スライド 1

はじめに
興味のある分野
→行動レパートリーの拡大。
または意思決定に関連する事象。

そこで、扱ってみたい内容としては、
「行動変動性」
「ルール支配行動」

はじめに:行動変動性とは
個体内の行動のばらつき(山岸2005)
 創造性との関連性(同上)
 指標
→ 「等確率性」
・・・全ての事象の出現頻度が等しいこと。
および
「無規則性」
・・・出現した事象の系列に規則性が無い事。

はじめに:行動変動性を高める手続き
行動の変動性もオペラント行動同様、随伴性に
よって増減させる事ができる(山岸2005)。
「percentileスケジュール」
「Lagスケジュール」
Lagスケジュール

直近のN試行に生起した反応とは異なる反応
を強化するスケジュール。

例えばLag1スケジュールでは、直前の試行
で生起した反応とは違った反応をする事で、
強化子が提示される。
The effects of differential and lag
reinforcement schedules on varied verbal
responding by individuals with autism.
Ronald Lee J.McComas, and Jennifer
Jawor(2002)
心理学演習KO 1661050056-4
木村貴一
研究紹介
実験室内での研究の豊富さに対して、応用場面での
研究例は非常に少ない。
① ブロック遊びにおける新奇な形状の作品数の増加。
② 自閉症の子供の教室内活動における、
行動レパートリーの増加。
③ ボディーランゲージのレパートリーの増加。
残された課題

実際の生活場面において、Lagスケジュール
による言語行動レパートリーの変動性を向上
させる研究はなされていない。
本研究の目的

自閉症をもつ個人の社会的な会話場面にお
いて、使用言語レパートリーの変動性をlag1
スケジュールによって向上させること。
方法

対象者:
自閉症と診断された男児3名:
David, Charles(ともに7歳 ), Larry(27歳).
3人とも言語行動に障害は無く、プロンプトな
しで意思疎通が可能であった。
方法



Davidは特定の活動や遊び道具に執着する
傾向があった。
Charlesは、周辺にある対象についてのみ、
要求や発言をする傾向があった。
Larryは、その日従事する予定の活動の事ば
かり発言する傾向があった。
方法

計画:
Lag1スケジュールで強化を受ける介入セッションと、
DRAスケジュールで強化される般化プローブの
ABABデザインを採用した。
(DRA=Differential reinforcement of appropriate
behavior)

なお、Larryに対しては発話トレーニングを行った。
場面

介入セッション
David, Charlesに対しては、放課後の学校
の食堂。Larryに対しては、彼が所属している宿舎の
オフィスにおいて行われた。

般化プローブ
David, Charlesに対しては学校の教室、体
育館、職員用のラウンジにおいて実施した。
ターゲット行動

変動的発話パターンの定義
直前の質問に対する回答とは内容的に異
なった発言を「変動的」と定義した。例えば
I like to play with toys の後に play with
toys という回答は強化されなかったが、I like
to play with blocks という発言は強化された。
独立変数
適切な反応に対してトークンが与えられ、トークン10
ポイントで景品と交換された。
 景品
David, Charles ・・・ 1~2分間のおもちゃ遊び
Larry ・・・社会的相互作用が潜在的強化子
として採用された。
例えば賞賛・ハンドボール遊び・好きな活動につい
ての会話など。
従属変数

発話パターン数の累積記録。
新たに生起した発話レパートリー数。

なお、セッション中の発話は全て、逐語的に
記録されていた。
手続き
セッションは10回の試行から構成され、一週間に2
~4回実施された。
 ベースラインセッション
実験者と対象者はテーブルの同じ側に、1メートルの
間隔を空けて座った。実験者はDavid, Charlesに対
しては「What do you like to do ?」Larryに対しては
「How are you?」と質問し、その回答が適切な物で
あれば強化した。その後合計10回同様の質問をし、
適切な応答に対してトークンを与えた。

手続き2

介入セッション
直前の試行と同様な回答をした場合、実験者
はいかなるフィードバックも行わなかった。
Lag1スケジュールに合致した行動が生起した
場合、トークンが与えられた。スケジュールに
合致しているが文法的にミスを犯していた場合、
文法の誤りを正すようにプロンプトを行い、正し
い文法による発言を強化した。
結果(変動的反応数)
結果(新奇反応の累積記録)
考察

結果より、3人中2人の言語行動の変動性は
Lag1強化スケジュールによって制御されてい
た事が示唆された。

これにより、自閉症を持つ個人の変動的・固
定的行動様式は、強化随伴性に従ったもの
であるということが考えられる。
考察



また、David, Charlesにおいては、実験場面に存在
する対象物が、新奇な言語レパートリーの生成に関
与していた。 (マンド機能)
Lag1スケジュールの制約である「交替反応(Higher
order stereotypy: Schwartz,1982)」は、Davidにおい
ては確認されなかった。(反応レパートリーは19種
類)
Charlesにおいては、交替反応が生起していた。
(総反応レパートリーは4種類)
考察
Larryにおいて、変動性が増加しなかった要
因としては以下の物が考えられる。
① 強化子(社会的相互作用)の強化力不足

② 質問の違いによる、環境的手がかりの不足。
③ トレーニングセッションと介入セッションでの
般化失敗。(実施者の違いによる影響?)
今後の課題

変動的な行動をすることがより適応的とされ
るような日常場面において、変動性が生起・
維持するためのトレーニングおよび環境条件
の研究。

多様なLagスケジュールによる強化が、
Higher order stereotypyに及ぼす影響の同
定。
感想
疑問①:今回のケースでは変動性を高める事
がQOL向上につながっていたのか?
疑問②:変動性を高めた方が、QOLが高まる場
面とは?→創造性との関連性(山岸2005)
→ルール支配行動との関連性(同上)
疑問③:対人援助場面で行動変動性を扱う時、
考えられる援助場面とは? etc・・・
Reference


Ronald Lee J.McComas, and Jennifer
Jawor(2002) The effects of differential and lag
reinforcement schedules on varied verbal
responding by individuals with autism. Journal
of Applied Behavior Analysis 35,391-402.
山岸直基(2005) 行動変動性とオペラント条件づ
け 基礎心理学研究 23(2),183-200.