広重筆「するがてふ」の 構図について 1DS04196W 平山 さくら 歌川広重 歌川広重は江戸時代の浮世絵師。 「東海道五十三次」や「名所江戸百景」など の揃物を残した。 「名所江戸百景」はヨーロッパに渡り、ゴッホ に模写されるなど、フランス印象派の画家た ちにも大きな影響を与えた。 本研究では「名所江戸百景」の中の「するが てふ」の構図の意図を考察し、幾何学的な観 点から解析する。 「名所江戸百景」 江戸のさまざまな場所を題材としている。 広重の最晩年、最大規模の揃物 画面構成が奇抜なものが多く、それまでの 広重の作品とは一線を画している。 ゴッホが模写したことで知られる作品 「するがてふ」 「名所江戸百景」の中 の一作品 1856年9月に描かれた ほぼ左右対称な構図 富士が描かれた作品は「名所江戸百景」の 中には19作品あるが、「するがてふ」ほど富 士が大きく描かれている作品は他にはない。 「するがてふ」とほぼ同時期に描かれた「猿 若町夜の景」は同じような町並みの図である が、消失点を左にずらしている。 長谷川雪丹筆「駿河町」と 広重筆「駿河町之図」 「するがてふ」の方が富士を誇張して描いている。 「するがてふ」の方が俯瞰的な視点。 富士と屋根の傾斜が並 行になっている。 呉服商・三井越後屋の シンボルマークの菱形 も平行になっている。 人物の並び 三井越後屋のシンボ ルマークの菱形と相 似な菱形ができる。 大きな菱形は画面の 幅にほぼぴったり収 まる。 ABとCDの比はおよ そ黄金比に近い値 辺mp、辺noと辺qrの長さがほぼ一致する。 直線i’j’と直線k’l’は ちょうど画面下方の 枠と重なるところで 交わる。 建物や人物、富士を上手く配置することで、 三井越後屋のシンボルマークの菱形と相似 な図形を作り上げた。 大きい菱形は画面内にほぼぴったり納まる。 三井越後屋の菱形の辺を延長すると画面の 枠上で交わる。 主な参考文献 宮尾しげき著「浮世絵大系『名所江戸百景』( 一)(二)」(集英社、1975、1976) 朝野秀剛・吉田伸之編「広重/[歌川広重画]」 (朝日新聞社、1998)
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