柔軟構造大気突入機の研究開発 - ISAS/JAXA 安部

産総研打ち合わせ資料
柔軟構造大気突入機の研究開発
ISAS/JAXA 大気球観測センター
ISAS/JAXA 宇宙輸送工学研究系
東京大学大学院新領域創成研究科 他
2007/07/18
産総研打ち合わせ資料
研究背景
宇宙時代の到来のためには、宇宙輸送システムの革新が必要
特に帰還システムに関しては、
安価に
安全に
どんなものでも
帰還できるようになれば、宇宙開発が一気に進む
そのためには、これまでにない新しい大気突入システムが必要なのでは?
帰還システムのもっとも大きな問題は大気突入時の空力加熱
表面温度は2000℃
現在は空力加熱に耐えながら火の玉になって帰還
気流温度は5000℃
発想を転換して、空力加熱を避けれないか?
大気突入のイメージ
2007/07/18
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低弾道係数*大気突入機
*弾道係数=質量÷抵抗面積
機体を軽く、大きくすることで空力加熱を避けることができる
高度400kmの円軌道からの
大気突入時の空力加熱の推算
1600
直径
ペイロード 1ton
Heat Flux (kW/m2)
Teq (C)
1400
1200
Heat Flux (kW/m2)
機体重量 1000kg
抵抗係数 1.3
淀み点曲率半径
=エアロシェル半径
2000
1800
1600
重量が同じなら直径を
大きくすれば、
空力加熱は小さくなる
1000
800
1400
1200
600
1000
400
800
200
600
0
0
5
10
15
20
25
Equilibrium Temperature (degC)
計算条件
400
30
Diameter (m)
2007/07/18
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柔軟構造大気突入機
軽く、大きい機体を実現するために柔軟構造をつかう。
さまざまな形状が提案されている
フレア型
気球型
傘型
ドーナツ型
1.打ち上げ時はエアロシェルをコンパクト収納
2.軌道上で大型のエアロシェルを展開(不具合があればやり直しも可)
3.低弾道係数で大気突入
4.パラシュートなしで軟着陸(←もうひとつの利点)
これまでの実際のミッションに利用された例はない*
(*試験フライトは数例ある)
2007/07/18
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柔軟構造大気突入機の実現への課題
1.高速流中で柔軟構造の挙動や飛翔体としての性能が不明
→ 我々がこれまで行ってきた研究の中心テーマ
風洞試験や数値解析などの基礎研究からフライト試験まで
2.実際のミッションへの応用検討、既存の方法との比較
→各国でさまざまなミッションにおける検討がおこなわれている。
地球帰還システムだけでなく、惑星突入ミッションでも利点がある。
3.膜面材料への要求が厳しい
→ クレーストがその解決になるかも、ご協力を願いたい
膜材料の性能があがれば、設計の自由度が増える。
2007/07/18
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これまでの研究 1
高速流体中の柔軟構造の挙動の解明と、フレア型柔軟エアロシェルを有
する機体の飛翔体としての性能の把握が中心テーマ
基礎研究
単純形状での実験
数値解析法の開発
応用研究
各種風洞試験
数値解析例
実機形状での数値解析計算や風洞試験
大気球を利用したフライト試験
ZYLON布で製作した直径1.5m展開剛体枠フレア型エアロシェル
基本コンセプトの実証と地上試験の検証に成功
(ただし、この試験では空力加熱環境は模擬できていない)
次は、実環境(特に空力加熱環境)でのフライト試験をめざす。
エアロシェルのさらなる大型化→インフレータブル構造の採用
膜材料の高速気流中での性能実証→極超音速風洞の完成
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これまでの研究 2
次のフライト試験への準備をすすめている
インフレータブル構造の
大型エアロシェルの試作
(材料はZYLON布を用いた)
ドーナツ型のインフレータブルチューブで
構造をささえる。(内部に小型ガス注入機
構が仕込まれている)
2.8m
強度試験の様子
東京大学柏キャンパスに
極超音速風洞が完成
柔軟構造大気突入機の
試験に利用予定
ZYLON布エアロシェル模型
の試験の様子
膜材料を選定し、評価しなければならない段階にある。
2007/07/18
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想定されるミッション例
フレア型大気突入実験機
観測ロケットなどで高高度で期待を打
ち上げ、上空でエアロシェルを展開し
低弾道係数で大気突入を行う
機体規模:重量30kg,サイズ2.5m
柔軟構造大気突入衛星
軌道上で気球状の膜面を展開し、空気
抵抗で徐々に降下する間に超高層大気
の大気観測を行う。
機体規模:重量70kg,サイズ7.0m
2007/07/18
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膜材料への要求
柔軟、耐熱、気密、強度が要求される。
*耐熱性:少なくとも650℃以上、高いほど機体設計の自由度がふえる
*柔軟性:折りたためること。折りたたんでも痛まないこと
*気密性:ミッションによるが少なくとも数日間を内部の気体を維持すること
(衛星ミッションの場合は寿命に直接関連)
*強度:突入時の空気力やインフレータブル部の圧力差にたえる
(ポリエチレン(30MPa)では弱く、ZYLON(5.8GPa)では十分)
*加工の容易さ:袋状に加工する必要がある。
*耐放射線:大気突入まではコーティングしておくなどの防御法がある
ZYLONなどの高強度、耐熱性繊維材料と
クレーストの組み合わせがこの要求をみたせるのでは?
2007/07/18
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クレーストに関する質問
耐熱性(耐熱温度)
柔軟性
気密性
機械強度(破断荷重、弾性係数、ポアソン比)
加工性(溶着の可否)
耐放射線
重量(密度)
他の材料とのコーティングの可能性
他の材料とのラミネートの可能性
2007/07/18