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態
「世界の言語と日本語」
重要な概念1
格:述語と名詞句の関係を示す名詞の形
態的特徴
意味役割:文の中で名詞句が果たしてい
る役割(動作主、対象など)
重要な概念2
直接格/斜格
直接格:主格、対格、絶対格、能格
斜格:その他の格(与格、属格、奪格など)
態とは何か
受動態、能動態、……
資料のKlaimanの定義を参照。
この講義で考えること
日本語にはどんな態があるか。
世界の言語にはどんな態があるか。
態の概念の拡張
態と他の文法カテゴリーの関係
能動態→受動態
能動態:彼女-が
受動態:彼女-に
彼-を 殴った。
彼-が 殴られた。
殴られた=nagur-are-ta = hit-passivepast
使役態
能動態:
使役態:彼女-が
彼-が 走る。
彼-を 走らせる。
走らせる=hasir-ase-ru = runcausative-present
可能態
能動態:彼-は
その話-を 信じない
可能態:彼-には
その話-が 信じられない
信じられない= sinzi-rare-nai = believepotential-negation
他には?
述語の形式が変わることによって主語や
目的語の格形式が変わる現象は他に日本
語にあるだろうか?
方言も含めて考えてみよう。
「述語の形態」の概念を少し広げて考えて
みよう。
「動詞のテ形+動詞」の「態」
動詞のテ形(やって、して、読んで……)とも
う一つの動詞の組み合わせによって、能
動文の主語の格がかわる現象がある。
述語の概念を「動詞のテ形+動詞」という
動詞複合体にまで広げると「態」の一種と
考えることができる。
具体的には?
「動詞のテ形+動詞」の「態」
結果構文
動詞のテ形式+ある
彼が
そこに コップを 置く

そこに コップが 置いてある
「動詞のテ形+動詞」の「態」
受益構文
動詞のテ形式+もらう
彼が
そこに コップを 置く
彼に
そこに コップを 置いてもらう
「動詞のテ形+動詞」の「態」
希求構文
動詞のテ形式+{ほしい/もらいたい}
彼が
来る
彼に
来てもらいたい
逆使役態
北海道方言の「動詞+ラサル」の一用法
誰かが

黒板に 大きな 丸を 描いた
黒板に 大きな 丸が 描かさってる
なぜこれを逆使役(使役の逆)と呼ぶのか
→態とアスペクトの関係(後述)
世界の言語の態
日本語にはない態
逆受動態(antipassive)
充当態(applicative)
能動態→逆受動態
能動態:
彼女-能格 彼-絶対格 殴った
逆受動態:彼女-絶対格
彼-斜格 殴った-A
述語に逆受動の形態素(A)がついている。
受動態と逆受動態
受動態:
(A)-斜格 S-直接格 述語
能動態:
A-直接格 O-直接格 述語
逆受動態:
S-直接格 (O)-斜格 述語
受動と逆受動の共通点
いずれも他動詞文から自動詞文を派生す
る。
AもしくはOがSになる
受動と逆受動
受動
逆受動
S
A
S
O
A
O
充当態
充当態(applicative)は場所や道具を表す
斜格的要素を直接目的語にする機能bを
もつ態である。
資料のキニヤルワンダ語の例を参照
所有者繰上げ
資料のキニヤルワンダ語の例を参照。
名詞句の中にあった所有者(「少女の本」
の「少女」)が文の直接目的語に繰り上が
る。
態とアスペクト
資料の北海道方言の例(逆使役)を参照
アスペクトの変化は使役文でも現れること
がある。
使役文の進行形の解釈
11月24日の調査
行為や出来事を表す動詞の場合、能動文と
使役文の間に進行形の解釈の違いはあまり
見られなかった。
しかし、状態動詞(存在のイル)の場合、次の
ような違いがあった。
能動態(いる):進行形は解釈不可能
使役態(いさせる):進行形は進行の解釈
君たちの言語の態
すべての言語がすべての種類の態を持っ
ているわけではない。
日本語には逆受動態がない。
クリンゴン語には受動態がない。
君たちが作る言語はどんな種類の態を
もっているのか(態がない言語もあってよ
いかもしれない)。