早稲田大学教育学部社会科学専修 現代社会研究4(マネー) 伝統的資産運用とオルタナティブ投資 ヘッジファンドとその収益の源泉 森谷博之 住商キャピタルマネジメント チーフストラテジスト オックスフォードファイナンシャルエデュケーション 2004/12/9 hiroyuki moriya 1 ヘテロジーニアスな世界 所得水準が 高まると貯蓄 が増える 家計・ 機関 投資家 マネー 経済が発展 すると所得水 準は高まる 2004/12/9 適正な アラーム 価格の の 構成 提供 収益性 の高い 企業 再生が 必要な 企業 金融 マネー 流動性 の 供給 hiroyuki moriya 企業は成 長し、経済 は発展す る 将来の 有望な 企業 2 ヘッジファンドの定義 •自己資金をファンドで運用している •成功報酬制度を採用 •多様な市場で自由に取引する –基本的には上場している金融商品 –流動性の高い金融商品 •独自の手法を確立 –外部公開はしない •レバレッジを効かせる –グローバル・キャリー・トレード等 2004/12/9 hiroyuki moriya 3 ヘッジファンドの定義 バーゼル銀行監督委員会の定義 •直接的な規制をほどんど受けていない •規制対象金融機関や上場会社に比べ、ディス クロージャー義務が極めて限られている •レバレッジが高い 参考:http://www.mof.go.jp/jouhou/kokkin/ko036.htm 2004/12/9 hiroyuki moriya 4 ヘッジファンドの誕生 • ヘッジ付株式投資(ジョーンズ・ヘッジファン ド) – – – – – 1949年 アルフレッド・ジョーンズが開発 ある株式を買い、それと似たような株式を売る 外部から資金調達 17年間運用手法を公開せず 2004/12/9 hiroyuki moriya 5 ヘッジファンドの歴史 • 1949年 アルフレッド・ジョーンズがヘッジ付株式投資を開発 • 1960年代 約200社近いヘッジファンドが台等 – 上昇相場に対しヘッジをはずし高い収益率を確保 – ジョージ・ソロス、マイケル・スタインハート等を中心に活躍 • 1970年代 ヘッジファンド業界の縮小 – 下落相場でヘッジをはずし収益率を悪化 • 1980・90年代 ヘッジファンドが多数設立される – 金融技術の発達によりオプション、スワップなどのデリバティブを利用 – 1998年LTCM等巨大ヘッジファンドが危機的状況に陥る • 2000年代 6000-7000社のヘッジファンドが活躍 – ジョージ・ソロス、ジュリアン・ロバートソン等が引退 2004/12/9 hiroyuki moriya 6 ヘッジファンドの役割 • 市場の流動性を高める – リスクの再配分を可能にする – 市場を安定化させる • 適正な価格に市場を是正する – 富の公平な分配 • アラーム機能 – 政治、経済、制度等のひずみから生じる投資機会の 発掘 – 政治、経済、制度等のひずみから生じるリスクからの 逃避 2004/12/9 hiroyuki moriya 7 ヘッジファンドへの批判 • 透明性が低く、規制、監視・監督が行われていな い – リスク能力の過大評価 – レバレッジの過小評価 – トレーディング能力の過大評価 • 群集行動の誘発・独占的な攪乱力 – 為替市場での大量の取引 – 新興国市場のような規模の小さな市場での価格への 影響力 2004/12/9 hiroyuki moriya 8 ヘッジファンド・金融機関のレバレッジ • 裁定戦略を利用している60%のヘッジファンドのレバ レッジが2倍以上 • ヘッジファンド全体 – レバレッジなし:30% – レバレッジ2倍以下:54% • 銀行持ち株会社のレバレッジ1:14倍(98年) • インベストメントバンクのレバレッジ2 :27倍(98年) • デリバティブの想定元本が1兆ドルを超える金融機関 – 金融持ち株会社 6社(98年) – インベストメントバンク 2社(98年) 1,2:自己資本に対するレバレッジ 2004/12/9 hiroyuki moriya 9 LTCMの破綻 • ジョン・メリーウェザーにより創設 • 2人のノーベル学者を含む – マーロン・ショールズ、ロバート・マートン • • • • 自己資本48億ドル(97年) 管理総資産1290億ドル デリバティブの想定元本1.3兆ドル レバレッジ28倍(280倍) 2004/12/9 hiroyuki moriya 10 市場を動かすメカニズム 効率的市場・非効率的市場 情 報 2004/12/9 hiroyuki moriya 正 効率的市場 誤 非効率的市場 11 市場を動かすメカニズム 価格モデル • • • • 需要と供給 期待 持ち越し費用 季節変動性 – 生産、消費、保管できない商品 2004/12/9 hiroyuki moriya 12 市場を動かすメカニズム 市場の効率性を乱す要因 • 群衆行動 – 美人投票の理論 • 同じ行動をとる人の数が多ければ自分も儲かる • 同調行動 – 情報のカスケードモデル • よい情報を手に入れた人が先に行動し、そう考える人が追随 し、全体として同じ行動をとる • 階層ネットワーク – 組織の階層 – システムの階層 • 規制等 2004/12/9 hiroyuki moriya 13 市場を動かすメカニズム トレンドの発生と是正 自発的、構造的是正 裁定による是正 群衆行動 同調行動 階層構造 情 報 正 群衆行動 同調行動 階層構造 誤 正 正 正 トレンド発生時に投機家は市場に流動性 を供給し、トレンドの加速を抑え、裁定は 市場に流動性を供給し、かつトレンド を転換させる可能性もある。 2004/12/9 hiroyuki moriya 14 市場を動かすメカニズム 流動性と裁定のない市場 流動性と裁定のある市場 流動性と裁定のない市場 2004/12/9 hiroyuki moriya 15 ヘッジファンドの戦略 戦略の分類1 • 将来を見通し市場の方向性に賭ける – グローバルマクロ等 • 将来は見通せないが市場で生じた方向性に賭ける – マネッジド・フューチャー等 • 価格構造を分析する優れたモデルがあり価格の割 高・割安を判定できる – 裁定取引、イベント・ドリブン等 • モデルの不備を明確に理解し、それへの対応策が ある – ロング・ショート、イベント・ドリブン等 2004/12/9 hiroyuki moriya 16 ヘッジファンドの戦略 戦略の分類2 • • • • • Convertible Arbitrage Dedicated Short Bias Emerging Market Equity Market Neutral Event Driven – Distressed – Multi-Strategy – Risk Arbitrage • • • • • Fixed Income Arbitrage Global Macro Long/Short Equity Managed Futures Multi-Strategy 2004/12/9 hiroyuki moriya 17 ヘッジファンドの戦略 収益の源泉 • 自らの行動を公表しない。 • 値動きのランダムウォークからの乖離を一時的 な「ズレ(ノイズ)」としない。 • 新しい投資戦略を開発し続ける。 • 理論の乱用を抑え、経験や勘に基づく投資手法 を独自の理論として確立する。 2004/12/9 hiroyuki moriya 18 参考資料 • http://www.mof.go.jp/jouhou/kokkin/ko036.htm ヘッジファンドと国際金融市場 大蔵省国際局国際機構 中尾武彦 • http://www.ntticc.or.jp/pub/ic_mag/ic031/contents_j.html 投資と慈善が世界を開く 橋本努 • http://www.hedgeindex.com/index.cfm Hedge Index Tremont 2004/12/9 hiroyuki moriya 19
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