磁性工学特論2003-4-10

磁性工学特論2004-4-15
講師:佐藤勝昭
(東京農工大学大学院教授)
半導体と磁性体の対比
• 半導体
– 電子物性パラメータは基本的
にバンド構造で決まる.キャリ
ア密度は人為的に制御され
る
– 量子構造を考えない限り電子
を古典粒子として有効質量近
似で扱える
– 応用されるのは電子構造で
決まる移動度などのミクロな
電子物性である
– 電子物性が寸法、方位、形状
にほとんど依存しない
– 単位系は、CGSをもとにした
実用単位系が使われる。
• 磁性体
– 金属磁性体の磁性はスピン
偏極バンド構造で決まるが、
非金属磁性体の磁性は局在
多電子系のフント則で決まる
– 交換相互作用、スピン軌道相
互作用など量子力学が基本
– 応用されるのは磁区により生
じるヒステリシスに関連したマ
クロ磁気物性である
– 磁性は磁気異方性の影響を
受け、寸法、方位、形状によ
り大幅に変化する。
– 単位系が複雑で、CGSとSI
が混在して使われている
バンド構造で決まる半導体物性
• バンドギャップ
• 有効質量m*
 E
m*    2 
 k 
2
2
移動度
q

m*
1
バンドだけでは決まらない磁性
• 金属磁性体:スピン偏極バンド構造で説明可
• 絶縁性磁性体:局在モデル
• マクロ磁性:構造敏感
磁性体のスピン偏極バンド構造
↑スピンバンド
↓スピンバンド
↑スピンバンドと↓
スピンバンドの
占有状態密度の
差によって
磁気モーメント
が決まる
Callaway, Wang, Phys. Rev. B16(‘97)2095
強磁性金属のバンド磁性
• 多数(↑)スピンのバンドと少数
(↓)スピンのバンドが電子間の
直接交換相互作用のために
分裂し、熱平衡においては
フェルミエネルギーをそろえる
ため↓スピンバンドから↑スピン
バンドへと電子が移動し、両
スピンバンドの占有数に差が
生じて強磁性が生じる。
• 磁気モーメントMは、M=( n↑n↓)Bで表される。このため原
子あたりの磁気モーメントは
非整数となる。
元素の周期表
磁性体と誘電体の対比
• 磁性体
– 磁気モーメント
μ(軸性ベクトル)
– 磁化M
– 自発磁化Ms
– 反磁界
– 磁気ヒステリシス
• 飽和磁化、残留磁化、保磁力
– 磁区(ドメイン)
– キュリー温度
• 誘電体
– 電気双極子
qr(極性ベクトル)
– 電気分極P
– 自発分極Ps
– 反電界
– 誘電ヒステリシス
• 飽和分極、残留分極、抗電界
– 分域(ドメイン)
– キュリー温度
磁化とは?
• 物質に磁界を加えた
とき、物質の表面に
磁極が生じ、一時的
に磁石のようになる
が、そのとき物質が
磁化されたという。
(a)
(b)
(高梨:初等磁気工学講座)より
磁化の定義
• K番目の原子の1原子あ
たりの磁気モーメントをk
とするとき、その単位体積
についての総和kを磁
化Mと定義する。 M= k
• 磁気モーメントの単位は
Wbmであるから磁化の
単位はWb/m2となる。
常磁性
(高梨:初等磁気工学講座)より
磁気モーメント
+q [Wb]
r
磁気モーメント
m=qr [Wbm]
rsin

磁気モーメントの
量子的起源
軌道角運動量
スピン角運動量
-q [Wb]
• 一様な磁界B中の磁気モーメントに働くトルクTは
T=qB r sin=mB sin
• 磁気モーメントのもつポテンシャルEは
E=Td=  mB sin d=1-mBcos
E=-mB
単位:E[J]=-m[Wbm]  B[Wb/m2]; [J]=[Wb2/m] (高梨:初等磁気工学講座)より
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磁気モーメントの量子的起源
• 電子の周回運動

-e[C]の電荷が半径a[m]の円周上を線速度v[m/s]で周回→
1周の時間は2a/v[s] →電流は-ev/2πa[A]。
• これに円の面積 a2をかけて、磁気モーメントは=-eav/2とな
る。これを角運動量=mav を使って表すと、=-(e/2m)  とな
-e
る。
• 量子力学における角運動量の記述
ボーア磁子
軌道角運動量l=L
軌道磁気モーメントl=-(e/2m)L=- BL
• スピン角運動量s=S
• スピン磁気モーメントはs=-(e/m)sと表される。
• 従って、s=-(e/m)S=- 2BS
スピン磁気モーメントs=- gBS
B=e/2m
=9.2710-24[J/T]
単位:
[J/T]=[Wb2/m]/[Wb/m2]
=[Wbm]
前に
強磁性体の磁化曲線(ヒステリシス)
•
•
•
•
O→B→C:初磁化曲線
C→D: 残留磁化
D→E: 保磁力
C→D→E→F→G→C:
ヒステリシスループ
残留磁化
飽和磁化
保磁力
初磁化曲線
初磁化状態
Hcによる磁性体の分類
Hc小:軟質磁性体
Hc中:半硬質磁性体
Hc大:硬質磁性体
マイナーループ
(高梨:初等磁気工学講座テキスト)
Hcによる磁性体の分類
• Hc小:軟質磁性体
– 磁気ヘッド、変圧器鉄
心、磁気シールド
• Hc中:半硬質磁性体
– 磁気記録媒体
• Hc大:硬質磁性体
– 永久磁石
1Oe=80A/m
1T=8x105A/m
→105A/m=1.3kG
佐藤編著:応用物性(オーム社)より
ヒステリシスは磁区によって
どのように説明できますか
残留磁化状態
逆磁区の発生と成長