高等教育機関における軽度発達障 害学生の支援について(2) 関東1都3県の大学・短期大学に対する2 次調査の結果より ○佐藤克敏 徳永 豊 小塩允護 (独立行政法人国立特殊教育総合研究所) 目的及び方法 目的:1次調査において軽度発達障害学生に 対して支援を行っていると回答した40大学に 対して,2次調査を行った。ここでは,困難 を示している課題と相談面接以外の支援を取 り上げ,学生相談における支援の課題につい て検討する。 方法:対象は、1次調査において軽度発達障 害学生に対して支援を行っていると回答した 40大学であった。40大学に対して質問紙調査 法により,調査を行った。22大学より回答が あり,回収率は55%であった。 結 果 表1 困難を示している課題について 高機能 自閉症等 LD ADHD 軽度知的障害 対人関係のトラ ブル 10 2 3 1 学業上の問題 6 2 4 2 就労困難 2 ― ― ― 不適切な行動 7 2 1 ― 情緒面の問題 4 1 2 ― その他 2 1 ― ― ADHDの学生で学業上の問題が4件あるが,この中には「いずれか の疑い」のある学生と回答された者1名を含めて,ADHDとして 回答されている。「対人関係のトラブル」が合計16件,「学業上の 問題」が合計14件,「不適切な行動」が合計10件と比較的多いこと が示されている。 表2 面接以外の支援について 高機能 自閉症等 情報の共有 10 保護者との相談 6 日常生活の支援 2 授業上の支援 7 試験・評価の支 4 援 進路決定の支援 2 LD ADHD 軽度知的障害 2 2 3 4 1 2 ― 2 ― 1 ― ― 1 2 ― 1 ― ― LD,ADHDの学生が受けている支援の種類や件数 は少なく,軽度知的障害の学生については,記述がな かった(表2)。 1.LD学生:「授業上の支援」 「学生と一緒に担当教員と会い,本学生の状況(どこ まで授業中にできるか)を話し合った」 2.ADHD学生:「日常生活の支援」「進路決定の 支援」 「個人カウンセリング」 相談面接との違いは不明であり,これらの学生の多く は,学生相談室・センターにおいて相談以外の支援を 受けていない可能性がある。 高機能自閉症等の学生の相談面接以外の支援 1.情報の共有 「アスペルガーについていろいろ資料・文献をコ ピーし,担任に読んでもらい理解を得る」など関係 職員との連携に関する記述が9件。 2.保護者との相談 「医療との連携,専門機関等の紹介」に関する記述 が3件,「年2~3回親面接,具体的に将来のこと, 他機関について話し合う」など生育歴等の聞き取り, 電話・手紙等による連絡も含め,親面接に関する記 述が6件。 3.日常生活の支援 「カウンセリングセンター内の談話室を休憩に利用 してもらっている」など居場所をつくることに関す る記述が2件。 4.授業上の支援 「支援があると思われるが,こちらでは把握し ていない」「課題提出期限を遅らせる」「本人 が理解可能な形態で指示をだす」 5.試験・評価の支援 「レポート提出による単位取得の検討(あくま で検討段階)」 6.進路決定の支援 「就職課との連携」に関するものが4件とその 他に「面接試験の練習など」「父兄には他機関 の職業)訓練所など説明」 考 察 1. 2. 3. 軽度発達障害の学生への相談面接以外の支援は種 類や件数が少ないこと,高機能自閉症等の支援で は,学内の関係職員もしくは保護者との連携が図 られることが多く,学内の関係職員には高機能自 閉症等の理解を促すことが示された。一方「学業 上の問題」については,「授業上の支援」「試 験・評価の支援」ともにあまり行われていなかっ た。 軽度発達障害の学生の支援を考えると,学生支援 室・センターにおけるカウンセリングといった相 談室だけでの支援では不十分である。 LD,ADHDの学生も困難を示している課題は 多様であり,「情報の共有」「授業上の支援」 「試験・評価の支援」「進路決定の支援」等,相 談面接以外の支援を行うことが必要である。
© Copyright 2024 ExpyDoc