2章 確率 2.1 標本空間と確率 ■確率 P ある結果が必ず起きる … 確率 P = 1 決して起きない … 確率 P = 0 起きるか起きないか不確実 … 0 < 確率 P < 1 例:天気予報「明日雨が降る確率 30%」 P=0.3 意味:「明日雨が降る」という予想 それが当たる確率 P = 0.3 客観的側面 (頻度論) 同条件で何度も繰り返した時、その予想が当たって いる割合。(実際には同一条件の繰り返しは困難) 主観的側面 その予報の信頼度 ■根元事象と標本空間 試行(Trial) ある 1 回または 1 組の実験や現象。 例: 2 つのサイコロを転がして出た目 根元事象(Original Event) ei, P(ei) (i = 1, 2, …) 起き得る結果 ei, 例:2つのサイコロの目の対 (6, 1) など 起きる確率 P(ei) ( 0 ≦ P(ei) ≦ 1 ) 例:P{ (1, 1) } = 1/36 (確率値は未知でも良い) 標本空間(Sample Space) Ω = { e1 , e2, … } (テキストは Ω を S と表記) ・すべての根元事象の集合。 例:2つのサイコロ … 6×6 = 36個の根元事象 2つのサイコロの目の標本空間 ・複数の根元事象が ( 1, 6 ) ( 2, 6 ) ( 3, 6 ) ( 4, 6 ) ( 5, 6 ) ( 6, 6 ) 同時に起きることは無い。 ( 1, 5 ) ( 2, 5 ) ( 3, 5 ) ( 4, 5 ) ( 5, 5 ) ( 6, 5 ) ( 1, 4 ) ( 2, 4 ) ( 3, 4 ) ( 4, 4 ) ( 5, 4 ) ( 6, 4 ) ei ∩ ej = φ (i ≠ j) ( 1, 3 ) ( 2, 3 ) ( 3, 3 ) ( 4, 3 ) ( 5, 3 ) ( 6, 3 ) φ は空集合 ・何れか1つの根元事象は ( 1, 2 ) ( 2, 2 ) ( 3, 2 ) ( 4, 2 ) ( 5, 2 ) ( 6, 2 ) ( 1, 1 ) ( 2, 1 ) ( 3, 1 ) ( 4, 1 ) ( 5, 1 ) ( 6, 1 ) 必ず起きる。 事象(Event) E = { e1 (E) , e2 (E), … } ⊂ Ω • 標本空間 Ω の任意の部分集合。 例:目の和が奇数 E = { (1, 2), (2,1), …, (5, 6) } 2つのサイコロの目の標本空間 18個の根元事象 ( 1, 6 ) ( 2, 6 ) ( 3, 6 ) ( 4, 6 ) ( 5, 6 ) ( 6, 6 ) • ある事象 E の起きる ( 1, 5 ) ( 2, 5 ) ( 3, 5 ) ( 4, 5 ) ( 5, 5 ) ( 6, 5 ) 確率 P(E) = ( 1, 4 ) ( 2, 4 ) ( 3, 4 ) ( 4, 4 ) ( 5, 4 ) ( 6, 4 ) 事象 E を構成する ( 1, 3 ) ( 2, 3 ) ( 3, 3 ) ( 4, 3 ) ( 5, 3 ) ( 6, 3 ) 各根元事象の確率の和。 ( 1, 2 ) ( 2, 2 ) ( 3, 2 ) ( 4, 2 ) ( 5, 2 ) ( 6, 2 ) P(E) = P(e1 (E)) + P(e2 (E)) + … ( 1, 1 ) ( 2, 1 ) ( 3, 1 ) ( 4, 1 ) ( 5, 1 ) ( 6, 1 ) 例: 1/36 + … + 1/36 = 18/36 = 1/2 ■確率の公理(コルモゴロフ) [公理1] 任意の事象 E⊂Ω について 0 ≦ P(E) ≦ 1 (万が一、百万人に1人 → 値の標準化) [公理2] P(Ω) = 1 (必ず一つの根元事象が起きること = 書き忘れている根元事象が無いこと) [公理3] 互いに共通部分を持たない事象 E1, E2, … (E i∩E j =φ, i ≠ j) について その何れかが起きる確率 P(E1∪E2∪…) = P(E1) + P(E2) + … ■確率の性質 余事象(Complement): ある事象 A の余集合(補 集合)を Ac とする。Ac を A の余事象という。 A ∩ Ac = φ かつ A∪Ac = Ω [公理3]より、P(A∪Ac) = P(A) + P(Ac) [公理2]より、P(A∪Ac) = P(Ω) = 1 よって P(Ac) = 1 – P(A) あるいは、余事象を not で表すと P(not A) = 1 – P(A) 2つのサイコロの目の標本空間 ( 1, 6 ) ( 2, 6 ) ( 3, 6 ) ( 4, 6 ) ( 5, 6 ) ( 6, 6 ) ( 1, 5 ) ( 2, 5 ) ( 3, 5 ) ( 4, 5 ) ( 5, 5 ) ( 6, 5 ) ( 1, 4 ) ( 2, 4 ) ( 3, 4 ) ( 4, 4 ) ( 5, 4 ) ( 6, 4 ) ( 1, 3 ) ( 2, 3 ) ( 3, 3 ) ( 4, 3 ) ( 5, 3 ) ( 6, 3 ) ( 1, 2 ) ( 2, 2 ) ( 3, 2 ) ( 4, 2 ) ( 5, 2 ) ( 6, 2 ) ( 1, 1 ) ( 2, 1 ) ( 3, 1 ) ( 4, 1 ) ( 5, 1 ) ( 6, 1 ) (一般の)加法定理: 事象 A, B ⊂ Ω について、B の A による二分割は B = B ∩ Ω = B ∩ (A∪Ac) = (B∩A)∪(B∩Ac) [公理3]より P(B) = P(B∩A) + P(B∩Ac) A よって P(A∪B) = P( A∪(B∩Ac) ) = P(A) + P( B∩Ac ) = P(A) + [ P(B) - P(B∩A) ] つまり、 P(A∪B) = P(A) + P(B) - P(A∩B) B∩A 和集合 or 、積集合 and P(A or B) = P(A) + P(B) - P(A and B) Ω B B∩Ac 例: 2つのサイコロがあり、各目が 1 になることを 事象 A, B とする。 A 2つのサイコロの目の標本空間 ( 1, 6 ) ( 2, 6 ) ( 3, 6 ) ( 4, 6 ) ( 5, 6 ) ( 6, 6 ) A = { (1, j) : j=1,…, 6 } ( 1, 5 ) ( 2, 5 ) ( 3, 5 ) ( 4, 5 ) ( 5, 5 ) ( 6, 5 ) B = { (i, 1) : i=1,…, 6 } ( 1, 4 ) ( 2, 4 ) ( 3, 4 ) ( 4, 4 ) ( 5, 4 ) ( 6, 4 ) 理想的なサイコロ ( 1, 3 ) ( 2, 3 ) ( 3, 3 ) ( 4, 3 ) ( 5, 3 ) ( 6, 3 ) (根元事象の起きる確率がすべて ( 1, 2 ) ( 2, 2 ) ( 3, 2 ) ( 4, 2 ) ( 5, 2 ) ( 6, 2 ) 同じ)なら ( 1, 1 ) ( 2, 1 ) ( 3, 1 ) ( 4, 1 ) ( 5, 1 ) ( 6, 1 ) P(A or B) = P(A) + P(B) – P( A and B ) = 6/36 + 6/36 – 1/36 = 11/36 B 互いに排反(mutually exclusive) 事象 A, B ⊂ Ω が、共通する根元事象を持 たな い時 ( A∩B = φ )、 A, B は「互いに排反」という。 「一方が起きれば(同時に)他方は起きない」 こと。 例: 2つのサイコロの目の和 A:偶数, B:奇数 また、空事象 φ の起きる確率は、 Ωc = φ および余事象の確率より P(φ) = P(Ωc) = 1 – P(Ω) = 1 – 1 = 0。 (互いに排反な事象の)加法定理: P(A∪B) = P(A) + P(B) または P(A or B) = P(A) + P(B) 例:(理想的なサイコロ) 事象 A = 目の差が 2 以上 事象 B = どちらの目も 5 以上。 事象 A, B は「互いに排反」。 よって、 P(A or B) = P(A) + P(B) = 20/36 + 4/36 = 24/36 = 2/3 2つのサイコロの目の標本空間 ( 1, 6 ) ( 2, 6 ) ( 3, 6 ) ( 4, 6 ) ( 5, 6 ) ( 6, 6 ) ( 1, 5 ) ( 2, 5 ) ( 3, 5 ) ( 4, 5 ) ( 5, 5 ) ( 6, 5 ) ( 1, 4 ) ( 2, 4 ) ( 3, 4 ) ( 4, 4 ) ( 5, 4 ) ( 6, 4 ) ( 1, 3 ) ( 2, 3 ) ( 3, 3 ) ( 4, 3 ) ( 5, 3 ) ( 6, 3 ) ( 1, 2 ) ( 2, 2 ) ( 3, 2 ) ( 4, 2 ) ( 5, 2 ) ( 6, 2 ) ( 1, 1 ) ( 2, 1 ) ( 3, 1 ) ( 4, 1 ) ( 5, 1 ) ( 6, 1 )
© Copyright 2024 ExpyDoc