s8 法学教室 2009 Oct. No.349 P.136 ☆答案構成 問われていること→Y は X からの引渡し 求に対してどのような主張をすることができるか。 否を 含めて検 5 物 所有権に基づく 求権としての 型引渡し 求 ( )X の所有 XA 10 の特約によるもの ( )Y 占有 Y の反 ( )所有権は Y にあること ア 材料提供した Y イ 本件 15 に所有権あり 契約の効力は Y には及ばない(債権の相対効) ウ X は、本件下 契約について承 している。 X の再反 Y の留 権 1 ☆答案 1 X の金型の引渡し請求は、所有権に基づく返還請求権としてのものであると考えられる。 20 本件請負契約において X と A は、(4)において、本件金型の所有権は完成と同時に X に帰属すると しているため、完成した本件金型の所有権は X にある。 したがって、X はその所有権によって、Y の占有する本件金型の引渡し請求が可能となるのである。 2 上記 X への Y の反論としては、X の所有権帰属を否定することが考えられる。 すなわち、①本件金型の所有権は Y にあること、②本件請負契約の所有権に関する特約は Y を拘束 25 しないことを理由とすると考える。以下、この 2 点について検討する。 (1)本件金型は、本件下請契約により Y が制作したものである。本件において材料提供者は明らかに なっていないが、Y が材料を提供した場合には当然に Y に所有権があるといえ(民 246 条 1 項参照)、 もし、A 社が材料を提供していたとしても、金型になってはじめて価値を有するものであるから「工 作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるとき」に当たるから、その場合であっても Y に所 30 有権は帰属することになる(民 246 条 1 項ただし書)。 (2)では、本件請負契約の特約(4)との関係ではどうなるか。 請負契約によって、請負人 A に対して X が有する債権は、A に対してしか主張し得ないのが原則で ある(債権の相対効)。それゆえ、契約当事者ではない Y に対して、本件請負契約の特約の効力をおよ ぼすことはできないとも解される。 35 また、X は、本件下請をすることについて承諾しているが、下請契約において本件金型が完成した 場合の所有権の帰属について指示していないことから、Y の合理的な意思解釈としては、A の代金支 払と引換えに A に所有権が移るとするのが妥当である考える。 以上により、Y は、X には本件金型に対する所有権は有しないから当該引渡し請求には応じること はできないと主張すると考えられる。 40 3 これに対して、X は、本件下請契約は、そもそも本件請負契約が存在しなければ、存し得ないも のであるから、請負契約の内容は、特段の事情がない限り下請契約も拘束すると解するのが妥当であ ると主張することが考えられる。 そして、本件における本件下請契約への X の承諾は、本件請負契約の特約(4)を排除するとの意思 は含まれていないから「特段の事情」はないといえ、本件特約は Y に対してもその効力を有すると主 45 張と考えられる。 4 上記事情を考慮すると、X の引渡し請求を認めるのが妥当である考える。なぜなら、X が3で主 張するように、本件下請契約は、本件請負契約がなければ損しないものであることから、上位にある 請負契約の内容を下請契約の当事者に拡張することが妥当であると解される。一方、上位の契約の内 容を下位の契約が覆すことは認められないとも考えられる。 50 5 では、X に所有権があるとしても Y は留置権を主張して、本件金型の引渡しを拒むことはできる か。 (1)本件金型は「他人の物」であり、この物について請負代金の「債権」を Y は A に対して有してい ることから、留置権を主張しうるとも考えられるのである。 ア ここで、本件金型が債務者 A の所有にかかるものではなく X の所有である点については問題とな 55 り得る。つまり、留置権は、その物に生じた債権を担保するためにその物の引渡しを拒むことができ るのであるが、物が債務者の所有にない場合には、債務者が物の返還を求める意思が弱いものである とも考えられるから、担保機能が強くはたらかないとも考えられるからである。 2 しかし、条文上は単に「他人の物」としている点に鑑みれば、 「債務者の物」である必要はないと 考えられるため、この点は問題はないと解する。 60 イ A に対する債権を理由として、Y は留置権を主張するが、これを X に主張することは妥当か。留 置権は物権であるため、何人に対しても主張しうるとされるため、Y の X に対する主張も認められる とも考えられる。 しかし、このような留置権の主張を認めた場合、本件下請契約の契約履行状況等が本件請負契約に 優先することになる。これは、先にのべた請負契約と下請契約の主従関係とは整合しない。 65 そうすると、ここにおいても請負契約は下位の下請契約に優位にたつと考えられるから、Y は A が X に対して留置権を主張しうる状況にない限り、留置権を主張することはできないと解される。 これを本件についてみると、本件請負契約(3)に置いて引渡しが先履行になっているから、A には 留置権はないといえる。そうすると Y も留置権を主張し得ないことになる。 以上より、Y は留置権を主張することも認められない。 70 それゆえ、X の本件金型の引渡請求は認容されると解される。 3 ☆法教 1 本件金型の所有権の帰属 (2)本件請負契約上の特約の効力が及ぶかどうか 下 人は注文 との 係では 人の履 助 的地位に立つものにすぎず、注文 と下 人 に格 別のっ合意があるなど特段の事情がない り、下 人は ない、というのが判例の 人と異なる権利 係を主張しうる立場に である(最判平 5 10 19) 下請契約について 下 契約は は 契約の存在 内容を前提としており、その実現を目的とするものであるから、下 人 契約上の合意に従属する旨につき予め織り むべき立場にある。 他方において注文 の承 は 常、あくまで 契約上の合意の範囲内において下 人を履 に 与 させることを予定したものにすぎない。 75 2 留置権の成否 (1)「他人の物」の理解…通説は債務者の所有物に限定しない その理由 ①条文は債務 の物に 定していない ②債務 目的物の所有 か否かにつき債権 が換地していない場合もある (2)留置権を、X に対して行使してよいか りの 明 ア X の所有権に基づく引渡 求権と A に対する Y の下 代 債権は同一の法律 係から生じたとは いえず、物の債権との牽 係がない イ Y は X に対する 係では A の占有 助 に ぎないため、独 に留 権を めることはできず、A が留 権を有する場合において、 人の留 権 使を代わりにすることができるにとどまる ウ A が引渡しを求めた場合に Y がこれを拒絶することは妨げられないから、A に対する 係では留 権が成立するが、X に対しては A と別個独立に権利主張しうる地位にないから、これをもって X に 対抗することができない 3 不当利得返還請求権(転用物訴権)の成否 いわゆる三 不当利得( 用物 権)に する判例(最判平 7 9 19)の にあてはめれば、A が無 力になったために Y の A に対する下 代 の全 または一 が無価値である場合において、XA の 契約を全体としてみて、X が対価 係なしに本件 型の所有権を取得したと 価できる場合であれ ば、Y の 求が 定される。 4 80 ☆反省 転用物訴権には思いも至らず。 全く気がつきませんでした。 しかし、解説を読んでみても、Y の転用物訴権による主張は無理とか思えないなぁ。 問題文が「Y はこれに対してどのような主張をすることができるか」と聞いているのであるから、① 85 効力 Stop と②その代わりに金を取る、 の 2 つを検討しなければならないという鉄則を忘れていますね ぇ。 あぁ点… 5
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