超新星残骸ワークショップ 2009年3月13日(金) Westerlund2のジェットとアーク 名古屋大学 天体物理学研究室(Ae研) 古川 尚子 Joanne Dawson, 大浜 晶生, 河村 晶子, 山本 宏昭, 大西 利和, 福井 康雄 (名大), Felix Aharonian, Werner Hoffman, Emma de Ona Wilhelmi (MPIK), Gavin Rowell (Adelaide), Thomas M. Dame (Harvard-Smithsonian CfA), 長滝 重博 (京大基研) and NANTEN グループ 本発表の概要 • 若い大規模星団(Westerlund 2, Wd2)領域で、ア ーク状、直線状 (名称:アーク、ジェット) の分子 雲を発見 • Wd2方向にはTeV/GeVガンマ線源が発見されて いる • 星団のメンバーによる超新星爆発でこれらの分 子雲が形成された可能性を提案 • 超新星爆発のモデルとして、磁場駆動型のジェ ット状爆発を伴った超新星爆発モデルを採用 HESS J1023-575 l, b = 284.25, -0.33 WR20b HII領域 RCW 49 WR20a Wd 2 (Aharonian et al. 2007) Westerlund 2 Spitzer IRAC 3.6, 4.5, 5.8, 8.0 m (Churchwell et al. 2004) ガンマ線源 •星の総質量: 4500 Msun (Rauw et al. 2007) •年齢:2-3 Myr (Piatti et al. 1998) •O型星:12 (Rauw et al. 2007) •Wolf-Rayet 星(WRs):2 (Rauw et al. 2007) •距離:5.4 kpc (Furukawa et al. submitted.) HESS J1-23-575 (TeV) (Aharonian et al. 2007), Fermi (GeV)(Abdo et al. 2009) 12CO(J=1-0)銀河面分子雲探査 望遠鏡 (口径) なんてん (4m) 輝線 12CO(J=1-0) 静止周波数 115.271 GHz 空間分解能 2’.6 (4.1 pc @ 5.4 kpc ) 速度分解能 1 km s-1 雑音温度 ~1.0 K/ch 観測時期 1996 - 2004 @チリ・ラスカンパナス天文台 12CO(J=1-0)による分子雲アークとジェットの発見 母体分子雲候補 Furukawa et al. 2009, submitted 白:Wd2 赤:HESS J1023-575 母体分子雲候補 Dame 2007 HII 領域(電波連続波 843MHz) Whiteoak & Uchida 1997 アーク 24 VLSR 28 km s-1 Wd2 GeVガンマ線源の重心 ジェット 28 VLSR 30 km s-1 TeVガンマ線源 HESS J1023-575 •ジェットとTeV/GeVガンマ線源が直線状に一致 •アークがTeVガンマ線源の縁に沿って分布 ガンマ線源との 付随 12CO(J=1-0)高分解能観測 望遠鏡 Mopra 口径 22 m 輝線 12CO(J=1-0) 静止周波数 115 GHz 手法 On The Fly サンプリン グ間隔 15”(Nyquist) 空間分解能 47” (1.2 pc @ 5.4 kpc ) 速度分解能 0.087 km s-1 雑音温度 ~0.7 K/ch 領域 0.3 degree2 観測時期 2008年7~8月 オーストラリア 12CO(J=2-1)観測 望遠鏡 NATNE 2 (4 m) 輝線 12CO(J=2-1) 静止周波数 230 GHz 手法 On The Fly サンプリン グ間隔 30”(Nyquist) 空間分解能 100” (2.4 pc @ 5.4 kpc ) 速度分解能 0.38 km s-1 雑音温度 ~0.4 K/ch 領域 0.7 degree2 観測時期 2008年10月 @ チリ・アタカマ高地 十字: Wd2 緑:HESS J1023-575 積分範囲 Arc 24-28 km s-1 Jet 28-30 km s-1 Mopra 12CO(J=1-0) ジェット先端の 速度分散 大 質量: ジェット M(H2) ~ 1.0-2.7 104 Msun アーク M(H2) ~ 2.0-5.2 104 Msun 仮定: ・COの積分強度と水素分子の変換 ファクター N(H2)/Wco = 2.0 1020 cm-2 (K km s-1)-1 ・距離 5.4+1.1-1.4 kpc (Bertsch et al. 1993) 青: Wd2 緑:HESS J1023-575 中性水素原子(HI)ガスとの比較 HIガス •ガンマ線中心方向を 取り囲むように分布 •ガンマ線中心方向 に空洞 •アークと反相関 •アークと共にシェル 状の構造 •膨張速度 小 •ジェットの方向にも 豊富に存在 グレースケール:HI (McClue-Griffiths et al. 2005) アーク・ジェット12CO(J=1-0) 十字:Wd2 青:ガンマ線源 HESS J1023-575 運動エネルギー アークとHIガス ~ 1 1048 ergs ジェット ~1-2 1049 ergs M(H2)arc ~ 1.0-2.7 104 Msun M(HI) ~ 0.5-1.4 105 Msun アークの平均速度分散 ~ 1 km s-1 M(H2)jet ~ 2.0-5.2 104 Msun 最大速度分散 ~ 10 km s-1 分子雲とガンマ線源の形成シナリオ 非等方超新星爆発 球対称+ジェット状の非等方な爆発 - 球対称爆発: アーク+HIガスのシェル Cas A X線 - ジェット状爆発: 分子雲ジェット Hwang et al. 2004 HII 領域(電波連続波 843MHz) Whiteoak & Uchida 1997 Wd2 GeVガンマ線源の重心 TeVガンマ線源 HESS J1023-575 非等方超新星爆発の理論モデル 磁場駆動型超新星爆発 • Hypernova (極超新星爆発 Eexp ~1052 ergs)のモデルのひとつ • 鉄コアの重力崩壊や原始中性子星 の高速回転により磁場を増幅 • ~1015Gの磁場エネルギーで爆発 • 立体角の狭い、相対論的速度を持 ったジェット状の爆発 • 中心には高速回転する中性子星 (=マグネター)を形成 Sawai et al. 2008 e.g. Burrows et al. 2007, Komissarov et al. 2007 分子雲とガンマ線源の形成シナリオ 非等方超新星爆発 球対称+ジェット状の非等方な爆発 - 球対称爆発: アーク+HIガスのシェル 超新星残骸 カシオペアA X線 - ジェット状爆発: 分子雲ジェット Hwang et al. 2004 ジェット状爆発による分子雲形成の メカニズム マイクロクエーサージェットによる分 子雲形成を適用 Yamamoto et al. 2008 相対論的ジェット •相対論的ジェットが密度の むらを持つHIガス(~0.5-50 cm-3)を通過 •衝撃波面が円筒状に広がり、 HIガスを圧縮して分子雲を 形成 衝撃波 分子雲 ジェット状爆発による分子雲形成の検証 1 ヘリカル構造 •Wd2の分子雲ジェッ トの先端でヘリカル 構造が多数見られる。 •ヘリカル構造をした 分子雲の報告 •相対論的ジェットの ヘリカルな軌跡を反 映している可能性 Galactic Longitude (degree) MJG348.5 Yamamoto et al. in preparation. MJG347.5 Nakamura et al. in preparation. ジェット状爆発による分子雲形成の検証 2 12CO(J=2-1)/12CO(J=1-0) 強度比 •分子雲の先端で比が高い。 R2-1/1-0 ~ 1.1-1.3 •先端で相対論的ジェットと 相互作用し、分子雲が加熱 されている可能性 赤 HESS J1023-575 白 Wd2 ガンマ線の発生プロセス ・超新星爆発の残存粒子 陽子起源 (0崩壊) ・残された天体(e.g. SNR, PWN)での加速粒子 陽子起源、電子起源 (逆コンプトン散乱) 候補天体 Pulsar wind nebula (PWN) ガンマ線の広がりは宇宙線のエネルギーに依存 ガンマ線の発生プロセス 今後の課題 GeV/TeV比より、陽子起源と電子起源を切り分ける。 形状とエネルギースペクト ルからガンマ線起源天体の 正体を解明 Wd2方向で起きている 現象の解明 RX 1713.7-3946 Aharonian et al. 2007 まとめ • 大規模星団(Westerlund 2)方向に、ガンマ線 源と分布が一致したアーク状、直線状分子雲 を発見 • Wd2方向にはTeV/GeVガンマ線が発見されて いる。 • 分子雲形成メカニズムとして、磁場駆動型非 等方的超新星爆発を提案 • ガンマ線・分子雲の起源天体を明らかにする 為にもガンマ線発生プロセスを明らかにする 事が重要 HII 領域(電波連続波 843MHz) Whiteoak & Uchida 1997 Wd2 GeVガンマ線源の重心 TeVガンマ線源 HESS J1023-575 が大 分子雲の観測方法 H 典型的な分子雲 ・温度~10 K, 密度~100個/cm3 H ・主要成分H2 ・一酸化炭素(CO)の回転遷移輝線 - 次に存在量が多い。 ― 化学的に安定 12C16O(J=1-0) - 周波数 115 GHz - E/k ~5 Kで励起 中性水素HIガス (密度 ~1個/cm3) H2 H H2 H2 分子雲 CO H2 H2 その他の起源天体の可能性 (1) 超新星爆発+マイクロクエーサー ガンマ線起源を説明できるかが重要 (例 LS 5039; Aharonian et al. 2006, A&A, 640, 743) (2) 超新星爆発+PWN+PWNジェット 分子雲ジェットを形成するほどのエネルギーが足り ず、ジェットのサイズも小さい。 例:Crab パルサー (Gaensler & Slane 2006) スピンダウンエネルギー:~5 x 1038 erg s-1 サイズ: 0.25 pc COの他の励起線との比較 輝線強度 •高温または高密度状 態で、COは高励起状 態へ励起される。 •異なる励起線の強度 比は、分子雲の密度 や温度を反映する。 •物理状態を推定でき る。 10 K,700cm-3 200 K,700cm-3 1-0 2-1 3-2 4-3 5-4 6-5 7-6 回転準位間 12CO(J=2-1)観測 12CO(J=1-0) 12CO(J=2-1) ・・・ 分子雲とHIガスの運動エネルギー 質量M(i,j,k) T軸 運動エネルギー j=2 アークとHIガス j=1 ・・・ ergs i=1 i=2 ~ 2-6 1048 ジェット S軸 質量 M(H2)arc ~ 1.0-2.7 104 Msun 5 M M(HI) ~ 0.5-1.4 10 sunV k=1 k=2 重心速度 G アークの平均速度分散 ~ 1.9 km s-1 視線速度 Vk 1 2 Ekin M H 2 (i, j, k )Vk VG i j k 2 ~1-2 1049 ergs 上記の運動エネルギーを与える高エネルギー現象が必要 ガンマ線起源 (PWNに付随するガンマ線源との比較) 天体 PWN Photon index Flux nomalization 0 Luminosity L (10-11 TeV-1 cm-2 s-1) (erg s-1) HESS ~2.5 (PL) J1023-575 0.45 (PL) ~6.8 x 1034 (5.4 kpc) (>380GeV) Aharonian et al. 2007 HESS ~2.3 (EL) J1825-137 ~2.1 (EC) ~3 x 1035 (>200GeV) Aharonian et al. 2005 A&A, 615, L117 MSH 1552 ~2.3 (PL) ~0.57 (PL) ~1.0 x 1035 (<40TeV) Aharonian et al. 2005, A&A, 435, L17 Vela X ~1.5 (EC) ~1.3 (EC) ~9.9 x 1032 Aharonian et al. (550GeV-65TeV) 2006, A&A, 448, L43 Crab ~3.5 (PL) ~2.6 (PL) ~8.0 x 1034 dN 0 E PL dE ICRC ’07より dN 0 E e E / Ec EC dE 背景 1.大規模星団の一員である大質量星( 8Msun)は、星間物質に 大きな影響を及ぼす。 紫外線、恒星風 ・・・ 周囲の星間ガスを電離・散逸、次世代星形成誘発の可能性 Elmegreen & Lada 1977 超新星爆発 ・・・ 星間ガスの圧縮、重元素の供給、 宇宙線加速現場の有力候補 Hayakawa 1956 大規模星団が周囲に与える影響は、銀河進化において重要 (星の総質量 ~103-4 Msun) 系内に数例 1 pc 2.系内の大規模星団 銀河中心: Arches, Quintuplet, Central 腕: Westerlund 1, Westerlund 2 Figer et al. 1999; Genzel et al. 2003 Arches Cluster, Quintuplet Cluster, Central Cluster HST•NICMOS, VLT•NOAS•CONICA 本研究の目的 • 大規模星団Westerlund 2(Wd2)周辺の広域に渡る 分子雲の研究 - 母体分子雲 - 超新星爆発や恒星風・紫外線の影響を受けた 分子雲 • 銀河進化における大規模星団の影響を分子雲の観 点から探る。 • ガンマ線源と付随している可能性のある特徴的なふ たつの分子雲を発見 • 分子雲とガンマ線源の正体と形成メカニズムを探る。 RCW49/Westerlund2 (Wd2) and Molecular Clouds Images : Spitzer IRAC image at 3.6, 5.8 and 8.0 microns (Churchwell et al. 2004) Contours : Integrated intensities in 12CO(J=2-1) by NANTEN2 11 < Vlsr < 21 km/s 1 < Vlsr < 9 km/s -11 < Vlsr < 0 km/s Min. 20 K km/s Interval 10 K km/s Min. 17 K km/s Interval 15 K km/s Min. 30 K km/s Interval 15 K km/s Furukawa et al. submitted, Ohama et al. in preparation. Contour: 12CO(J=2-1) Image: Spitzer IRAC 8.0 m Blue: +4 km/s Cloud Red: +16 km/s Cloud G.L. 284.2-284.4 16 km s-1 宇宙線電子起源 宇宙線陽子起源 0崩壊 シンクロトロン放射 逆コンプトン散乱 e (CR) + photon e + Aharonian et al. 2006 p (CR) + p (proton/nuclei) 0 2 Tanaka et al. Worrall et al. 2007
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