第1章 問われている教師の指導力

第2章 教育課程とカリキュラム
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※「教育の権利」に関わる留意事項(前回補足)
 1.私人間の「権利」の承認と社会的に承認されている基本的人
権、社会権とでは意味がまったく違う。「ケーキを食べる権利」
と生存権は同じものとして扱うことはできない。基本的人権とし
て社会が共通に認めている事柄は、まさに普遍的にすべての人々
に承認されていることがらである。少数者の「特権」的事項では
ないし、誰かを排除しようとするものでもない。すべての人に開
かれた権利。
 特定の人間のみに認められる「資格」的な意味合いでの「権利」
とは意味が異なることに注意
 2.「する自由、しない自由」について

権利を行使するかしないかは、周りから強制されるべき事柄ではなく、
基本的には本人の選択に任される。

しかし、「基本的人権」は人間としての存在の前提条件であるから、そ
の不行使は、「行使の保留」ではあっても、「権利」自体を放棄すべき
ではない。人間としての存在それ自体を自ら否定してしまうことになる
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からである。
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

3.義務を守ったものに対するごほうびとして権利がある のではない
 教師(大人、国家、社会)が、特定の子ども(国民)の権利を認め
てやるとか認めてやらないなどという権限を持っているわけではな
い
4.きまりの中での自由などという狭いものではない
 先にきまりがあるのではなく、子どもの権利をどう守り実現するか、
ということの上にきまりがある。きまりは、子どもの行動を束縛す
ることにつながることがありうるわけだから、基本的な子どもの権
利を尊重するために、きまりはその必要性が常に十分に吟味されな
ければならない
 「茶髪を直さないと教育を受けさせない」 「校則を守れない子に教
育を受ける資格はない」 は、権利─義務関係から見ると、逆転して
いる
 むしろ、そうした子どもほど、より丁寧な「教育」を必要としてい
る

5.自分勝手なことをするということと、権利の行使とは違う。権利を
主張することが自分勝手なことを主張することと混同されてはならない

6.自分の権利を主張するということは、他者の権利をも尊重すること
と同時でなければならない。自分だけの権利、などということはない。
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お互いに権利を尊重しあわなければならない。
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(1)カリキュラム(curriculum)とは何か
①語源
・ラテン語のcurrere(クレレ)が語源:古代の競争また
は競馬の走るコース(走路)を意味する
・同じくラテン語で、競争路を意味するcursum(英語の
コースの語源)を語源としている、という説もある。
・この言葉が「学校用語」に転用されたのは、16世紀
後半から17世紀前半にかけて、オランダのライデン大
学、イギリスのグラスゴー大学などプロテスタント系大
学において(デイヴィッド・ハミルトン)
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②趣旨
・当時主流の大学教育=教師と学生との交渉で、教育の内容が決め
られたり、教師の一方的な恣意にもとづく教育が行われていた
・これに対して、「カリキュラム」をしっかり作って、教育の中身
を、順序、期間、修了などについて明確にすることによって、「教
育と学習の双方に、重大な意味を持つ統制を持ち込んだ」
・カルヴィニズムの「規律と秩序」を反映
※文化遺産の伝達を目的に、教育内容を系統的、体系的に準備した
ものというカリキュラム観の源流
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③20世紀における転用
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J.デューイらによる新教育運動、児童中心主義教育運動
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・デューイの教育論( 「民主主義と教育」「学校と社
会」 )
a.教育は人間が生まれたときから始まる経験の再構成の過程である
。経験とは主体と環境との相互作用のことである
b.教育は子どもの生活経験に基づかねばならず、カリキュラムは子
どもの生活に連続し、次第に形式的教科に分化していかなければな
らない
c.教育の中心は子どもの自発的活動であり、教師は助力者として、
経験の方向付けと選択に従事し、直接にではなく間接に子どもの成
長を助けなければならない
d.子どもの思考力は、問題的状況に取り組む活動によって、成長す
る(問題解決学習)
e.教育の目的と過程は同一でなければならない。教育の過程の外か
ら立てられた目的に子どもを導くのは、ひとつの強制である
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f.この原則は民主主義の原則であり、現代社会の問題を民主的に解
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・「カリキュラム」は、学ぶ側に対してその前にあらかじめ立ちは
だかっている壁、乗り越えるべき壁のようなものではなく、学ぶ側
の経験、生活の中から学ぶべき物を抽出し、それを再編していくも
のであり、学ぶ側の主体的条件の違いによって、個別的であり、多
様である。
※児童生徒の側から学習内容を考え、児童生徒の興味関心や日常生
活における経験を組織してカリキュラムを構成する経験カリキュラ
ムの登場
④カリキュラムの類型

教科カリキュラム:伝達されるべき教育内容を教科・科目とし
て編成

相関カリキュラム:教科・科目の区分を維持しながら、特に関
係の深い教科・科目間で相互に学習内容を関連させる(歴史⇔
地理⇔公民)

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融合カリキュラム:複数教科・科目の共通する部分を融合させ
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
広領域カリキュラム:融合カリキュラムをさらに進め、教科・
科目の境界を解体し、より大きな領域で、教科を編成(自然科
学、社会科学)

コアカリキュラム:すべての教科の核(コア)となる教科・科
目・活動領域を設定し、その周辺に関連する教科・科目を配置
して、教育内容全体を有機的に関連付けようとするもの

経験カリキュラム:既存の教科体系を廃止し、子どもの興味関
心に基づき、生活場面における実践的経験が生かされる教育内
容によって構成(自然的領域⇔子どもの興味関心⇔社会的領域
)


芸術的領域
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⑤ヒドゥンカリキュラム(hidden curriculum)、潜在的カ
リキュラム
・明示的なものだけではない。結果的に子どもの変容に
大きな影響を与えているものの総体をさす、という考え
方
・計画的、意図的ではないにしても、結果的に子どもに
大きな影響を与えているもの。
・結果的に、子どもの階層分化、性差別、人種差別など
に繋がるような教育内容
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⑥近年の用法の一例=進行中の創造的な学習活動
「カリキュラムは、計画としては緩やかな未完のシナリ
オのような手段であり、むしろ教師と子どもが教材の価
値と意味を発見しあい交流しあう活動の所産として生成
される、創造的な教育的経験の組織」(佐藤学『カリキ
ュラムの批評』1996 世織書房)
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⑦カリキュラムの用法の多様性
・「入学から卒業まで、児童・生徒がたどるべき道筋」
・「あるいは、児童・生徒の学びにかかわる計画の総体
」
・「学校における児童・生徒の学び(経験)の総体」
・「そこで行われる教育活動あるいは学校において、生
徒の学習・発達・進路に大きな影響を与える経験の総体
」
・【教師によって予測(計画された)経験の総体ととら
える場合が多いが、教師の予測を超えた、教師の意図し
ない学びを生み出す経験の総体を特に「隠れたカリキュ
ラム」(hidden curriculum)と呼ぶことがある。】
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