はじめに 「こころの健康についての疫学調査に関する研 究」研究班では、これまで岡山県、鹿児島県、 長崎県、栃木県、山形県及び横浜市の地域住 民を対象として調査を実施 この調査はWHOが推進し、世界30カ国以上が 参加している国際的な疫学研究プロジェクト World Mental Health(WMH)の一環として実施 上記の方法で得られた調査結果について、広く 普及し活用されることを目的として、成果普及 ツールを作成 調査の意義 こころの健康に関する課題に対して、問題を対 処する対象となる集団の規模や特徴を精確に 把握することが必要不可欠である しかし、現在の日本ではこころの健康対策の根 拠となる地域住民をベースとしたデータが非常 に乏しい状態である そこで、これからの日本をこころの健康への対 策の行き届いた暮らしやすい国にしていくため に、全国の地域住民を対象とした、「こころの健 康についての疫学調査」を企画・実施した 調査対象地域 【山形県】 天童市:430名 上山市:340名 【岡山県】 岡山市:925名 玉野市:349名 【栃木県】 佐野市:550名 【長崎県】 長崎市:208名 【鹿児島県】 串木野市:354名 東市来町:271名 市木町153名 吹上町:177名 【神奈川県】 横浜市磯子区:377名 調査対象 調査対象地区に居住している20歳以上 選挙人名簿を用い無作為抽出にて選出 対象者数※1 調査対象外※2 面接完了者 回収率※3 岡山市 1,607 199 925 65.7% 玉野市 701 82 349 56.4% 長崎市 800 13 208 26.4% 串木野市 587 48 354 65.7% 吹上町 230 13 177 81.6% 市来町 227 12 153 71.2% 東市来町 429 41 271 69.8% 佐野市 1041 155 550 62.1% 天童市 807 94 430 60.3% 上山市 877 74 340 42.3%# 横浜市 1010 87 377 40.8% 8,316 818 4,134 55.1% 岡山県 長崎県 鹿児島県 栃木県 山形県 神奈川県 合計 ※1 ※2 ※3 # 調査地域の選挙人名簿から無作為に抽出された者 日本語が理解できない者および調査時点で死亡,転居,入院または入所していた者は対象外とした 回収率=面接完了者数÷(対象者数-調査対象外者数) 山形県上山市は464名面接完了(回収率57.8%)したが、technical problemにて124名分析不能となった 調査方法 WHO統合国際診断面接(Composite International Diagnostic Interview: CIDI)をもとに作成された調査 票を使用し、専門のトレーニングを受けた調査 員が面接調査を実施 この調査票により、国際的な診断基準である ICD-10 および DSM-IV に基づいた診断を得る ことができる 主要な精神疾患の有病率に加え、自殺行動や 受療行動などについても把握できる 調査結果について ① ② ③ ④ ⑤ 主要な精神疾患の生涯・12ヶ月有病率 主要な精神疾患を経験した人での専門家へ の相談・受療行動 自殺を真剣に考えたことのある人の割合(自 殺念慮者の割合) 精神疾患を経験した人で医療機関への受診 が遅れた理由 今後「こころの健康問題」が生じた際の行動に ついて 主要な精神疾患の生涯・12ヶ月有病率(DSM-Ⅳ) 10.0% 9.0% 8.5% 8.0% 7.5% 7.0% 7.3% 6.5% 6.3% 6.0% 5.0% 4.0% 3.3% 3.0% 2.0% 1.0% 0.0% n = 4,134 20-34歳 35-44歳 45-54歳 55-64歳 65歳以上 合計 主要な精神疾患の生涯・12ヶ月有病率(DSM-Ⅳ) 12.0% 11.7% 11.0% 10.5% 10.7% 9.8% 10.0% 8.9% 9.0% 8.0% 7.0% 6.0% 5.0% 4.5% 4.0% 3.0% 2.0% 1.0% 0.0% n = 4,134 20-34歳 35-44歳 45-54歳 55-64歳 65歳以上 合計 主要な精神疾患の生涯・12ヶ月有病率(DSM-Ⅳ) 11.0% 10.0% 10.1% 9.0% 8.0% 7.6% 7.4% 7.0% 6.7% 6.5% 6.0% 5.0% 3.9% 4.0% 3.0% 2.0% 1.0% 0.0% n = 4,134 20-34歳 35-44歳 45-54歳 55-64歳 65歳以上 合計 主要な精神疾患の生涯・12ヶ月有病率(DSM-Ⅳ) 25.0% 22.1% 20.1% 20.0% 20.3% 18.5% 17.2% 15.0% 10.0% 10.0% 5.0% 0.0% n = 4,134 20-34歳 35-44歳 45-54歳 55-64歳 65歳以上 合計 主要な精神疾患の生涯・12ヶ月有病率(DSM-Ⅳ) 5.0% 4.5% 4.5% 4.0% 3.5% 3.0% 2.7% 2.5% 2.1% 2.0% 2.0% 1.5% 1.5% 1.0% 0.8% 0.5% 0.0% n = 4,134 20-34歳 35-44歳 45-54歳 55-64歳 65歳以上 合計 主要な精神疾患の生涯・12ヶ月有病率(DSM-Ⅳ) 6.0% 5.7% 5.5% 5.0% 4.5% 3.9% 4.0% 3.7% 3.5% 3.1% 3.0% 2.6% 2.5% 2.0% 1.5% 1.2% 1.0% 0.5% 0.0% n = 4,134 20-34歳 35-44歳 45-54歳 55-64歳 65歳以上 合計 主要な精神疾患の生涯・12ヶ月有病率(DSM-Ⅳ) 6.0% 5.7% 5.5% 5.3% 5.0% 5.1% 4.5% 4.0% 4.0% 3.5% 3.1% 3.0% 2.5% 2.3% 2.0% 1.5% 1.0% 0.5% 0.0% n = 4,134 20-34歳 35-44歳 45-54歳 55-64歳 65歳以上 合計 主要な精神疾患の生涯・12ヶ月有病率(DSM-Ⅳ) 12.0% 11.3% 11.0% 10.0% 9.4% 9.0% 8.5% 8.0% 7.2% 7.0% 5.8% 6.0% 5.0% 3.8% 4.0% 3.0% 2.0% 1.0% 0.0% n = 4,134 20-34歳 35-44歳 45-54歳 55-64歳 65歳以上 合計 主要な精神疾患を経験した人での専門家への相談・ 受療行動(複数回答) 合計 28.8% その他相談先 5.8% メ ンタルヘルス専門家 5.8% 医師合計 23.8% 一般医 12.2% 14.6% 精神科医 n = 711 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% 40.0% 主要な精神疾患を経験した人での専門家への相談・ 受療行動(複数回答) 合計 36.3% その他相談先 8.9% 8.1% メ ンタルヘルス専門家 医師合計 29.0% 一般医 12.7% 18.9% 精神科医 n = 259 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% 40.0% 主要な精神疾患を経験した人での専門家への相談・ 受療行動(複数回答) 合計 その他相談先 メ ンタルヘルス専門家 17.5% 3.0% 4.0% 医師合計 14.8% 一般医 8.8% 7.7% 精神科医 n = 297 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 主要な精神疾患を経験した人での専門家への相談・ 受療行動(複数回答) 合計 27.3% その他相談先 5.7% 6.8% メ ンタルヘルス専門家 医師合計 21.6% 一般医 6.8% 14.8% 精神科医 n = 88 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% これまでに自殺を真剣に考えたことのある人の割合 (自殺念慮者の割合) 10.6% 11.0% 10.0% 9.0% 8.7% 8.0% 7.0% 6.0% 5.0% 4.0% 3.0% 1.7% 2.0% 1.1% 1.0% 0.0% n = 4,130 2.0% 1.9% 真剣に考えた 自殺を計画した 男性 (n=1,868) 女性 (n=2,262) 自殺を試みた 精神疾患を経験した人で医療機関の受診が遅れた(受診しようと 思ってから4週間以上受診しなかった)理由(複数回答) 自力で対処できる 68.8% ひとりでに改善 48.4% 最初はそれほど困らない 46.9% どこに行けばわからない 40.6% 28.1% 他人に知られるのが心配 時間がかかったり、不便だと思った 25.0% 効果があると思わなかった 23.4% 治療にゆくことに支障となる要因があった n = 64 21.9% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 今後「こころの健康問題」が生じた際の 受療行動についての意識 60.0% 51.5% 50.0% 46.3% 40.0% 30.0% 23.7% 21.7% 20.0% 17.0% 14.7% 10.0% 8.0% 7.4% 4.4% 0.0% n = 1,725 絶対に受ける おそらく受ける おそらく受けない 男性 (n = 761) 絶対に受けない 女性 (n = 964) 5.5% 不明・拒否 こころの健康施策への提言 地域住民における気分、不安、物質関連障害 経験者は過去12ヶ月で7.2%と高い状況で、中 でもうつ病(大うつ病性障害)が2.1%と最も高い しかし、これらの人の多くは医療機関を受診して いないのが現状 これら精神疾患のもたらす機能障害は身体疾 患よりも精神疾患の方が大きく、また自殺への 影響も大きい これら精神疾患の早期受診を促進すべき
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