地域格差と生産性 ー地域別全要素生産性の計測ー

2007年度卒業論文発表会
地域格差と生産性
ー地域別全要素生産性の計測ー
明治学院大学経済学部
高橋ゼミ 発表者 増田 智也
(問題点) なぜ、地域間格差が存在するのか?
例えば。
東京でのマクドナルドの時給が1000円以上
沖縄県でのマクドナルドの時給は800円台
なぜ、同じ仕事内容にも関わらず賃金に差があるのか?
なぜ、このような事が起こるのだろうか?
生産性が所得格差を生む
この賃金の違いは、この単位時間当た
りの生産性の差によって起こる。
では、この生産性の違いはどこから発生しているのか?
『地域格差=生産性格差』
原因:全要素生産性
<<生産性の決定要因>>
•
投入要素要因
:労働、民間資本、社会資本
①地域要因:技術・知識の地域的集積
•
技術進歩要因
②時系列要因:新しい技術の発明
生産物
TFP上昇
TFP下落
MP3
MP2
MP1
投入要素
全要素生産性(TFP)とは
生産要素としての「資本ストック、労働投入、社会資本のほか全て」のこと
・時系列要因:時間の経過による新しい技術の発明
新しい財の生産
新しい販路の開拓
原料や半完成品の新しい供給源
新しい組織の実現
産業内での事業所の参入、退出など
・地域要因:地域的な技術、それを扱う人的資本の集積
分析結果
近年の地域格差の主要要因として、地域間の全
要素生産性格差(TFP格差)が存在することが
明らかになった。
政策含意
地域格差解消の為には、生産要素
(社会資本など)の増加よりも、全要素生産性
を上昇させるような政策が必要である。
<<地域間での格差は、確実に存在する>>
地域間所得に関する分散
0.18
バブル期からの
拡大が著しい。
0.16
0.14
分散値
0.12
0.1
分散
0.08
0.06
0.04
0.02
0
55-60
61-65 66-70 71-75
76-80
五年毎
高度成長期には、格差
は比較的縮小傾向。
81-85
86-90
91-95
<<なぜパネル分析なのか>>
本稿では、全要素生産性(TFP)を構成する、地域要因と時系列要因を
調べる必要がある
そのため、時系列データとクロスセクションデータの両性質を持つ
パネルデータを使って分析する
・計測方法
各データ系列を県別、年次別で集計してパネルデータを作り、
パネル分析を行う。
・データの出所
深尾・岳氏(一橋大学経済研究所)による県別データを使用する
・計測結果
期間は1955-1995。
分析モデル:以下のコブ=ダグラス型生産関数を計測する
 
Y  A K
( h・ L ) G
it it it it
it
Ait  e・c eη・i e t
t:年次
i:県名
<<生産要素要因>>
K:民間資本ストック
it
h:人的資本係数
it
L:就業者数 it
G:公共資本ストック
it
・
<<TFP要因: A:全要素生産性
>>
it
C : 共通部分
:地域固有要因(
ex.技術・人的資本の集積 )
i
:時系列要因 (ex.時間の経過による新し い技術の発明)
t
計測方法
先ほどの生産関数を対数変換し、確率項を付けて、以下の
統計モデルを推計する
lnYit   ln Ait    lnK it    lnhit Lit    lnGit    it
 c  i  t    lnK it    lnhit・ Lit    lnGit    it
 it~N 0,  2 
<<分析結果>>
地域要因の分析結果は、県別に計測されるが、これは人口の地域間
移動を考慮して、地域別の計測結果を報告する。
[地域要因]
順位
1
2
3
4
地域名
近畿
関東
北陸
四国
5 東海
地域名
Effect 順位
1.13
6 中国
1.03
7 東北
1.00
8 九州
1.00
9 北海道
1.00
Effect
0.98
0.97
0.96
0.79
検討結果1
TFPと県民所得の相関係数
地域間所得に関する分散
0.18
0.7
0.16
0.6
0.14
0.12
分散値
相関係数
0.5
0.4
0.3
0.1
0.08
0.06
0.2
0.04
0.1
0.02
0
0
65年
70年
75年
80年
85年
90年
95年
55-60
61-65
66-70
71-75
76-80
81-85
五年毎
・県民所得と、TFPには密接な関係が存在する
・相関係数が高くなれば、所得格差は拡大する
86-90
91-95
検討結果2:順位の相関係数による検討
地域所得とTFP
1.200
1.100
1.000
0.900
0.800
0.700
0.600
4.500
4.700
4.900
5.100
5.300
5.500
5.700
5.900
6.100
ここにも、正の相関関係が見られる
6.300