書評 橋本直樹著 『食品不安 安全と安心の境界』 日本放送出版協会、2007 06A2137C 長谷川泰史 1 食の安全は確保されているのか • 従来:農薬、食品添加物(合成、天然) • 近年:遺伝子組み換え食品(農産物)、ダイオ キシン汚染、BSE汚染牛肉 • 安全:(食品安全委員会などの機関が)科学 的根拠に基づいて客観的に判断できる問題 • 安心:(消費者の)主観的な心の問題 →食べるかどうかは消費者自身の心の問題 ⇔国・企業の努力<消費者一人一人の判断 2 概要 • 食の不安の源流(第1章) ・・・過去の農薬、食品添加物による健康被害 • 食品添加物(第2章)、残留農薬(第3章) ・・・安全性(法規制)と危険性(許容摂取量) • 科学知識(第4章)、食品表示(第5章) ・・・生産者と消費者をつなぐ情報 • 安全と安心の境界(第6章) ・・・リスク・ベネフィット(危険と効用の比較) 3 危機にある日本の食生活 • 総合食料自給率40%(穀物自給率28%) →自給だけでまかなえずに輸入しているもの ・・・輸入飼料トウモロコシ、油糧大豆 →自給できる余力はあるが、「安さ」や「便利 さ」を求めて輸入しているもの ・・・野菜(自給率83%)、果物(自給率44%) • 輸入依存←世界の食料利害の影響大 ・・・食料とその安全性の確保が難しい 4 食料の安全保障 • 経営効率の向上により、生産コストを引き下 げても、輸入穀物の価格への対抗は困難 →国産農産物の増産はあまり期待できない • 日本の今後あるべき食料政策の選択肢 1.農産物市場の全面的開放(完全自由貿易) ・・・日本の農業生産に打撃を与えるリスク大 2.食料自給率を上げる努力 ・・・コストを下げる方法やその負担者の問題 5 まとめ • 食物の(非)安全性の科学的根拠、小さな危 険でも大きく不安に感じる社会的背景 →農薬や食品添加物による健康被害の危険 性はきわめて低い(煽られた食品不安?) • にわかに厳しくなったわが国の食料事情 →消費者の協力も必要(コスト負担?) • 食の安心革命(「安全」を「安心」に変える) →消費者一人一人の判断材料としての情報 6
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