スライド 1 - 早稲田大学

遺伝子組換え実験を安全に行うには
遺伝子組換え実験の規制
・「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に
関する法律(カルタヘナ法)」(2003年6月18日公布)によって規制。
*違反の場合は罰則がある
・早稲田大学では法令に基づき、「生物実験安全管理規程」を設け、「生
物実験管理委員会」及び「遺伝子組換え実験安全委員会」を設置すると
ともに、箇所ごとに「安全主任者」を置いている。
・遺伝子組換え動物を使用する場合は、動物実験に関する手続きも
行わなければならない。
・「人を対象とする研究等倫理規程」に係る実験を行う場合は、申請
が必要。
・「ヒトES細胞の使用に関する規程」に係る実験を行う場合は、申請
が必要。
・その他の法律にも注意;感染症法、家畜伝染病予防法等
皆さんは実験従事者!
実験従事者の義務
(1)実験開始前に教育訓練を受けなければならない。
①法律(省令・告示を含む)、学内安全管理規程について
②拡散防止措置に関する知識及び技術
③微生物等あるいは動植物の安全取扱い技術
④実施する実験の危険度についての知識
⑤事故時の対応について
(2)法律等の内容を理解し、安全確保について十分に自覚し、
必要な配慮をしなければならない。
(3)健康管理に努め、組換え実験が原因と考えられる変調
をきたしたときは報告する。
1、法律について
カルタヘナ議定書
遺伝子組換え技術が進展していく中で、この技術が人類に多大なメリットをもたらす一方
で、改変された生物の使用等による生物の多様性への悪影響を及ぼすおそれがあること
が指摘され、 「生物の多様性に関する条約」(1992年採択)の枠組みの下で、2000年に国
際的な枠組みを定めた「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティーに関するカルタ
ヘナ議定書」が採択された。日本でも議定書に基づく義務を履行するために「法律」が制定
された。
「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による
生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」
目的;国際的に協力して生物の多様性の確保を図るため、遺伝子組換え生物等
の使用等の規制に関する措置を講ずることにより、議定書の的確かつ円滑な
実施を確保し、もって人類の福祉に貢献するとともに現在及び将来の国民の
健康で文化的な生活の確保に寄与すること。
内容;第一種使用、第二種使用
拡散防止措置を執る義務(第二種使用等)
事故時の措置、輸入する生物の検査、情報提供の義務、輸出に関する手続き、
主務大臣による立ち入り検査・措置命令、罰則
法律・政省令・告示の全体像
<第一種使用等関係>
【法律】
<第二種使用等関係>
① 法律 〔平成 15 (2003) 年 6 月 18 日公布〕 ・目的、定義、規制の枠組み、罰則等
【政令】
② 主務大臣を定める政令 〔平成 15 年 6 月 18 日公布〕
③ 手数料を定める政令
〔平成 16年 2月 12日公布〕
【省令】
④ 法施行規則 (6省共同) 〔平成 15 年 11 月 21 日公布〕
⑦ 研究開発等に係る第二種使用等に当たって執るべき拡散
防止措置等を定める省令(文・環共同)
《二種省令》 〔平成 16 年 1 月 29 日公布〕
第二種使用等に関する事項
執るべき拡散防止措置の内容、確認手続き
⑧ 産業利用等に係る第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措
置等を定める省令(財・厚・農・経・環共同)
〔平成 16 年 1 月 29 日公布〕
【告示】
⑤ 法第三条の規定に基づく基本的事項(6省共同) 〔平成 15 年 11 月 21 日公布〕
⑥ 第一種使用等による生物多様性影響
評価実施要綱(6省共同)
〔平成 15年11月 21日公布〕
認定宿主ベクター系のリスト、
実験分類ごとの生物のリスト等
⑨ ⑦の省令に基づく告示(文)
《二種告示》
〔平成 16 年 1 月 29 日公布〕
⑩・⑪
⑧の省令に基づく告示(経・厚)
〔平成 16 年 1月 29日、2月19日公布〕
第二種使用等について
第一種使用等
第二種使用等
実験室内での実験など、環境中への拡散を防止しつつ行う使用等
実験
遺伝子組換え実験
遺伝子組換え技術により得られた核酸又はその複製物を有する遺伝子組換え生
物等の使用等(実験の過程において行われる保管・運搬を含む)
微生物使用実験
実
験
区
分
ほ場での栽培など、環境中への拡散を防
止しないで行う使用等
大量培養実験
遺伝子組換え微生物を用いる実験であって、他に当てはまらないもの
容量が20ℓを超える培養設備を用いる実験
動物使用実験
動物作成実験
遺伝子組換え動物(遺伝子組換え生物等を保有しているものを
除く)を用いる実験
動物接種実験
動物により保有されている遺伝子組換え生物等を用いる実験
植物等使用実験
植物作成実験
遺伝子組換え植物(遺伝子組換え生物等を保有しているものを
除く)を用いる実験
植物接種実験
植物により保有されている遺伝子組換え生物等を用いる実験
きのこ作成実験
細胞融合実験
遺伝子組換えきのこ類を用いる実験
細胞融合技術により得られた核酸又はその複製物を有する遺伝子組換え生物
等の使用等(実験の過程において行われる保管・運搬を含む)
保管
実験の過程において行われる保管以外の保管
運搬
実験の過程において行われる運搬以外の運搬 (公道を跨ぐ運搬)
法律における言葉の定義
「遺伝子組換え生物等」とは、「遺伝子組換え技術」の利用により得られた核酸又はその複製
物を有する「生物」のこと。
「遺伝子組換え技術」とは、加工した核酸を細胞やウイルスなどの中で複製させることや他の
細胞へ移転させることを目的として、細胞外において核酸を加工
する技術のこと。
「使用等」とは、遺伝子組換え実験で行われるあらゆる行為のこと。
実験、培養、飼育、接種、保管、運搬、などなど。
「組換え核酸」とは「遺伝子組換え技術」の利用により得られた核酸又はその複製物。
「宿主」とは、「組換え核酸」が移入される「生物」のこと。
「ベクター」とは、「組換え核酸」のうち移入された宿主内で当該「組換え核酸」の全部又は
一部を複製させるもの。(プラスミド又はウイルスの核酸〈ウイルスそのものではない〉)
「供与核酸」とは、「組換え核酸」のうち「ベクター」以外の部分。
「同定済核酸」と「未同定核酸」に区分される(機能が明らかかどうか)。
「核酸供与体」とは、「供与核酸」が由来する生物(ヒトを含む)のこと。
「実験分類」とは、「宿主」又は「核酸供与体」について定められる分類であって、遺伝子組換
え実験にあたって執るべき拡散防止措置を定める際に用いられるもの。
遺伝子組換え実験例
遺伝子組換え技術
核酸供与体
核酸
(ヒトを含む生物)
ベクター
規制
供与核酸
宿主
(生物)
組換え核酸
遺伝子組換え生物等
移入
使用等
実験、培養、飼育、接種、保管、運搬
「生物」の定義
(遺伝子組換え「生物」)
法では、「核酸を転移し又は複製する能力のある一の細胞又は細胞群、ウイルス及
びウイロイド」と定義され、次にあげるものは除外される、
①ヒトの細胞等、②分化能を有する又は分化した細胞等(個体及び配偶子を除く)で
あって自然条件において個体に生育しないもの。
生物として扱われるもの
(法の対象になる)
原核生物、真菌
(大腸菌、酵母など)
動植物の個体
動植物の配偶子(卵、花粉)
動物の胚・胎児(胎仔)
植物の種子・挿し木
ウイルス・ウイロイド・
バクテリオファージ
生物として扱われないもの
(法の対象外)
ヒトの細胞等(個体・配偶子・
胚・培養細胞・臓器)
動植物の培養細胞(ES細胞を含む)
死んだ動植物個体(核酸の移転・
複製能の無いもの)
動物の組織・臓器
切りキャベツ、種無し果実、
プリオン・プラスミド
2、拡散防止措置について
法第12条
遺伝子組換え生物等の第二種使用等をする者は、当該第二種使用等
に当たって執るべき拡散防止措置が主務省令により定められている場
合には、その使用等をする間、当該拡散防止措置を執らなければなら
ない。
「研究開発等に係る第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置
等を定める省令」《二種省令》
・大臣確認実験
二種省令・別表第一に掲げる遺伝子組換え実験。
拡散防止措置が省令により定められていない。
例;宿主がクラス3(市販のHIVベクタ-を改変した宿主の実験、
増殖型ウイルスベクターを使用した実験
・機関実験(各研究機関の内規により定める手続きを行う)
大臣確認実験に該当しない遺伝子組換え実験。
拡散防止措置が省令により定められている。
機関実験に該当する実験に当たって執る
べき拡散防止措置
・拡散防止措置;施設等の要件〈ハード要件〉及び実施上の遵守事
項〈ソフト要件〉を整えることによって拡散防止する。
拡散防止レベル
微生物使用実験 P1~P3
大量培養実験 LSC~LS2
動物使用実験 P1A~P3A
植物等使用実験 P1P~P3P
・認定宿主ベクター系(生物学的拡散防止); B1, B2
特殊な培養条件下以外での生存率が低い宿主と当該
宿主以外の生物への伝達性が低いベクターとの組み合
わせで遺伝子組換え実験を行う。
極めて低いものは特定認定宿主ベクター系(B2)。
[二種告示第一条・別表第一]参照
拡散防止措置の決定原理
機関承認実験
(P1~P3, LSC~LS2,
P1A~P3A, P1P~P3P)
二種省令において拡散防止措置の決め方は、原則として、
使う宿主及び核酸供与体の実験分類、使用方法並びに遺伝子組換え生物
の推定される性質を勘案することとしている。
核酸供与体
安全なタンパク質
をコードする遺伝
子ですか?
危険性はどのく
らいある?
供与核酸
安全な生物かどうか
でクラスが決まって
いる。実験分類表で
確認。
遺伝子組換え生物
組換え核酸
宿主
使用方法
(実験区分)
微生物使用実験、大
量培養実験、
動物使用実験、
植物使用実験
使用方法
(実験区分)
実験分類
微生物、きのこ類及び寄生虫
病原性
クラス1
クラス2
クラス3
クラス4
な し
低
高
高
低
高
ピロリ菌、
サルモネラ菌、
コレラ菌、など
結核菌、
チフス菌、
ペスト菌、など
規定なし
アデノウイルス、
HIV1型の増殖力等
欠損株、など
HIV、 SARS,
黄熱ウイルス、
など
エボラウイルス、
ラッサウイルス、
など
規定なし
規定なし
伝播性
原核生物
真菌
微
生
物
病原性が
無いもの
バクテリオファージ、
ウイルス
ウイロイド
バキュロウイルス、な
原虫
病原性が
無いもの
マラリア原虫など
病原性が
無いもの
エキノコックス、
住血吸虫など
ど
寄生虫
《二種告示・別表第二》参照
*病原性及び伝播性は、哺乳類及び鳥類に属する動物に対するもの
動物及び植物
動物(ヒトを含み、寄生虫を除く)
植物
クラス1
病原性・伝播性によらず、全てクラス1
執るべき拡散防止措置
原則
①クラス分け=拡散防止措置レベル【二種省令第五条第一号~四号イ】
どのような場合に執るの?:②~⑤のいずれにも該当しない場合
執るべき措置:宿主の実験分類又は核酸供与体の実験分類のうち、実験分類の
数字のいずれか小さくない方を、拡散防止措置のレベルの数字と一致させる。
但し、実験分類が動物作成実験又は植物作成実験の場合は、宿主の実験
分類の数字と一致させる
(例)
宿 核
ク
ラ
ス
3
大
P3
大臣
2
1
微
○ ○
動
植
P3A
P3P
P2
LS2
P2A
P2P
P1
LS1
P1A
P1P
宿 核
ク
ラ
ス
微
ク
ラ
ス
動
植
3
○
P3A
P3P
2
○
P2A
P2P
1
○ ○
P1A
P1P
植
P3A
P3P
大臣
P3
2
○
P2
LS2
P2A
P2P
P1
LS1
P1A
P1P
1
○
宿 核
ク
ラ
ス
動
3
(例)動物作成実験及び植物作成実験の場合
宿 核
大
動
3
○
P3A
2
○ ○
P2A
1
○
P1A
②クラス分け>拡散防止措置レベル【二種省令第五条第一号~四号ロ】
特定認定宿主ベクター系(B2)を用いている場合;1段階レベルダウン
(例)
微
大
動
植
宿 核
P3
3
ク
ラ
ス
2
1
○
○
P3A
P3P
P2
LS2
P2A
P2P
P1
LS1
P1A
P1P
③宿主のクラス分け=拡散防止措置レベル【二種省令第五条第一号~四号ハ】
供与核酸が同定済みで、哺乳動物等に対する病原性及び伝達性に関係しないことが
推定される場合→宿主の実験分類に従う
宿 核
微
大
動
(例)
宿 核
微
大
動
植
ク
ラ
ス
3
○
P3
2
○
P2
1
○ ○
P1
大臣
P3A
P3P
LS2
P2A
P2P
LS1
P1A
P1P
ク
ラ
ス
3
○
P3
2
○ ○
P2
1
○
P1
大臣
植
P3A
P3P
LS2
P2A
P2P
LS1
P1A
P1P
④クラス分け<拡散防止措置レベル【二種省令第五条第一号~四号ニ】
認定宿主ベクター系を用いていない場合であって、動物等に対する病原性又は伝達
性を高めることが推定される場合
(例)動物作成実験及び植物作成実験の場合
(例)
ク
ラ
ス
宿 核
微
大
動
植
P3A
P3P
3
大臣
P3
2
○
P2
LS2
P2A
P2P
P1
LS1
P1A
P1P
1
○
宿 核
ク
ラ
ス
動
植
3
○
P3A
P3P
2
○
P2A
P2P
1
○ ○
P1A
P1P
⑤独自の拡散防止措置【二種省令第五条第一号~四号ホ】
拡散防止措置 〈ハード要件〉
P1レベルの拡散防止措置
P2レベルの拡散防止措置
通常の生物の実験室としての構造及び設備
窓・扉を閉める。
実験内容を知らない者がみだりに実験室に立
ち入らないようための措置
P1レベル+オートクレーブ+安全キャビネット
入り口と保管設備に「P2レベル実験中」
排気
HEPAフィルター
安全キャビネット
オートクレーブ
実験台
手洗器
P1A~P2Aレベルの拡散防止措置
通常の動物の飼育室としての構造及び設備
逃亡経路に、組換え動物等の習性に応じた逃亡
防止設備の設置
糞尿に遺伝子組換え生物等が含まれる場合には
糞尿を回収する設備
P1P~P2Pレベルの拡散防止措置
通常の植物の栽培室としての構造及び設備
排気設備は排気中の花粉等を最小限にとどめ
るもの
遺伝子組換え実験室の使用に関しての注意
(1) 実験区域はP1レベルとP2レベルを明確に区分し、実験室の入り口に拡散
防止レベルを表記したハザード標識を表示する。
(2) 実験中は、実験室の扉は必ず閉めておくこと。
(3) 感染防止のため実験区域内での飲食、喫煙、化粧、食品等の保存、は絶対に
行わないこと。
(4) P2レベルの実験を行う場合、実験室の入り口および実験の過程において
保管する設備に、「P2レベル実験中」と表記する。
(5) 遺伝子組換え動物等を使用する場合、当該動物の習性に応じた逃亡防止措置を
執らなければならない。
ねずみ返し(マウス等)、排水溝に網(魚類)、防虫ネット(昆虫)等。
実験室の入口に「組換え動物等飼育中」と表示する(実験するときもこの表示)。
(6) 遺伝子組換え動物等を飼育する場合、移入した組換え核酸の種類ごとに
識別することができる措置を講じる。
(7) 遺伝子組換え施設内の機器修理、衛生管理等は記録しておく。
年に1度「遺伝子組換え実験施設管理報告書」を提出する。
「実験」を行う上での注意
(1) 生物材料に対しての実験分類を知ることはもちろん、個々の性質及び組換えられた後の
想定される性質も理解しておく。
(2) 安全キャビネット、安全ピペット、ゴム手袋、マスクなどを使用して十分な安全
対策を講ずること。
(3) 遺伝子導入生物の逃亡防止や飛散防止措置を講ずる。超音波処理、ホモジ
ナイザー、凍結乾燥、激しいピペッティングなど、エアロゾルを発生し易い操作は、
バイオハザード対応の器具、機器、設備を使用する。
(4) 実験の過程において行われる一時的な保管と運搬は、実験として扱われるので、
適切な拡散防止措置を講ずること。
(5) 実験台、クリーンベンチ等は、実験終了後に必ず消毒すること。通常は70%エタ
ノールを用いる。クリーンベンチ、安全キャビネット使用後は、殺菌灯を点灯する。
(6) 生物に由来するすべての廃棄物は滅菌処理後、廃棄分類にしたがって廃棄する。
有機物の多く含まれる廃液(培地等)は滅菌処理後、有機系廃液として廃棄すること。
(7) 実験中に汚染を生じた場合は、所定の方法によりただちに消毒すること。
一人で処理できない場合は、実験責任者の指示を受けること。
(8) 感染を防止するために実験室を退出するときには必ず手を洗うこと。
遺伝子組換え生物等の「保管」、「運搬」の方法
(1) 保管、運搬、廃棄にあたっては、必要な記録をつけ、記録は3年間保存
する。
(2) 保管の際には、「遺伝子組換え生物等」であることを明示し、必要事項を
記入して所定の場所に密封する。他の人がみて解るようにする。
(3) 運搬する際は、ビンや缶に入れ内容物が漏出、逃亡等しないように密
閉し、さらに堅固で安全な容器に収納する。容器の見やすい箇所に
「取扱い注意」と朱書きする。
(4) キャンパスを跨ぐ搬入/搬出に際し手続きが必要。
遺伝子組換え生物等を購入する際も手続きが必要。
ウイルスが宿主の微
生物使用実験
増殖力欠損型であっても
動物接種実験
ウイルスがいなくなれば
逃亡防止装置は必要ない
(ネズミ返し等)
3、滅菌と消毒
滅菌: 物質中のすべての微生物を、物理的・化学的
手段を用いて殺滅するか、除去し、無菌状態を
作ること。
消毒: 生存する微生物の数を減らすために用いられる
処置法で、必ずしも微生物をすべて殺滅、除去
するものではない。消毒液の種類によって、
殺菌できる菌が異なる。
滅菌・消毒方法
(1)高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)
湿った状態の方が低い温度で微生物が死滅するということを利用する滅菌方法。
水蒸気と接した部分しか滅菌できない。均一に水蒸気があたるように工夫が必要
である。オートクレーブは、各遺伝子組換え実験室に設置されている。
・用途:ガラス、プラスチック、ビンに入れた溶液等の滅菌
・滅菌時間;115℃のとき30分、121℃のとき20分、126℃のとき15分
水溶液(培地等) 2L 121℃ 40分、10L 121℃ 60分
(2)乾熱滅菌
乾燥した高熱空気中で微生物を死滅させる方法。
・用途:金属性器具、ガラス器具の滅菌
・滅菌時間;160〜180℃ 2〜4時間、180〜200℃ 30分〜1時間、200℃〜 30分
(3)ガス滅菌
熱に弱いプラスチック、ゴムなどや、乾熱滅菌器やオートクレーブに入れられない
器具の滅菌に用いる。
(4)ろ過滅菌
ポアサイズの小さいフィルターを通過させて滅菌する。
通常は0.22μmを使うことが多い(小型のウイルスは通過)。
(5)紫外線殺菌
260nm付近の短波長の殺菌灯を使用する。表面の殺菌効果しかない。
(6) 消毒剤による消毒
消毒剤の分類と抗微生物スペクトル
緑膿菌
水
準
高
中
一般
細菌
MR
SA
結核
菌
グルタルアルデヒド
○
○
次亜塩素酸ナトリウム
○
ポピドンヨード・希ヨードチンキ
消毒剤
低
真
菌
芽
胞
○
○
○
○
○
○
○
○
△
○
○
○
○
○
○
△
○
×
○
○
○
○
○
×
○
×
○
○
○
○
○
△
×
×
×
○
△
×
○
×
△
×
×
×
○
△
△
○
×
△
×
×
×
○
△
×
○
×
△
×
×
×
感受
性菌
耐性
菌
○
○
○
△
○
○
消毒用エタノール
○
クレゾール石鹸液
クロルヘキシジン
両性界面活性剤
塩酸アルキルジアミノエチルグリシン
陽イオン界面活性剤(逆性石鹸)
塩化ベンザルコニウム
塩化ベンゼトニウム
ウイルス
一般、
HBV
HIV
○:有効、△:効果が弱い場合がある、×:無効
消毒剤は、微生物に対する選択毒性を有せず、生体に対しても毒性を有することを考慮する。
使用濃度、作用温度、作用時間などで効力が変化する。
使用目的からみた消毒薬の選択
水
準
高
中
低
環境
金属
器具
非金属
器具
手指
皮膚
粘膜
口腔
粘膜
グルタルアルデヒド(2~3%)
×
○
○
×
×
×
次亜塩素酸ナトリウム
(0.01~0.1%)
○
×
○
×
×
×
ポピドンヨード
(含嗽;0.2~0.5%)
×
×
×
○
○
○
消毒用エタノール(70%)
○
○
○
○
×
×
クレゾール石鹸液 (1~3%)
△
×
×
×
×
×
クロルヘキシジン (0.02~0.5%)
○
○
○
○
×
×
塩酸アルキルジアミノエチルグリシン
(0.1 ~ 0.2%)
○
○
○
○
○
×
塩化ベンザルコニウム(0.01~0.2%)
○
○
○
○
○
×
塩化ベンゼトニウム(0.01~0.2%)
○
○
○
○
○
○
消毒薬
○:使用可能、△:注意して使用、×:使用不可
5、非常時の対応
次の事態が発生したときは、直ちにその旨を実験責任者に知らせる。
実験責任者は安全主任者に通報するとともに、必要な応急措置を講じなければな
らない。
文部科学大臣に事故の状況及びとった措置の概要を届けなければならない。
ア.実験者が組換え体を誤って飲み込み、または吸い込んだとき。
直ちに唾液とともに身近にある容器に吐き出し、口の中を良く濯ぐ。
その後、実験責任者に報告し、適切な医学的処置を受ける。
吐き出したものは必ず消毒液を入れて殺菌する。
イ.組換え体が実験施設外に漏出し、または漏出する恐れがあるとき。
地震等の災害で施設が破損し、拡散防止措置を執れなくなった。
直ちに、応急措置を執る。(不活化する。破損個所をふさぐ。等)
火災などの緊急時は: 内線 3000
遺伝子組換え生物等の不適切な使用について(1)
文部科学省より、厳重注意、事故調査・再発防止策報告要請等
2008年
4月
神戸大学
遺伝子組換え大腸菌・酵母を不活化せず廃棄、
遺伝子組換え実験施設外の廊下で菌を培養
6月
東北大学
実験室入口に「P2レベル実験中」の表示を行わずに実験
大臣確認を要する実験を確認を受けずに実施
6月
日本大学
大臣確認を要する実験を確認を受けずに実施
(遺伝子組換えアデノウイルス、狂犬病ウイルス、HIV)
6月
近畿大学
適切な拡散防止措置を執らずに遺伝子組換えマウス実験実施
9月
酒類総合研究所
不活化されていない遺伝子組換え酵母の下水への漏出
9月
熊本保健
科学大学
遺伝子組換えラットをネズミ返し等の逃亡防止措置を執っていない飼育室にお
いて飼育
10月
神戸大学
大臣確認を要する実験を確認を受けずに実施
(遺伝子組換えアデノウイルス、遺伝子組換え病原性微生物)
2009年
12月
自治医科大学
遺伝子組換えマウスの安楽殺処置が不十分で、拡散防止措置区域外に搬出後
も生存が確認された
2010年
5月
北海道大学
遺伝子組換えマウス1匹が、実験中に実験者が気づかないまま拡散防止措置
区域外に逃亡し、翌日大学内にて捕獲された
エーザイ
株式会社
遺伝子組換えウイルスを含む可能性のある廃棄物を不活化せずに廃棄
5月
遺伝子組換え生物等の不適切な使用について(2)
6月
奈良先端科学技術
大学院大学
遺伝子組換え植物(枯死したイネ、タバコ)とその培養土を不活化せずに
廃棄
7月
小野薬品工業
遺伝子組換えウイルスの付着した可能性のある実験器具を不活化せずに廃棄
9月
協和発酵キリン
遺伝子組換えマウス2匹が飼育ゲージから逸走した可能性
10月
農業資源研究所
遺伝子組換えイネを栽培していた温室の天窓が空いていた
11月
持田製薬
遺伝子組換えウイルスが付着した可能性のある実験器具を不活化せずに廃棄
11月
日本化薬
遺伝子組換えウイルスが付着した可能性のある実験器具を不活化せずに廃棄
遺伝子組換え大腸菌が付着した器具の洗浄廃液を不活化せずに排水
11月
東北大学
床敷きを廃棄する際に遺伝子組換え仔マウス1匹が混入していたことに気付かず、
廃棄用ポリ袋に入れた状態で学内に留置
10月
農業・食品技術
総合研究機構
扉を閉じずに遺伝子組換え実験を実施
培養器を実験室外に設置
10月
第一三共
遺伝子組換え微生物を感染させたマウスの死骸を不活化せずに廃棄
12月
武田薬品
水道栓を閉め忘れたため、排水滅菌槽から遺伝子組換え大腸菌、バキュロウイ
ルス、サルモネラ等を含む排水が漏水した
12月
大正製薬
保管場所から遺伝子組換え大腸菌検体100本が紛失した
2010年
2011年
ヒヤリ・ハット集
事例
再発防止策
・実験中、開いた蓋からマウ
スが逃げたことに気付かな
かった。
・使用前後にマウス数を確認する。
・ねずみ返し等の設置。
・床敷き交換時に、誤ってマ
ウスを廃棄した。
・床敷き内に、マウスが動かずに紛れていることがある。
・床敷き交換前後のマウス数確認。
・注意書きの貼り付け。
・不活化未処理のものを、
処理済と誤認して廃棄して
しまった。
・組換えウイルス由来の試
薬を不活化せずに廃棄して
しまった。
・廃棄する前に、不活化済みであるか、確認。
・特に、担当者が複数いる場合、注意!
(試料にラベルを貼り、処理方法を明示)
・オートクレーブ袋に熱により「処理済」が表示されるシールを添
付する。
・特に組換えバキュロウイルスを利用して作成された酵素など
組換え生物の含有が否定できない試薬は、不活化処理が必要。
・購入試薬については、対象製品か確認
遺伝子組換え実験管轄省庁
文部科学省 研究振興局 ライフサイエンス課
生命倫理・安全対策室
電話: 03-6734-4108、 E-mail:[email protected]
ホームページ:ライフサイエンスの広場✑安全に関する取り組み
✑遺伝子組換え実験
http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/anzen.html
実験前に確認してください
「研究開発二種省令解説書」
「Q&A」
「ウイルスを用いた遺伝子組換え実験を行う方々へ」
「研究開発に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡
散防止装置等を定める省令の規定に基づき認定宿主ベクター系等を定める件
の一部を改正する告示」(平成22年1月15日)についての解説
早稲田大学内 担当部署
研究推進部 研究マネジメント課
Email : [email protected]
TEL : 03-3202-2568 内線79-2162
研究・実験に関する規定等
✑遺伝子組換え実験に関する諸手続き
http://www.waseda.jp/rps/ore/jpn/procedures/04/index.html