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統合レポートの意義と課題
早稲田大学 谷本寛治ゼミナール
発表の流れ
❶ 序論 -統合レポートとは-
背景
意義
概要
問題提起
❷ 本論
4業界12社+2社に見るレポートの変遷
❸ 結論
ポイントまとめ
課題
提言
参考文献
❶ 序論
CSR報告書に関する出来事
2003
2006.
6
•CSR元年
•責任投資原則(PRI)公表
•国際統合報告審議会(IIRC)設立
2010.
8
2011.
9
•GRI 「G3ガイドライン」発表
•IIRC 統合報告に関するディスカッションペーパーを公表
 非財務報告書における客観的な指標や具体的指
標を使用した開示が少しずつ発達してきている。
➔ KPI(Key Performance Indicator)、KRI(Key Risk Indicator)等
CSR報告書の変化(流れ)
環境報告書
サステナビリティ報告書
CSR報告書
ESG報告書
アニュアルレポート
統合レポート
統合レポートの背景
金融危機
長期的・持続的経済発展を求める動き
企業実態の透明性やステイクホルダーに対する経営
者の説明責任がいっそう求められるようになった。
リスク情報の拡充化や企業の将来的成長力の発信が
求められるようになった。
持続可能な社会とい
う考え方
経済・社会の変化
財務情報だけでなく非財務情報の拡
充化が求められるように
・情報がまとまっていてわかりやすい。
意義
・環境的・社会的リスク情報などが得
られる。
ステイクホルダー側
から
・ステイクホルダー・エンゲージメント
の深化
・財務パフォーマンスへの影響の可視
化
企業側から
・経営者の意思決定の改善
・投資家が非財務情報を見る契機になる
・CSRを経営の根幹にかかわるものとして株
主に説明できる。
各機関における統合レポートの見解
IIRC
GRI
ワンレポート
組織が事業を行う商業上、社会上及び環境
上の背景を反映できるように、組織の戦略、
ガバナンス、業績及び見通しについての重要
な情報をまとめ上げるもの
持続可能な開発の目的に向けた組織のパ
フォーマンスの測定、開示及び内外のステイ
クホルダーに対する説明責任を実践すること
持続可能な戦略が財務的および非財務的効
果の統合により進むものであるならば、企業
はその戦略の進捗状況を統合的に報告すべ
き
谷本ゼミにおける見解
統合レポートとは・・・
非財務情報
―CSR報告書―
財務情報
非財務報告
書をベースに
財務情報を
統合
統合レポート
非財務と財務の相
互に与え合う影響,
関連性を示すもの
「既存の財務報告書である有価証券報告書とは別に、
従来非財務情報だけを掲載していたCSR報告書を非
財務と財務の相互に与え合う影響や関連性を示すレ
ポーティングに改良してゆくためのもの」という認識
日本の現状
世界では現在200社以上の企業が統合レポートに
移行して、増加傾向にある。
一方日本では時価総額上位500社のうち統合レポ
ートと企業が表明し発行している企業は22社で5
%未満。( 2011/3/31現在)
→日本では未発展といえる
参考:株式会社クレアンcorporate register.com
問題提起
近年、企業の非財務報告書に財務情報も取り入
れたレポートを作ろうという動きが見られるが、ま
だ統合レポートとは言い難い。
日本企業が充実した統合レポートを実現して
そこで・・・
いく上で現状の報告書の課題は何か。
また、どのような取り組みが必要か。
統合レポートへ向けた
CSRレポートの4つのRQ
❶リスク情報の開示は行っているか?
❷目標が明示されているかどうか?
❸非財務情報を定量的に表しているか?
❹ 財務/非財務経営の影響の与え合いが
示せているか?
この4つの課題から
4業界12社と統合レポートにおいて先進的と言われ
る2社
計14社を見てゆく
❷ 本論
①リスク情報の開示ができているか
非財務報告書が財務的側面を帯びてきた流れの中で、元々
有価証券報告書の一項目であったリスク情報が非財務報告
書でも開示されるようになってきた。
主に開示できていた企業は以下の6社
・損保ジャパン
・東京海上
・MS&MD
・三井物産
・清水建設
・Novo Nordisk
この3社を中心に見ていく
三井物産
2004年のDPF問題について2005年のレポートで不祥事
の経緯や問題点、再発防止に向けてなどについて特集を
組み情報開示
DPF偽造問題とは
2004年11月、内部監査の過程で三井物産が販売してい
たディーゼル車向けの粒子状物質減少装置(以下DPF)
の指定申請に際し、虚偽の試験データが作成・提出されて
いたことが判明。
虚偽データに基づいて申請を行い、粒子状物質の捕集率
が本来満たすべき基準値に達しない製品を販売した事件
三井物産
→ネガティブ情報であってもそれをどう改善していくか、
防ぐためにはそうすればよいか具体的に示すことが
重要
清水建設
2009年より活動の報告において自己評価を導入
・計画を上回る
・ほぼ計画通り
・計画の未達成
→評価の項目を入れ、リスク情報になる評価もあえて
いれることにより、活動の内容や進行度が明確に
なる。
また清水建設にとっても来年の目標の指標になる。
清水建設
例)2012年CSR報告書より
項目:地球温暖化防止、エコロジーミッション
2011年目標
過去に建設した建物も含め、国内で建設した全ての建造
物が排出するCo2を1990年度比で16%削減
2011年実績
13%削減
反省点
工事量・調達量が目標達成時の想定を上回った
2012年目標
・6つの施策(省エネルギービルの推進、工事の省資源と
グリーン施行、省エネ改修とエコサービス、新エネルギー
の導入推進、オフィスの省エネ、排出権の確保と活用)を
継続的に推進。
・反省を踏まえ、政府上位計画を踏まえた新たな指標・目
標施策の検討。
Novo Nordisk
6つのリスク項目
市場の変化における
リスク
開発した薬の検査に
関するリスク
Market risks
Research and development
risks
Production and quality risks
製品の品質が
Financial risks
企業の評判に直結する
リスク
Ethical risks
税や為替の変動による
リスク
Legal risks
ただしこの6つのリスクに順位はつけていない
Novo Nordisk
Market risks の例
国
アメリカ
事例
2012年に医療制度改革法が施行され、今まで続けられてい
た連邦政府予算の支給が公的高齢者・障害者医療保険制度
を通して購入されていた薬の価格をさらに改定することになっ
た。
EU
地方予算の危機によりヨーロッパ政府の多くは重大な価格圧
力とともにある厳しい環境を認識し大幅な医療制度改革を発
表した。
中国
製薬市場に関係する出来事を国
薬品の値下げが医療制度改革の一環として2011年9月に発表され、
ごとに具体例を出して開示
いくつかの都市では地方レベルでの監督が導入された。
②目標が明示された報告かどうか
財務情報だけでなく、非財情報の目標を明示するこ
とでそれらの相関性が見つだ出しやすい
主に開示できていた企業は以下の9社
・三井物産
・キャノン
・富士ゼロックス
・大成建設
・清水建設
・鹿島建設
・武田薬品
・リコー
リコー:目標を明示
社会課題の解決に寄与し
持続可能な社会へ貢献
<リコーウェイ>
創業の精神 経営理念
大きな目標から
具体的な目標へ
地球にやさしい・人にやさしい・知識構造を簡単に
<方針>
中期経営計画 リコーバリュー RICOH Quality 宣言
リコーグループCSR憲章 リコーグループ行動憲章
誠実な企業活動
環境との調和
人間尊重
社会との調和
品質マネジメント、CS活動、人にやさし
い商品づくり、情報セキュリティマネジメ
ント他
環境保全と利益創出の同時実現
自己評価
数値化の難しい項目に関しても目標
は設定してCSRを行っている
省エネ・温暖化防止、省資源・リサイ
クル、汚染予防、生物多様性保全な
どの項目でそれぞれ目標を設置
武田薬品―目標の明示
ISO26000の中核主題に沿ったCSR活動の明示
→「CSR活動の目標と実績」という年度ごとの目標・実績・自
己評価をまとめた一覧表を掲載。 ISO26000の中核主題に
沿ったもの⇒積極的に国際規格を取り入れる姿勢
活動に関しての具体的な数値情報を多数記載
→ステイクホルダー・ミーティングの実施回数やCSR研
修の受講者人数など、活動における細かい数値も多数
公開。目標を具体的数値で明示しているところも。
例)CO2排出量26%削減(2011年度実績)
⇒さらに18%削減(2012年度目標)
別冊「CSR Data Book」にて数値情報を多数記載
→既存のアニュアルレポートに、より詳細な情報を記載。
より具体的な情報公開に努める。
武田薬品―目標の明示
「FutureOutlook」欄の設定
→一覧表で目標・実績を設定するだけでなく
「FutureOutlook」という欄を設け、社会との関
わり方に関する今後の方向性についても開示、
今後の課題と取り組みについてより詳しく説明
している。
具体的数値や指標だけでなく
目標に向けての会社の考え方、
思想を明示!
③非財務情報を定量的に表す努力を行ってい
るか(ESGデータ一覧など)
非財務情報を定量的に表すことで財務情報との
関連性が見つけ出しやすい
主に開示できていた企業は以下の3社
 損保ジャパン
 武田薬品
全体的にどこも定量化す
 Novo Nordisk
る努力はみられる。とくに
ESGは定量化しやすい
損保ジャパン
2010年~2012年
・重点課題策定プロセスを公開。
⇒ISO26000による分析、有識者ダイアログ、マッピングに
よる重点課題の絞り込み。
・環境面と人事面に関しては具体的な数値も表示。
⇒「2020年度までに2002年度比、40 .5%、2050年度まで
に同56 .0% CO2総量削減」
・巻末にESGのデータも掲載。
⇒電力使用量、紙使用量、女性管理職数、ボランティア休
暇制度導入率、CSR推進体制、取引先の選定基準等
損保ジャパン
例)重点課題2、「気候変動をはじめとする地球環境問題への対応」より
2011年度の目標
2011年度の実
績
自己評価
◎
農業従事者向け『天候インデック 加入件数の増
ス保険』の販売を通じ、タイ東北部 加
5県でのさらなる普及。
(2010年度:
1,158件→2011
年度:6,173件)
CO2 排出量を41,480t(2006年度 41,624t
△
比22 .0%削減)以下とする。
⇒すべての項目に関してが損保ジャパンのデータというわけではない。
NKSJグループ全体での取り組み状況の報告になっている。
武田薬品工業
 非財務情報を定量的に表す努力が成されている
➔目標・実績・自己評価の一覧表
例)209社にCSRアンケート実施
➔各個別項目
例)CSR研究受講者194名・CO₂26%減
しかし!
➔社会的責任に関する主な指標(ESGデータ)
定量化にできない情報(定性情報)はあく
まで抽象的表現に留まる
 目標:生物多様性への取り組み強化、ワークライフバランスの推進 等
例  実績:社内規則に則って着実に遂行した 等
努力は評価できるが、ステイクホルダーにとって有
用な数字で情報を開示できているとは言い切れない
Novo Nordisk
・過去2年分も掲載→比較しやすい
・会計方針(social accounting policies,
environmental accounting policies)→項目の詳細
記載
環境に関する非財務情報
(例)エネルギー消費量、水の消費量、二酸化炭素の
排出量、排水の量、廃棄物―リサイクル率、規制限
度違反の回数
Novo Nordisk
社会に関する非財務情報
◎発展途上国におけるケア向上のための優遇価格制
度
 国連が定めた50の後発発展途上国(LDC)の機関
に、先進国の平均薬価の20%以下でインスリンを
販売
Social Accounting
Policies
目的
Novo Nordisk
社会に関する非財務情報
◎発展途上国におけるケア向上のための優遇価格制
度
 国連が定めた50の後発発展途上国(LDC)の機関
に、先進国の平均薬価の20%以下でインスリンを
販売
Social Accounting
Policies
目的
④財務経営と非財務経営の双方向の影響の
与え合いが示せているか
CSR報告書を発行して
いる4業界12社
統合レポートを発行し
ている2社
定量化の努力はしている
今のところ双方向の影響が示されている
情報開示はなされていない。
❸ 結論
統合レポートの課題と提言
34
統合レポートへ向けたCSRレポートの4つのRQ
❶リスク情報の開示は行っているか?
→全体的に開示は進む方向(Novoのような具体的な開示にはまだ努
力が必要)
❷目標が明示されているかどうか?
→基本的にどの企業も明示している(目標→評価する体制が整ってき
た)
❸非財務情報を定量的に表しているか?
→だんだん定量化情報は充実してきているが、数値化・定量化できる
情報には限界がある。
❹ 財務/非財務経営の影響の与え合いが示せているか?
→双方向の影響が示されている情報開示はなされていない。
今後の課題
社内の各担当部署が経営陣の統率の下でより相互
に緊密な連携をとっていくこと。
・短期的には測れない。
・相関性測定が難しい。
財務情報と非財務情報の相互的影響の与え合いを
・定性情報を定量情報
示すこと。
化するには限界がある。
情報利用者にとって比較しやすい形式で情報やデー
タを提供すること。
提言
~理想的な統合レポートを実現するためには~
統合レポートの発行
単に情報開示の在り方としての統合レ
ポートではなく、
会社としての経営を統合した結果出て
くるのが統合レポートだという考え方
統合された経営管理
経営管理の段階での統合
→経営基盤の強化
リスク削減
次への
イノベーション
ステイクホルダー
からの信頼性向上
提言
~理想的な統合レポートを実現するためには~
・リスク削減
→リスク情報、ネガティブ情報を適切に開示する体制を整え
ることで、財務報告書では見えない危険性(環境リスク等)を
適切に伝えられるようになる。
・次へのイノベーションの基盤作り
→社内各部署の緊密な連携、組織を多様化し、多様な意見
このような統合された
をぶつけ合わせるような基盤作り、企業努力をすることで、
経営をおこなった結果
次へのイノベーションにつながる可能性が出てくる。
生まれるのが理想的な
・ステイクホルダーからの信頼性の向上
統合レポート!
→財務情報と非財務情報を統合してトータルで開示すること
で会社の実態がつかみやすくなる。
参考文献
○会計 東京森山書店
 第173巻・第6号・北村敬子「会計測定システムと非財務情報の開示」
 ・広瀬義州「企業会計における非財務情報の役割」
 第182巻・第8号・倍 和博「ESG情報開示に向けた会計情報フローの再編成」
 第182巻 ・第9号・小西範幸「コミュニケーションツールとしての統合報告書の役
割」
 ・松本祥尚「非財務情報に対する信頼性付与の必要性」
 ・上妻義直「統合報告はどこへ向かうのか」
 ・向山敦夫「CSRの戦略的理解と社会環境情報開示」
 第161巻・第5号・長谷川茂「非財務諸表と会計」
 ○税経通信
 2011.12 古賀智敏「企業情報開示の新たな展開―財務情報と非財務情報の
統合化の可能性」
参考文献
 ○企業会計 2012.6小西範幸「統合報告の特徴とわが国への適応」

林美由紀「経済・規制環境のパラダイム変化と統合報告に期待さ
れる役割」

三代まり子「国際統合報告審議会(IIRC)による取り組み―価値
創造のための国際的なレポーティングフレームワーク」

輿三野禎倫「財務と非財務の統合による経営と開示のダイナミ
ズム―企業経営の視点」

金田晃一「報告書の変遷から見る「統合」のインプリケーション」

田中宏昌「非上場企業における統合報告の意義」

窪田真之「投資家から見た統合報告書の利用価値」

加賀谷哲之「持続的な企業価値創造のための非財務情報開示」
 古庄修 「CSR情報開示と財務報告制度」
 ○統合財務報告制度の形成 古庄修 中央経済社 2012
 ○会計ディスクロージャーと企業倫理 若杉明 税務経理協会 1999
 ○ロバート・G・エクレス、マイケル・P・クルス『ワンレポート 統合報告が開く持続可
能な社会と企業』2012年 東洋経済新報社
参考文献
 武田薬品工業 www.takeda.co.jp
 Novo Nordisk社 www.novonordisk.com
 リコーHPwww.ricoh.co.jp/
 富士ゼロックスHPwww.fujixerox.co.jp/
 キャノンHPhttp://canon.jp/
 三井物産HP www.mitsui.com/jp/ja/
 丸紅HP www.marubeni.co.jp/
 三菱商事HP www.mitsubishicorp.com/jp/ja/
 損保ジャパンHP www.sompo-japan.co.jp/
 東京海上HP www.tokiomarinehd.com/
 MS&AD ホールディングスwww.ms-ad-hd.com/ 大成建設 www.taisei.co.jp
 清水建設 www.shimz.co.jp/
 鹿島建設 www.kajima.co.jp
ご清聴ありがとうございました。
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