SICEシステム工学部会研究会 ロバスト制御とその新解法: 確率的解法と確定的解法 東京大学数理情報学専攻 大石泰章 http://www.misojiro.t.u-tokyo.ac.jp/~oishi/ 2006年1月18日 参考:数理計画法アプローチで新地平を拓く制御 理論,計測と制御,2005年8月号. 目次 1.なぜロバスト性か タワークレーン マイクロフォンアレイ 2.最適化とロバスト最適化 定式化 3.非線形構造を考えたロバスト最適化 (1)確定的方法 (2)確率的方法 本題 4.展望とまとめ 2 1.なぜロバスト性か タワークレーンの振動抑制制御 3 モデル化[高木・西村 98] h L, W w 1 m, 45 で線形化 状態フィードバックで安定化 → 最適化に基づく設計 時間 [s] 4 パラメータが変わると… (, ) (1 m, 45) (, 0 ) (0.5 m, 40) (0.5 m, 50) (1.5 m, 40) (1.5 m, 50) 0 時間 [s] 時間 [s] ロバストな設計 h L, W w 5 マイクロフォンアレイの設計 音波 w20 周波数固定 w1 w0 w1 w20 マイクロフォン を最小化するように w を設計 ゲイン 1 0 10 40 90 6 cf. [Ben-Tal & Nemirovski 02] 結果 ゲイン w に 0.5% 誤差 w 誤差なし ロバストな設計 ゲイン w 誤差なし w20 w1 w0 w1 w に 0.5% 誤差 w20 7 ここまでのまとめ 現実の対象 タワークレーン マイクロフォンアレイ 抽象的方法論 最適化 最適解 不確かさ パラメータの変化,実装時の誤差,環境の変化, 経年変化,モデル化誤差,… どうするか? 対象固有の解決法 方法論を拡充 → ロバスト最適化 8 目次 1.なぜロバスト性か 2.最適化とロバスト最適化 3.非線形構造を考えたロバスト最適化 (1)確定的方法 (2)確率的方法 4.展望とまとめ 9 2.最適化とロバスト最適化 タワークレーン h L, W ブーム角 で線形化 d dt 0 0 ag ( W2 w) L cos 0 ag ( W2 w) 0 0 agw cos 0 L ag ( W3 w ) A w a 1/(W3 w sin 2 0 ) 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 a cos (h h0 ) L 0 2 a cos B u10 最適化に基づく設計 [Boyd et al. 94] 制御対象 (t ) A (t ) Bu (t ) 制御則 u (t ) K (t ) 設計 最適化問題 最小化 a 性能指標 条件 F ( L, Y , a) O 行列不等式 1次関数 最適化アプローチ 極配置 H ノルム H 2 ノルム 制御器 K LY 1 が 性能 a を達成 11 問題点 d dt a 1/(W3 w sin 2 0 ) 0 0 ag ( W2 w) L cos 0 ag ( W2 w) 0 0 agw cos 0 L ag ( W3 w ) 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 a cos (h h0 ) L 0 a cos2 パラメータ (, 0 ) に依存 最小化 a 条件 F ( L, Y , a) O h L, W w F ( L, Y , a; ) O 一つの のみ考えてもダメ 12 ロバスト最適化 [Ben-Tal & Nemirovski 02] 最小化 a 条件 F ( L, Y , a; ) O, 制御器 K LY 1 は, すべての に関して 性能 a を達成 50 40 0.5 m 1.5 m 13 最小化 a 条件 F ( L, Y , a; ) O, 問題点 a 1/(W3 w sin 2 0 ) d dt 0 0 ag ( W2 w) L cos 0 ag ( W2 w) 0 0 agw cos 0 L ag ( W3 w ) 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 a cos (h h0 ) L 0 a cos2 (, ) に非線形に依存 難しい 従来法:非線形構造を無視 保守的すぎて失敗 本発表:非線形構造を考えたロバスト最適化 14 マイクロフォンアレイ ゲイン w20 w1 w0 w1 1 w20 0 10 40 最適化に基づく設計 最小化 条件 F ( w, ) O 90 ロバスト最適化 最小化 条件 F ( w, ; ) O, への依存性 対称なら線形,非対称 なら非線形 [Ben-Tal & Nemirovski 01] 15 目次 1.なぜロバスト性か 2.最適化とロバスト最適化 3.非線形構造を考えたロバスト最適化 (1)確定的方法 (2)確率的方法 4.展望とまとめ 16 3.非線形構造を考えたロバスト最適化 最小化 a 条件 F ( L, Y , a; ) O, 一般化 最小化 c T x 条件 F ( x, ) O, L c T [0 0 1], x : Y a 1次 多項式 F ( x, ) O x F ( x, 2 ) O F ( x, 3 ) O 17 3.1. 確定的方法 概要 最小化 c T x 条件 F ( x, ) O, 条件を十分条件で置き換える ギャップ小 → 良い近似 真の最小値 T c x 近似最小値 x 十分条件 F ( x, ) O, [佐々木・小原・増淵 01] 先行研究 代数的 近似誤差の評価なし [Scherer 05] [Scherer & Hol 05] 本研究 幾何的 [江本・大石 05] 近似誤差の評価あり [Oishi 05] 計算量逓減 18 十分条件の構成 最小化 c T x 条件 F ( x, ) O, F ( x, ) F00 ( x) F10 ( x) F01 ( x) F11 ( x)1 2 [ F00 ( x) F10 ( x) F01 ( x) F11 ( x)] I 1 2 1 2 1 かけて H ( ) 2 I 零になる行列 2 I の1次関数 19 このとき F ( x, ) O, F00 F00T T F 10 F01T T F 11 F10 F01 F11 WH ( ) H ( )T W T O, ( 4) G (x) (3) G ( x) WH ( ( 2 ) ( 2 ) T W T O, G ( x) WH ( ( 3) ( 3) T W T O, G ( x) WH ( ( 4 ) ( 4 ) T W T O (1) ( 2) ) について凸結合により G( x) WH ( ) H ( )T W T O I F ( x, ) O [ I I ] I 20 最小化 c T x 条件 G ( x) WH ( ) H ( )T W T O, G ( x) WH ( 2 ) H ( 2 )T W T O, G ( x) WH ( 3 ) H ( 3 )T W T O, G ( x) WH ( 4 ) H ( 4 )T W T O 近似最小値 真の最小値 cT x x 十分条件 F ( x, ) O, 十分条件なので近似最小値 真の最小値も 分割細かく → 近似誤差小 どのくらい? cf. 代数的方法 21 最小化 c T x 条件 G ( x) WH ( ) H ( )T W T O, G ( x) WH ( 2 ) H ( 2 )T W T O, (1) ( 2 ) 有効な制約 等号が成り立つ制約 最大有効半径 定理1 適当な仮定のもとで g (M p )2 近似誤差 (最大有効半径) 2 最大有効半径小 → 近似誤差小 効率的な分割法 大切な領域がわかる cf. 代数的方法 22 問題点 最小化 c T x 条件 G ( x) WH ( ) H ( )T W T O, G ( x) WH ( 2 ) H ( 2 )T W T O, (1) ( 2 ) 計算量 の次元の指数関数 23 目次 1.なぜロバスト性か 2.最適化とロバスト最適化 3.非線形構造を考えたロバスト最適化 (1)確定的方法 (2)確率的方法 4.展望とまとめ 24 3.2. 確率的方法 概要 確定的方法 計算量大 ランダム抽出の利用 最小化 c T x 条件 F ( x, ) O, F ( x, (i ) ) O, i 1, , N 置き換える (i ) ランダム抽出 最適解の質の評価が本質的 基本原理 [Polyak & Tempo 01][Calafiore & Polyak 01] 停止則導入 [Oishi 04] 25 基礎技術:x の確率的評価 ランダム抽出した 10000 個の で F ( x, ) O → 何が言える? もし 99.9% 未満 確率 (0.999)10000 0.0001 F ( x, O F ( x, O 「99.99% 以上の信頼度で, F ( x, O なる の割合は 99.9% 以上」 条件 F ( x, O, が扱える 抽出数は の次元と無関係 26 算法(概略のみ) 最小化 c T x 条件 F ( x, ) O, a に関する2分法 「c T x a かつ F ( x, ) O, なる x は存在するか?」 a a a x あり a x なし を1個ランダムに抽出 T c x a かつ F ( x, ) O かをチェック 不成立なら x を逐次更新 適当な停止則 27 解の質は確率的 「1 以上の信頼度で,F ( x, ) O なる の割合は1 以上. x の集合のうち割合 を除いて最適.」 定理2 先の算法は, 高々以下の数だけ を抽出して終了 2 m 2 1 1 1 抽出数 m ln ln ln 6 1 m log 2 [(a a) / atol ], 2(n 1) ln (1/ ) 終了することを保証 計算量を評価 の次元の多項式 cf. 確定的方法 信頼度 より,精度 が高価 28 目次 1.なぜロバスト性か 2.最適化とロバスト最適化 3.非線形構造を考えたロバスト最適化 (1)確定的方法 (2)確率的方法 4.展望とまとめ 29 展望:非線形最適化 最大化 条件 最小化 条件 q( ) 多項式 p [0, 1] x q( ) x, [0, 1] p (0.8, 0.2) , (0.2, 0.8) 極大値18.2 x q ( ) (0.8, 0.8) 極大値 12.8 [0, 1]2 (0.2, 0.2) 最大値 23.6 近似最小値 23.6 真の最小値 30 まとめ ロバストな設計の必要性 ロバスト最適化 確定的方法 十分条件で置換(内側から近似) 解は確定的 計算量大 確率的方法 必要条件で置換(外側から近似) 解は確率的 計算量小 31 参考文献 A. Ben-Tal and A. Nemirovski, Lectures on Modern Convex Optimization: Analysis, Algorithms, and Engineering Applications. Philadelphia, USA: SIAM, 2001. A. Ben-Tal and A. Nemirovski, “Robust optimization: methodology and applications,” Mathematical Programming, ser. B, vol. 92, pp. 453-480, 2002. S. Boyd, L. El Ghaoui, E. Feron, and V. Balakrishnan, Linear Matrix Inequalities in System and Control Theory. Philadelphia, USA: SIAM, 1994. G. Calafiore and B. T. Polyak, “Stochastic algorithms for exact and approximate feasibility of robust LMIs,” IEEE Transactions on Automatic Control, vol. 46, no. 11, pp. 1755-1759, 2001. 江本・大石,“有理式で表される不確かさを持つ制御系の解析と設計法,” 計 測自動制御学会論文集,vol. 41, no. 4, pp. 314-321, 2005. Y. Oishi, “Implementation of a randomized algorithm for solving parameter-dependent linear matrix inequalities,” in Proceedings of the 2004 IEEE Conference on Control Applications, Taipei, Taiwan, September 2004, pp. 1183-1188. 32 Y. Oishi, “A region-dividing approach to robust semidefinite programming and its error bound,” 第34回計測自動制御学会制御理論シンポジウム予稿集,大阪, 2005年10-11月,pp. 317-324. B. T. Polyak and R. Tempo, “Probabilistic robust design with linear quadratic regulators,” Systems & Control Letters, vol. 43, no. 5, pp. 343-353, 2001. 佐々木・小原・増淵,“多次元パラメータ依存行列不等式の可解性と数値解 について,” 第30回計測自動制御学会制御理論シンポジウム予稿集,別府, 2001年11月,pp. 133-136. C. W. Scherer, “Relaxations for robust linear matrix inequality problems with verifications for exactness,” SIAM Journal on Matrix Analysis and Applications, vol. 27, no. 2, pp. 365-395, 2005. C. W. Scherer and C. W. J. Hol, “Matrix sum-of-squares relaxations for robust semidefinite programs,” Mathematical Programming, accepted for publication. 高木・西村, “タワークレーンの吊り荷ロープ長変動を考慮したゲインスケ ジュールド制御,” 日本機械学会論文集 (C編), vol. 64, no. 626, pp. 3805-3812, 1998. 33
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