交換モンテカルロ法における 熱浴型交換率の解析 永田賢二 渡辺澄夫 東京工業大学 発表概要 研究背景 解析 交換モンテカルロ法 交換モンテカルロ法の設計 先行研究の解析結果 本研究の解析結果 考察・まとめ 発表概要 研究背景 解析 交換モンテカルロ法 交換モンテカルロ法の設計 先行研究の解析結果 本研究の解析結果 考察・まとめ 交換モンテカルロ法[Hukushima,96] <交換モンテカルロ法> 従来のMCMC法の問題点である、 「収束の遅さ」を改善したアルゴリズム MCMC法 ・・・ ある確率分布に法則収束する サンプル系列を生成するアルゴリズム。 「計算量が膨大なこと」や「収束判定が難しいこと」が 問題点として知られている。 <交換モンテカルロ法の応用例> スピングラス・シミュレーション タンパク質の構造解析 組み合わせ最適化問題 ベイズ学習 交換モンテカルロ法[Hukushima,96] 以下の目標分布からサンプリングすることを考える。 1 目標分布: p ( w) exp(nH ( w)) ( w) Z ( n) ( w R d ) 交換モンテカルロ法では、以下の同時分布からのサンプリングを考える。 K tk : k 1,, K:温度パラメータ p( w1 ,, wK ) p( wk | tk ) k 1 1 p( w | t ) exp(ntH ( w)) ( w) Z (nt) 交換モンテカルロ法 <アルゴリズム> 以下の2種類の更新を交互に実行する。 1.[従来のMCMC法によるサンプリング] メトロポリス法やギブスサンプラーなどの従来のMCMC法により、 それぞれの分布 p(wk | tk )からのサンプリングを並列に実行する。 2.[隣り合った温度間でのサンプルの交換] 上記の操作に加えて、適当なステップごとにサンプル wk と wk 1 を 確率 u で交換する。以後、 u を交換率と呼ぶことにする。 交換モンテカルロ法 <交換率の種類> 1.メトロポリス型交換率 u1 min1, r p( wk 1 | tk ) p( wk | tk 1 ) r expn(tk 1 tk )H ( wk 1 ) H ( wk ) p( wk | tk ) p( wk 1 | tk 1 ) 2.熱浴型交換率 pwk 1 | t k pwk | t k 1 u2 pwk | t k pwk 1 | t k 1 pwk 1 | t k pwk | t k 1 1 n 1 tanh t k 1 t k H wk 1 H wk 2 2 交換モンテカルロ法 <従来のMCMC法> p (w) <交換モンテカルロ法> p( w1 | t1 ) p(w2 | t2 ) p(w3 | t3 ) p(w4 | t4 ) 発表概要 研究背景 解析 交換モンテカルロ法 交換モンテカルロ法の設計 先行研究の解析結果 本研究の解析結果 考察・まとめ 交換モンテカルロ法の設計 <温度パラメータの設定> 交換率との関わり r expn(tk 1 tk )H (wk 1 ) H (wk ) 1 n u2 1 tanh tk 1 tk H wk 1 H wk 2 2 •粗く刻むと ・・・ サンプルが交換される割合が減る ⇒ 効率が悪くなる! •細かく刻むと ・・・ 用意するサンプル系列数が増える ⇒ 計算量が膨大! サンプル交換の割合(平均交換率)が、各温度間でほぼ一定になるように 温度パラメータを設定することが望ましい。 交換モンテカルロ法の設計 <対称カルバック距離> p( wk | tk ) p( wk 1 | tk 1 ) I (tk , tk 1 ) p( wk | tk ) log dwk p( wk 1 | tk 1 ) log dwk 1 p( wk | tk 1 ) p( wk 1 | tk ) <性質> 1.p(wk | tk ) p(wk 1 | tk 1 ) における log r の期待値 E[logr ] との間に E[logr ] I (tk , tk 1 ) が成り立つ。 2.自由エネルギー F (t ) log exp( ntH ( w)) ( w)dw との間に 2 F (tk ) 2 I (tk , tk 1 ) t t が成り立つ。 k 1 k t 2 目的 n (低温極限)における対称カルバック距 離と平均交換率の漸近挙動を解明する。 それぞれの性質、関係を明らかにする。 最適な温度パラメータの設定を提案する。 発表概要 研究背景 解析 交換モンテカルロ法 交換モンテカルロ法の設計 先行研究の解析結果 本研究の解析結果 考察・まとめ 問題設定 以下の2つの確率分布間で交換モンテカルロ法を行った場合を考える。 p1 w pw | t p2 w pw | t t w R <対称カルバック距離> d t t p1 ( w1 ) p2 ( w2 ) I p1 ( w1 ) log dw1 p2 ( w2 ) log dw2 p2 ( w1 ) p1 ( w2 ) <平均交換率> J1 u1 p1 ( w1 ) p2 ( w2 )dw1dw2 J 2 u2 p1 ( w1 ) p2 ( w2 )dw1dw2 (メトロポリス型) (熱浴型) 先行研究 <定理1>[NC研究会、2006] 対称カルバック距離 I 、メトロポリス型平均交換率 J1 は、 n において以下に収束する。 t t 2 1 O t t t 2 | t | 12 J1 1 O t t t I t 2 Im z :有理数 ( z ) H ( w) ( w)dw z 0 Re z 主定理 <定理2> 熱浴型平均交換率 J2 は、 n において以下に収束する。 2 3 1 t t J 2 1 O 2 2 t t Im z :有理数 ( z ) H ( w) ( w)dw z 0 Re z 主定理の証明の概略 f w | t pw | t , f w | t exp ntH w w Z nt nt H w2 H w1 f w1 | t f w2 | t t J dw1 dw2 tanh 2 * 2 とすると、 J 2 u2 p( w1 | t ) p( w2 | t t )dw1dw2 1 J 2* 1 2 Z ntZ nt t と表せる。 主定理の証明の概略 <補題>[Watanabe,2001] 状態密度関数 V s は、 s 0 において以下の漸近形を持つ。 V s s H w wdw cs 1 log s m 1 この補題より c 2 log nt * J2 nt2 2 m 1 clog nt Z nt nt m1 2 t 2 t 3 O 2 t t 2 3 1 t t J 2 1 O 2 2 t t 発表概要 研究背景 解析 交換モンテカルロ法 交換モンテカルロ法の設計 先行研究の解析結果 本研究の解析結果 考察・まとめ 考察 2 t t t 対称カルバック距離: I 1 O t t t t 2 | t | ( 12 ) メトロポリス型平均交換率: J1 1 O t t ( ) 2 1 t t 熱浴型平均交換率: J 2 1 O 2 2 t t 2 3 1、対称カルバック距離が一定になるように温度パラメータを設定することで、 平均交換率も一定になる。 2、その際の温度パラメータは等比数列になる。 3、得られた定理から J1 J 2であるため、交換率としてメトロポリス型を 用いるほうがアルゴリズムの効率がよくなる。 まとめ 低温極限の場合における熱浴型平均交換率の漸近挙 動を解明した。 結果として、以下のことが明らかになった。 対称カルバック距離が一定になるように温度パラメータを設定 することで、熱浴型平均交換率も一定になる。 その際の温度パラメータは等比数列になる。 交換率としてメトロポリス型を用いるほうがアルゴリズムの効率 がよくなる。 今後の課題 得られた理論の検証 階層モデルにおけるベイズ学習などへの応用
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