佐久悟1, 3)、浪越建男1, 4)、葭原明弘1, 5)、野上成樹1)、 田浦勝彦1, 6)、山内皓央1, 7)、安彦良一1,8)、荒川浩久1, 2)、境 脩1) 1 2 3 4 5 6 7 8 特定非営利活動法人日本むし歯予防フッ素推進会議(NPO日F会議) 神奈川歯科大学健康科学講座口腔保健学分野 福岡歯科大学社会医歯学部門口腔保健学講座健康科学分野 香川県フッ素利用を推進する会 新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔保健推進学分野 東北大学病院口腔育成系診療科予防歯科 山梨子どもの歯を守る会 北海道子どもの歯を守る会 【目的】 わが国では、 1970年代よりフッ化物(F)洗口が公衆衛生的に利用され てはいるものの、その普及が遅れている。 NPO法人日本むし歯予防フ ッ素推進会議(NPO日F会議)では、集団施設でのフッ化物洗口実態調 査をほぼ2年毎に実施しており、今回は2006年3月末日における調査結 果を報告する。 【対象及び方法】 フッ化物洗口実態調査は、全国8ブロックでのNPO日F会議団体・個人 会員、および会員以外であっても当会議で把握している 歯科医師、行 政、学校等の実施関係者に、 本年3月末日における集団施設別のフッ 化物洗口実態調査票を 郵送または電子メールにて依頼し、調査票を回 収した。調査項目は、施設別(保育・幼稚園、小・中学校、養護学校等) の①洗口実施施設数、②洗口実施人数、③週あたりの洗口回数、 ④ 洗口剤、 ⑤洗口液F濃度、 ⑥経費負担者等を調査した。 【結果および考察】 2006 年 3 月末日現在では、 全国 47 都道府県の 5,131施設、491,334 人(実施施設数での内訳:保育所・幼稚園64.6%、小学校29.8%、中学 校5.1%、養護学校他0.6%、 実施人数での内訳:保育所・幼稚園児 29.2%、小学校児童61.2%、中学校生徒9.3%、養護学校他0.3%)が実 施しており、 2年前の前回調査より1,208施設、94,632人の増加であった。 なお、 F洗口実施施設数の割合は全国当該施設総数の7.2%(保育所・ 幼稚園総数9.1%、 小学校総数6.6%、 中学校総数2.4%、 養護学校他 総数2.8%)であり、またF洗口実施人数の割合は全国当該児童の3.8% (保育所・幼稚園児総数6.4%、 小学校児童総数4.2%、 中学校生徒総 数1.3%、 養護学校他児童生徒総数2.8%)に相当する。各施設におけ る都道府県別での F洗口実施施設数と実施人数を表 1〜5 に示す。 前 回調査よりも100施設数以上増加した県は 兵庫、 愛知、 静岡であり、 また5千人以上の増加を示した県は愛知、佐賀、兵庫、静岡、長野、岐 阜であった。 これらの施設数や人数が増加した県では、施設別の違いによる傾向は とくに認められず、地域の状況に即した増加であり、保育所や幼稚園の みで増加した地域、小学校のみで増加した地域、あるいは全ての施設 で増加した地域とそれぞれであった。なお、今回調査での施設数増加は 保育所や幼稚園で、人数増加は小・中学校で多くみられた。実施施設数 ならびに実施人数は徐々に増加しているものの、都道府県間での地域 格差が大きく認められた。 さらに、各施設別のF洗口方法の状況(未回答、不明を除く)をみると、 保育所・幼稚園では250ppmFと450ppmFの溶液による毎日法がそれぞ れ48.4%と27.7%、また小学校や中学校では900 † † ppmF溶液による週1回法がそれぞれ63.8% と64.3% であった。なお、こ の2年間に増加した地域の小・中学校では450ppmF溶液による週1回法 などを実施する施設がみられ、900ppmF溶液による週1回法の割合が前 回調査よりも僅かに減少した。市販のF洗口製剤を用いる割合は、前回 調査に比べて市販のF洗口製剤を用いる割合が増加した。また、これら F洗口プログラムに係る経費負担は、いずれの施設でも行政や教育委 員会の経費負担が中心であり、行政主導によるF洗口開始の傾向が認 められた(表6)。 わが国ではフロリデーションが実施されていないことから、公衆衛生的な F応用の普及が遅れている。F洗口は次善の策と考えられるが、わが国 の現状では集団応用でのF洗口が重点的に取り組まなければならない施 策であるといえる。しかしながら、F洗口の普及には都道府県間での格差 がみられ、厚生労働省の「F洗口ガイドライン」通知を受けても、都道府県 で策定される「健康日本21」地域計画にF応用が未だに組込まれず、具 体的なF洗口に関する目標値が掲げられていない地域行政が存在してお り、早急な対応が望まれる。 行政、教育委員会、保健団体、歯科大学などの各関連機関は、わが国 でのF洗口実施施設数や実施人数の増加、ならびにその地域格差を是 正するために重要な役割を演じることができるものと考える。さらに、「健 康日本21」中間評価報告書案が提起され、「今後取り組むべき課題 分野 別の課題6 歯の健康」には、「今後重点的に取り組むべき課題及び新た に講ずべき施策等」にF洗口が提示されたものの、「新規目標項目」として は選定されていない。ここに、2010年に行われる「健康日本21」の最終評 価の際に、施設における集団応用でのフッ化物洗口プログラムが目標項 目として採択され、具体的な目標値を掲げられるべきものと提言する。
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