PHITS Multi-Purpose Particle and Heavy Ion Transport code System PHITSによるX線治療シミュレーション 基本操作復習編 2014年5月改訂 title 1 実習内容 奨励設定(recommendationフォルダ内)の PhotonTherapyを用いてPHITSの基礎を復 習すると共に、放射線治療シミュレーションを 実行する上で必要となる考え方をまとめる。 PhotonTherapy.inp 光子治療計画の例題。電子加速器から発生す るX線や中性子の線量を計算する。 Contents 2 実習内容 1. 実行の流れと使い方の復習 2. タリーの変更(規格化,領域の変更) 3. ジオメトリの変更(コリメータの追加) 4. エネルギースペクトルの確認 5. まとめ Table of contents 3 PHITS実行の流れ 1. 入力ファイルの作成 – 3次元体系、放射線源、検出器(タリー)の設定 – 計算条件の選択 2. PHITSの実行 – 統計量(ヒストリー数)の十分な計算 3. 出力ファイルの確認と計算結果の分析 – PHITS計算のまとめファイル(phits.out) – 各タリー結果の数値データと図 PHITS simulation 4 2 cm W(Tungsten) target Electron 20 MeV 1 cm X-ray (photon) ICRU soft tissue 10 cm PhotonTherapy.inp 10 cm Tally [t-heat] (file=heat.out) 吸収線量の空間分布 [t-track] (file=track.out) フラックス(粒子束)の空間分布 Input file 5 PhotonTherapy.inp [Parameters] ・・・・・・ ・・・・・・ emin(2) = 1.000000000E-10 dmax(2) = 20.0000000 中性子(2)の設定: 1×10-10MeV以上で粒子輸送を行い、 20MeV未満の場合に核データを使用する。 emin(12) = 1.000000000E-01 emin(13) = 1.000000000E-01 emin(14) = 1.000000000E-03 dmax(12) = 1000.00000 dmax(13) = 1000.00000 dmax(14) = 1000.00000 電子(12), 陽電子(13), 光子(14)の設定: それぞれ0.1MeV, 0.1MeV, 1keV以上で 粒子輸送を行う。また、1GeV未満の場合に 電子-原子或いは光子-原子データを使用す る。 igamma = 2 残留核のガンマ崩壊を考慮するオプション ipnint = 1 光核反応を考慮するオプション ・・・・・・ ・・・・・・ これらの設定を施すことにより、電子・光子の輸送と 物質との間の相互作用、光核反応を通した中性子 生成、更にその中性子と物質との間の相互作用を 考慮することが可能となる。 Input file 6 物理現象 W(Tungsten) target Electron 20 MeV X-ray (photon) ICRU soft tissue この体系で何が起こっているだろうか? • 加速電子とW標的の衝突:制動放射によりX線(光子)が生成される。(PHITS では電子-原子データを使用する。dmax(12), dmax(13)の設定が必要。) • X線の物質(W標的、ICRU軟部組織)との相互作用:光電効果、コンプトン散 乱、電子対生成により2次電子が生成される。他、光核反応を通して中性子 やガンマ線(光子)、放射性同位体が生成される。(PHITSでは光子-原子デー タを使用し、光核反応を考慮するオプションを設定する。dmax(14), ipnint=1 の設定が必要。) • 中性子と物質の間の相互作用:低エネルギー中性子による原子核反応が起 こり、中性子捕獲反応などを通して放射性同位体を生成する。(PHITSでは核 データを使用し、場合によってはイベントジェネレータ-モードが必要。 dmax(2), igamma=2, e-mode=1を設定する。) Physics 7 PHITSの実行 PhotonTherapy.inpを入力ファイルとして、PHITSを 実行してみよう。 • 出力ファイル – Phits.out – Heat.out (heat.eps), heat_err.out (heat_err.eps) – Track.out (track.eps), track_err.out (track_err.eps) PHITS simulation 8 計算結果 phits.out 計算のSummary バージョン情報 Output file 9 計算結果 track.eps (1ページ目) 電子のフラックス分布 タングステン標的 ICRU軟部組織 20MeV電子線源 Output file 10 計算結果 track.eps (2ページ目) 光子のフラックス分布 Output file 11 計算結果 track.eps (3ページ目) 中性子のフラックス分布 Output file 12 計算結果 heat.eps 吸収線量分布 タングステン標的 ICRU軟部組織 Output file 13 体系の確認 [parameters]セクションのicntlを0から8に変えて、PHITSを実行 • 輸送計算を行わずに体系を確認するためのオプション • タリーの中に”gshow=1”とあるタリーがジオメトリ描画用に使われる track.eps タングステン標的 ICRU軟部組織 Geometry 14 実習内容 1. 実行の流れと使い方の復習 2. タリーの変更(規格化,領域の変更) 3. ジオメトリの変更(コリメータの追加) 4. エネルギースペクトルの確認 5. まとめ Table of contents 15 タリー結果の規格化 [t-heat]あるいは[t-deposit]において、 unit=0とすることにより Gy/sourceを単位とする吸収線量を測定(タリー)できます。 ただし、この結果をGy単位の物理量に変換するためには、照 射電流や照射時間、duty factorを考慮する必要があります。 電子を線源とするシミュレーションを行った場合、unit=0として得られる 線源あたりの吸収線量[Gy/source]は、線源電子1個あたりの物理量と して規格化されています。そこで例えば、照射電流がI[A]、照射時間が T[s]、Duty FactorがFの場合、入射電子数は、 I [C/s] × T [s] ×F ÷ 1.60×10-19 [C/source] = I×T×F / (1.60×10-19) [source] となりますので、実際の吸収線量[Gy]は、タリー結果にこの値を乗じる ことで求まります。 *unit=0について: タリーする領域に複数の物質が混在する場合、 その領域の吸収線量は全体の平均値とならないのでご注意くださ い。 例; E1/M1+E2/M2 [PHITS] ≠ (E1+ E2)/(M1+ M2) [平均吸収線量] Change Tally 16 タリー結果の規格化 [T-Heat] title = Heat in xy mesh = xyz x-type = 2 xmin = -5.000000 xmax = 5.000000 nx = 50 y-type = 2 ymin = -5.000000 ymax = 5.000000 ny = 1 z-type = 2 zmin = -2.00000 zmax = 22.00000 nz = 120 unit = 0 factor=1.0e-3*300*0.01/(1.6*1e-19) z-txt = Absorbed Dose [Gy] Duty Factor = 0.01の電子加速器で 1mAを5分(300秒)照射した場合 icntl =0として実行 heat.eps Change Tally 17 課題1:タリー領域の変更 [T-Heat] title = Heat in xy mesh = xyz r-z x-type = r-type = 22 xmin = rmin = -5.000000 0.000000 xmax = rmax = 5.000000 5.000000 nx = nr = 550 $ y-type y-type== 22 $ ymin ymin == -5.000000 -5.000000 $ ymax = 5.000000 $ ny ny== 11 z-type = 2 zmin = -2.00000 5.00000 zmax = 15.00000 22.00000 nz = 120 5 unit = 0 factor=1.0e-3*300*0.01/(1.6*1e-19) y-txt z-txt == Absorbed Absorbed Dose Dose [Gy] [Gy] axis = r xz 軟組織の領域のみタリーする • • • • • [t-heat]のmeshをxyzからr-zに変更 半径方向は,0から5cmまで5等分 深さ方向は,5cmから15cmまで5等分 axis=rとして半径方向の線量分布をプロット z-txtをy-txtに変更(2次元プロットのため) [t-heat]を修正して実行 heat.eps (1ページ目) Change Tally 18 実習内容 1. 実行の流れと使い方の復習 2. タリーの変更(規格化,領域の変更) 3. ジオメトリの変更(コリメータの追加) 4. エネルギースペクトルの確認 5. まとめ Table of contents 19 課題2:鉛コリメータの追加 タングステン標的 鉛コリメータ ICRU軟組織 Wターゲットと軟組織の間に,内径1cm,外径5cm,厚さ2cm の鉛コリメータ(密度11.34g/cm3)を追加する • [material]セクションに鉛(208Pbのみで構成されると仮定)を追加 • [surface]セクションにコリメータの幅を定義する面(z=2 & 4 cm)を追加 • [cell]セクションにコリメータの領域を定義 その際,その領域を空気から除く必要があることに注意 • icntl = 8としてPHITSを実行し,ジオメトリを確認 Change Geometry 20 鉛コリメータによる効果 track.eps heat.eps (1ページ目) 鉛コリメータ追加 Change Geometry 21 実習内容 1. 実行の流れと使い方の復習 2. タリーの変更(規格化,領域の変更) 3. ジオメトリの変更(コリメータの追加) 4. エネルギースペクトルの確認 5. まとめ Table of contents 22 課題3:[t-track]の変更 [T-Track] title = Track in xyz mesh = xyz x-type = 2 xmin = -5.000000 xmax = 5.000000 nx = 1 50 ... z-type = 2 zmin = -2.00000 zmax = 16.00000 nz = 90 18 2D-type = 3 axis = eng xz ... e-type = 1 3 ne = 100 1 emin = 0.00.001 1000.0 emax = 100.0 エネルギースペクトルを出力する • • • • メッシュを減らす(nx = 1, ny = 1, nz = 18) axisをengにする エネルギーメッシュをLog分割(e-type=3)とする 1keVから100MeVまで100ビンに分ける icntl =0として実行 track.eps(1ページ目) Check Energy Spectrum 23 Wターゲット内のエネルギースペクトル track.eps(3ページ目) 陽電子消滅 (511keV) 制動放射線 (< 20MeV) 特性X線 (69keV) 入射電子 (20MeV) 特性X線 (8.4keV) 光中性子 切断エネルギー (100keV) Check Energy Spectrum 24 実習内容 1. 実行の流れと使い方の復習 2. タリーの変更(規格化,領域の変更) 3. ジオメトリの変更(コリメータの追加) 4. エネルギースペクトルの確認 5. まとめ Table of contents 25 まとめ • 奨励設定のPhotonTherapyを例題として、PHITS をX線治療のシミュレーションに利用する基本的 な操作を学習した。 • PHITSは,X線治療シミュレーションで必要となる 全ての物理過程(制動放射線発生,特性X線発 生,光核反応など)を再現することができる。 • PHITSのタリー結果は,1線源あたりに規格化さ れているので,電流や照射時間などの情報を用 いて再規格化する必要がある。 より具体的な利用方法は応用編(application)で学習 Summary 26
© Copyright 2024 ExpyDoc