第1章 問われている教師の指導力

第2章 教育課程とカリキュラム
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(5)日本における教育課程編成と学習指導要
領
①「学習指導要領」とは何か
学習指導要領とは、小、中、高等学校及び特別
支援学校における教育課程編成上の基準となる
文書。文部科学省が、学校教育法施行規則に基
づき作成している。なお、幼稚園に関しては、
幼稚園教育要領がある。
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第2章 教育課程とカリキュラム
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②教育課程編成と学校教育法
第25条 幼稚園の教育課程その他の保育内容に関す
る事項は、第22条及び第23条の規定に従い、文部科
学大臣が定める
第33条 小学校の教育課程に関する事項は、第29条
及び第30条の規程に従い、文部科学大臣が定める。
第48条 中学校の教育課程に関する事項は、第45条
及び第46条の規定並びに次条において読み替えて準
用する第30条第2項の規定に従い、文部科学大臣が
定める。
第52条 高等学校の学科及び教育課程に関する事項は、
前2条の規定及び第62条において読み替えて準用する
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第30条第2項の規定に従い、文部科学大臣が定める。
第2章 教育課程とカリキュラム
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③教育課程編成と学校教育法施行規則
第五十条 小学校の教育課程は、国語、社会、算数
、理科、生活、音楽、図画工作、家庭及び体育の各教
科(以下この節において「各教科」という。)、道徳
、特別活動並びに総合的な学習の時間によつて編成す
るものとする。
2 私立の小学校の教育課程を編成する場合は、前項
の規定にかかわらず、宗教を加えることができる。こ
の場合においては、宗教をもつて前項の道徳に代える
ことができる。
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第2章 教育課程とカリキュラム
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第五十一条 小学校の各学年における各教科
、道徳、特別活動及び総合的な学習の時間の
それぞれの授業時数並びに各学年におけるこ
れらの総授業時数は、別表第一に定める授業
時数を標準とする。
第五十二条 小学校の教育課程については、
この節に定めるもののほか、教育課程の基準
として文部科学大臣が別に公示する小学校学
習指導要領によるものとする。
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第2章 教育課程とカリキュラム
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第七十二条 中学校の教育課程は、必修教科、選択教科、道徳
、特別活動及び総合的な学習の時間によつて編成するものとす
る。
2 必修教科は、国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健
体育、技術・家庭及び外国語(以下この条において「国語等」
という。)の各教科とする。
3 選択教科は、国語等の各教科及び第七十四条に規定する中
学校学習指導要領で定めるその他特に必要な教科とし、これら
のうちから、地域及び学校の実態並びに生徒の特性その他の事
情を考慮して設けるものとする。
第七十四条 中学校の教育課程については、この章に定めるも
ののほか、教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する
中学校学習指導要領によるものとする。
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第2章 教育課程とカリキュラム
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第2章 教育課程とカリキュラム
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④学習指導要領の性格─公示・告示・基準性
1.公示と告示
・公示:国民に広く知らしめる
・公示の方法・手段としての告示
・告示:国の機関の場合には官報、地方公共団体の機関
の場合には広報に掲載する
・学習指導要領は、文科省が官報に掲載することによっ
て、国民に広く知らせている。
・学習指導要領のほかには、常用漢字等国語政策に関す
る閣議決定が公示されている
・このことを持って、文科省は、学習指導要領の「法的
拘束力」(その基準性)を主張している。
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第2章 教育課程とカリキュラム
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2.基準性(文科省の主張)
・教育課程編成上の「基準」
・教科書作成上の「基準」
・学校教育における教育活動全体に関する基準
3.大綱的性格
・「告示」は、法令ではないので、一般的には強制力を持たない(あ
くまでも行政指導の一つ)
・最高裁の判決(1976年旭川学テ裁判):告示という形式を持っ
て法的拘束力が生じることは無い、「大綱的な基準」であれば、「
必要かつ合理的な基準として」の性格を持つことは認めているが、
そのことだけによって、その内容全てについて、それを遵守する義
務が生じるものではない、としている
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第2章 教育課程とカリキュラム
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近年の学習指導要領作成の過程では、文科省はこの「大綱的基準」
という性格をかなり意識し、生徒の過重な負担にならなければ「発
展的学習」として、この枠を超えて教育することを推奨している。
また、学校の創意工夫を盛んに強調している。
しかし同時に、「最低限共通に守られるべき基準」としてその遵守
を強く求めている。
4.教育課程編成の責任の所在(文科省の主張)
「各学校においては、教育基本法及び学校教育法その他の法令並び
にこの章以下に示すところに従い,生徒の人間として調和のとれた
育成を目指し,地域や学校の実態及び生徒の心身の発達の段階や特
性等を十分考慮して,適切な教育課程を編成するものとし,これら
に掲げる目標を達成するよう教育を行うものとする。(中学校学習
指導要領総則「教育課程編成の一般方針」)
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第2章 教育課程とカリキュラム
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(6)カリキュラム(教育課程)編成の基本的視点
1.「誰が学校の教育課程を編成するのか」という編成
主体のあり方、その組織や権限の所在に関する問題
2.「何を教育内容として選択し、構成するか」という
内容選定の基準とか原理に関する問題
3.学校の活動を全体としてどのように構成するかとい
う教育課程の全体構造に関する問題
4.学校の教育課程をどのように客観的に評価し、改善
に役立てていくかという教育課程評価・改善の問題
(柴田義松『教育課程─カリキュラム入門』 有斐閣
2000)
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第3章 カリキュラム編成と教育の目
的
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なぜ教育目的を取り上げるのか
 1.教育目的は、教育内容の編成、教育方法とそ
の性格、学習者の中に育てられるあらゆる能力、
資質、態度、教育の組織とそこでの活動の性格、
評価の基準、すべてを規定する。
 2.目指す人間像によって、必然的に教育の在り
方も異なってくる
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第3章 カリキュラム編成と教育の目
的
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•
(1)教育目的の諸類型
1.理想主義的目的論─「自立した人格」の形成(カント)
①カントの理想的人間像
– 自律性を持ち、自らが打ち立てた道徳法則にみずからの意思で
従うことができる存在
•
•
•
「なんじの意志の格率がつねに同時に普遍的立法として妥当するよ
うに行為せよ」
物自体の英知的秩序(客観的、普遍的秩序)を支配する道徳法則に
みずからの意思で従うことができる存在
②教育の目的
–
–
「教育は人の中にある善の萌芽を発展させて、人類の理想に適応させる
ことが究極の理想である」「子どもは‥‥人類の理想とその全目的に適
合するように教育されなければならない」
客観的、普遍的道徳法則に、自らの意志にもとづいて自分を律すること
のできる自立した人間に育てる
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第3章 カリキュラム編成と教育の目的
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③日本における事例ー旧教育基本法の教育目的

「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家
を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示
した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきもので
ある。」

憲法理念(平和主義、国民主権、基本的人権の尊重)の実現
 個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期す




普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育
人格の完成を目指す
平和的な国家および社会の形成者
真理と正義を愛し、個人の価値を尊び、勤労と責任を重んじ、自主
的精神に充ちた心身ともに健康な国民
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第3章 カリキュラム編成と教育の目
的
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2.功利(実利)主義的目的論(スペンサー)
①彼が目指した人間像

生活の主要な領域において完全に生きることのできる人間







直接的な自己保存に必要な活動
生活の必需品の確保に関わる活動
子孫を育て、しつけをする活動
適切な社会的政治的関係を維持するのに必要な活動
生活の余暇を満たして、趣味や感情の満足を図る活動
現実社会において、自分自身の保全を考えながら、その利益を追求
していく人間、生活者として必要な活動に取り組むことができる諸
能力の所有者
②教育の目的


完全な生活への準備としての教育
生活の諸領域において完全に生きるのに必要な能力を育てる
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第3章 カリキュラム編成と教育の目
的

③日本における事例

1.学制序文( 1872(明治5)年7月)
・ 2.福沢諭吉『学問のすすめ』


身を立てる財本としての学問、「実なき学問は先ず次にし、専
ら勤むべきは人間普通日用に近き実学なり 」
3.「生きる力」
 「我々はこれからの子どもたちに必要となるのは、いかに社会
が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、
主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力
であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を
思いやる心や感動する心など、豊かな人間性であると考えた。
たくましく生きるための健康や体力が不可欠であることは言う
までもない。我々は、こうした資質や能力を、変化の激しいこ
れからの社会を【生きる力】と称することとし、これらをバラ
ンスよくはぐくんでいくことが重要だと考えた」(96年中教審
答申)
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第3章 カリキュラム編成と教育の目
的
・ 3.児童中心主義的目的論(J.デューイら)
・ ①目指す人間像
子ども自身の生活から出発して、その関心を拡大し、認識を広
げていく
存在
子どもの外部に目標が設定されるのではなく、教育の中心に現
実の子
どもが置かれる
・ ②教育の目的
子ども自身の経験(生活)の再構成
画一的で型にはめたような教育のスタイルから、子どもの関心
や感動
を中心に、より自由で生き生きとした教育体験の創造を目指そ
うとした。
子どもの内的諸力の活用と発展
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第3章 カリキュラム編成と教育の目
的
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
4.国家主義的教育目的論
①目指す人間像
 国家に対して忠実な人間
 国家に対して有能で必要とされる人間
②教育目的
 国家の目的遂行に必要な人材の養成
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第3章 カリキュラム編成と教育の目
的
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(2)日本における事例
2)国家主義的教育目的論(教育令、学校令、森有礼の教育観、
教育勅語)
森有礼、教育勅語
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第3章 カリキュラム編成と教育の目
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3)大正デモクラシーにおける「全人教育」の主張
・世界における「新教育」運動の影響
 ・19世紀末から20世紀初頭にかけて世界各地で展開された教育改革
運動
 ・画一的で型にはめたような教育のスタイルから、子どもの関心や感動
を中心に、より自由で生き生きとした教育体験の創造を目指そうとした
 ・スウェーデンのエレン・ケイ(『児童の世紀』)、アメリカのJ.
デューイ(問題解決学習、『民主主義と教育』『学校と社会』)、パー
カーストのドルトンプラン など



・「綴り方教育」 (小砂丘忠義、村山俊太郎ら)
・沢柳政太郎(成城小学校):ドルトンプラン(パーカースト)の導
入
・小原国芳(玉川学園):「全人教育」の主張
 他人の型にはまらない、自己のものとしての教育、教育は結局自己
開拓であり、自己深化である
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第3章 カリキュラム編成と教育の目
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4)権利としての教育の目的
・権利として保障されるべき教育は、人間の成長・発達の必
要性とそれを実現するための学習を保障するもの(人間的諸
能力の獲得を支援すること)
・発達の必要に応じた教育
・諸能力の全面的発達
・国家社会の主体的形成者(自立的、主体的判断能力を備えた
人間)=自律的存在
・「人格の完成」をめざす(新旧教育基本法)
・すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護
する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育
は、これを無償とする。(日本国憲法26条2項)
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第3章 カリキュラム編成と教育の目的
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(4)新教育基本法の教育目的

「個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の
精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育
成を期す」

「伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推
進する」(前文)

「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家および社
会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康
な国民の育成を期」す(1条)
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