おかやま商圏の 特徴と変化について 田中 潔 (岡山商科大学商学部) http://www.osu.ac.jp/~tanaka/pub/kei2003/shomap1.html/ [email protected] 商圏データに数値地図を 活用したい • 岡山県内の生活圏・行動圏に関する長年 にわたるデータ蓄積と整備 – データ視覚化と商圏形成要因の把握 • 数値地図を扱う手頃なシステムがない – 専用GISソフトは高機能だが高額(CAD的) – 数値情報の応用は始まったばかり 商圏分析の実施 • 商圏構造の把握はマーケティングの基本 – マクロでは,「商圏は行政区域とは異なる」 – ミクロでは,需要や来店予測の基礎情報 • 商業統計データを利用した1km区画(メッ シュ)による分析→定点(静的)な分析 – メッシュ単位の密度分析 – 施設などの分布把握 • アンケート調査による商圏構造の把握 – 「行動」に関する回答分析→動的な分析 メッシュ統計(商業統計や人口統計)分析用ソフト 統計てきめん (有)ソルブ http://www.sorb.co.jp/ システム+データのセット • 地図は 背景図と して貼り 付ける簡 易方法 岡山県民の生活行動圏調査 岡山経済研究所 http://www.okayama-eri.or.jp/ • (財)岡山経済研究所 • 岡山県内市町村単位 が県民の行動様式把 に聞き取り調査(層別 2段抽出法,18歳以 握と行動モデル化を 目的に実施 上)を実施 • 第1回目は1979年に 実施 • 住所,通勤・通学,通 • 最近には,2000年に 院,交際,観光,買物 第9回目を実施.2001 などの出向先,行動 年に報告書発行 様式について調査 調査対象地域の推移 毎回7千名前後を調査 表1 調査実施年,調査地域と回収数 回 数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 実施年 1979 1981 1983 1985 1988 1991 1994 1997 2000 回収数 6999 8301 8324 7092 7775 7695 7823 7891 7797 岡山県 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 福山市 × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 高松市 × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 坂出市 × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 丸亀市 × × × × ○ ○ ○ ○ ○ 住所-出向先行列T m=78(岡山県内) • ある品目について, – 住所iに居住する人から出向先jの回答が得られる – ( i,j=1,2,…,78) 表2 住所-出向先行列T 出向先 1 … 住所 岡山市 … 1 岡山市 t11 … : : : tij m : : … 合 計 t・1 … k … … … tmk t・ k 合計 t1・ : tm ・ t・・ 依存度と構成比 • 依存度=tij/ti・ – 分母: ある市町村(住所)の18歳以上で購入した総 数 – 分子: ある住所の人が,その出向先で購入した数 • 構成比=tij/t・j – 分母: ある出向先で購入した総数 – 分子: ある住所の人が,その出向先で購入した数 依存度と構成比の表現例 • 地図グラフに – 上半円:依存度 – 下半円:構成比 依存度の表現例 • 依存度の 主要関係 を線で結 ぶ • 町村の代 表点は役 場位置 数値地図データについて • 縮小や拡大のため,図葉地図ではなく,ベ クトル白地図 • 国土交通省の「国土数値情報」を使用 – – – – – 行政界(市町村の形状表現) 役場位置と名称(代表点を役場位置とする) サイトからのダウンロードが可能 線表現も面表現も可能(なはず) データの更新・保守に難点 国土数値情報のサイト http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/ 国土情報データの課題 • データ保守の課題 – 情報が結構古い(商業統計などメッシュデー タ) – 更新保守頻度が低い • データ書式の課題 – テキストデータのため利用目的に応じて2次加 工の必要あり(止むを得ない面もある) – 一部のデータ形式がやや難解 • 良質な地図データの公開と保守の重要性 おかやま地域 品目別の商圏変化と特徴 1979⇒91⇒2000 生鮮食品,洋服,贈答品, 家庭電気器具,映画・レジャー 生鮮食品 • • • • 最寄品の代表品目 住所の近くでの購入が比較的多い 地元中小小売店が得意とする品目の1つ 客単価は小さいものの来店頻度が多いこ とが期待される • 生鮮 • 1979 • 生鮮 • 1991 • 生鮮 • 2000 生鮮食品の傾向 • かつては予想通り地元購入が多かった • 90年代より他市町村への出向が発生 – モータリゼーション – 大型量販店でのまとめ買い • 生活様式の変化(出向頻度の減少) – 頻度も毎日から週に2回程度に • 参考: 生鮮頻度「週2・3回」55% • (玉野市消費者調査2003夏) 洋 服 • 買回り品の代表的な品目 • 時間距離よりも購買品目や店舗優位性に より商圏が決まる • このため,県下市部に点在し,地域の商圏 を形成し,その中で岡山市,津山市の吸引 力が大きい商品 • 洋服 • 1979 • 洋服 • 1991 • 洋服 • 2000 洋服の傾向 • 買回り品のため,主要商業施設のある市 町村への集中傾向にある • 岡山市の商圏が県南東部から県西北部に かけて連なって形成されている • 80年ごろ勝山町にあった商業核は,その 後,久世町に移動した • 90年代以降地域に点在した商圏は岡山市 や津山市に次第に吸引傾向にある 贈答品 • 店舗優位性(ストア・ロイヤリティ)が強く影 響する専門性の高い商品 • 岡山県の場合,贈答品は百貨店での購入 傾向が強く,岡山市,倉敷市に集中する傾 向にあった • 近年は郊外型大型量販店の進出により変 化を見せている • 贈答品 • 1979 • 贈答品 • 1991 • 贈答品 • 2000 贈答品の傾向 • かつては,岡山市,倉敷市,津山市に集中 していた • 1990年代になり久世町など郊外の大型店 の出店が相次いだ • このため現在では県内の各地に商圏核が 形成されている • 贈答品=百貨店の構図が薄れつつある 家庭電気器具 • かつては,地元市町村での購買率の高い 商品(運搬や据付などの面から) • 郊外型大型量販店の進出に伴い,各地に 商圏核が形成された • 家電品 • 1979 • 家電品 • 1991 • 家電品 • 2000 家庭電気器具 • 1980年ごろは地元購買が多く,他市町村 への流出は少なかった • その後,家電専門量販店の郊外進出が相 次いだ • 現在では県内の各地に商圏核が形成され ており商圏の分散傾向にある 映画・レジャー • 消費行動は物販中心からレジャー志向へ 移行する傾向にあるといわれている • 市部中心に展開してきた商圏核は,近年, 新形態「シネマコンプレックス」型劇場の登 場により,その構造に変化が起き始めてい る • 映画等 • 1979 • 映画等 • 1991 • 映画等 • 2000 映画・レジャーの傾向 • 1980年ごろは岡山市,津山市,倉敷市の3 大拠点の他,中核都市でも小さな商圏が 形成されていた • 1990年ごろ岡山,津山の2極へ集約傾向 • 2000年になり倉敷も加わり3極化激化 – 大型量販店内のシネマコンプレックス まとめ • 商圏構造を,数値地図を利用した表現法 を検討 • 地図情報など基本情報の整備,公開,保 守の重要性 • 商圏構造の定量的評価が課題 • 行動を規定する要因抽出やモデル化へ (質のGIS化はこれからの課題) – 距離や時間や勤務・通学地など地図情報 – 購買意識や様式の変化 など量と質の両面で ご清聴ありがとうございました
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