卒業研究発表 マイナンバー制度における アクセス制御 木下研究室 201002666 伊藤圭祐 背景 • 近年、企業や個人が扱う情報量は増加しており、そ の情報が漏えいする可能性もまた増加している。 • 更に2016年にマイナンバー制度の運用が開始され、 さらなる情報漏えいが懸念される。 役場 マイナンバー (12桁) 企業 情報共有 社会保障 関係部局 申請の際にマイ ナンバーを提示 税務当局 背景 • 問題点として、マイナンバーには複数の情報 が紐づけられるため、推論によって個人情報 が漏えいしてしまう。 情報A 情報B 役場 マイナンバー (12桁) 企業 情報共有 社会保障 関係部局 申請の際にマイ ナンバーを提示 税務当局 背景 • 前頁の赤枠内の情報のやりとりに着目する。 印鑑登録証明書 (情報B) 給与支払調書 (情報A) 支払いを受ける者 の名前 登録された印鑑 住所 住所 名前 • 違う書類の同じ項目から新たな情報が推論され てしまう。 目的 • ハイパーグラフで推論による情報漏えいを防ぐこと を目的とする。 • 複数の推論がマイナンバー制度では出来てしまうた め、複数の推論が視覚化できるハイパーグラフを用 いる。 • ハイパーグラフは推論による情報漏えいに対する安 全性が確認しやすいという利点がある。 印鑑登録 証明書 給与支払 調書 登録された 印鑑 住所 支払いを受け る者の名前 名前 住所 目的 • マイナンバー制度で扱うオブジェクトにダイクスト ラ法を適用し、推論を防ぐ。 • ダイクストラ法はグラフの最短経路を求めるアル ゴリズムで、その最短経路を最も推論されやす い経路と判定する。 • 推論を検知したら推論経路に対して辺の開放除 去(辺を取り去ること)を行い推論経路を除去する。 研究動向 • 推論による情報漏えい防止のためのハイ パーグラフによる依存関係のモデル化とアル ゴリズム(2011) 鈴木遼 • こちらの論文ではハイパーグラフにおける推 論関係の安全性をグラフ着色で定義し、推論 経路の検出まで行っていたが、その後の処理 (制御)はされていなかった。 ハイパーグラフ • グラフにおける辺は2頂点対のことであったが、 これは辺が2個の頂点からなることを意味する。 • 辺の個数制限を自由にすることで一般化したも のがハイパーグラフである。ダイクストラ法を適 用することで、推論の経路を視覚化する。 提案モデル • マイナンバー制度では個人番号によって複数 の機関を行き来することなく社会保障などの 手続きを行うことができるが、その情報には 他の様々な情報が紐付されているので、情報 漏えいの危険性は否定できない。 マイナンバー 保険料 納付状況 給与・報酬 情報 過去の税務 申告情報 勤め先情報 提案モデル • 下のグラフは複数の推論ができてしまうグラ フである。このグラフにダイクストラ法を適用 して推論経路を検出する。 𝑂1 𝑂2 𝑂7 𝑂3 𝑂6 𝑂4 𝑂5 提案モデル • ハイパーグラフに重み𝐸𝑖𝑗 (時間的コスト+貴重 さ)をつけることで最短経路を求めることがで きる。時間的コストはその情報を読む際の時 間、貴重さはその情報の貴重さとする。 𝑂1 𝑂2 𝐸13 𝐸23 𝑂3 𝑂7 𝐸37 𝐸67 𝐸43 𝑂4 𝐸53 𝑂5 𝑂6 提案モデルにおけるダイクストラ法 𝑂1 𝑂2 𝐸23 𝐸13 𝑂7 𝑂3 𝐸37 𝐸67 𝐸43 𝑂4 𝐸53 𝑂5 𝑂6 • 𝑂1 から𝑂7 への最短経路と、 𝑂2 から𝑂7 への最短経路のど ちらが推論経路かを求める には、隣接する辺の重みを 順次足していく。 • 最終的に、足していって重み が少ないものが推論経路と なる。 • 重みについてはこちらで設定 する。 マイナンバー制度上の ハイパーグラフ 𝑂1 3 𝑂2 2 4 𝑂7 3 𝑂1 …被支払者名 2 4 5 給与支払調書 𝑂8 𝑂2 …被支払者住所 𝑂9 𝑂3 …被支払者生年月日 2 2 𝑂11 𝑂4 𝑂3 2 4 𝑂5 3 3.5 𝑂6 出生届 𝑂4 …出生者住所 𝑂10 4 𝑂5 …出生者生年月日 2 𝑂6 …出生病院 3 𝑂12 法定調書 印鑑登録書 𝑂7 …登録印鑑 𝑂10 …提出者氏名 𝑂8 …氏名 𝑂11 …提出者住所 𝑂9 …住所 𝑂12 …提出者電話番号 最短経路 𝑂1 3 𝑂2 2 7 4 𝑂7 3 4 5 • 𝑂8 からの最短経路は赤線部で 重みは7、 𝑂9 からの最短経路 の重みは9で𝑂8 から𝑂12 2 が推論されやすい経路となる。 𝑂8 𝑂9 2 2 𝑂11 𝑂4 𝑂3 2 4 𝑂5 3 3.5 𝑂6 𝑂10 4 2 3 𝑂12 7 • 印鑑登録書の氏名と住所から、 法定調書の提出者電話番号が 推論により判明してしまう。 最短経路に対しての処理 • この求めた最短経路が最も推論されやすい ので、重みが2の経路を開放除去すると推論 経路はなくなる。 • すなわち𝑂8 (印鑑登録書)を読んだ者の 𝑂10 (法定調書)へのread権をなくす。 2 𝑂8 𝑂10 2 3 𝑂12 7 開放除去の結果 • 辺を開放除去したので、推論経路はなくなっ た。 2 𝑂1 4 𝑂2 𝑂7 3 4 5 𝑂8 𝑂9 2 2 𝑂11 𝑂4 𝑂3 2 4 𝑂5 3 3.5 𝑂6 𝑂10 4 2 3 𝑂12 まとめ • ハイパーグラフとダイクストラ法を用いて推論 経路を検出し、推論を防げることがわかった。 • マイナンバー制度で扱う情報を自動的にハイ パーグラフに当てはめることができたら、処理 が簡略化できると考えられる。 • また推論経路の辺を開放除去した際に、他 のオブジェクトへのread権に支障が出る場合 も考えられるので、これを防ぐことが課題であ る。
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