電気回路学講義資料

電気回路学Ⅱ
コミュニケーションネットワークコース
5セメ
山田 博仁
講義日程と内容
日程 (回目)
山
田
大
寺
先
生
講義内容
教科書の章との対応
1)
2)
4/10 (第1回) RL, RC回路の過渡現象
2.1, 2.2
4/17 (第2回) RLC回路の過渡現象
2.3, 2.4
4/24 (第3回) ラプラス変換
5.1, 5.2
5/1 (第4回) 過渡現象とラプラス変換
6.1~6.2
5/8 (第5回) 過渡現象とラプラス変換の続きと演習
6.3
5/15 (第6回) 過渡関数波、周期波、時間域・周波数域解析 5.3~5.5, 7.1 5/22 (第7回) 微分、積分回路、二次系の伝達特性
7.2~7.4
5/29 (第8回) RLC回路、インパルス・ステップ・任意波形応答 7.5, 7.7~7.9 6/5 (第9回) フーリエ変換
4.1, 4.2
6/12 (第10回) フーリエ変換、信号波解析
4.3
6/19 (第11回) フーリエ変換と演習
4.5
6/26 (第12回) 歪波交流
3.1, 3.2
7/3 (第13回) 歪波交流回路の計算と演習
3.4
7/10 (第14回) まとめと演習
8/1(木)5講時 定期試験 101講義室(CSコースと合同)
RC微分回路
RC微分回路
C
e(t)
R
vR
この方形パルスを分解して、t = 0 に生起する大きさ
E0 のステップ関数と t = a に生起する大きさ −E0 の
ステップ関数を重ねたものとすれば、
(a)
E0
0
t
a
と表される。
 E0 q(0)  
i1 (t )   
e , t  0,   RC
R



t
t
0
– E0
e(t )  E0u1 (t )  E0u1 (t  a)
E0u1 (t ) を印加したとき R に流れる電流 i1(t) は、
E0
0
図(a)に示すRC直列回路を電圧源 e(t) で励振し、
応答として抵抗 R の両端の電圧 vR をとるものとす
る。また励振 e(t) は図(b)に示すような方形パルス
であり、時刻 t = 0 に生起し、t = a で消滅する大き
さ E0 の電圧であるものとする。
a
t
(b)
である。 −∞ < t < 0 の範囲で印加電圧 e(t) = 0 で
あれば、C に蓄えられている電荷は 0、即ち q(0) =
0 であるとしてよい。
RC微分回路
RC微分回路
一方、  E0u1 (t  a) を印加したときの電流 i2(t) は、時間を t → t − a に置き換えて、
かつ E0 に負号を付けて、
E 
i2 (t )   0 e
R
t a

, t 0
と表される。
よって、R の両端の電圧 vR(t) = Ri(t) は、
t



Ri1 (t )  E0 e , 0  t  a

a
t
vR (t )  



 Ri1 (t )  i2 (t )  E0 1  e  e  a  t



これを図示すると以下のようになる。
で与えられる。
RC微分回路
図において、正の部分の面積と負の部分の面積が等しく、
a
a
 

 t



0 E0e dt  a E0 1  e e dt  E0 1  e 
従って、vR(t) の平均値すなわち直流分は 0 である。つまり、C は直流分を遮断する。
a

t


電圧 vR(t) の波形は、時定数 τ = RC と印加パルスの時間幅 a との関係により、異なる
ものとなる。つまり、τ >> a ならば、入力形波にほぼ等しい波形となるが、逆に τ << a
ならば、入力波形を微分したような波形となる。従って、後者の場合を RC微分回路と
呼んでいる。
1
RC直列回路の式 Ri (t )   i (t )dt  e(t ) の両辺を t について微分し、両辺に C を
C
乗じて、RC = τ が考えている時間スケール t に対して非常に小さいとすれば、
de (t )
de (t )
i (t )  C
と近似できるから、 vR (t )  Ri (t )  RC
dt
dt
即ち、入力電圧波形 e(t) の微分にほぼ比例した出力電圧波形 vR(t) が得られる。
微分回路は一般に、方形波から鋭いパルスを作るのに使われるので、ピーキング回
路(peaking circuit)とも呼ばれる。
RC積分回路
RC積分回路
RC直列回路において、方形波の入力電圧 e(t) に
対して、出力として C の両端の電圧 vC(t) をとるこ
とにする。このとき、0 < t < a に対しては、
R
e(t)
C
vC
 E0 q(0)  
i1 (t )   
e ,   RC
R



t
で q(0) = 0 としたものより、
vC1 
1
C
E0 
また一方 a < t に対しては、 i2 (t )   e
R
を vC1 に重ねることにより、
t
 
 
 E0 1  e  , 0  t  a


vC (t )   
a
t
 E 1  e  e  a  t

 0 


t
 i (t )dt
0
t a

1
として、
より得られる vC2 
と求められる。
1 t
i2 (t )dt

a
C
RC積分回路
RC積分回路
vC(t) を図示すると以下のようになる。 vC(t) が直流成分を含むことは明らかである。
vC(t) は、τ << a のときは図(c)のように入力波形 e(t) と殆ど同じ波形となり、逆に τ
>> a のときは図(a)のような波形となる。後者のような場合を RC積分回路と呼ぶ。
1
Ri
(
t
)

i (t )dt  e(t ) の両辺を各々 R で割ってから積分し、
RC直列回路の式

C
1
q(t ) 1
1
RC が非常に大きいとすれば、  i (t ) dt   e(t )dt vC (t ) 
  i (t )dt 
e(t )dt

R
C
C
CR
即ち、入力電圧波形 e(t) の積分にほぼ比例した出力電圧波形 vC(t) が得られる。
積分回路は検波や整流などに使われる。
(a)
(b)
(c)
伝達関数の周波数特性
伝達関数の周波数特性
RC微分および積分回路の励振 e(t) と応答 vR(t) あるいは vC(t) の間の関係は、
それらのラプラス変換 E(s), VR(s) あるいは VC(s) の間の関係で表現すれば、初
期条件 q(0) = 0 として、
1
V ( s)
V ( s)
R
H R ( s)  R

,
H C ( s)  C
 sC
E ( s) R  1
E ( s) R  1
sC
sC
これら伝達関数において、s → jω として振幅特性を調べてみると、
H R ( j ) 
R
1
R
jC

1
1
1
jCR
1

1
1
j

1
 1 
1 




1
1
1
1
jC
H C ( j ) 



2
1
1  jCR 1  j
1   
R
jC
2
となる。
高域通過回路と低域通過回路
これらの特性を ω に対して描くと、下図のようになる。
図(a)では、ω = 0 で |HR| = 0、 ω = 1/τ で |HR| = 1/√2、 ω = ∞ で |HR| = 1 となっている。
従って、0 < ω < 1/τ の周波数領域は減衰域(stop band)、 1/τ < ω < ∞ の周波数領域
は通過域(pass band)と呼ぶ。このように、低い周波数域が減衰域、高い周波数域が
通過域となる回路を、高域通過形回路と呼ぶ。一方図(b)では逆に、 ω = 0 で |HC| = 1、
ω = ∞ で |HC| = 0 となっているから、低域通過形回路である。
高域通過回路と低域通過回路
このような周波数特性をもつ回路に、広いスペクトル成分をもつ電気信号、例えば
方形波パルスのような信号波形を入力すれば、出力信号のスペクトルは入力信号
とは異なったものとなる。例えば高域通過形回路では、ゆっくり変化する振動成分
は除去され、出力波形は鋭い形となり、また逆に低域通過形回路では、速い変化
をする振動成分が除去されて、出力波形は鈍い形となる。
H R ( s) 
VR ( s)
R

において、時定数 τ = RC が 1(秒) よりも非常に小さければ、
E ( s) R  1
sC
VR (s)  sE(s) となり、入力 E(s) に s を乗じた形となる。
vR (t )  RC
de (t )
de (t ) と比較すると分かるように、時間領域では(初期条件を

無視しての)時間微分に他ならない。
dt
dt
積分回路については、 H C ( s ) 
1
sC
VC ( s )

E ( s) R  1
sC
の τ = RC が 1(秒) よりも非常に
大きいとして、
VC (s)  E(s) / s となって、入力 E(s) を s で割る形となり、時間領域での積分に
他ならない。
RL微分回路と積分回路
RL微分回路
電圧 e(t) が、時間幅 a, 高さ E0 の方形パルスで
あるときの、RL直列回路の応答を考える。電圧は、
vR
R
e(t)
e(t )  E0u1 (t )  E0u1 (t  a)
L
vL
と表されるから、
ラプラス変換は、表5.2(2)に変位定理を適用して、
E
£e(t )  0 1  e  as  である。
s
(a)
このような入力に対して、出力としてコイル L の両端の電圧 vL(t) をとることにする。
回路方程式 e(t )  Ri (t )  L

di (t )
をラプラス変換すると、
dt

E0
1  e as  RI ( s)  LsI ( s)  i (0)
s
初期条件 i(0) = 0 と置いて、






E0 1  e  as
E0 1  e  as
E0 1  e  as
I ( s) 


R
sR  sL 

 1
sL s   sL s  
L

 
ただし、  
L
R
RL微分回路と積分回路
従って、ラプラス逆変換を求めると、



 as 


1
1 E0 1  e
1 E0
 £ 
i (t ) £ I ( s ) £ 
 sL s  1  
L


    






 as 
 1
E
1 e
1 
  0 £1  
1  e  as

L
 1
 s s  1 
s s   


   








E0  1  1  1  1  1  1  as  1  1  as  

£ 
£  e  £ 
e 
£
1
1
L   s 
s


s  
s 


 
 
 
E
 0
R
t
t  a 






u
(
t
)

e
u
(
t
)

u
(
t

a
)

e
u
(
t

a
)
 1

1
1
1


E
 0
R
t



1  e

t  a 





u1 (t )  1  e  u1 (t  a )







となる。






RL微分回路と積分回路
従って、コイル L の両端の電圧 vL(t) は、
t
t  a 

di(t ) L  1 
1  
vL (t )  L
 E0  e u1 (t )  e
u1 (t  a)
dt
R 


t  a 

 t

 E0 e u1 (t )  e  u1 (t  a) となり、これを図示すると以下の波形となる。


この波形は、前回出てきたRC微分回路の vR(t) と同じ形を
しているため、τ << a の場合、微分回路になる。
この回路の伝達関数 HL(s) は、

VL ( s) sLI ( s) E0 1  e  as
H L ( s) 


E ( s)
E (s)
 1
s  
 



s
E0
1  e as 
1
s
s

従って、s → jω と置いて、


j   
VL ( j )
j

H L ( j ) 


e  2  ,   tan1 
2
E ( j ) j  1
1
 
2
  

 
RL微分回路と積分回路
従って、高域通過形回路であることが分かり、振幅特性 |VL/E| および位相角 (π/2 ‒ θ)
の特性の概略を下図に示す。
RL積分回路
一方、出力として抵抗 R の両端の電圧 vR(t) をとると、
t



vR (t )  Ri(t )  E0 1  e 


t  a 





u1 (t )  1  e  u1 (t  a )









となり、これを図示すると右のような波形となる。
上式は、RC積分回路の vC(t) と一致するから、 τ >> a の場合、積分回路になる。
RL微分回路と積分回路
伝達関数 HR(s) は、


VR ( s) RI ( s)
E0 1  e  as
H R ( s) 

R
E ( s)
E ( s)
 1
sL s  
 
従って、s → jω と置いて、
H R ( j ) 
VL ( j ) 1 1

E ( j )  j  1


1
1
   
 
2
e  j ,
2
(  tan1  )
となる。振幅特性 |VR/E| および
位相特性 θ を右図に示す。低
域通過形回路であることが分か
る。


R 1
1 1
E0
1  e as 

s
L s1  s1


二次系の伝達関数
二次系の伝達関数
RLC直列回路などでは、その伝達関数 H(s) が、
02
H ( s)  2
s  20 s  02
のような形をとることがある。即ち、伝達関数の分母が s に関する2次の多項式となり、
ζ, ω0 は共に実定数である。そのような系を総称して二次系と呼んでいる。ω0 は共振
角周波数(natural frequency)、 ζ は減衰率(damping factor)と呼ばれている。また、
分子の係数 ω02 は、H(0) = 1 となるよう規格化したものである。
二次系を単位ステップで励振したときの応答 v0(t) (ステップ応答)は、全ての初期条件
を 0 と仮定して、t > 0 について、



2
2
  1, v0 (t )  1  e
sinh   10t 
cosh   10t 
2

 1

  1, v0 (t )  1  e 0t 1  0t 
 0t
  1, v0 (t )  1  e
と得られる。
 0t



2
2
sin   10t 
cos   10t 
2

 1

二次系の伝達関数
v0(t) の時間変化
‒40dB/dec
|H(jω)| の振幅特性