2011年1月28日 第4章 空間解析 8. 空間補間(応用) 井上 亮 [email protected] 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 ここで学ぶこと • 空間補間(空間内挿) – 最近隣の観測点の値を利用した補間 – 近隣の観測点の値の平均を利用した補間 • 近隣点の観測値の単純平均 • 三角網分割(Triangulation)を用いた加重平均 • 逆距離による加重平均(IDW) – 放射基底関数(Radial-basis function)を利用した補間 ・スプライン補間 – バリオグラムを利用した補間(クリギング) について学びます. 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 空間補間とは 限られた地点(観測点)において観測された 空間的事象の値から,観測されていない 任意地点(補間点)における値を推定すること. (例)アメダスの気温から,自宅の気温を知りたい. 観測点A 18℃ ?℃ 観測点C 19℃ 観測点B 20℃ 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 観測点D 22℃ 空間補間を行う上での前提 前提 空間補間を行う対象の空間情報には, 空間的自己相関が存在する → 「距離の近い点は,類似性が高い」 より近い点における情報が 空間補間を行う時により参考になる 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 最近隣点データを利用した空間補間 最近隣点法:最も近い観測点の値を用いて 補間点における補間値とする方法. 4章3の「ボロノイ分割」を活用して領域分割しておけば,簡単に 任意地点の補間値を知ることができる. 観測点B: zb 観測点A: za za zb zc 観測点C: zc zd 観測点D: zd 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 最近隣点データを利用した空間補間 <性質> ボロノイ領域の境界で補間値は不連続. この辺りでは (za+ zc)/2 ぐらいが 補間値として 自然では? za zb zc zd 複数の観測点の情報を平均して 空間補間したほうがよいだろう. 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 近隣点の単純平均 • n番目までの近隣観測点の平均値で空間補間 例えば,2番目に近い点までの情報を用いるとすると… 最も近い点 B 2番目に近い点 A B B-A A-B B-D A B-C A-C C-A C D-B C-B D C-D D-C 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 近隣点の単純平均 <性質> 観測点の近傍の補間点でも観測値と異なる値に なってしまう. →単純平均による内挿には限界 (za+ zb)/2 (zb+ zc)/2 A B (zb+ zd)/2 (za+ zc)/2 (zc+ zd)/2 C 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 D 三角網分割を用いた加重平均 • 補間点の”近隣”の3観測点を用いて線形補間. 観測点を母点として作成された 不整形三角網(TIN: Triangular Irregular Network)で領域を分割, 三角形毎に異なる線形の式で補間する. 1 B zb α A za 補間値 z*=za+α (zb-za)+β(zc-za) β 1 C zc D zd 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 三角網分割を用いた加重平均 空間補間を行うのに,どちらの三角網がふさわしいか? B zb A za C zc B zb A za D zd • 三角網は最小角最大の基準で作られた Delaunay三角形分割で作成 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 C zc D zd 三角網分割を用いた加重平均 補間点の座標(x, y)→補間値 z*を求める 補間点を含む三角形 頂点座標(x1, y1), (x2, y2), (x3, y3) 頂点での値 z1, z2, z3 頂点と補間点が(x, y, z)空間において同一平面上にあることから x x2 y y2 z * z 2 平面線形方程式 x0 x2 y0 y2 z0 z2 0 を解けばz*が求まる x1 x2 y1 y2 z1 z2 <性質> • 観測点では観測値に一致 • 三角形の境界部分でも連続 • 三角形毎に異なる線形式で補間するため, 三角形の境界ではスムーズにならない(1階微分は不連続) 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 逆距離を用いた加重平均 逆距離加重平均法 (IDW: Inverse Distance Weighted Average) 補間点から観測点までの距離に関する重みを付けて, 加重平均する方法. (例) 距離2の逆数で重み付け 補間値z*= zada-2 +zbdb-2 +zcdc-2 +zddd-2 da-2 +db-2 +dc-2 +dd-2 B A db da dd dc C 観測点までの距離の逆数(逆距離)を 重み付けした加重平均を用いることにより, 近くの観測値を大きく評価した補間が可能. D 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 逆距離を用いた加重平均 位置ベクトルsiの観測点iにおける観測値ziを用いて (ただしi=1…N) 位置ベクトルsの点の補間値 z*を求める N z* w d s, si zi i 1 N w d s, s i 1 i ただし, d s, si :補間点と観測点kの距離 w :重みの関数 通常 d , e d が用いられる <性質> • 観測点では観測値に一致 • 観測点以外では1階微分も連続 • 観測点では1階微分は不連続 • 適切な重みを定める基準が存在しない (距離減衰パラメータαの設定で補間値が大きく変わる) 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 放射基底関数を利用した補間 放射基底関数(Radial-basis function)とは 中心 c からのユークリッド距離のみに依存する関数 s, c s c 放射基底関数の足し合わせ N z s i s si i 1 で位置ベクトルsiの観測点iで得られた観測値ziを用いて表現し, 観測点以外における補間値を算出する. 放射基底関数の1つである,スプライン関数を使った補間法を紹介 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 スプライン関数による補間 「スプライン関数」とは 連続条件を満たすように多項式を接続した区分多項式 m次のスプライン曲線は1, …, m-1次微分が連続であり 観測点上のスプライン関数の値が観測点の値と 等しいという特性 de Boorの方法 矩形領域・格子上に配置された 観測点におけるデータに対する双3次スプライン内挿 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 スプライン関数による補間 yJ 矩形領域R: x0≦x≦xI; y0≦y≦yJ 格子点(xi, yj)の観測値 zij =f(xi, yj) (i = 0, 1,…, I; j = 0, 1,…, J) y0 x0 xI 格子点(xi, yj)の観測値 zij =f(xi, yj) 領域の境界点における法線方向の1次微分係数 pij = fx(xi, yj) (i = 0, I; j = 0, 1,…, J) qij = fy(xi, yj) (i = 0, 1,…, I; j = 0, J) 領域Rijの4頂点での2次微分係数 rij = fxy(xi, yj) (i = 0, I; j = 0, J) が与えられている時, これらを満たす双3次スプライン関数S(x, y)は ただ一つだけ存在することが証明されている. 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 スプライン関数による補間 まずpij, qij, rijを2I + J - 5個の線形系によって決定 • j = 0, 1,…, J に関して x xi xi 1 pi 1, j 2 xi 1 xi pij xi pi 1, j 3 i 1 fi 1, j fij f f ij i1, j x x i 1 i • j = 0, J に関して x xi xi 1ri 1, j 2 xi 1 xi rij xi ri 1, j 3 i 1 qi 1, j qij qij qi 1, j xi 1 xi • i = 0, 1,…, I に関して y j 1 y j y j 1qi , j 1 2 y j 1 y j qij y j qi , j 1 3 f f f f i, j 1 ij y ij i, j 1 y j j 1 • i = 0, I に関して y j 1 y j y j 1ri , j 1 2 y j 1 y j rij y j ri , j 1 3 p p p p i, j 1 ij y ij i, j 1 y j j 1 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 スプライン関数による補間 yj 双3次スプライン多項式 領域Rij yj-1 xi-1 Sij ( x, y) xi 係数γij,mnは x x y y 3 m , n 0 m ij ,mn Γij A(xi1)KijA(y j1) i 1 n j 1 で求められる xi 1 xi xi 1 , yi 1 yi yi 1 00 01 11 Γ ij 10 20 21 30 31 02 12 22 32 03 0 0 0 fi 1, j 1 qi 1, j 1 1 p 0 ri 1, j 1 13 1 0 0 i 1, j 1 , A ( h) ,K qi , j 1 3 / h 2 2 / h 3 / h 2 1/ h ij fi , j 1 23 2 2 2 ri , j 1 33 2 / h 1/ h 2 / h 1/ h pi , j 1 補間点(x, y)の補間値z*の算出 補間点が含まれる領域Rijを探してi, jを決定→z* = Sij(x, y) 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 fi 1, j pi 1, j fi , j pi , j qi 1, j ri 1, j qi , j ri , j バリオグラムを利用(クリギング) • 空間的自己相関を距離の関数としてモデル化した バリオグラム(あるいは,コバリオグラム(共分散関数))を 利用した空間補間法.(モデル化の前提は4章7を参照 ) • 基本的には観測点からの距離に応じて 観測点の値を加重平均する方法. 他の補間法に比べて, 補間値の統計的な性質が明快,かつ, 統計的に優れた性質を持つ. • 普遍クリギング(Universal kriging)を用いると 観測値以外の属性情報を利用した空間補間が可能. 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 普遍クリギングによる空間補間 補間対象の変数を被説明変数,観測点の属性を説明変 数とした線形回帰モデルをたてる. ただし,線形回帰モデルだけでは, 補間対象の変数を十分に表現ができない. → 線形回帰モデルの攪乱項に空間的自己相関あり. (例)補間対象の変数:気温 観測点の属性:標高 考慮されていない要因:観測時の風向き,植生,土地被覆 そこで,線形回帰モデルの攪乱項の空間的自己相関に 対して二次定常性を仮定し,共分散関数を用いて構造 化する. 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 普遍クリギングによる空間補間 観測点のモデル y = Xβ + u E u 0, E uu V C 0 C d12 C d21 C 0 V C d C d n1 n2 C d1n C d2n C 0 y: 被説明変数ベクトル(内挿対象),X: 説明変数行列, β: パラメータ,u: 攪乱項ベクトル,V: 攪乱項の分散共分散行列, C: 共分散関数,dij: 観測点ij間の距離 一般化最小二乗法(GLS: Generalized Least Squares)より, パラメータの推定値は ˆβ XV-1X1 XV-1y GLS 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 普遍クリギングによる空間補間 補間点のモデル yi = xi β + ui E ui 0, E ui2 i2 , E ui u c c C di1 C di 2 C din yi: 補間点の値(確率変数),xi: 補間点の説明変数ベクトル, ui:補間点の攪乱項,σi2: 攪乱項の分散, c:補間点と観測点の攪乱項の共分散ベクトル このとき,補間点iの被説明変数の線形推定量 yˆ i ay を求める. 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 普遍クリギングによる空間補間 望ましい補間値の推定量は,不偏性(期待値が真の 値と等しい)を持ち,かつ,分散が最小 min y2ˆi = E yˆi yi yˆi yi s.t. E yˆ y 0 i i を解くと,補間値が得られる. yˆi xiβˆ GLS + cV-1 y Xβˆ GLS <性質> • Vやcで表される攪乱項の空間的自己相関の構造が 真であれば,最良線形不偏予測量 地理情報科学教育用スライド ©井上亮 参考文献 市田浩三 et al.:スプライン関数とその応用,教育出版, pp.62-74, 1979. 高阪宏行:地理情報技術ハンドブック, 朝倉書店, pp.27-58, 2002. 張 長平:地理情報システムを用いた空間データ分析, 古今書院, pp.119-144, 2001. 間瀬 茂・武田 純:空間データモデリング, 共立出版, pp.135-166, 2001. Cressie, N. A. C.:Statistics for Spatial Data, John Wiley & Sons, pp.151-162, 1993. Weibel, R. et al.:GIS原典 地理情報システムの原理と応 用 [Ⅰ], 古今書院,pp.293-298, 1998. 地理情報科学教育用スライド ©井上亮
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