テロリズムの系譜学

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未来予想図Ⅲ~ポ・ス・ド・クのサイン~
山本健介、中井大介、菊池朋之
目次
Ⅰ テロリズムの起源
Ⅱ マルクスとレーニン―現代的テロリズムの萌芽―
Ⅲ 国際テロリズム(前期)―国際テロリズムの発展―
Ⅳ 国際テロリズム(後期)―ポスト冷戦期のテロリズム―
Ⅴ ポスト9.11時代のテロリズムへの対応―テロリズムの展望―
テロリズムの起源
テロリズムとは
・テロリズムの語源
⇒ジャコバン派「恐怖政治(regime de la Terreur)」
・テロリズムの誕生(フランス革命末期)
⇒民主的社会獲得のためには恐怖(テロ)が必要
・フランス革命末期におけるテロリズム
⇒体制側による恐怖をともなった秩序維持・強化
マルクスとレーニン
―現代的テロリズムの萌芽―
マルクスの分類
・テロリズムを「白色/赤色テロ」に区別
・白色テロ
⇒ジャコバン的、体制側による恐怖政治
・赤色テロ
⇒共産主義革命的、体制側への暴力行使
レーニンと赤色テロ
・レーニンの革命政策
①テロリズムを採用
②マルクスの革命理論(赤色/白色)を採用
「労農政府の敵による白色テロに対しては、労働者農民は、ブルジョアジー
およびその手先に対する大量の赤色テロをもって応えるであろう。」
(1918年9月、ロシア中央委員会)
⇒「テロリズム=赤色テロ」へ認識が変化
国際テロリズム(前期)
―国際テロリズムの発展―
国際テロリズム(前期)
• PFLP:エルアル航空ハイジャック事件(1968)
→エスノナショナリズムの雛形へ
• グローバル化黎明期
(1)技術革新
→迅速かつ容易な国際移動
(2)国際報道
→ニュース画像の質的向上
Military photos.net
(http://www.militaryphotos.net/forums/album.php?albumid=924
&attachmentid=95569)
⇒「観客」としての国際社会
国際テロリズム(前期)の目的
「非イスラエルを目標にした、ある種の作戦をきっぱり放棄
したことがたびたびあった。」(ホフマン[1999:141])
BBC Witness (http://www.bbc.co.uk/programmes/b01kpyx7)
<国際テロリズム(前期)>
政治的目標を達成するための手段としての国際テロリズム
国際テロリズム(後期)
―ポスト冷戦期のテロリズム―
国際テロリズム(後期)
• アル・カーイダ(al-Qaeda):9.11アメリカ同時多発テロ(2001)
→自爆テロの隆盛
• グローバル化円熟期
(1)グローバル化と「対象」
(2)人的移動の拡大
BBC(http://www.bbc.co.uk/news/world-13764385)
⇒グローバルな「敵」とグローバルな「味方」
国際テロリズム(後期)の「目的」
人生の希望や生きる目的を無くし「浮動」する若者
⇒自爆という「目的」と「手段」による動員
Jihad Watch Organization (http://www.jihadwatch.org/2008/09/alqaeda-calls-for-jihad-against-apostate-regimes-in-north-africa.html)
<国際テロリズム(後期)>
目的達成のための手段であると同時に自己目的となる
テロリズムの系譜図
フランス革命
レーニン
グローバル
黎明期
グローバル
円熟期
反体制側
非国家
アクター
非国家
アクター
主
体
動
機
範
囲
政治目的
政治目的
政治目的
手段の自己
目的化
ローカル
ローカル
グローバル
グローバル
概
念
恐怖政治
↓
政治目的が内在
白色/赤色の区別
↓
共産主義への組み
込み
脱共産主義化
脱政治化
体制側
ポスト9.11時代のテロリズムへの対応
―テロリズムの展望―
ポスト9.11テロリズムと国家
現代のテロリズムが国家安全保障に与える影響
・グローバル化
⇒国民国家の相対化、統治困難な領域の出現
・安全保障政策への影響
⇒対内的要素の重要性の高まり
国家の対応
①対外的なテロ掃討作戦の展開
→9.11後の対テロ戦争(アフガニスタン、イラク)・・テロ根絶の限界
②国際協力
→外的に発生するテロリズムの封じ込め
③対内的な対テロ政策
→国家領域内秩序の強化
(Ex. 国境管理、警察権の強化、被害管理、国民再統合)
⇒体制維持目的による行為の正当化
国家テロリズムへの回帰
ジャコバン的テロリズムと現代対テロ政策の類似
・主体
→体制側(国家)によって行われる
・範囲
→国民に対して行われる(ローカル)
・動機
→「維持」を政治目的とした行為
・状況
BBC(http://www.bbc.co.uk/news/magazine-14681384)
→国民国家の形成と再形成
米国:愛国者法の制定、国土安全保障省の創設→司法権限の著しい拡大
(米国愛国者法:令状無しの身柄拘束・家宅捜索、盗聴etc..)
テロリズムの未来予想図
国際テロリズム(後期)=グローバル化進展の副産物
↓
国家は国内のテロ要素を積極的に排除し続けなければならない
↓
「自由」維持のための抑圧的政策
↓
抑圧への対抗として反体制的要素の増加
テロリズム対策のディレンマ
世界は国際テロリズムと国家テロリズムの併存となる
ご静聴ありがとうございました
参考文献・資料
イーグルトン[2011]『テロリズム』岩波書店
猪口孝ほか[2000]『政治学事典』弘文堂
E.H.カー[1967]『ボリシェヴィキ革命(一)』みすず書房
ギデンズ[1999]『第三の道』日本経済新聞社
関下稔[2010]『国際政治経済学要論』晃洋書房
保坂修司[2011]『新版 オサマ・ビンラディンの生涯と聖戦』朝日新聞出版
――――[2012]『イラク戦争と変貌する中東世界』山川出版社
ホフマン[1999]『テロリズム』原書房
宮坂直史[2006]「テロリズムとテロ対策」『平和政策』有斐閣
ユルゲンスマイアー[2004]『グローバル時代の宗教とテロリズム』明石書店
Cha, Victor D[2000] ‘Globalization and the Study of International Security’, Journal of Peace Research 37/3, 391-403.
Dalacoura, Katerina[2011] Islamist terrorism and democracy in the Middle East, New York: Cambridge University Press
外務省HP「日本の国際テロ対策協力」http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/terro/index.html
(最終閲覧日11月10日)