スライド 1

2008年3月1日
サブジェクト・ライブラリアンと
大学図書館
呑海沙織
[email protected]
京都大学医学図書館
1
サブジェクト・ライブラリアンと大学図書館
1. 自己紹介など
2. サブジェクト・ライブラリアンの実際
3. サブジェクト・ライブラリアンとは何か
4. サブジェクト・ライブラリアンの役割の変化
5. 英国におけるサブジェクト・ライブラリアン類型
6. プロフェッショナル・ライブラリアンに向けて
2
サブジェクト・ライブラリアンに
興味をもつようになったきっかけ
3
サブジェクト・ライブラリアンに
興味をもつようになったきっかけ
オ「あなたの専攻は,電気工学ですか?」
私「??? 心理学です。」
オ「??? どうしてですか?」
私「??? どうしてって,どうして?」
オ「??? ・・・」
4
サブジェクト・ライブラリアンの必要性
主題知識,専門知識,国際感覚を持った専任の
図書館職員が不充分(科学技術・学術審議会 学
術分科会『学術情報基盤の今後の在り方につい
て(報告)』2006.3)
「高度の図書館サービスを提供するためには、
図書館職員としての専門知識と経験のほか、特
定の専門分野についての高度の知識を持つサブ
ジェクトライブラリアンが、レファレンスサー
ビス、情報資源の組織化や選書等において、専
門性を発揮する必要がある。」
5
サブジェクト・ライブラリアンの
実際
-英国ボーンマス大学-
6
“Subject Librarians”
Penny Dale, Matt Holland,
Marian Matthews.
Subject Librarians:
Engaging With the
Learning And Teaching
Environment,
Ashgate Pub Co,2006
7
訪問スケジュール
13:00‐ 図書館内案内
13:30‐ サブジェクト・ライブラリアン6名との
ミーティング
14:30- 教員にインタビュー
15:00- 副館長にインタビュー
15:30- ティータイム
16:00- 館長にインタビュー
16:30- 質疑応答
17:00- ボーンマス案内
8
ボーンマス(Bournemouth)
南西イングランド
ドーセット(Dorset)
人口:163,000人
南海岸沿い
ロンドンから2時間
9
ボーンマス大学の規模
• 年間予算:7,300万ポンド(168億円)
• 学生数:15,011名
(内大学院生数:1,750名)
Bournemouth University. The Creation of
Excellence Annual Review 04/05
10
ボーンマス大学の学部等
1. ビジネス(The Business School)
2. 保存科学(School of Conservation Sciences)
3. デザイン,工学,コンピューティング
(Design, Engineering and Computing)
4. 健康・コミュニティ学
(Institute of Health and Community Studies)
5. 法律(Bournemouth Law School)
6. メディア(The Media School)
7. サービス・マネージメント
(The School of Service Management)
11
サブジェクト・チーム
Subject Advice Service
• サブジェクト・ライブラリアン
• サブジェクト・サポート・ライブラリアン
6つのサブジェクト・チーム
12
6つのサブジェクト・チーム
1. ビジネス,法律: SL1, SSL2
2. 保存科学:SL1, SSL1
3. デザイン,工学,コンピューティング:
SL1,SSL1
4. 健康・コミュニティ学:SL1,SSL2
5. メディア:SL1,SSL1
6. サービス・マネージメント:SL1,SSL1
13
サブジェクト・ライブラリアンの業務
1. コレクション構築
2. サブジェクト・チームのコーディネート
3. 情報リテラシー・プログラムの立案
4. 学習・教育支援
5. 研究支援
6. パスファインダーの作成
7. サブジェクト・ヘルプ・デスク
8. サブジェクトに関わる個別相談
14
情報リテラシー・プログラムの立案
教員とのコラボレート
授業への参画
授業計画への参入
コレクション構築
学習・教育支援
15
パスファインダーの作成
コレクション構築
学習・教育支援
パスファインダーの作成
16
パスファインダー
「情報への道しるべ,道順,道案内」
ある特定のトピックや主題に関する資料や情報
を収集する手順を簡潔にまとめたツール
17
パスファインダーの内容
A. そのパスファインダーで扱う範囲
B. 専門用語の説明
C.参考図書リスト
D. 文献リスト
E. 専門雑誌の紹介
F. その他:類縁機関の紹介など
18
ボーンマス大学のパスファインダー例
例)コンピューティング
A. サブジェクト・アドバイス
B. 情報を入手できる場所
C.図書リスト,電子ブックリスト
D. 雑誌リスト
E. 雑誌記事の調べ方
F. マルチメディア,新聞
19
サブジェクト・ライブラリアンの役割
「教える」
•ティーチング・メンバー
•高等教育アカデミー(Higher
Education Academy:HEA)のメンバー
•PGCE( Postgraduate Certificate of
Education )の取得
大学院レベルの高等教育資格
20
サブジェクト・ライブラリアンとは何か?
21
'When I use a word,'
Humpty Dumpty
said, in a rather
scornful tone,' it
means just what I
choose it to
mean,neither more
nor less.'
「わたしは言葉を使う時に」ハンプ
ティは、いささか威張りくさった口
調で言いました。「自分がえらんだ
意味だけで使うのだーそれ以上でも
以下でもなく」(『鏡の国のアリス』)
22
サブジェクト・ライブラリアンの
定義・役割
23
サブジェクト・ライブラリアンの定義・役割: A
「ある特定の主題分野において,図書館の技
術的業務あるいはレファレンス・サービスを発
展させるために任命された図書館スタッフ」
ハンフリーズ(K. Humphreys)
1966年にオランダのハーグで開催されたIFLA
第32回総会において。
24
サブジェクト・ライブラリアンの定義・役割: B
「いわゆる図書館のSubject Specialization(主題専
門別制)というのは,特定主題の図書館資料を選択
収集すること,専門分野の書誌作成および,そのガ
イダンスを行うこと。そして,関係分野の教官研究者
との相互協力関係を確立することなどにその機能
的特質を見ることができよう」
及川三千男「イギリス大学図書館におけるサブ
ジェクトスペシャリストについて」図書館学研
究報告. 9,pp.316-326 (1976)
25
サブジェクト・ライブラリアンの定義・役割: C
「ひとつ以上の特定の主題について特別な知識を有
し,その主題分野において責任をもつ図書館員。受
入,蔵書構築,利用者へのサービスを含むこともあ
る。アメリカ合衆国では,しばしばビブリオグラファー
(bibliographer)として知られ,大陸ヨーロッパでは
研究図書館員(research librarian)として知られる
こともある。 」
“International encyclopedia of information and
library science”,1997
26
サブジェクト・ライブラリアンの定義・役割: D
「サブジェクト・ライブラリアンは,コース・プランニング
や勉強法(learning skills)の教授など,伝統的にア
カデミック・スタッフの責務であるとみなされてきた役
割を,より担うようになってきた。」
Gaston, Richard. The changing role of the
Subject Librarian, with a particular focus on UK
developments, examined through a review of the
literature. The New Review of Academic
Librarianship, 2001, pp.19-36
27
サブジェクト・ライブラリアンの定義・役割: E
「サブジェクト・ライブラリアンの役割は,必要な学習
リソースが柔軟な方法で提供できるように,アカデ
ミック・コース・チームと協働することである。」
Peters, Janet. Serving different constituencies:
asynchronous learners. In Subject librarians.
Ashgate Publising Limited. 2006, pp. 117-130
28
さまざまな役割
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
技術的業務(目録・分類)
レファレンス・サービス
資料の選択・収集
書誌作成及びそのガイダンス
教員とのリエゾン
受入
利用者へのサービス
コースプランニング
勉強法の教授
アカデミック・コース・チームとの協働(学習リソースの提
供)
29
サブジェクト・ライブラリアンと
その類義語
30
サブジェクト・ライブラリアンと
サブジェクト・スペシャリスト(1)
LISA(Library and Information Science Abstracts)の
索引語
→ subject specialists, subject specialization
“subject specialists”
北米バイアス
ローカルな職名,特別な主題知識に重点をおいた
サブジェクト・ライブラリアンの概念
31
サブジェクト・ライブラリアンと
サブジェクト・スペシャリスト(2)
‐ 我々はサブジェクト・スペシャリストという言葉を使う
ことを避けている。なぜなら,図書館利用者の立場
から,主題領域に関する高度な知識は,さほど関心
をひくものではないから(Brunel大学)。
‐ あえて,サブジェクト・ライブラリアンという呼称を使
用している。取り扱う主題のあらゆる観点から,本
当の専門家ではないから(Lancaster大学)。
1982年の英国における大学のサブジェクト・ライブラリアン
に関する調査から
32
サブジェクト・ライブラリアンとその類義語
1982
1996(new term only)
‐ subject responsibility
‐ School librarians
‐ liaison librarians
‐ subject assistants
‐ liaison officers
‐ subject consultants
‐ reference librarians
‐ readers’ advisers
‐ faculty librarians
‐ subject support officers
‐ academic librarians
‐ link librarians
‐ information librarians
‐ information specialists
33
米国モデルと英国モデル
a. 米国モデル
主題の専門家という側面が強い 。ダブルマスター。
b. 英国モデル
‘subject librarian’ の ’subject’ は,専門的知識そのも
のというよりも,組織の中の主題によるグルーピングと
いう色彩が濃い。→ 「必ずしも予めその主題分野の知
識や学位を有する必要はない」という傾向
Gaston, Richard. The changing role of the Subject Librarian, with a
particular focus on UK developments, examined through a review of the
literature. The New Review of Academic Librarianship, 2001, pp.19-36
34
サブジェクト・ライブラリアンとは?
知識
情報
利用者
資料
サブジェクト
ライブラリアン
蔵書構築
レファレンス
目録・分類
情報リテラシー教育
間接的
直接的
35
サブジェクト・ライブラリアンの
役割の変化
36
サブジェクト・ライブラリアンの役割の変化
黎明期
~1930年代
Oxford, Cambridge
研究
成長期
1940年代~
1970年代
UCL, Leeds
Holding,蔵書構築
衰退期
1980年代~
1990年代前半
Access
中抜き(disintermediation)論
転換期
リソースの活用
1990年代後半~
情報リテラシー教育
37
黎明期
• オックスフォード,ケンブリッジ,国立図書館
• 研究寄り
38
成長期
• 1940年代~
• 高等教育機関の発展とともに,1960年代~
1970年代が最盛期
• ユニバーシティ・カレッジ・オブ・ロンドン(UCL),
リーズ大学
• 戦後,失われた,あるいは散逸した蔵書コレク
ションを再構築するために
• パリー報告
39
パリー報告
Committee on Libraries. University
Grants Committee. “Report of the
Committee on Libraries”. University
Grants Committee, HMSO, 1967
利用者サービスの向上のために,サブジェクト・
ライブラリアンの導入を
40
衰退期
• 1970年代後半から,電子的資料・ツールが
導入され始める⇔紙資料のコレクション
• 所蔵からアクセスへ
• 1980年代より,高等教育財政逼迫
「1981年の削減(サッチャー政権)」
• 高等教育の拡大
• フォレット報告
41
英国における高等教育の拡大
42
フォレット報告
• 1993年
• 『高等教育合同財政審議会図書館検討委員会
報告書(Joint Funding Council’s Libraries
Review Group: Report)』
• 高等教育機関における大学図書館の問題点・
課題と勧告
• ICTの活用による現状打開
• フィールデン報告
43
転換期
•
•
•
•
•
アクセスだけではなく活用へ
情報リテラシー教育
「教える」役割の増加
「連携(リエゾン)」という役割の増加
学習リソースなど,学習環境の整備
44
転換の背景
1) 情報通信技術の発達
2) メディアの多様化
3) エンドユーザ・カルチャー
(end-user culture)
4) 教員中心から学生中心へ
(From teacher-centred to student-centred)
5) 資源ベース学習
(Resource Based Learning: RBL)
45
資源ベース学習
• 「集合教育の場で学生主体の学習を促進す
るために,特に準備された教育資源と双
方向コミュニケーションの環境とそれら
を支える技術との統合されたもの」
→ 学習リソースの充実など,
学習環境の整備が前提
46
サブジェクト・ライブラリアンの役割の変化
テクニカル
サービス
蔵書構築,目録,分類
レファレンス,利用者教育
教員との連携(リエゾン)
パブリック
サービス
情報リテラシー教育,授業への関与
47
サブジェクト・ライブラリアン類型
48
英国の大学図書館における
サブジェクト・ライブラリアンに関する2つの調査
• 1982年 Woodhead, P., Martin, J.
回答率95%(61 / 64大学図書館)
• 1996年 Martin, J.
回答率76%(45 / 59大学図書館)
*ロンドン大学の12カレッジ,ウェールズ大学の6カレッジを
含む。
- Woodhead, P., Martin, J. Subject specialization in
British university libraries: a survey. Journal of
Librarianship. 14(2), 1982, pp.93-108
- Martin, J. Subject specialization in British university
libraries: a second survey. Journal of Librarianship
and Information Science, 28(3), 1996, pp.159-169
49
サブジェクト・ライブラリアン類型
1)機能型(Functional)
2)二元型(Dual)
主題別+機能別
3)混成型(Hybrid)
ひとりの図書館員が主題+機能
4)三階層型(Three - tier)
ドイツ型。主題,機能,補助の三階層
5)主題中心型(Subject divisional)
北米型。主題チーム(シニア+サポート)
50
サブジェクト・ライブラリアン類型(1982年)
Subject
divisional
5%
Functional
21%
Three-tier
11%
Hybrid
33%
Dual
30%
51
サブジェクト・ライブラリアン類型(1996年)
Subject
divisional
7%
Functional
14%
Three-tier
5%
Hybrid
9%
Dual
65%
52
サブジェクト・ライブラリアン類型の変化
13
1982
1996
6
18
20
29
7
4
3
2 3
Functional
Dual
Hybrid
Three-tier
Subject divisional
53
サブジェクト・ライブラリアン類型
1)機能型(Functional)
2)二元型(Dual)
主題別+機能別
3)混成型(Hybrid)
ひとりの図書館員が主題+機能
4)三階層型(Three - tier)
ドイツ型。主題,機能,補助の三階層
5)主題中心型(Subject divisional)
北米型。主題チーム(シニア+サポート)
54
サブジェクト・ライブラリアン類型の変化
1982
13
18
20
7
3
46%
1996
6
29
4
77%
2
3
Functional
Dual
Hybrid
Three-tier
Subject divisional
55
サブジェクト・ライブラリアン類型の変化
• 基本的にサブジェクト・ベースで仕事をするサブジェ
クト・ライブラリアンを導入している大学の割合は増
加している。
注意点
1)1982年と1996年の調査結果を比べた
ものであること
2)対象が古い大学(old universities)に限定
56
英国における高等教育機関の種別
■古い大学(old universities)
⇒72
1992年の継続・高等教育法以前より,大学としての法
人格を有する高等教育機関。
■新しい大学(new universities)
⇒42
1992年の継続・高等教育法以降に大学としての法人格
を取得した高等教育機関。
■高等教育カレッジ(higher education colleges)
大学としての法人格をもたない高等教育機関。
57
サブジェクト・ライブラリアン
1) さまざまな類義語
2) 米国モデルと英国モデル
3) サブジェクト・ライブラリアンの役割の変化
4) サブジェクト・ライブラリアン類型の変化
58
プロフェッショナル・ライブラリアンへ向けて
59
読む
1. 雑誌論文,雑誌記事を読む
『図書館雑誌』『情報の科学と技術』
『カレントアウェアネス』『図書館界』など
2. メーリングリスト,メールマガジンを読む
ARG(Academic Resource Guide)
カレントアウェアネス-E
60
書く
1. 公開を前提
・雑誌論文として
・Webで
2. その他
・研修・講演会の記録
・業務マニュアルの作成
61
話す
1.
2.
3.
4.
5.
講演会で話す
研修会で話す
学会で発表する
勉強会で話す
情報交換する
62
参加する
1. 学協会への参加
図書館協会,図書館情報学会,日本図書館
協会,大学図書館問題研究会など
2. 講演会・研修会への参加
3. 勉強会への参加
63
創る,企画する
1. 参加したい勉強会などがない場合はつくる。
2. 発表する機会をつくる。
64
読む,書く,話す,参加する
創る,企画する
1. スキルアップ
2. 人的ネットワークの形成
3. 自分の立ち位置・仕事の意味
65
3人のレンガ積み職人
66
一人目の職人
• 「何をしているんですか?」
• 「レンガをつんでいるのです。」
67
二人目の職人
• 「何をしているんですか?」
• 「壁をつくっているのですよ。」
68
三人目の職人
• 「何をしているんですか?」
• 「教会をつくっているのですよ。」
69
三人目のレンガ積み
• 私は,レンガを積んで壁を作っていますが,
それがやがて大教会になるんです。
• その大教会は,子どもたちが安らぎと誇りを
持てるようなすばらしい教会になるのです。
• その教会を作るため,今こうやってレンガを
積んでいるんです。
70
ポートフォリオのすすめ
71
ポートフォリオとは
• 「持ち運びできるように書類等を入れる書類入れや
紙ばさみ」
• 学習者が学習過程におい
て作成したものや獲得した
ものを目的に応じて収集・
選択し,ポートフォリオとし
て蓄積したもの
72
ポートフォリオ評価
• 学習における個人能力の質的評価方法のひとつ
• 量的評価の限界
「伝統的なペーパーテストは,知識の評価には適して
いても,その知識を実際の場面で使ったり,知識を生
み出したりする能力を評価できない」という批判から
• ポートフォリオに対する自己や他者による評価
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英国の図書館員(情報プロフェッショナル)
• CILIPの公認会員
– CILIP公認会員(Member: Chartered Library and
Information Professional, MCLIP):13,307+513
– CILIP特別公認会員(Fellowship: Chartered Library
and Information Professional, FCLIP):933+114
(CILIP Annual Review 2003-04)
• 『CILIPの新しい資格認定の枠組み』
(CLIP's new framework of qualification)
74
ポートフォリオの実際
1)
2)
3)
4)
目標を明らかにする
学習者自らが収集・選択する
多様な資料を対象とする
継続的に形成する
75
ポートフォリオの効果
1) 目標を明らかにする
→ 動機付け,目的意識の向上
2) 学習者自らが収集・選択する
→ 自己評価能力の向上
3) メタ認知能力の向上
76
ありがとうございました。
77