商業登記と表見法理 ① 表見法理とは何か? ② 商業登記と表見法理との関係 表見法理(権利外観法理)とは? ある家に佐藤さんが住んでいると、その家は 佐藤さんの所有物であるように見える(外観) しかし、実際は後藤さんから佐藤さんが借りて 住んでいることもある(真実) 外観と真実が異なる場合、法律は真実の権 利関係を保護するのが原則 ところが、これを貫くと第三者に思わぬ損害を 生じさせてしまうことがある 表見法理の具体化(1) ①A/B/C三つの土地を所有しており、Aと Bの売却を後藤さんに委任した(代理権 授与)。その後、後藤さんとの委任契約 を解除した(代理権消滅)。 安部 ②契約解除後も安部さんから預かっ ていた実印や権利証を悪用し、高橋 さんに安部さんの土地C を売却し、 その代金を着服した(代理権消滅後 の代理行為→無権代理=無効) 後藤 ③安部さんは土地 Cを引き渡してくれ ないし、後藤さんは 行方不明でお金も 返ってこない。一体 どうすればいいの だろう?! 高 橋 代理権が消滅したということは安部・後 藤の内部関係で、高橋さんからは容易 に知りえない。 表見法理の具体化(2) 真実と異なる虚偽の外観の存在 安部さんは後藤さんに以前代理権を与えていたので、 第三者から見れば今も後藤さんは安部さんの土地を売 る代理権があるように見える 虚偽の外観作出への真の権利者の帰責性 安部さんは後藤さんから実印や権利証を取り戻してい ない 第三者の善意(無過失) 高橋さんが後藤さんが代理権を持たないことを知らな かったことについて不注意がない場合:善意無過失 以上の要件を充たす場合、法律は、虚偽の外観を真実と誤信し た善意の第三者を保護する 表見法理の具体化(3) 代理権消滅後の表見代理(民法112条) 代理権の消滅は之を以て善意の第三者に対 抗することを得ず。但第三者が過失に因りて其 事実を知らざりしときは此限に在らず。 安部さんは、後藤さんの代理権が既に消滅していると いう事実を善意無過失の高橋さんには主張できず、 高橋さんは有効に安部さん所有の土地Cを取得でき る。 商業登記と表見法理との関係 商法12条後段は、登記すべき事項を登記 すれば、正当な事由を有する第三者を除き、 全ての第三者に対抗できると規定している。 従来の多数説はこれを登記によって第三者 の悪意が擬制されると考えてきた。 商業登記と表見法理に基づく規定(民112 条など)が問題になる場合、その適用関係は どうなるのか? 事例1 営業主 (甲) ③丙は甲に代金を請求で きるか? 取引相手 (丙) ①解任し、終任 の登記をした。 ②乙は丙との間で甲の支 配人として取引 元支配人 (乙) 事例2 ③丙は甲に代金を請求できる か? 営業主 (甲) ①単なる従業員乙にB 支店長という肩書を与 えていた 支配人の登記なし B支店の従 業員 (乙) 取引相手 (丙) ②乙は丙との間で甲の支 配人として取引 乙が支配人ではないことは登 記を見ればわかるが、表見支 配人(42条)の規定は適用さ れないの? 表見支配人とは?(42条) 支配人として選任されておらず、支配人とし ての権限を与えられていないにもかかわらず、 店長・支店長・支配人等支配人としての代理 権を持っているかのような肩書きを与えられた 従業員を表見支配人という。 表見支配人は第三者との関係では第三者 が善意(無重過失)であれば、支配人としての 代理権を有するものとみなされる→無権代理 ではなく有効な取引になる 権利外観法理・表見法理に基づく規定
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