エレベータ用ワイヤロープ 疲労損傷メカニズム解明に向けた 有限要素法解析 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻 寺田 偉紀、泉 聡志 三菱電機株式会社との共同研究 背景1 ワイヤロープの概要 ワイヤロープの特長 繊維芯 ストランド ワイヤロープの構造 用途 クレーン エレベータ ロープウェイ 水産 橋梁 (一般鉄鋼製品と比較して) 引張強度が高い 柔軟性に富む 衝撃に強い 繰り返し疲労に強い めっき加工が可能 長尺物の製造が可能 など 2 背景2 エレベータ用ワイヤロープ 乗用エレベータのワイヤロープ 静止時の荷重に対して安全率10で運用 静止状態 Fcr (建築基準法) W 繰り返し曲げによる強度低下が 的確に評価されていない ワイヤロープの破断 例:有楽町線平和台駅における事故 2011年7月26日 3本のロープが破断して緊急停止 1人 軽傷 破断したロープ エレベータの構造(一例) 引用元:日本エレベーター協会 適切な設計基準・メンテナンス基準が必要 3 研究目的 解析 機械特性の把握(引張特性・応力分布など) Costello, Raoof ほか 疲労試験 課題 摩擦・塑性等を考慮することが困難 寿命、断線部位の傾向、破断面の様子を調査 課題 コストがかかる 内部の過渡観察が不可能 応力・ひずみ計測が困難 S曲げ疲労試験機 有限要素法解析 内部の接触や応力状態の可視化が可能 多数ケースの解析が可能 非線形挙動のモデル化 実際の型、実際の使用環境を模擬した解析 ロープ損傷メカニズムの解明へ メンテナンス基準や機構設計の改善につなげる 4 ワイヤロープ形状作成 形状作成作業の大幅な簡略化 Excel Excel VBA SolidWorks 5 手法 ズーミング解析 全体解析 計算負荷の緩和 変位を推定する 詳細解析 素線の接触を解析 ① ストランドを均質とみなして全体解析 変位を推定 ② 一部を抜き出し、ストランドの1本を詳細モデルに置換 詳細モデル ストランドを詳細にモデル化 ③ 全体解析の変位を、強制変位として与えて詳細解析 6 全体解析動画 7 [MPa ] 解析結果 (最大主応力) U溝モデル S (19) : 最外層素線と中心素線 Fi (25) : 最外層素線と内層素線 S (19 ) z = 152 mm z = 154 mm z = 156 mm z = 158 mm Fi (25) y x 8 結論と今後の展望 結論 • 2 種類のエレベータ用ワイヤロープを対象として,引っ張り曲げの有限要素法 解析を,ズーミングの手法を用いて行った • 素線の接触状態,主応力やミーゼス応力について考察を行った • 本手法を用いれば,様々な条件における解析を簡便に行うことが可能となり, ワイヤロープ損傷メカニズム解明への糸口となりうる 今後の展望 シーブ溝径の見直し 種々の条件での解析 メッシュサイズの見直し 製造時の撚り加工による残留応力の考慮 異方性・塑性の考慮 9
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