自殺総合対策へ ~新しいつながりが、新しい解決力を生む~ NPO法人 ライフリンク 代表 清水 康之 自殺の実態 ◆98年から続く「年間自殺者3万人」という異常事態 ◆交通事故死者のおよそ5倍 ◆自殺率は先進国の中で最悪(米国の2倍、英国の3倍) ◆自殺未遂者は既遂者の10倍、つまり年間30万人 ◆ひとりの自殺(未遂)によって、 周囲の5~6人が深刻な心理的影響 ◆日本では、毎年150万~200万人が自殺による影響 自殺の背景 ◆『老老介護』… 昨年報道されただけで30件(60人)以上 高齢者介護従事者の3割が「死にたい」 ◆『多重債務』… 全国に200万人以上 社会的に弱い立場の人たちほど利用 ◆『過労自殺』… 30代の自殺が昨年過去最多に 「リストラはされずに済んだけど・・・」 ◆『学校のいじめ』、『DV』、『セクシャルマイノリティーへの差別』、 『重度障害心中』、『パワハラ(職場のいじめ)』、などなど 自殺問題の捉え方 自殺の多くは、「追い詰められた末の死」である。 「社会問題が最も深刻化した末に起きている」のが自殺。 ◆「自殺は避けられる死(avoidable death)」でもある。 (WHO) ◆社会的な要因が深く関わっている自殺は、社会的な 対策を講じることで防ぐことができる。そうした人たち は「死にたくて死んでいる」わけではないから。 → 自殺は私たちの暮らしに深く関わる社会問題である。 『人間の安全保障』という理念 ◆『人間の安全保障』とは、紛争や飢餓、感染病や災害 などといった、人の生活や存在を脅かす社会的脅威か ら、 「いのち」を守っていこうという概念。 ◆日本の自殺には、社会的に「追い詰められた末の死」 が少なくない。本当は「生きていきたい」にも関わらず、 生きる道が「閉ざされて」自殺している人が多い。 ◆遺書に綴られた「ごめんなさい」などの謝罪の言葉。 「生きていきたい」を支えられる社会に。『人間の安全 保障』を守るための対策・仕組みが必要。 自殺対策基本法 ◆自殺対策に関するはじめての法律(議員立法) ◆目指すのは、自殺禁止ではなく、自殺総合対策の推進 → 人間の「生きる権利」を守るための法律 ◆5つの柱 ・「自殺は社会問題である」と位置づけている ・自殺対策は、国や自治体の責務としている ・個人だけでなく社会を対象とした総合対策が重要 ・対策の実践は関係者の密接な連携の下で行うように ・自殺未遂者や自死遺族への支援も重要 自殺対策基本法の「目的」 【第一条 目的】 この法律(自殺対策基本法)は、近年、我が国において自殺に よる死亡者数が高い水準で推移していることにかんがみ、自殺 対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責 務を明らかにするとともに、自殺対策の基本となる事項を定め ること等により、自殺対策を総合的に推進して、自殺の 防止を図り、あわせて自殺者の親族等に対する支援の充実を 図り、もって国民が健康で生きがいを持って暮らすこ とのできる社会の実現に寄与すること を目的とする。 自殺総合対策とは 自殺に追い込まれていく人をひとりでも減らし、自殺で大切な人 を亡くした人が悲しみの底から回復していくのを見守り、そうし た取り組みを通して、「生き心地の良い社会」を築き上げていく ことである。 一対一で行うカウンセリングや治療が「点」の、グループで行う 分かち合いや他分野の専門家による連携が「線」の自殺対策 だとすれば・・・ 自殺総合対策とは社会全体で行う「面」の自殺対策である。(= 社会・地域作り) 自殺総合対策 推進モデル (グランドデザイン) いのちのつながり 「生き心地の良い社会」の構築 「追い込まれ型社会」からの脱却 現場・社会制度への 実務的アプローチ 社会制度の 見直し・改善 自殺実態の 把握・分析 有効策 の開発 国レベルの自殺対策 自殺念慮者支援 価値観・生き方への 啓発的アプローチ 自死遺族支援 自殺対策 地域ネット 住民へ の啓発 地域レベルでの自殺対策 対 策 大 綱 自 殺 対 策 基 本 法 行政 弁護士 医療関係者 NPO 研究者 マスコミなど 自殺総合対策推進のカギ 【3つのカギ】 ◆社会全体で「理念・推進モデル」を共有すること →関係者のみならず社会全体で共有できる「推進モデル」の構築 →「推進モデル」を共有するための徹底した対話・意見交換 ◆自らの限界を自覚し、他者との連携を図ること →「推進モデル」における自分の「立ち位置」の確認 →他の関係者(社会全体)の動きを睨みながら連携を予測・想像 ◆柔軟に軌道修正を図りながら迅速に進めること →「待ったなし」の状況を認識し、徹底したアクションリサーチを遂行 →責任の所在を明確にし、特に誰が「推進役」を担うのかを決める 自殺対策に必要な心構え ◆自分の(分野の)限界を認めること ◆他者の可能性を尊重すること →そこにはじめて「つながり」が生まれる。 →ひとりひとりは微力でも、無力ではない。 つながり合うことで色々なことができる。 【ライフリンクのモットー】 新しいつながりが、新しい解決力を生む。 【ライフリンクとは】 ライフリンクは、毎年3万人を超える人たちが自殺を選ばざるを得 ない社会状況に一石を投じようと、2004年10月に活動を始め たNPO法人です。 全国の自死遺族会や自治体、弁護士や医師、ジャーナリストや 研究者など、これまでは個別に自殺の問題と向き合ってきた志あ る団体や個人を、業種や立場の垣根を越えて連帯させる「つなぎ 役」として活動しています。 メンバーは、学校の教諭やジャーナリスト、こころのケアの専門家 や保健師、自死遺族や地方公務員、借金返済のプロや翻訳家、 医師や保育師、お坊さんや税理士など。社会のさまざまな現場で、 自殺の問題に取り組んでいる人たちです。 詳しくは、ライフリンクのHPをご覧ください。 http://www.lifelink.or.jp
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