フランス人権宣言と女性市民宣言の比較

フランス人権宣言と女性市民宣言の比較
1789年
•
(前文)
• フランス人民の代表者たちは、国民会議を構成し、
人権の無知、忘却(無視)あるいは軽視が、公衆
の不幸及び政府の堕落の唯一の原因であると考
え、 厳粛な宣言の中で、人の不可譲かつ神聖不
可侵の、自然権を、断固として述べた(→呈示す
ることを決意した)。
•
この宣言が、社会的集団の全構成員(の心)に絶
えずあり続け、その権利及びその義務を絶え間な
く想起させ続けるために。
また、立法権、及び執行権の行為が、すべての政
治制度の目的と絶えず、比較され、その上、より
一層尊重されるために。
また、市民の要求が、今後、簡潔かつ明白な原理
に基づく時、常に憲法の維持及び全体の幸福に
向かうために。
オランプ・ド・グージュ
• 前文:母親、娘、姉妹、すなわち国民の
女性代表者たちは、国民議会の構成員
になることを要求する。女性の諸権利に
対する無知、忘却、または軽視が、公の
不幸と政府の腐敗の唯一の原因である
ことを考慮して、女性の譲り渡すことので
きない、神聖な自然的権利を、厳粛な宣
言において提示することを決意した。こ
の宣言が、社会全体のすべての構成員
に絶えず示され、彼らの権利と義務を不
断に想起させるように。女性の権力と男
性の権力の行為が、すべての政治制度
の目的とつねに比較されうることで、いっ
そう尊重されるように。
• 女性市民の要求が、以後、簡潔で
争いの余地のない原理に基づくこ
とによって、つねに憲法と良俗の
維持と万人の幸福に向かうように。
こうして、母性の苦痛の中に
ある、美しさと勇気とに優れた女性
が、最高存在の前に、かつ、その
庇護の下に、以下のような女性お
よび女性市民の諸権利を承認し、
宣言する。
• 第1条
• 1:女性は、自由なものとして生
• 人は、法律上(→権利において)、 まれ、かつ権利において男性と
平等なものとして存在する。社
自由かつ平等に生まれている
会的差別は、共同の利益に基
(→生まれながらにして、自由か
づくのでなければ、設けられな
つ平等である)。
い。
社会的差別は、公共の利益に
基づくのでなければ、存在する
ことはできない。
• 2条
• 2:すべての政治的結合の目的
すべての政治的組織の目的は、 は、女性および男性の、時効に
人間の生まれながらの、かつ取
よって消滅することのない、自
り消し得ない権利(→時効に
然的な諸権利の保全にある。こ
よって消滅することのない自然
れらの諸権利とは、自由、所有、
権)の保全である。
安全そしてとりわけ圧制への抵
それらの権利は、自由、所有権、 抗である。
安全、及び、圧政に対する抵抗
である。
• 3条
• 第3条 すべての主権の淵源は、
あらゆる主権の原則(→根源)
本質的に国民にあり、国民とは、
は、本質的に国民に存する。
女性と男性との結合にほかなら
いかなる集団、いかなる個人も、 ない。いかなる団体も、いかなる
明示的に発せられていない権
個人も、国民から明示的に発し
限(→権力)を行使することはで
ない権威を行使することはでき
きない。
ない。
• 4条
• 第4条 自由と正義とは、他人に
自由は、他人を害することのない
属するすべてのものを返還する
もの全てを、なし得ることに存する。 ことにある。したがって、女性の
たとえば、各人の自然権の行使は、 自然的諸権利の行使は、男性
それが社会の他の構成員に、これ
が女性に対して加える絶えざる
らと同じ権利の享有を確保するこ
暴虐以外の限界をもたない。こ
と以外の限界を持たない。
れらの限界は、自然と理性の法
これらの限界は、法律によって定
によって修正されなければなら
めることができるに過ぎない。
ない。
• 5条
• 第5条 自然の理性と法は、社
法律は、社会に有害な行為を
会に有害なすべての行為を禁
禁ずる権利を有するに過ぎない。 止する。この賢明かつ崇高な法
法律によって禁じられていない
によって禁止されていないすべ
全てのことは、妨げられること
てのことは、妨げられず、また、
はできない。また、(法律によっ
何人も、それらが命じてないこと
を行うように強制されない。
て)命じていないことを行うこと
を強制されることはない。
• 6条
法律は全体意思(→一般意思)のあらわれである。
すべての市民は、その(→法律)形成に向けて、
個人的に(→自ら)、あるいはその代表者を通じて
寄与する権利を有する。
それ(→法律)は、保護するにせよ、罰するにせよ、
万人のために同一であるべきである。
すべての市民は、その(→法律)の目から平等で
あるから、平等に公の全体の尊厳(→あらゆる顕
職)、地位及び職につき得る。それは、その能力
に応じて、及び、その特性や才能とは別の差別
(→以外の差別)なしにである。
• 第6条 法律は、一般意思の表明でな
ければならない。すべての女性市民
と男性市民は、みずから、またその代
表者によって、その形成に参加する
権利をもつ。法律は、 すべての者に
対して同一でなければならない。すべ
ての女性市民および男性市民は、法
律の前に平等であるから、その能力
にしたがって、かつ、その徳行と才能
以外の差別なしに、等しく、すべての
位階、地位および公職に就くことがで
きる。
• 7条
何人も、法律によって、決められた場
合に、及び定められた手続きに従わ
ない限り、訴追、逮捕されず、拘禁さ
れない。
恣意的な命令を懇願し、郵送(→発
令)し、執行し又は執行させた者は、
罰せられるべきである。
しかし、法に従って召喚され、または
逮捕された全ての市民は、直ちに服
従する義務がある。また、その者は、
抵抗によって罪を負うことになる
• 第7条 いかなる女性も(以下の
ことについて)例外はない。女性
は、法律によって定められた場
合に、訴追され、逮捕され、拘
禁される。女性は、男性と同様
に、この厳格な法律に服従する。
• 8条
法が、厳格かつ明らかに必要な
刑罰を定めるべきであるに過ぎ
ない。
並びに、何人も、犯罪の前に、
制定され、公布された法律に
従って、及び、適法に適用され
た法律に従って、処罰できるに
すぎない。
第8条 法律は、厳格かつ明白に必要
な刑罰でなければ定められない。何人
も、犯罪に先立って設定され、公布され、
かつ、女性に対して適法に適用された
法律によらなければ、処罰されない。
• 9条
すべての人間は、有罪であること
が宣告されるまでは、無実である
と推定されるので、
彼は、逮捕のために不可欠と判断
される場合でも、その人自身を確
かめるのに(→身柄の確保に)とっ
て必要でないような全ての厳格さ
は(→過酷な措置は全て)、法律に
よって厳格に抑制されるべきであ
る。
• 第9条 いかなる女性も、有罪を
宣告された場合は、法律によっ
て厳正な措置がとられる。
• 10条
何人も、その信条(→意見)を、
宗教上のものでさえ、法によっ
て確立された公の秩序を乱すこ
とのない表明である限り、わず
らわされることはない(→不安を
与えてはならない)。
• 第10条 何人も、たとえそれが
根源的なものであって も、自分
の意見について不安をもたらさ
れることがあってはならない。女
性は、処刑台にのぼる権利があ
る。同時に女性は、その意見の
表明が法律によって定め られ
た公の秩序を乱さない限りにお
いて、演壇にのぼる権利を持た
なければならない。
• 第11条 思想および意見の自
• 11条
由な伝達は、女性の最も貴 重
思想及び信用の自由な伝達は、
な権利の1つである。それは、こ
人にとって最も大切な権利である。
の自由が、子供と父親の嫡出
また、すべての市民は、それゆえ
関係を確保するからである。し
に、自由に意見を述べ、記述し、
たがって、すべての女性市民は、
法律によって定められた場合に
印刷(→出版)することができる。
その自由の濫用について責任
(ただし)法によって定められた場
を負うほかは、野蛮な偏見が真
合における、この自由は濫用に抗
実を偽らせることのないように、
弁することはありえるが(→に責任
自由に、自分が貴方の子の母
を負うことを除いて)。
親であるということができる。
• 12条
人及び市民の権利の保障は、
公の力(→公的力)を必要とす
る。
(そして)この力は、それゆえ、
全体の利益のために確立させ
る。
並びに、それが委ねられたとこ
ろのもの(→委託される者の)個
人的利益のためではない。
• 第12条 女性および女性市民
の権利の保障は、重大な利益
を必要とする。この保障は、す
べての者の利益のために設け
られるのであり、それが委託さ
れる女性たちの特定の利益の
ためではない。
• 13条
公的力の維持のために、並び
に、行政の費用(→支出)のた
めに、コミューン(→共同)の税
は、不可欠である。
(そして)それは、やはり、全市
民の間に、その能力に応じて割
り当てられる(→平等に分担さ
れなければならない)。
• 第13条 公の武力の維持およ
び行政の支出のための、女性と
男性の租税の負担は平等であ
る。女性は、すべての賦役とす
べての義務に貢献する。した
がって、女性は、(男性と)同等
に、地位・雇用・負担・位階・産
業に参加しなければならない。
• 14条
• 第14条 女性市民および男性
全ての市民は、彼ら自身または、 市民は、みずから、または その
彼らの代表者によって、以下の
代表者によって、公の租税の必
ような権利を有する。
要性を確認する権利をもつ。女
(それは)公の税の必要性を確
性市民は、財産のみならず、公
認し、自由に承認し、その使用
の行政において(男性と)平等な
の後を追い(→使途を注視し)、
分配が承認されることによっ て
かつ、分担額、課税基準、取り
のみ、その租税に同意し、かつ、
立て(→徴収)及び期間を決定
その数額、基礎、取立て、およ
する権利である。
び期間を決定することができる。
• 15条
社会は、全官吏にその行政に
ついて考慮(→報告)を求める
権利を有する。
• 第15条 租税の負担について
男性大衆と同盟した女性大衆
は、すべての官吏に対して、そ
の行政について報告を求める
権利をもつ。
• 16条
いかなる社会も、その中で、権
利の保障が確実でなく、三権分
立が確立していないなら、憲法
を有しない(→有しているとはい
えない)。
• 第16条 権利の保障が確保さ
れず、権利の分立が定められて
いないすべての社会は、憲法を
もたない。国民を構成する諸個
人の多数が、憲法の制定に協
力しなかった場合は、その憲法
は無効である。
• 17条
所有は、不可侵かつ神聖な権
利であり、いかなる者もこれを
奪われない。
法律上(→適法に)確認された
公的な必要性が明らかに要求
する場合で、かつ、公正かつ事
前の補償(金)の取り決め(→要
件)のもとでなければ。
• 第17条 財産は、結婚している
と否にかかわらず、両性 に属す
る。財産(権)は、そのいずれに
とっても、不可侵かつ神聖な権
利である。何人も、適法に確認
された公の必要が明白にそれを
要求する場合で、かつ、正 当か
つ事前の補償の条件のもとでな
ければ、真の自然の資産として
のその権利を奪われない。
(出典:辻村みよ子『ジェンダーと人権』:旧『女性と人権』)