早稲田大学教育学部社会科学専修 現代社会研究4(マネー) 伝統的資産運用とオルタナティブ投資 プライベート・エクイティ 森谷博之 住商キャピタルマネジメント チーフストラテジスト オックスフォードファイナンシャルエデュケーション 2004/12/2 hiroyuki moriya 1 伝統的資産運用と資金循環 所得水準が 高まると貯蓄 が増える 家計 金融 マネー 経済が発展 すると所得水 準は高まる 2004/12/2 収益性 の高い 企業 hiroyuki moriya 企業は成 長し、経済 は発展す る 2 伝統的資産運用と資金循環 投資 直接金融 家計 預金 2004/12/2 間接金融 hiroyuki moriya 株式 債券 投資 安定した 優良 企業 貸出 高い 成長性 のある 若い 企業 高い 成長性 があるが 問題の ある 企業 3 プライベート・エクイティ ベンチャー・ キャピタル 機関 投資家 投資 プライベート・ エクイティ 富裕層 買収ファンド 2004/12/2 高い 成長性 のある 若い 企業 hiroyuki moriya 高い 成長性 はあるが 現在問題の ある 企業 4 プライベート・エクイティ 高い成長性 のある若い 企業 プライベート・ 資金 エクイティ 資金 高い成長性はある が現在問題のある 企業 2004/12/2 M&A hiroyuki moriya IPO 5 プライベート・エクイティ アメリカでの歴史:19世紀後半ー20世紀前半 財閥 フィリップス家 ロックフェラー家 バンダービルド家 ホウィットニー家 優良企業の輩出 経営上の アドバイスを しながら 投資 AT&T社 イースタン航空 (89年に破産宣告) マクドナルダグラス社 (84年にボーイング社と合併 2004/12/2 hiroyuki moriya 6 プライベート・エクイティ アメリカでの歴史:第2次大戦後 ADR社 成功企業 (American Research Development) トランジスタ、 半導体、 レーダー、 コンピューター、 合成ゴム、 1946年に MIT学長カール・コンプトン 合成繊維、 デジタル・ ハーバード・ビジネス・スクール教授 プラスチック、 ジョージス・F・ドリオ 航空、宇宙、 イクイップメント社 そして (DEC) 原子力 ボストンのビジネス・リーダー により設立 2004/12/2 hiroyuki moriya 7 プライベート・エクイティ アメリカでの歴史:第2次大戦後 新興企業 年金基金 1979年 米国労働省は 従業員退職所得 保障法(ERISA)の プルーデントマン・ ルールの改定により リスクの高い資産に 投資することを容認し、 PE投資を解禁した 2004/12/2 プライベート・ エクイティ・ ファームが 経営上の アドバイスを しながら 投資 hiroyuki moriya シスコシステムズ ジェネンティック マイクロソフト マイクロシステムズ バイアウトファンド エイビス ベアトリース ドクター・ペッパー ギブソン・グリーティングス マッコール・パターン 8 プライベート・エクイティ 5つの特徴 •投資の期間が長い •キャッシュフローが確定していない –出資金を複数回払う可能性がある –投資企業のIPO,M&Aにより株式、現金が支払われることがある –Jカーブ現象 •ファンドの利益の一部を成功報酬としてGPに払う。 •非効率的、流動性のない市場で取引 •積極的に企業価値向上に参加 2004/12/2 hiroyuki moriya 9 プライベート・エクイティ なぜ金融機関ではできないのか? •株式保有の制限・規制 •企業価値の評価が困難 –有形資産が少ない –不確実性の度合いが高い –事業に対する専門知識の欠如 •リスクに対して十分なリターンが見込めない –借り手に高い金利を払う能力がない 2004/12/2 hiroyuki moriya 10 プライベート・エクイティ 企業価値向上戦略 •長期投資を前提とした資金提供 –当初3-5年は利益が見込めない –最適化された財務戦略の提供 •優秀な経営陣の派遣 –企業の成長段階により異なる経営手法・知識 •投資対象企業の経営権を持つ –経営の当事者となる •独自ネットワークから得られる事業支援 –戦略提携 –合併・売却のタイミング –IPO戦略 2004/12/2 hiroyuki moriya 11 企業の価値、評価と株価 投資 家計 直 接 金 融 株式 債券 投資 借 り 入 れ 株式 預金 2004/12/2 間接 金融 貸出 利益 hiroyuki moriya 生 産 に 必 要 な 設 備 12 企業の価値、評価と株価 生 産 に 必 要 な 設 備 借 り 入 れ 株式 利益 現在的な価値 (純資産方式) 将来的な価値 (収益還元方式) 2004/12/2 hiroyuki moriya 企 業 の 価 値 株価 13 企業の価値、評価と株価 普通の企業 新興企業 リストラが必要な企業 現在的な価値 現在的な価値 企 株 業 価 の 価 将来的な価値 値 (純資産方式など) (純資産方式など) 株 価 (純資産方式など) 株 価 将来的な価値 (収益還元方式など) (収益還元方式など) 2004/12/2 現在的な価値 将来的な価値 (収益還元方式など) hiroyuki moriya 14 ベンチャー・キャピタル・ファンド 将来的には借入れにより資金調達し 生産設備を充実し、将来的な価値を高め 企業の価値を向上させる 生産 に 必要 な 設備 生 産 に 必 要 な 設 備 借 入 れ 株式 損失 現在的な価値 株 将来的な 価 価値 借 り 入 れ 株式 現在的 な価値 株 価 利益 将来的な 価値 2004/12/2 hiroyuki moriya 15 ベンチャー・キャピタル・ファンド 企業価値向上への支援活動 • 経営陣の強化と経営戦略のレベルアップ • 戦略提携などの仲介を通じた事業支援 • 参考: – KPCB(Kleiner Perkins Caufield & Byers:kpcb.com) – 1972年の設立以来350社以上のベンチャー企業を支援 • American Online, Amazon, Sun, Genentech, Compaq, etc 2004/12/2 hiroyuki moriya 16 バイアウト・ファンド 解体屋出現の理由 • パックス・アメリカーナ – 規模の経済 – 成熟した企業・寡占体制 – 経済・政治の安定化を可能にする大きな政府 • BCGの事業ポートフォリオマトリックス – 金の成る木から花形へ – 分散による事業の安定化 – 内部資金調達型の多角化、多国籍企業化、コングロマリット化 • 金融自由化による金融市場の効率化 – 不必要な多角化を行った企業の株価が必要以上に下落 – 資金調達の効率化で乗っ取り屋、敵対的買収が登場 2004/12/2 hiroyuki moriya 17 バイアウト・ファンド 企業価値向上の手法 • 財務的買収 – 企業価値の評価、税金、会計処理を動機とした企業買収 – 経営陣に問題があることが多い – 借入金により資金調達を行う • 戦略的買収 – 事業再編・再構築型 • 非効率的な部分を切り捨て、また必要な部分を買い取る – 業界再編・統合型 • 小さな企業を合併させて大きな企業として価値を高める • 解体 – 企業価値の評価が実際の価値よりも低い 2004/12/2 hiroyuki moriya 18 バイアウト・ファンド MBO、EBO,MBI 生産 借 に 必要 入 な 設備 株式 現在的な価値 将来的 な価値 生産 借 に 入 必要 な 設備 ファンド 株 価 現在的な価値 将来的 な価値 借入 株式 生産 に 必要 な 設備 借 入 株式 現在的 な価値 将来的な 価値 ファンド 利益 MBO(Management buy out) 経営者がファンドと協力して株式を買い取り、経営独立する。 EBO(Employee buy out)従業員がファンドと協力して株式を買い取り、経営独立する。 MBI(Management buy in)ファンドが事業を買い取り、経営陣を送り込む。 2004/12/2 hiroyuki moriya 19 株 価 バイアウト・ファンド 企業・事業再生 新たな 借入 生産 に 借 必要 な 入 設備 損 失 現在的な価値 将来的 な価値 株 価 生産 借 に 入 必要 株式 な 設備 ファンド 現在的な価値 将来的 な価値 生産 借 に 入 必要 利益 な 株式 現在的 設備 な価値 ファンド 株 価 将来的な 価値 既存の資金の出し手にその一部を放棄してもらい、ファンドに新たな資金を注入し、借入れの負担を 軽減、その後、生産設備を充実し、将来的な価値を高め企業の価値を向上させる 2004/12/2 hiroyuki moriya 20 バイアウト・ファンド 小口債権を集めて整理統合 • 大口債権者 – 企業の再建に積極的で債権の一部放棄も可能 • 小口債権者 – 再建には積極的だが債権の放棄には慎重 – 大口債権者が一部債権放棄して企業が再生されれば、自分 は放棄しないほうが得 – もともと債権は小さいのでなくなってもいい 2004/12/2 hiroyuki moriya 21 バイアウト・ファンド バイアウト・ファンドの条件 • 交渉能力 – 大口債権者、小口債権者と交渉し債権を整理統合する能力 • 情報収集能力 – 大口債権者、小口債権者を説得するための情報の収集能力 2004/12/2 hiroyuki moriya 22 プライベート・エクイティ 本当の価値 •事業の成功と関係者の利害を結びつけ ることで関係者の利害を一致させる。 –情報の非対称性の克服 –プリンシパル・エージェント問題の克服 2004/12/2 hiroyuki moriya 23
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