ハイブリッド車対応セミナー ~ハイブリッド車の整備で信頼と収益アップ~ 1 ハイブリッド車概要 • HV(ハイブリッド)システム 従来のエンジンとモータの複合パワーユニッ ト • 整備時の注意点 ハイブリッドバッテリ(100~346v) インバーターユニット 補機バッテリ(12v) ブレーキ・AT・冷却系統のフルード交換 車検時のモード切替 等 2 ハイブリッド車種類 シリーズ パラレル THS-Ⅱ エアロスターエコ インサイト プリウス 電圧 ≒634V ≒100V ≒ 650V (バッテリー ≒ 200V) エアコン コンプレッサー 電動 エンジン駆動 電動 スタータ 有り 有り※ 無 代表車種 構成図 ※モーター始動が困難の場合、スタータにて始動。 3 ハイブリッド車整備の豆知識 • サービスプラグとは ・HVは高電圧が流れています。 高電圧系統の点検・整備を行う際に、高電圧を切り離すためのプラグです。 取りはずしたサービスプラグは、作業中に 他の人が誤って接続することがないように 自分のポケットに入れて携帯する。 ・ホンダ車の回路遮断方法 IMA(インテグレーテッド モーター アシスト)システムの電気回路遮断は メインスイッチをOFFにします。 サービスプラグを抜く、またはメインスイッチをOFFにしてから高電圧のコネクターや端子に 触れるまでに、10分間以上の時間を確保する。(コンデンサーの放電のため) 写真:トヨタ プリウス20系 4 ハイブリッド車整備の豆知識 • サービスプラグの位置 プリウス 20系 プリウス 30系 補機バッテリー 補機バッテリー 5 写真:トヨタ自動車 ホームページより ハイブリッド車整備の豆知識 • サービスプラグの位置 6 写真:トヨタ自動車 ホームページより THS-Ⅱシステム シフトポジションセンサ 電動 MG1 MG2 コンプレッサ アクセルポジションセンサ EVモードスイッチ インバータ ACインバータ HV ECU エンジン ECU DC-DC 高電圧回路 コンバータ PCU ABS ECU SMR 12Vバッテリー CAN DLC3 バッテリー ECU HVバッテリー NHW20系 7 THS-Ⅱ動力伝達 NHW20系 8 THS-Ⅱインバータ部 ~PCU~ PCU MG1 ハ イ ブ リ ッ ド バ ッ テ リ 昇圧 インバータ コンバータ (DC⇔AC) (DC200v⇔DC500v) MG2 A/Cインバータ コンプ レッサ (DC⇔AC) DC-DCコンバータ バッテリ (DC200v⇔DC12v) NHW20系 9 THS-ⅡHVバッテリー部Ⅰ モジュール 電流センサ バッテリ ECU SMR3 SMR2 SMR1 レジスタ サービスプラ グコネクタ ※SMR:システムメインリレー NHW20系 10 THS-ⅡHVバッテリー部Ⅱ NHW20系 11 THS-ⅡHVバッテリー充電管理 SOC(充電状態-State of Charge-)管理 HVバッテリーは加速時などには放電,減速時には回生ブレーキによる充電 が繰り返し行われるため,バッテリーコンピューターは充放電電流の積算など によりSOCが常に制御目標範囲内に保たれるよう,HVコントロールコンピュ ーターにSOCを送っています。 電 4.5 流 セ ン サ 出 2.5 力 電 圧 (V) 0.5 200 0 -200 HVバッテリ電流(A) 充電 放電 NHW20系 12 冷却系等 エンジン用ラジエタ部 NHW20系 HV用ラジエタ部 コンデンサ 13 エンジン冷却水交換作業 冷却水抜き取り ①ラジエータキャップを取りはずす。 ②ラジエータ側ドレーンコック部にビニールホースを取り付ける。 ③エンジン側ドレーンコック部ビニールホースを取り付ける。 ④ラジエータ側ラジエータドレーンコックプラグおよびエンジン側ドレーンコックプラグをゆ るめ冷却液を抜き取る。 ⑤ラジエータリザーブタンクの冷却液を抜き取る。 冷却水注入 ①冷却液をラジエータ注入口いっぱいまで注入す る。 ②ラジエータリザーブタンクのFレベルまで冷却液 を注入する。 ③車両を「整備モード」にセットする。 ④サーモスタットが開弁するまでエンジンを暖機す る。 ⑤暖機後エンジンを停止し、冷却液が冷えるまで 待ちラジエータキャップを取りはずして水位を確認 する。※もし水位が下がっている場合は再度冷却液を注入し、エンジンを暖機 してその後、冷却液の水位を確認する。 ⑥冷却液の水位が下がらなくなったら、ラジエータ リザーブタンクの冷却液をFレベルまで注入する。 14 インバータ冷却水交換作業 冷却水抜き取り ①トランスアクスル側リザーブタンクキャップを取りはずす。 ②下図の位置のプラグをはずし冷却水を抜き取る。 冷却水注入 ①リザーブタンクより冷却水を補充する。 ②イグニッションスイッチをONにして、約20秒間 ウォーターポンプを作動させ、その後OFFにする。 ③イグニッションスイッチOFF後、ブリーダプラグを ゆるめトランスアクスル内のエアー抜きを行い、再 度ブリーダプラグを閉じる。 ④リザーブタンクに冷却水を補充する。 ②~④の作業を繰り返し、冷却水を補充する。 15 整備モード&主な使用目的 • 「整備モード」とは(プリウス20系の場合) 排気ガス測定などの車検時や点火時期の点検など、停車中でもエンジンの連続運転する 場合は、[整備モード]に移行します。 整備モードへの移行方法 ①ブレーキを踏まずにプッシュスタートスイッチを2回ON(IG)にする。 ブレーキを踏んだ状態で下記の操作を60秒以内に行なう。 ②Pレンジで、アクセルペダルを2回全開にする。 ③Nレンジで、アクセルペダルを2回全開にする。 ④Pレンジで、アクセルペダルを2回全開にする。 ハイブリッドシステム異常 整備モードに移行し、マルチディスプレイ内のハイブリッドシステム異常が点滅する。 ⑤ブレーキを踏みながらプッシュスタートスイッチON(READY)にすると、READYランプが 点灯し、エンジンが連続運転となる。 整備モードと主な使用目的 検査事項 シフト位置 整備モード 1、自動車直進性能試験(サイドスリップ) Dレンジ ONまたはOFF 2、制動力試験 Nレンジ ONまたはOFF 3、速度計試験 Dレンジ ON PまたはNレンジ ON Pレンジ ONまたはOFF 4、アイドルCO/HC試験(アイドリング) 5、前照灯試験 16 診断機活用による診断① • 異常コード表示に対する対処法 トラブル発生時において記憶されている 異常コードが実際のトラブル現象にどれ だけ深く関与しているのか、コード内容を 十分理解して診断及び点検手順(優先順 位)を考えることが重要です。 関連システム及び構成部品の理解を怠る ことによって、最終的なトラブルの要因に たどり着くまでに多大な時間等を要するこ とが、予想されます。 17 診断機活用による診断② • 異常コード事例 症状:走行中急に走らなくなり、ナビモニタ及びメータ 内ワーニング点灯 コード:ABS/VSC・エアコン・ハイブリッド・エンジン制御 システム・ゲートウェイ関連で複数の異常コードを 記憶 ・C1310 - HV系 ・U0293 - HVECU通信 ・B1421 - 日射センサ ・P3137_348 - HV衝突センサ(Low) 18 診断機活用による診断③ • コード検出条件 • C1310 - HV系 IG2端子電圧10.5V以上で1.5秒以上継続中、ハイブリッドコントロールコン ピュータとの通信有効状態でトラクションコントロール禁止信号受信が0.07 秒以上継続 • U0293 - HVECU通信 IG2端子9.5V以上が2秒以上続いている状態でHVECUとの通信無効状 態が2秒以上継続 • B1421 - 日射センサ ※屋内正常出力 1.日射あり 2.クーラサーミスタ(日射センサ)回路のオープンまたはショート 3.連続して8.5分以上(ショート時)、現在故障のみ(オープン時) • P3137_348 - HV衝突センサ(Low) サーキットブレーカセンサNo.1系統のGNDショート 19 診断機活用による診断④ • データモニタ数値等を利用した診断 異常コードが記憶されない場合や、記憶はされているが、 直接部品を特定するようなコードではない場合、不具合 を特定するために、データモニタ数値やアクティブテスト 等を利用して、不具合箇所の特定及び推定をする。 データモニタ数値の正常時との比較やアクティブテスト によるアクチュエータ等の動作確認は、非常に有効で す。整備解説書等を利用する手もあるが、すべての車 種を揃えるには、多少無理がある場合、納車や点検時 に(正常時)のある程度の条件(アイドリング・一定走 行・加速などの状態)をつけたデータをパソコン等に記 憶しておく事が有効です。 20 診断機活用による診断⑥ 例として : アイドリング時(暖機後) 項目 1 2 エンジン冷却水温度 モータ用インバータ温度 正常値 計測値 65~85℃ 水温センサ サーモスタット 等 市街地走行時 25~80℃ MIVT端子 温度センサ 電動ファン インバータ用W/P HV ECU データモニタ 観測数値 4 6 点検箇所 モータ温度 (NO.1) 市街地走行時 25~80℃ MMT端子 温度センサ HV ECU モータ ASSY HVバッテリ(SOC) 制御目標:60% 制御上限:75% 制御下限:30% HVバッテリ系 21 フェイルセーフとは • エンジン及びHV等の『フェイルセーフ』機能を理解し、症 状に応じて診断に活用する。 『フェイルセーフ』機能とは、重要なセンサー類及びシステ ムに万一異常が発生した場合、他の入力信号により運転 状態を推定し、あらかじめ用意してある値にもとづいて各 制御システムを安全サイドに制御する機能で、出力制限 等を実施し最低限の走行等を確保するものです。異常内 容に応じて実施内容が変わるので、症状によっては、不 具合が発生しているシステム等をある程度絞り込むこと ができるので、診断機と併せて診断することによって不具 合箇所の特定がより短時間で絞り込むことが可能になり ます。 22 最近の低燃費車の制御① • 低燃費車回生式オルタネータ 減速時にオルタネータの発電効率を上げ て、バッテリーや電装装置への電気を供 給する。 • 整備時の注意点 低燃費車専用バッテリーへの交換が必要 となる。 ※ディープサイクル対応バッテリー 23 例として、低燃費エンジン車専用バッテリーには、必ずバッテリー本体に「Z」または 「キ」マークが入っています。また、ステッカーが貼ってあるものもあります。 24 最近の低燃費車の制御② 従来の充電方式 低燃費車の充電方式 ※充電方式の一例です。各メーカにより多少システムに違いがあります。 25 電子化されたシステムへの対応 • 故障コード表示の一例 DTC No SAE/TCCS P0171/25 P0172/26 DTC P0171/25 リーン異常 (Bank1) DTC P0172/26 リッチ異常 (Bank1) DTC検出条件 1.診断条件 2.異常状態 3.異常期間 4.その他 点検部位 1. エンジン暖機後、空燃比F/B正常実施中 2. フューエルトリムが極端に増量側に補正 (約+35 %以上) 3. 9秒以上 4. 2トリップ ・吸気系統 ・燃料系統 ・フューエルインジェクタつまり ・ワイヤハーネスおよびコネクタ ・オキシジエンセンサB1S1 ・E.F.I.バキュームセンサASSY ・E.F.I.ウォータテンパラチャ ・インレットエアテンパラチャセンサ (E.F.I.エアフロメータASSY) ・排気系統ガス漏れ ・エンジンコントロールコンピュータ 1. エンジン暖機後、空燃比F/B正常実施中 2. フューエルトリムが極端に減量側に補正 (約-35 %以上) 3. 9秒以上 4. 2トリップ ・吸気系統 ・燃料系統 ・フューエルインジェクタつまり ・ワイヤハーネスおよびコネクタ ・オキシジエンセンサB1S1 ・E.F.I.バキュームセンサASSY ・E.F.I.ウォータテンパラチャ ・インレットエアテンパラチャセンサ (E.F.I. エアフロメータASSY) ・排気系統ガス漏れ ・エンジンコントロールコンピュータ 26 電子化されたシステムへの対応 • スキャンツールの活用事例 (コード:P0171) 27 まとめ • 最近の車の電子化はめざましく、故障診断以外に も、各系統の初期化・警告等の消去・ブレーキのエ ア抜き等もダイアグモニター等の専用の機械がな いと作業効率が悪くなるケースが多くなってきてい ます。 • 今後のメカニックの重要な課題として、新技術の理 解はもちろんですが、ツール(診断機等)を理解し て使いこなすことが、重要となってきています。 28
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