独法化に伴う作業環境測定の実施に関する技術的考察

独法化に伴う作業環境測定の実施に関する
技術的考察
原爆放射線医科学研究所
北川和英
(第一種作業環境測定士(放射性物質))
目次

作業環境測定および作業環境測定士とは?

測定の実務について

課題など
独法化に伴って

遵守の義務を外れた法律


人事院規則
遵守の義務が生じた法律(例)

労働基準法

労働安全衛生法
事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令
で定めるものについて、必要な作業環境測定を行い、及びその結
果を記録しておかなければならない。(第六十五条第1項)
 作業環境測定法
作業環境測定とは

以下の物質を使用する作業場では、作業環境測定士が実測
を行わなければならない。(括弧内は関係する法律)


鉱物性粉じん
放射性物質(電離放射線障害防止規則)


特定化学物質(特定化学物質等障害予防規則)



使用数量にかかわらず、測定の義務が生じる。
金属類
有機溶剤(有機溶剤中毒予防規則)


非密封放射性同位元素を使用する作業場では、月に一度の測定を行わなけれ
ばならない。
ガソリンなどの第三種溶剤、第一種及び第二種溶剤であっても一定数量以下の
使用量の場合はこの限りではない。
政令で定める有害な業務を行う作業場は他にもあるが、作業環境測定
士による実測の規定はない。
作業環境測定士になるには?

試験で測定士になる場合

受験資格


試験合格をする




大学卒業後、一年以上の労働安全衛生実務に就いた者
第一種試験(粉じん、放射能、特化物、金属、有機の選択科目)、
第二種試験(四教科)を受験し合格する
二種試験合格後、講習(90000円)を受講
一種試験合格後、合格した科目に応じた講習(80000円)を受講
試験免除措置で測定士になる場合

特定資格を持ち、一定の条件の経験等を持つ者は、試験の一部、ま
たは全部の試験が免除になり、講習受講のみで測定士になれる
測定にあたって

作業環境測定士には・・・


試料採取方法とその測定方法については、指針によ
り定められている。
が・・・

何を採取し測定するかに関しては、各測定士の判断
に任せられている。
目次

作業環境測定および作業環境測定士とは?

測定の実務について

課題など
測定精度の検証

測定機器の精度に関する検証


測定機器メーカーからのデータ提供
実測値による計算
↓
検出下限界の算出

捕集時間の算出


H-3,C-14
フィルターを使用したサンプル
30分
10分
作業環境測定の手順
捕集容器などの準備
↓
サンプル捕集
↓
測定
↓
データの解析及び報告書作成
捕集材など
H-3,C-14捕集用バイアル
全β、全γ用捕集材(HE40T)
ヨウ素捕集用活性炭フィルター(CP-20)
作業環境測定の手順
捕集容器などの準備(1時間)
↓
サンプル捕集
↓
測定
↓
データの解析及び報告書作成
捕集機器
全β、全γ、ヨウ素捕集器
H-3,C-14捕集器
捕集方法等(1)

H-3の捕集について
捕集方法
 捕集ポイント


冷却凝縮捕集法(コールドトラップ)
40ヶ所
C-14の捕集について
捕集方法
 捕集ポイント

液体捕集法(水バブラー)
35ヶ所
捕集方法の概略図
H-3の冷却凝縮捕集法
C-14の液体捕集法(水バブラー)
空気(1ℓ/min.)
U字管
炭酸ガストラップ
ジュワー瓶
H-3を含む霜
バイアル
エタノール + ドライアイス
モノエタノールアミン
捕集方法等(1)

H-3の捕集について
捕集方法
 捕集ポイント


冷却凝縮捕集法(コールドトラップ)
40ヶ所
C-14の捕集について
捕集方法
 捕集ポイント

液体捕集法(水バブラー)
35ヶ所
捕集方法等(2)

全β、全γ核種の捕集について
捕集方法
 捕集ポイント


ろ過捕集法
35ヶ所
ヨウ素の捕集について
捕集方法
 捕集ポイント

固体捕集法
12ヶ所
捕集方法の概略図
全β、全γの『ろ過捕集法』
全β、全γの『ろ過捕集法』
+ ヨウ素の固体捕集法
空気(50ℓ/min.)
空気(50ℓ/min.)
HE-40Tろ紙
HE-40Tろ紙
CP-20チャコール
フィルター
捕集方法等

全β、全γ核種の捕集について
捕集方法
 捕集ポイント


ろ過捕集法
35ヶ所
ヨウ素の捕集について
捕集方法
 捕集ポイント

固体捕集法
12ヶ所
捕集時間

H-3とC-14について
約35時間
実際の捕集時間
作業時間
20時間
15時間程度



全β、全γおよびヨウ素について



実際の捕集時間
作業時間
約8時間
6時間
2時間
留意点

H-3(H.L. 12.33y)とC-14(H.L. 5730y)については半減期が長い
ため、過去数年間程度使用実績がない場合でも、測定を行う
こと。
作業環境測定の手順
捕集容器などの準備(1時間)
↓
サンプル捕集(6日)
↓
測定
↓
データの解析及び報告書作成
測定機器
β線自動測定装置JDC3201 (Aloka社製)
γ線測定装置 ARC-380(Aloka社製)
液体シンチレーションカウンター
LSC-950 (Alola社製)
測定について

H-3,C-14の測定
1サンプル、一回あたりの測定時間
 1サンプルの測定回数
 全サンプル数(B.G.込)
 総測定時間


10分
5回
77本
約77時間
技術的留意点


C-14の採取に用いたモノエタノールアミンは、時間経過とともに酸
化して測定精度の低下を起こすため、捕集後一週間以内の測定
を要する。
『不確かさ』要因の検証のため、3回以上の繰り返し測定が必要。
測定について

全βの測定
1サンプル、一回あたりの測定時間
 1サンプルの測定回数
 全サンプル数(B.G.込)
 総測定時間


10分
5回
36枚
約30時間
技術的留意点


サンプル採取直後の測定は、空気中ラドンの崩壊核種 Pb-214な
どの寄与が大きいため、6時間程度の冷却時間が必要。
『不確かさ』要因の検証のため、3回以上の測定が必要。
測定について

全γの測定
1サンプル、一回あたりの測定時間
 1サンプルの測定回数
 全サンプル数(B.G.込)
 総測定時間

10分
5回
36枚
約30時間
測定について

I-125領域の測定
1サンプル、一回あたりの測定時間
 1サンプルの測定回数
 全サンプル数(B.G.込)
 総測定時間


10分
5回
13本
約11時間
I-131領域の測定
1サンプル、一回あたりの測定時間
 1サンプルの測定回数
 全サンプル数(B.G.込)
 総測定時間

10分
5回
13枚
約11時間
作業環境測定の手順
捕集容器などの準備(1時間)
↓
サンプル捕集(6日)
↓
測定(4日)
↓
データの解析及び報告書作成
データの解析および報告


利用したソフト
MS-Excel
解析システム作成で注意したこと
1.
データが非常に多いため、報告書までの一連の流
れを、『入力』即『結果』、となるように考慮して作成し
た。
2.
報告書は、作業環境測定法だけでなく、放射線障害
防止法にも準拠するように考慮して作成した。



全ての核種の総合計に対する濃度割合の考察
三ヶ月平均濃度に対する考察
主任者および施設責任者の位置付けの考慮
毎月の各種毎の報告書
室内空気中濃度測定
施設名
放射線の種類 ガンマ線
測定核種 Co-57
化学形 全ての化合物
測定領域 82~181keV
作業環境測定士の氏名
(登録番号)
試料捕集装置
測定機器
№
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
採取箇所
原爆放射線医科学研究所
放射線先端医学実験施設 RI-A・B棟
北川和英
② その他( )
低温室
貯蔵室
配分室
平成16年7月12日
平成16年7月13日
平成16年7月12日
平成16年7月13日
平成16年7月12日
平成16年7月13日
放射線分子変化実験室
平成16年7月12日
平成16年7月13日
汚染検査室 平成16年7月12日
A棟 一階廊下平成16年7月12日
平成16年7月13日
平成16年7月12日
腫瘍発生実験室
平成16年7月13日
平成16年7月12日
血液細胞実験室
平成16年7月13日
暗室/前室 平成16年7月12日
平成16年7月12日
測定器室
癌病態実験室平成16年7月12日
A棟 二階廊下平成16年7月12日
標本保管室 平成16年7月12日
平成16年7月13日
極低レベル測定室
平成16年7月12日
平成16年7月13日
標本観察室
平成16年7月12日
平成16年7月13日
管理作業室・天秤室
平成16年7月12日
平成16年7月13日
廃棄物保管室平成16年7月12日
平成16年7月12日
B棟廊下
平成16年7月13日
平成16年7月13日
平成16年7月13日
平成16年7月13日
平成16年7月13日
平成16年7月13日
平成16年7月13日
試料測定値
cpm
58.82
62.14
61.00
61.56
61.36
62.50
61.62
62.08
61.50
59.04
61.74
61.58
61.10
63.18
62.76
62.26
62.30
61.26
管理担当者
㊞
㊞
㊞
( 34 - 526 ) ㊞
① γ線測定器 ARC-380 ② その他( ) 測定日
放射線取扱主任者
デザイン・サンプリング・分析
① ダストサンプラ DSM-351 捕集日
施設安全管理者
Net CPM
1.78
0.64
1.20
1.00
2.14
1.26
1.72
1.14
1.38
1.22
0.74
2.82
2.40
1.90
1.94
0.90
DPM
放射能量
(Bq)
検出限界
(Bq)
1.87
0.67
1.26
1.05
2.25
1.33
1.81
1.20
1.45
1.28
0.78
2.97
2.53
2.00
2.04
0.95
3.12E-02
1.12E-02
2.11E-02
1.75E-02
3.75E-02
2.21E-02
3.02E-02
2.00E-02
2.42E-02
2.14E-02
1.30E-02
4.95E-02
4.21E-02
3.33E-02
3.40E-02
1.58E-02
0.65
0.65
0.65
0.65
0.65
0.65
0.65
0.65
0.65
0.65
0.65
0.65
0.65
0.65
0.65
0.65
0.65
0.65
使用フィルタ
空気流量率
B.G. (cpm)
検出効率 (%)
HE-40T
約 50 (㍑/min.)
60.36 ± 2.27
95
積算空気量 平均濃度
(㍑)
㎤)
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
6.25E-08
2.25E-08
4.21E-08
3.51E-08
7.51E-08
4.42E-08
6.04E-08
4.00E-08
4.84E-08
4.28E-08
2.60E-08
9.89E-08
8.42E-08
6.67E-08
6.81E-08
3.16E-08
(Bq/ 検出下限濃
度 (Bq/㎤)
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
1.30E-06
備 考
A棟の最大濃度
B棟の最大濃度
月々の各棟毎の報告書
作業環境測定報告書
事業所名
原爆放射線医科学研究所 放射線先端医学実験施設
測定棟
RI-A棟
平均濃度の最大値
(Bq/㎤)
ベ
ー
タ
線
ガ
ン
マ
線
H-3
C-14
P-32
P-33
S-35
Ca-45
Na-22
Cr-51
Co-57
Rb-86
Hg-203
6.82E-07
2.33E-07
1.11E-06
1.11E-06
1.11E-06
1.11E-06
7.90E-07
1.94E-06
7.51E-08
7.90E-07
1.94E-06
『平均濃度/濃度限度』の合計値
濃度限度
(Bq/㎤)
5.00E-01
4.00E-02
7.00E-03
2.00E-02
2.00E-02
9.00E-03
1.00E-02
6.00E-01
3.00E-02
2.00E-02
3.00E-03
平均濃度/濃度限度
判定結果
1.36E-06
5.81E-06
1.59E-04
5.57E-05
5.57E-05
1.24E-04
7.90E-05
3.24E-06
2.50E-06
3.95E-05
6.48E-04
1.17E-03
問題なし
問題なし
問題なし
問題なし
問題なし
問題なし
問題なし
問題なし
問題なし
問題なし
問題なし
以上の結果,RI-A棟における濃度限度割合の合計は,法令に定める濃度限度及び管理濃度限度を超えない。
平成16年7月29日
作業環境測定士(放射性物質)
北川和英 ㊞
三ヶ月濃度の平均
作業環境測定 濃度の状況
放射線先端医学実験施設 RI-A・B棟
評価施設
2004年4月
評価期間
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
2004年6月
全ての化合物
化学形
№
~
採取場所
低温室
貯蔵室
配分室
放射線分子変化実験室
汚染検査室
A棟 一階廊下
腫瘍発生実験室
血液細胞実験室
暗室/前室
測定器室
癌病態実験室
A棟 二階廊下
標本保管室
極低レベル測定室
標本観察室
管理作業室・天秤室
廃棄物保管室
B棟 廊下
各月の空気中濃度(Bq/㎤)
4月
5月
6月
5.21E-07
2.38E-08
2.91E-07
1.92E-07
4.75E-08
2.56E-07
3.76E-08
2.54E-07
3.09E-07
2.28E-07
3.07E-07
1.82E-07
1.47E-07
1.09E-07
9.91E-09
4.36E-08
1.17E-07
3.05E-07
3.96E-08
2.00E-07
5.13E-07
1.55E-07
1.13E-06
3.13E-07
7.92E-08
1.37E-07
2.75E-07
3.29E-07
3.70E-07
2.77E-07
-
3月間平均濃度
(Bq/㎤)
2.72E-07
2.91E-07
1.65E-07
1.46E-07
2.68E-07
2.12E-07
5.94E-08
4.36E-08
1.17E-07
1.72E-07
3.57E-07
6.41E-07
1.96E-07
2.06E-07
3.50E-07
2.77E-07
評価核種
空気中濃度限度
(Bq/㎤)
P-32
P-33
S-35
7.00E-03
2.00E-02
2.00E-02
平均濃度の濃度限度に対する割合
P-32
P-33
S-35
3.89E-05
1.36E-05
1.36E-05
4.16E-05
1.46E-05
1.46E-05
2.36E-05
8.25E-06
8.25E-06
2.08E-05
7.28E-06
7.28E-06
3.83E-05
1.34E-05
1.34E-05
3.03E-05
1.06E-05
1.06E-05
8.49E-06
2.97E-06
2.97E-06
6.23E-06
2.18E-06
2.18E-06
1.67E-05
5.84E-06
5.84E-06
2.46E-05
8.62E-06
8.62E-06
5.09E-05
1.78E-05
1.78E-05
9.16E-05
3.20E-05
3.20E-05
2.80E-05
9.81E-06
9.81E-06
2.94E-05
1.03E-05
1.03E-05
5.00E-05
1.75E-05
1.75E-05
3.96E-05
1.39E-05
1.39E-05
注:表中の『 - 』は、B.G.以下を示す
作業環境測定の手順
捕集容器などの準備(1時間)
↓
サンプル捕集(6日)
↓
測定(3日)
↓
データの解析及び報告書作成(0.5日)
目次

作業環境測定および作業環境測定士とは?

測定の実務について

課題など
作業において工夫した点

捕集作業の効率化による、作業時間の短縮


測定精度の維持


H-3、C-14捕集剤の酸化度を少なくするため
測定時間を長く、複数回(5回)行うことにより、データ
の精度を高めた
報告書作成の効率化

最小限の数値入力で、報告書が作成できるように、そ
のシステムを構築した
課題など

作業が非常に煩雑で、時間を要する。
→ 現在は全学で外注となっている。


(将来的に学内で行う場合は捕集時間の短縮のため)組
織間による機器の相互利用が必要。
第二種有機溶剤(キシレンなど)を大量に使
用するため、学内で行う場合は、有機溶剤の
作業環境測定も必要となる。 → 現在のところ有
資格者はいない。